IS×山崩シ之逸刀   作:エミヤ

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遅くなってすいませんでしたぁ!

なるべく早く投稿するとか言っといて前回とほとんど変わってませんでした。

今回は説明回です。我ながら全く面白くないです。
それではどうぞ!



やるべきこと守りたいもの

暖かい光が漂う世界、身体を包む浮遊感が妙に心地よい。

そんな中、千石は目を覚ました。

 

「…っ。ここは…」

 

千石は周りを見回す。そこは辺り一面が白一色だった。

自分はここに来たことがある。

ここが現実の世界なのか、はたまたそれ以外の何かなのかは分からないがそれだけは確かだった。

 

広いのか狭いのかでさえ、白一色では分からない。

 

思い出した、ここはこの世界へ来る前星の守護者と出会った場所。

 

「…何故ここに…拙者はいるのだ…」

 

気付けば身体は全盛期のものに戻っていた。何故か違和感がある。

この姿で1番長く過ごした筈なのに、今はもう幼い身体の方がしっくりくるのだ。

そんな奇妙な感覚に千石はすこし口角を釣り上げた。

 

千石は誰かが近付いてくる気配を感じ後ろを振り返ると、そこにはこの世界と同じ真っ白な女性が立っていた。

この浮世離れした美しさは彼女しかいない。

「…星の守護者か」

 

「はい。お久しぶりですセンゴク様。相変わらず冷静ですね、…憧れてしまいます」

 

何故このタイミングで彼女とまた会うことになったのか、分からぬことはいくらかあるが今は確かめねばならぬことがあった。

 

「…お主に、聞かねばならんことがある。」

 

「えぇ、知っています。私がここに貴方を呼んだのですから」

 

彼女はまるで再開を喜ぶかのように、千石に向けて微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そうか」

 

あれから千石は守護者に世界の危機とは何なのか、いつ頃訪れるのか等を聞いたが、返ってきたのは分からないという言葉のみだった。

 

「申し訳ありませんセンゴク様。お力になれず…」

 

「…気に病むな。お主に責任は無い。」

 

分からぬなら仕方ない、これから探すだけのこと。

生憎見えないものに手を伸ばすことには慣れている。

 

 

 

それよりも、もっと重要なことがある。

自分の転生についてだ。

守護者は転生と言っていたが、自分はそれを生まれ変わりのようなものだと思っていた。

しかし色々と不可解な点があった。

転生するより前の、幼いころの記憶が全くないこと、自分は知らない相手がこちらを知っていたこと、まるで意識が覚醒したような感覚。

 

それはつまり、あの世界で元々生きていた少年の居場所を自分が奪ってしまったのではないかといことだ。

 

誰しも幸せに生きる権利がある。否、義務がある。

例え世界を救う為だとしても、人一人の人生を無かったことにしていい訳などない。

もしそうならば、自分はこの星の守護者を軽蔑するだろう。

何故なら世界とは命の集合体なのだから。

個を大事に出来ぬものに全は救えない。

 

 

 

「正直に言え、転生とは何だ。もしや拙者はあの世界に元々生きていた少年の身体を依り代にでもしたのか。何故、幼い頃の記憶がない。何故知らぬ相手がこちらを知っている。」

 

 

 

 

 

「…それは元々1人の人間が生きていた証なのではないか。」

 

 

 

 

 

 

千石はその瞳を守護者へ向ける。

その鷹の目は嘘を吐くことなど許さぬと、守護者を射抜く。

 

その視線を受けた守護者は一瞬身体をビクッと震えさせたが、首を横に振り千石の考えを否定した。

 

「…いいえ、違います。あの世界にいるのは正真正銘センゴク様です。結論として、センゴク様をあの姿のまま転生させることはできませんでした。あまりにも肉体が酷使されていたからです。」

 

「それが、拙者の身体が幼くなったこととどう繋がる」

 

「はい。センゴク様の死後、私は魂を朽ちないように保管し、その身体の修復に取り掛かりました。やはり全盛期の姿が色々と都合が良いと思ったからです。しかし、さっきも言ったとおりセンゴク様の身体は、いうなれば人の芯といわれる部分が完全に壊れており修復は出来ませんでした。」

 

「無茶…ばかりしたからな」

そう千石は自嘲気味に笑う。まるで幼い頃の思い出を懐かしむように

 

「もう!センゴク様はもっと御自分の身体を大事にして下さい!あんなのは無茶の範囲を超えてます…。」

 

 

守護者は俯くが、こればっかりは仕方ない。きっと何度人生をやり直してもこの選択をするだろう。

求め続けたものが目の前にあるのなら、何を犠牲にしても手を伸ばす。

それがこの時は自分の命だっただけ、命を賭してでも果たさねばならぬことがあった。後悔などこれから先もしないだろう。

 

それよりも守護者は簡単に言うが、魂の保管や肉体の蘇生等はまさに神の領域にあるものだ。

 

そんなことが果たして出来るのか。

募る思いはいくらかあるが、確かに死んだ自分が別世界でまた生を受けているという事実がある。守護者の言葉は信じるに値するものだ。

それに一々確かめていては進む話も進まない。

今はとにかく守護者の話に耳を傾けるとしよう。それを聞くのはその後でも構わない。

 

千石は人知の及ばぬ領域に理解を示した訳ではないが、守護者は嘘を吐いてる様子も無い為取り敢えずは話を聞くことにした。

 

守護者は少し大袈裟に咳払いをすると、話を続けた。

 

「…ゴホンッ!それでですね、身体の修復が不可能と分かった私は、身体を若返らせることでその傷を癒やす方法を取りました。結果としてそれは成功したのですが、身体を若返らせるということは肉体の時間を遡るということです。時間という普遍のものを操るのはとても難しいことでした。そして…」

 

「何か手違いがあったのだな。」

 

守護者は千石の思わぬ言葉に目を見開いたあと、憂いた表情で首をゆっくりと縦に振ることでその言葉を肯定した。

 

「はい…そうです。もともとの予定ではあそこまで遡るつもりはありませんでした。しかし私が至らぬばかりセンゴク様にご迷惑をかける結果となってしまい本当に申し訳ありませんでした。」

 

守護者は千石からどれだけ責められてもそれを甘んじて受け入れるつもりだった。

何故なら千石からすれば、自分の身体を好き勝手にされたも同然なのだ。迷惑も甚だしい。

よくも勝手なことをしてくれたなと、責められるのが当たり前、いやそうでなければならない。

 

しかしそれというのに千石は守護者を責めようとはしなかった。

 

「話は分かった。世話をかけた」

 

「…⁉︎貴方は、私を責めないのですか!こんな…私は取り返しのつかないことを…」

 

泣きそうになる守護者に千石はそれ以上言うなと手で制し

 

「気にするなとは言わん。お主が自らを責めることをとやかく言うつもりはない。しかし少なくとも拙者は気にしておらん。もう過ぎたことだ。」

 

「それにお主が言わなければ、隠し通せたことでもあろう。それをわざわざ拙者に伝える馬鹿正直者をどうして責められる。」

 

全く愛い奴よ、と守護者の頭を撫でていた。

 

「せ、センゴク様⁉︎あ、あの…?」

 

「悲し気な表情はお主には似合わん。明るい表情の方がお主らしい」

 

「あの、その…ありがとうございます…」

 

守護者は頬を赤らめ俯いたが、その表情は幸せそうだった。

 

「うむ、して何故拙者はあの家に厄介になることになった。何故幼少の記憶が無い」

 

「あ、はい。すいません、話の途中でしたね。まずセンゴク様の幼少の記憶が無いのは恐らく記憶の定着と覚醒の副作用だと思われます。」

 

「…それは如何様なものだ?」

 

「はい。あまり難しい話ではないのですが、乳児まで若返ってしまったセンゴク様に前の世界での記憶をそのまま定着させるのはかなりの危険が伴いました。まだ未発達なセンゴク様の脳には前の世界の記憶が負担となり、その機能を阻害してしまう恐れがあったのです。」

 

「その為、センゴク様の脳がある程度まで発達するまでその記憶にプロテクトをかけたのです。」

 

 

「ふむ。拙者の身体がある程度まで成長したことで、そのプロテクトやらが解け拙者は記憶を取り戻したということか」

 

「はい。そうです。幼少の記憶がないのはその際に記憶の混乱が起きたせいでしょう。」

 

「つまり記憶が無いのではなく、記憶が混乱して思い出せぬ状況にあるということか」

 

「はい。もうしばらくすれば、記憶が完全に定着し意識が覚醒する前の事も思い出せると思います。」

 

「…そうか。」

 

「そして最後に、センゴク様が何故あの場所に転生することになったかですが、幼くなったセンゴク様があの世界で生きるためには信頼のできる者に託すしかありませんでした。そこに………ある夫婦の願いがあったのです。」

 

「…どういうことだ。」

 

「はい…勝手なことをしてしまい申し訳ないと思っています。その夫婦は事故に合い、妻が永遠に子を授かれない身体になっていたのです。」

 

「そこまではどこにでもある話、この世界のどこにでもありふれている不幸です。その夫婦は不幸を乗り越えましたが、やはり心の何処かで子供を欲していました。」

 

「だから拙者を預けたと?少し早計だろう」

 

千石は少し呆れたように言う。しかし守護者はここに来て初めて千石の言葉を否定した。

 

「違います。それだけではありません。その夫婦は他の夫婦と違い誰も妬もうとしなかったのです。私はこの夫婦なら信頼できると思い思念体として接触しました。夫婦は最初私の存在に驚いていましたが、次第に存在を認めてくれました。」

 

「この夫婦なら信頼できると私はセンゴク様を預けようとしましたが、その夫婦は言ったのです」

 

『私より辛い想いをしている人がいるはずです。どうかその方を救ってあげて下さい』と。

 

「その夫婦の泣きそうな笑顔は今でも忘れられません。私はこの者達しかいないと思いその夫婦にセンゴク様を託しました。」

 

「そして、拙者はこの世界に生を再び受けたのか」

 

「はい…。勝手なことをしてしまい本当に申し訳ありませんでした。」

 

「気にするな。お主に全てを任せていたのは拙者だ。それにその選択は間違いではなかった」

 

あれだけ幸せそうな笑顔をしていたのだ。間違いであるはずがない。

千石は部屋に立て掛けてあった、写真を思い出した。

 

写真には満面の笑みを浮かべた夫婦らしき男女と少年が写っていた。

 

あれからこの世界での自分の両親とは会ったことはない。

愛莉は旅に出ていると言っていた。

 

いつか帰って来たならその時は礼をいわねばならんな。

 

 

千石は少しだけ頬を緩めた。

その表情を見た守護者は本当に幸せそうな顔で涙を流した。

 

「…どうした」

 

「…うゔっ、ったし、ずっと不安でぇ!ずっと、もしかしたらもっと良い方法があっだん…じゃないかって!」

 

守護者はさっきまでの雰囲気は微塵もなく、子供のように泣いていた。

 

「…全く。子供のあやし方は知らん」

 

千石は守護者が泣き止むまで、ただ何を言うのでもなくずっと待っていた。

守護者の泣き声がするだけの時間がただ過ぎていくが、その時間が妙に守護者は心地よかった。

 

千石の不器用な優しさにいつしか涙は止まっていた。

 

「…すみません。お見苦しいところをお見せしました。」

 

「いや、今回は世話になった。拙者はまた世界の危機について色々と調べるとする。」

 

「はい、分かりました。私も何か情報があればまたお伝えします。センゴク様の思うままにして下さい。きっとその先に答えがあるはずですから」

 

「…分かった。任せておけ、我儘は拙者の得意とするところだ」

 

千石はそういうと守護者に背を向けた。そろそろ別れの時間が迫ってきている。

 

「はい、それと最後にセンゴク様…」

 

「なんだ。」

 

「私のことを名前で呼んで下さいませんか。守護者はあくまで役割みたいなものなのです。ですからどうかソフィーと。」

 

 

 

 

「……ではなソフィー。」

 

千石は背を向けたまま右手を軽く挙げ、光の粒子に包まれるようにして消えていった。

 

「…はい。また、いずれ。いってらっしゃいませセンゴク様…。」

 

守護者はその姿をいつまでも見つめ続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…朝か。」

 

千石は日の光に目を覚ました。

この季節はまだまだ早朝と夜は肌寒い。ふと横を見ると愛莉が気持ち良さそうに眠っていた。

 

その絹糸のような柔らかい髪を梳きながら、千石は決意する。

 

 

(…例えどんなことがあろうとも守る。世界の危機とやらは何か未だ分からないが、必ず守る。大事な人とこの世界を。)

 

千石は愛莉を起こさないよう静かにベッドから降り、少しはだけていた布団をそっと愛莉に掛けた。

 

千石は決意を新たに竹刀を手にし、毎日の日課である鍛錬をするため外へ向かった。




「愛莉!担がなくても歩けると言っておろう!」

「ふふふ♪そんな照れなくても大丈夫ですよ〜!」

「…あぁー」

「また千石が連れていかれた。一体愛莉さんのどこにそんな力があるんだろう…」









ある日一夏は千石の家へ遊びに来ていた。


「よし!今日こそ愛莉さんの力の秘密を暴いてやる!千石にはトイレって言ってるし、よし愛莉の部屋に行ってみよう。」

一夏は恐る恐る愛莉のいる部屋を開けた。


ギギィ










「はっ…!」




そこにはタンクトップを着た筋肉がいた。
その筋肉はフンフンと息を荒げ、50Kgと刻まれたダンベルでアームカールを行っている。



「えっ…?あ、あれ誰、ここ愛莉さんの部屋じゃ…⁉︎ぇ、え?」

しかしよく見てみればその顔は一夏のよく知る者だった。

「嘘だ…愛莉さん⁉︎とんでもない物を見てしまった…や、やばい、と、とにかく逃げないと…殺される…」

一夏はガタガタと震える足を引きずりながら、その場から逃げ出そうとした。

「あ、足が…!千石ぅ助けてくれぇ…!」

「あら、一夏くん?」

「ヒィィィィィィィ!」

「あらあら、そんなに驚かなくて良いじゃない。…それで………見たの?」

「見、見てません!タンクトップなんて見て…ハッ⁉︎」

「そう…見たのね。」

「い、嫌だ…!助けてくれ千石ぅ」


ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


「む、長かったな一夏。」

「筋肉、タンクトップに筋肉が筋肉はプロテイン色のタンクトップが…」

「落ち着け。いきなりどうした。」

「は、はは。世の中には知らない方が良いことがあるんだ…ぜ…?」

「一夏!起きろ!おい一夏!」





それからしばらくの間一夏は、愛莉と会う度滝のように冷や汗をかき震え上がっていた。
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