ここはどこ?
凄まじい不快感に襲われたリシャールは唐突に目を覚ました。
「うゅゆおぬぅう!!?」
そして目の前の悍ましい光景に凄まじく変な奇声をあげる。
なんかでっかいモルボルがグロイ色をした液体を垂らしながら自分を喰おうとしていたのだ。
リシャールが驚くのも当然だろう。
殆ど反射的にホルスターから光線銃を取り出してモルボルを撃つ。
モルボルはそれでぐったりと地面に倒れた。
モルボルが死んでいることを確認した後、あたりを見回すとまるでジャングルかと言いたくなるほど緑で埋め尽くされていた。
「いったい、ここはどこだ?」
リシャールは腕を組んで呟く。
確か自分は会社の心臓部である巨大工場で勇者と戦っていたはずだ。
だというのになにがどうなってこんな原生林にいるのかさっぱりわからない。
「わからないと言えば……」
リシャールは自分の左腕を動かしたり、左手で拳を握ったりして何の問題もないことを確認する。
「傷が完治してる上に武装一式全て新品同前の状態で手入れされているのはなぜだ……」
リシャールは控えめに言っても勇者との戦闘で武器という武器を使いつくし、瀕死の重傷だったはずである。
だったはずなのに武器はまるで新品状態であり、傷も完治している。
「意味がわからん」
現在状況が意味不明である。
どれくらい意味不明かというと宇宙○艦ヤ○トの第三艦橋がなぜか知らない間に復活するくらいに謎だ。
とりあえず辺りを警戒しながらあたりを散策していると海辺に出た。
すると東の方に明らかな人工物の要塞らしきものを発見した。
「一応人はいるみたいだな」
とりあえず要塞と思しきあの東の場所へ行き、そこの人間と交渉を持とう。
我が社と商取引している勢力の基地なら話は早いのだがと思いながら歩いていく。
要塞に近づいくとなにかこちらに向かってくる人だかりが見えた。
もしかして、我が社と敵対している勢力の要塞だったかとリシャールはわずかに身構えて警戒する。
よく見ると若い女性を3人の人相の悪い男が追い回しているようだ。
明らかに犯罪臭のする光景だ。
「きゃ~~」
「「「待ちやがれ~~」」」
セリフもなんかあらゆる作品で使い古されたものだ。
リシャールは頭の中で素早く損得計算した結果、とりあえず追われてる女を助けることにした。
腰に下げている軍刀を抜き放ち、人相の悪い男どもの前に出る。
「あ~?なんだおめぇ?」
「邪魔すんじゃねぇよ」
なんというかマジで創作物とか見る小悪党だなとリシャールは思いながら軍刀を向ける。
「面倒だ。とっとと失せろ」
「は~~?」
完全に馬鹿にした顔で男が挑発してくる。
それに完全に苛立ったリシャールは……
「もういい。死ね」
軍刀で挑発してきた男を一突きにした。
「ア、アニキ!!」
「テメェ、よくもアニキを!!」
小悪党の2人が拳銃をリシャールに向けて乱射する。
するとリシャールは魔法で防壁を形成し、その縦断全てを防ぐ。
「は、はああああああああああ!!!!!??」
「なんでこんな魔法の使い手こんなとこにいんだよ!!!」
小悪党の絶叫にリシャールは心外だと思いながら、弾切れになって狂乱状態になって隙だらけの小悪党2人の首を刎ねた。
「さて、それでちょっと聞きたいことがあるんだが……」
リシャールが振り替えるとそこには拳銃を持って顔面蒼白になった女の姿があった。
自分が小悪党連中に突撃したのを見て援護でもしようとしたのかとリシャールは思った。
「ああ、あんたを追ってたやつらなら全員殺したから安心しろ」
「ッ! そ、そうね。ありがとう」
なんか凄い早口で礼を言われて、頬を掻くリシャール。
ひょっとしてまだ追われてた恐怖が収まってないのだろうか。
「ねぇ、貴方ってバルト候の特殊部隊の人かなにか?」
「いや、あるPMC所属の者だ」
そもそもバルト候って誰?
リシャールは内心そう首を傾げる。
そして女の方は「ぴーえむしー?」と首を傾げている。
PMCの存在すら知らないとはここはあまり人類陣営の中で、魔王陣営との戦線を持たず、比較的平和な世界なのだろうか?
「よくわかんないけどひょっとして連合の候補生のこと?」
「連合ってどの連合だ?」
絶賛第二次世界界大戦中の今の時代、連合と名のつく勢力はいくらでもある。
中には50を越える世界を支配するグラサウム帝国連合なんてものが人類陣営の列強のひとつにあるくらいだ。
「四聖連合に決まってるじゃない! あんた何処の田舎者よ!!」
「四聖連合ってなんだ? 聞いたこともないぞ」
リシャールの言葉に女は信じられないという顔をした。
「四聖連合はこのオリエンス最大の大国の名前じゃない! なんで知らないのよ!」
女の言葉に聞き逃せない言葉があった。
オリエンス。
それはリシャールが勤務している会社で多くの社員がしていたゲーム『FF零式』に出てくる世界の名前だ。
まさか未だ我が社に発見されていない世界界の果てにFF零式の世界まで転移を果たしていたのかとリシャールは驚く。
「えっと。このあたりで一番近い世界ってどこだ?」
「は? なにを言ってるの。あ、ひょっとして西方のこと言ってるわけ?」
「せ、西方?」
「なるほど。 貴方が西方人なら連合のことを知らないのも頷けるわ」
女は一人頷く。
オリエンスの周囲は常に謎の大嵐状態で交流がなく、オリエンスの外を知る者は少ない。
しかし稀に西方から冒険家が流れ着くことがあり、西方に大陸があるということを知識として知っている。
そんな事情はリシャールは知らないがとにかく異世界出ということは分かってくれたかと思い、話を続ける。
「西方かどうかは知らないがここらへんのことは知らん。
で、四聖連合ってのはどういう国家なんだ?」
FF零式の世界観くらい熟知しているが四聖連合なる国家は知らない。
もっとも、あらゆる世界が転移を果たしてごちゃまぜに混ざり合い形成された世界界では原作知識など大してあてにならないものであることをリシャールは知っていたので大して気にしなかった。
「オリエンスで一番古い国家よ。超文明時代に存在した四大国がフィニスを乗り越えて『裏切りのノア』の指導の下、四大国が連合を組んで建国されたらしいわ」
「『裏切りのノア』?」
リシャールは全く知らない単語に首を傾げる。
「よく知らないけど四大国の内のひとつ、白虎を支配していた魔王の直属部隊の裏切り者らしいわ」
「……なんだそれ」
もう名前が似ているだけの別世界だと考えよう。
第一、あんなにごちゃまぜに世界が混ぜりあえば世界観が崩壊してても不思議はない。
そうリシャールは判断した。
「白虎の魔王のことまで知らないなんて……本当に西方の人間みたいね。
よかったら私と一緒にウラヘルまで来ない? 身の振り方教えてあげるわよ」
「ウラヘル?」
「あそこのことよ」
女がある場所を指さし、リシャールもその方向を見る。
指の先にはリシャールが目指していた要塞らしきものがあった。
「あれって要塞だよな?」
「ええ、ウラヘルは元々は帝国の前線基地だったらしいわ。
でも帝国が龍神の聖域を領土にしてからは破棄されて今じゃ無法者どもの巣窟」
帝国……名称からしてコンコルディアかミリテスが元にある国家だろうか?
いや、さっき四聖連合がどうのって言ってたな。
となると異世界の勢力の国家か?
そう考え、リシャールは問う。
「帝国とはなんだ?」
「ああ、そうか貴方は西方人だから帝国も知らないのか。
ウラヘルで私の住処についたら詳しく説明するけどとりあえず連合ととっても仲の悪い国家と思っとけば大丈夫よ」
連合と仲が悪い。
どうやら当たらずとも遠からずと言ったところか。
女の言うとおりならおそらく第一次世界界大戦の時に領土でも奪われでもして連合との仲が険悪なのだろう。
ん?女?
そういえば……
「おい」
「なに?」
「お前なんて名前だ?」
「あ、そういえば私たち自己紹介すらしてなかったわね」
女が忘れてたという顔をする。
「じゃあ、俺から自己紹介しとくか。
俺はリシャール・バラシア。ある世界の民間軍事会社に所属してる」
「なにその物騒な企業……西方はすごいところね。
私はヘレナ。ウラヘルで盗賊をしているわ。さっきはありがとうね」
「……盗賊?」
「そうよ。そうでもなきゃウラヘルみたいな無法地帯に住んでるわけないでしょ」
「……ひょっとしてさっき俺が殺した奴らって」
「ああ、私の稼ぎを疎ましく思った盗賊連中が私を殺そうとしたみたいね」
「盗賊が盗賊に追われてたのか。笑えんな」
リシャールが苦笑する。
「だって私は有名だからね。ある盗賊ギルドからも睨まれてるし……」
なんかとんでもない同業者組合の名称がヘレナの口からさらっとでた。
「おい、なんだ盗賊ギルドって」
「あ、それも説明しなくちゃいけなのか。だけど今はまずウラヘルに行かない?
この辺はモルボルみたいな凶悪かつ強靭なモンスターが多いから出会うと面倒だしさ」
「そうか。ならそうしよう」
リシャールも服装がモルボルの液体で濡れて、嫌な臭いを発しているのでひとまず着替えたかった。
着替えはどこぞから奪うことになるだろうがウラヘルが無法の街ならば盗むくらい問題ないだろう。
「じゃ、ついてきてね~」
ヘレナはニコリとほほ笑むとスキップしながらウラヘルの方へ向かう。
リシャールもとにかく情報を欲していたのでとりあえず黙ってヘレナの後をついて行った。
・・・・・・・・・・
ウラヘルの防壁の中に入ってリシャールは少し驚いた。
防壁内部は所々にある見張り台のようなものを除いて完璧な街と化していたからである。
ヘレナに導かれるままに歩いていくとそれなりに立派な建物へとたどり着いた。
「ここが私の所属しているギルド【夜光】よ」
ヘレナはそう言うとその建物の中へと入っていった。
建物内は酒場のような構造となっており、バーテンダーがいるべき場所にいる人物がヘレナに声をかけた。
「お、戻ったかヘレナ。で、そっちの男は誰だ?」
「ちょっと騒動に巻き込まれてる時に知り合ったの」
「へぇ~。で、そっちの男はここに所属するつもりなのかい?」
バーテンダーらしき男がリシャールの方に顔を向ける。
「いや、俺はそもそもこのギルドがどういう場所なのかすらよくわかってない」
「じゃあなんでここに来たんだい?」
バーテンダーらしき男が心底不思議そうな顔をする。
「ショルド。彼にちょっと話してあげたいことがあるから部屋を用意しておいてくれない?」
「む? まさかそっちの関係なのか? クロイツが泣くぞ」
バーテンダーらしき男改め、ショルドがからかうような声で嘯く。
「違うわよ!!」
ヘレナがそう凄みを聞かせて言うとショルドはやれやれと両手をあげる。
「冗談だよ。部屋なら空いてるからすぐ用意できるよ。
それとな。お前が俺に注文してた品物。やっと入手できたぞ」
「そういうことは冗談の前に言うべきね」
「ハッ、それなら面白みがないだろう?」
ニヤニヤするショルドをヘレナが睨む。
1分程その状況が続いたが、やがてショルドは部屋の鍵と白い布で包まれたブツをヘレナに渡した。
「さっさと渡せばいいのよ」
「そうかい。なら挑発に乗って相手を睨みつけたりしなきゃいいんじゃないかな?」
「さっさと行くわよリシャール」
「お、おう」
ヘレナがリシャールの手を掴んで強引にその場から離れる。
リシャールもヘレナの顔が怖すぎたので抵抗したりしなかった。
そして2人がいなくなるとショルドは一人呟く。
「身のこなしからして相当な実力者だよね。彼。
あれが【
仮にそうなって彼とヘレナとの仲が発展しようものならクロイツが血の涙を流すな。
ショルドはそんなことを内心思いながら仕事に戻った。
・・・・・・・・・・
その頃、とある場所にて。
漆黒の闇が支配するところで老人のようなかぼそい声が響いた。
「ひ、開いたのか?」
その声の主の今までの経験上、一度も感じたこのない感覚であった。
「いかがなされのですか」
先程の声と違いはっきりとした声がその言葉の真意を問うていた。
「感じた。感じたのだ。一瞬だが……開いたのやもしれぬ」
その声には子どもで察せられるほどの動揺を伴っていた。
老人のような声の主は自分が動揺していること自体に深く驚いてもいた。
「開いたというと、まさか?」
「ああ、そうじゃ。その通りじゃ。急ぎ調べねばならん」
「確かに。しかしどこで開いたと?」
老人のような声の主が地図を広げる。
そしてある地域を指さした。
「そこは幸い支部のある場所ですな。おまけに幹部も一人、近くに潜伏しています」
「その者をすぐに向かわせるのだ。そして必要とあらばお主も行くべきだろう」
「開いているという確証を得たならば……」
はっきりとした声の主が片膝をついて跪く。
「我が使命を果たしましょう」
>見切り発車なのにこんなに伏線仕込んで大丈夫かい?
回収できなかったらごめんな!(開きなおり)