ラブライブ マネージャー大空のマネジメント   作:凱刀

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マネージャー兼アシタントになっちゃた

この小説はμ'sに男性マネージャーがいたらという夢物語小説です。

 本編と異なりお楽しみとしてサイドストーリーがあります。

 皆様に楽しんでいただけるようにと願っています。

 では、物語の始まりと共に主人公さんにバトンタッチをしましょう。

 

「これで良し」

 俺は扉の前で制服とネクタイを正す。

 扉には『理事長室』と書かれ何も語らず、文字だけで生徒に威厳を放っている。

 何も悪事をしたわけではない。かと言って、褒められることをした覚えもないが理事長に個人的に呼ばれて、今こうして扉越しに立っている。

 俺の名前は一ノ瀬大空(そら)

 ここ音ノ木坂学院に通う二年生。

「失礼します」

「どうぞー」

 俺の声に扉越しに品と艶のある声が聴こえた。

「理事長。お話とは?」

 美しくも凛々しく長椅子に両肘を手を重ねて座っている姿は高貴な花のように思えた。

俺を見ている双眸は鋭いが、どこか慈愛にみちた眼差しにも見える。

「一ノ瀬君にお願いがあるのです」

「何でしょうか?」

 理事長直々にお願いとは何だ?

 というか、何故に俺?

 他の人には出来ないお願いなのか?

まず、理事長からのお願いとか普通は無いだろ? 担任ならともかく。

 例えるなら、一兵卒が女王にお願いするくらいに等しいこと。

 ほら、あり得ないでしょ?

「μ'sのマネージャーになってほしいのです」

「え? マ? マネージャーですか? 自分にですか?」

「μ'sは今、この音ノ木坂学院を背負って校外活動をしています。その影響は大いに喜ばしい事ですが、彼女たちには自己管理まで手が回っていません。それに、興行ともなると、そちらにまで手を回すことになり、練習は疎かになり体調管理も出来なくなります。そのような悪循環の中でパフォーマンスをしてもファンに対して失礼でしょう。そこで彼女たちのサポートが必要だと思いマネージャーを付けようと考えました」

「それが、何故、自分が選ばれたので?」

「一ノ瀬君は去年、前の学校で人気のなかった吹奏楽を、自らの発想と努力で部員数を大幅に増やし、地区大会を優勝させた実績があると聞きました。その腕を私は見込んでマネージャーに推薦したのです」

 俺は今年転入して来たばかりの新参者で、去年までは別の学校にいた。

 まさか、その過去の経歴を見られていたとは。

「あれは、自分の提案を飲んでくれた皆の努力のお蔭でして、自分はそんなに大したことはしていません」

 俺は理事長の言葉に謙遜するしかなかった。

 褒められるのは嬉しいのだが、逆にむず痒いと思ってしまう。

「そんなに謙遜しなくても良いのですよ。あなたの腕でμ'sをお願いしたいのです」

 理事長の願いをこれ以上、無下に断ることは出来ないと俺はマネージャーになることに決めた。

「分りました。どこまで力を出せるか分りませんが、やらせていただきます」

「ありがとう。今日からお願い出来るかしら? いつも、屋上で練習していると思いますので。私から追って彼女たちには伝えます」

「はい。では、今日からマネージャーをやらせていただきます。一つお願いがあります」

「何ですか?」

「μ'sの曲の音源などありますか? 会う前に聴きたいと思います」

「ありますよ。たしか、放送室にあると思うので、借りて構いません」

 薄く微笑む理事長の顔に俺は驚きも、内心では美しいと思った。

「ありがとうございます。では、自分はこれで」

 深々と頭を下げ俺は理事長室を後にした。

「マネージャーか……。やるからには生半可ではダメだな」

 俺は放送室へと足を進めた。

 彼女たちの歌声を聴くため。

 

 

「これですね」

「ありがとう」

 手渡されたCDを放送室の音源へと入れた。

「私はこれで、終わったら所定の場所に片づけお願いしますね」

「はい」

 案内してくれた女の子は放送室から出て行った。

俺はヘッドホンを装着して一人集中して曲を聴き始める。

(誰が誰だが分らないけど、良い歌だ。さすが、今話題となっているスクールアイドルの実力だと思う)

 この実力なら普通に上に行けると思う。

 一人一人の声が鮮明に聴こえ上手く混ざり合っている。

 誰一人押し負けてはいない。

 俺は一応、音楽は割と得意な方でピアニストの母を持ち、幼き頃からピアノの音に触れていたのもあり、絶対ではないが音感はそれなりにある。

九人の歌声の中に特徴あり過ぎる声が何人か居るけど、それはそれでこのグループの味を象徴している。

 九人を分けてみるとこうなる。

ふわふわとした声はマシュマロのような感じで癒される声。

 もう一人は、同じ甘い声なのだが、どこか少しビターがありチョコレートを思わせる。

 同じ属性かと思うがそれぞれ甘さが違う。

 次は甘酸っぱい声が二人いる。

 甘い事は甘いが前の二人よりは全然甘くは無く、桃のような瑞々しい甘さ。

 これと似てはいるが違う甘さの子には瑞々しさはないものの、苺のような酸味のある甘さがある。

特徴はさほどないのだが、澄み切っていてどこか可愛い声が聴こえる。

甘さと酸味が程よいバランスを保っているさくらんぼだなと思った。

このような声はなかなか出せない。

 それとはまったく対照的に甘いとかの特徴ではない声が流れて来た。

 何だろう? 独特な味を出している。

 カルピスのようなあの味にしかない甘さがこの声の少女にはある。

 不思議と柔らかい歌声にも聴こえる。

 美しい歌声が二つあるのを確認した。

 どちらも七人の声を下から支えてベースを作っている。

 一人は品のある声であるにも関わらず、ほのかな甘さを滲ませている。

 和菓子の品のある甘さだ。あれは甘すぎず、かと言って甘くない訳でもない。

 絶妙な甘さになっており、それは品のある声の人しか出せない。

それとは別に美しく透き通った歌声が聴こえ、豊かなハーモニーを出している。

全く他者に引けを取らず自らの歌声を誇張しつつも威張ってはいない。

可愛いと言えなくはないが、それより美しい歌声と言った方が相応しい声。

 確実とは言えないが、μ'sの中で一番歌が上手い子だと思う。

 一番多くハモっている声がいるのは出だしから分かっていたが、彼女の声は他の誰にもない素質があると思う。

 その素質は、人を元気にさせ心の底から人を笑顔にさせる力。

 この歌声は素質ある者は少ないだろう。今、彼女がそれを歌声に乗せて俺に届けている。

何度聴いても飽きないと思わせる。

(これは面白くなりそうだ)

 バンバン売り込んで人気者にしてやろう。

 ここで終わってしまうのはもったいない。

 高鳴る鼓動に期待感と熱意を乗せ、俺は放課後に彼女たちに会えることを楽しみに待つことにした。

 

 

 放課後、俺は理事長に教えてもらった通り屋上へと向かうことにした。

 今さらながら気づいたが、誰も顔知らないじゃん!

 ま、屋上に行けば分かるか。

 階段を登り一歩一歩と近づく屋上。

(ちょい、ドキドキして来たな)

 嬉しさの音と緊張の音が重なり合い不協和音を奏でている。

 ふと、上を見ると三人人の少女が談笑して階段を登っていた。

 一人は柿色のショートヘアーで元気一杯に騒いでいる。

 その隣に居るのはブラウン系の髪色をした少女、声は小さいがきちんと相手の話を訊いて言葉を拾っている。

 聞き上手な女の子だと思う。

 左端にいる赤髪の子の言葉は言葉に圧があるものの怒りなどの感情が一切ない。

 どこか可愛らしさがある。

三人が話しているのを下から見ていると、柿色髪の少女が俺の気配を察知したのか俺と眼が合った?

「誰にゃ?」

 キョトンと眼を丸くして訊いて来た。

 にゃって猫かとツッコミを入れたくなるがここは押さえる。

「あなた誰なの?」

 赤髪の少女も俺の素性を訊いて来た。

 おどおどした少女は何も言わないが、眼で俺が誰かと気になっているように思えた。

「すまない。俺はここに転入して来たばかりで、名前は一ノ瀬大空と言う。今から屋上で練習しているというμ'sに会いに行くところなんだ」

「え? 私たちににゃ?」

「え? 私たちって、君たちμ'sなの?」

「そうよ。何か文句でもあるわけ?」

「いや、ないよ。驚いてはいるがな」

 まさか、俺の眼の前にいる三人娘がμ'sのメンバーだったとは。

 こんな偶然があるものだな。

「それで、わ、わ、私たちに何か用ですか?」

 真ん中にいる少女が怯えつつも俺にきっちりと用件を聞いて来た。

 彼女は意外にしっかりとしている子だなと思った。

 おどおどとはしてはいるけど。

「ちょっとね。それは皆が揃ってから言うよ」

「じゃあ、凜たちと一緒に行こうにゃー」

「ちょ、ちょっと、凜! 勝手に決めないでよね。私は一緒に来ていいと言ってないわよ」

「良いから。良いから」

 猫口調の少女は俺の手首を握り走る。

「ちょ、ちょっと!」

 俺は彼女の駆け足に否応に合わせるしか選択肢はなかった。

「あ、待ってよ~ 凜ちゃん~」

「ちょ、凜、待ちなさーい」

 二人も俺の腕を引っ張る女の子の名を叫び駆け足で付いて来た。

 活発で人懐っこいな。

 ―バタン

屋上の扉まで駆け足で登ると、彼女は勢いよく扉を開いた。

「着いたにゃー」

 俺の眼に広がるのは準備体操をしている少女たちの姿。

 この子たちがμ'sか。

 俺は眼を左右にゆっくり動かして彼女たちを見た。

「あなたは同じクラスの一ノ瀬大空さんではありませんか?」

「ああ~。そうだね~。どうしたの? 一ノ瀬君」

「え~と、同じクラスだったけ?」

「転入してきた一ノ瀬さんですよ! 穂乃果、少しはクラスの人の名前くらい憶えて下さい」

 どこかで見たことあると思ったら同じクラスだった。

 いつも、三人一緒にいるのは遠目でも何回か見た。

 紺色にも見える青髪の礼儀正しい少女に、それとは対照的にふわふわとおっとりした少女。

 そこに上手く入り込んだ元気で二人の調和を生み出しているオレンジ色の髪の少女。

「え~と、園田海未ちゃんに南ことりちゃん、高坂穂乃果ちゃんだっけ?」

「そうです。よく分かりましたね」

「いつも三人一緒に居る所を何回か見ていたから」

「たしかに、私たちはいつも一緒に居るよね」

「声を掛けてくれればよかったのに~」

「いや、三人の邪魔はしてはいけないと思って」

 三人はいつも楽しく話している姿を見てそこに入るのは無粋だなと思っていた。

 彼女たちの仲を見ていると、高校から知り合った関係ではないなとすぐに察しも付いた。

「それで、あなたは私たちに何のようなの?」

 赤髪の少女が痺れを切らしたのか、再び俺に用件を訊いて来た。

「そうだった。俺は本日からμ'sの専属マネージャーになった」

「「「「「「えーーーーーーーー」」」

 一斉に驚きの声が屋上を支配した。

「どうゆうことですか?」

「どうゆうことなの?」

「マネージャーってあのマネージャーだよね?」

「何よそれ? 説明しなさいよね!」

「ど、ど、どうしてですか?」

「説明して欲しいにぁ~」

 六人の疑問の声に圧倒され俺は身を少し引く。

 その声は想定していたよ。男一人加入するのは驚くに決まっている。

さすがに六人から一斉に言われると俺も驚くけど。

「理事長からマネージャーになってほしいと言われて」

「お母さんから?」

「お、お母さん?」

 ことりの口からすごい単語が放たれた。

「ことりのお母さんは理事長なのです」

 海未が教えてくれた事実に耳を疑ったが、同時に納得できるふしもあった。

 理事長を見ていた時に誰かに似ていると思っていたから。

 誰だかあの時は分らなかったが、ことりと理事長の顔を脳内で浮かべると似ている。

 ことりの方が眼はおっとりしているけど。

「そうだったのか。誰かに似ているとは思ってはいたけど、まさか、ことりちゃんのお母さんだったとは」

「それで、理事長から頼まれてマネージャーになるの?」

「ああ。男一人加入するのに戸惑いがあるとは思うが、俺も頼まれた以上、全力でバックアップする。これから、よろしく」

「よろしく。大空君」

「私、星空凜にゃー。よろしくにゃー」

 元気いっぱいに笑顔で穂乃果と凜が迎えてくれた。

「よろしくお願いします。大空さん」

「よろくね。大空君」

「まぁ、よろしく。私は西木野真姫よ」

「よ、よ、よろしくお願いします。こ、小泉花陽と言います。大空先輩」

 他の四人も受け入れてくれたけど、一人だけまだ認めてない? 感じだけど。

「これで、全員ではないよな?」

「はい。まだ三年生が来ていません」

「絵里ちゃんと希ちゃんは生徒会で遅くなるかもしれない」

 ことりは少し思案げな顔をして言った。

生徒会の人もスクールアイドルしているのか!

 忙しくないのかね?

「そうか。俺も一回教室に戻る。持ってくるものがあるから」

 俺は一旦、教室へと走って行く。

 

 

「メモ帳とペンと」

 これから練習するにあたって、いろいろとメモしていくため持参する。

 マネージャー何てやっとことないのに理事長は何でマネージャーに指名したのだ?

 吹奏楽でピアノとたまにギターをしていただけなのに。

 売り込み作戦は俺の発案と皆の行動で部員を増やしただけ。

 説明すると俺が徹底的に公演場所を探しお願いしたり。

 部員全員でビラを配ったりと出来る限りのことをした。

 後は、俺たちみたいな若者向けの曲を積極的に取り入れたり、МCを交えたりとあらゆる方法を取り入れただけ。

 だから、マネージャーの仕事なんて分らない。

 手さぐりでやるしかない。

今さら、やっぱり辞めますなんて言えないし。

 眼の前から二人組の少女が向かって来るが少し駆け足。

 ブロンドのポニーテールの少女に、薄紫色のツインテールの少女。

 いや、背丈は俺の方が高いが二人ともお姉さんの色気がある。

「今日も長引いてしまったわ。皆もう練習しているかしら?」

「まぁ、そんなに急がなくても良いと思うで、たぶん、まだ、練習してへんと思うよ」

 階段を登ると二人も俺の横を通り過ぎて階段を駆け登った。

 まさか? この人たちもμ'sの一員か?

 俺と同じく階段を登って行く姿を見てそう予感した。

 俺の予感は見事的中して屋上の扉前まで一緒だった。

「あれ? 君、さっきから後ろにいるけど、うちらに何かようなん?」

 薄紫の少女がふと振り向きキョトン顔で俺を見て来た。

 可愛いく同時に魅力的な色気も出していた。

「ええ。あなたたちもμ'sの一員で?」

「そうよ」

「自分は一ノ瀬大空。本日付でμ'sの専属マネージャーになりました」

 いつの間にか敬語で話していたが、彼女たちが年上だと何となく分かる。

 二人が出している清廉さと魅力がそれを語っているかのように。

「マネージャー?」

「それは、自主的に希望してマネージャーになりたいのかしら?」

「いえ、理事長からのお言葉です」

「理事長が言うたん?」

「何故、理事長はマネージャーを付けることにしたのかしら? 大空は何て言われたの?」

 ブロンドの少女が難しい顔で訊いて来た。

「話します。とりあえず、皆さんの所に行きましょう。扉越しで話すのもなんですから」

「そうやね」

 俺たち三人は扉を開けて屋上へと足を踏み入れた。

 さっきまで話していた六人に一人黒髪のツインテールの少女が準備体操をしていた。

「絵里ちゃん。希ちゃん。大空君と一緒に来たんだね?」

 穂乃果が呼んだ二人の少女の名前、それが判明してもどっちがどっちかは分からない。

「ずっと、後ろに付いて来ていたんや」

「彼がマネージャーになるってこと皆は訊いた?」

「訊いたよ。ね?」

「はい。最初は驚きましたが理事長が決めた事なので」

「お母さんは何か理由あって決めた事だから、良いかなって?」

「凜もいいにゃー」

「き、緊張するけど私も良いかかなと」

 俺を受け入れてくれる四人だが、真姫と黒髪少女が……。

「私はあまり賛成じゃないけどね」

「訊いてないわよ! どうゆうことなの?」

 黒髪少女が一人、何も訊いていないと憤りを露わにした。

 苦笑いを浮かべ俺は黒髪の少女を見る。

(そんなに怒らなくとも)

「今から自分が説明します。集まって下さい」

 俺の指示で九人は一か所に集まった。

 ふぅ~と一呼吸をして理事長からマネージャーに指名された経緯を話す。

「理事長からマネージャーになって欲しいと言われたのは、自分が前の学校で吹奏楽部を立て直した事を評価としてくれた事、同時にμ'sを今後一層に学校を代表するスクールアイドルとして欲しいという願いがあるからだと。しかし、それには大きなリスクも生じます。多忙になれば自己管理および体調管理が疎かになるというリスクです。君たちは歌やダンスの練習に熱を入れてしまう恐れがある。それが、理事長の考える心配事です。そこを全面的にバックアップしμ'sの人気も上げる事を自分にマネージャーとしてお願いされました」

俺は熱を入れて彼女たちにマネージャーを頼まれた経緯を説明した。

 九人は誰一人口を挟む者はいなく、俺の言葉に耳を傾けていた。

「そのような理由があったのとは。理事長も私たちに期待していると言うことね。私は大空をマネージャーになってもらうことに賛成だわ。私は絢瀬絵里。よろしくね」

 一瞬、ブロンドの少女が考え込む顔したが、すぐに、口元を緩ませ俺を見て自己紹介をした。

その顔には美しさと可愛さが調和していた。

「えりちが良いなら。うちもええで。うちの名前は東條希」

 隣に居る豊満な双丘の希さんも受け入れてくれた。

「そうだね。私も賛成だよ。大空君がマネージャーなら楽しくなりそう」

 さっきまで、俺を知らなかっただろ! とツッコミを入れたい。

 穂乃果の眩しい微笑みを見てしまい、その気は一瞬にして泡となり消えた。

「私も賛成です。普段、私たちが知らず知らずに疎かにしていた部分がマネージャーの視点から見えてきますし訂正も出来る余地も増えますからね。あとは、私たちが手が回らない部分をやってくれると思いますので」

 海未も賛成しそれに付け加え的確にマネージャーが居た方が良いと利点を説き、何だか過剰な期待も込めてきた。

「私もマネージャーが居たら良いかなと思う」

 笑顔を俺に向けてことりは言った。

 ことりの笑顔って屈託のない笑顔だな。

 同世代の二年生から歓迎された。

「面白くなりそうにゃー。凜も賛成だにゃ」

「男の人がいるのは緊張するけど、わ、私も良いと思う」

 猫ちゃんとリスみたいな可愛い子も加入を良しと言ってくれたが……。

「私はあまり賛成ではないけど、皆が良いと言っているから良いじゃないの?」

 髪をクルクルと指で悪戯しながら曖昧な答えを出した。

(お嬢様みたいなだな)

何とも絡みにくいなと思いつつも、とりあえず、慣れていくしないと思った。

 嫌われていないだけ救いなのかもしれない。

「まぁ、この宇宙ナバーワンアイドル矢澤にこちゃんのサポートをしてくれるなら良いわよ」

 おおー。いっよ! 矢澤にこ。輝いてるよ。とツッコミを入れてみたい。

 まだ、初対面なのでするわけにはいかないけど。

「ありがとう。これから、よろしく。やるからには全力でやるぞ!」

「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」

 ここから始まる俺のマネージャーとして彼女たちμ'sを最高のスクールアイドルにするストーリーが。

 

 

始まりを告げたμ'sのマネージャーとしての大空の活躍の前に。

サイドストーリーをお楽しみ下さい。

 

 何だか楽しくなるかも

(穂乃果ストーリー)

 

 高坂穂乃果は一人自室でウキウキと気分が高まっていた。

 マネージャーとして入って来た一ノ瀬大空の事を考えていたからだ。

「大空君がマネージャーとして入るんだ。何だか面白くなるかもね」

 彼女は大空と同じクラスだったが、存在すら最初は知らなかった。

 気にしていなかったわけではなく、彼女は授業中良く居眠りをし、休み時間は海未とことりと三人で談笑しているため大空の存在を忘れていた。

「具体的に何をするんだろう? 海未ちゃんがいろいろ言っていたけどイマイチわからない」

 首を傾げ考え込む穂乃果。

 右に左にと首を傾げても答えは出てこず時間だけ過ぎる。

「う~ん。ライブの手伝いかな? それとも、練習の指導かな?」

 当たらずも遠からずの答えが出たが限界が来ている。

 脳内の汽笛がなりそう。

「あ~、分らないよ~」

 勢い良くベッドに大の字になり考えるのを諦めた。

「お姉ちゃん。どうしたの?」

 何の許可もなく一人の少女が襖を開けた。

「あ~。雪穂~。マネージャーってどんなことするの?」

 穂乃果が少女にけだるさそうな声色でマネージャーの仕事内容を訊いた。

 雪穂は穂乃果の妹で姉とは対照的に利発そうな顔立ちをしており、姉の穂乃果よりしっかりしている。

「マネージャーの仕事? それは部によって違うと思うけど。主に部活のサポートをしてくれるんだよ」

「それは分ってるよ~。実はね」

 穂乃果はμ'sにマネージャーが来た事を雪穂に説明した。

「ふ~ん。その人が言ったのはμ'sの人気を上げるために、活動を増やしたりすると言っているんだと思うよ。それに、お姉ちゃんたちの体調管理も徹底して見ていったりと」

 その場にいない雪穂の方が大空の仕事を理解しているのはおかしな話だが、それを、姉に丁寧に説明した。

「おお~。それじゃ私たちはこれから頑張らないといけないね」

 単純明快な答えを導き出した穂乃果に雪穂は分かっているのかなと不安を覚えた。

「よーし。何だか楽しくなりそう」

穂乃果は期待と楽しみを胸に、これからのμ'sの活動に燃えていた。

 

 

男の人がマネージャーに

(海未ストーリー)

 

夜の帳が空を包み静寂を生み出し、主役である月が暗がりの空に輝きを演出している。

その舞台を縁側で座っている一人の少女がいた。

長く下ろされた紺色とも言える青髪に、気品と可憐を併せ持つ顔立ちが特徴的。

その姿は風情と着物が似合う日本人だけが持つ和の美しさがある。

 少女の名前は園田海未。

「男の人がマネージャーですか。口では賛成しましたが緊張しますね」

月に語り掛ける様に海未は呟いた。

 大空がマネージャーになることに賛成したのだが、今になって後悔に近い思いが出て来ていた。

 大空が嫌とかでなく男が加入することに緊張がある。

 今まで男の人と話したことが無い海未には、男という生き物が怖いかもという不安が襲っている。

「これから、大空さんと話す機会が多くなりますが、話せるのでしょうか?」

 自分に不安を抱えながら、これからどうしようと悩む。

「話さないと言うのも失礼ですし避けるのもダメですよね」

 対策を考えても礼節に厳しい彼女にはどれも失礼だと思うため却下とされる。

「もし、二人きりとなってしまったら……。わ、わ、私は何を想像しているのですか! は、は、は、破廉恥です!」

 真っ赤に顔を沸騰させながら邪な心を抱いた自身を叱咤しつつ、その心を無にするため首を左右に振った。

「はぁ~。今さら反対する訳にもいきません。どうしましょう?」

 溜め息を漏らし夜空に問い掛ける。

 当然、答えなど返ってくるわけでもなく、月だけが純情乙女の心を何も言わず見守っているように輝いていた。

 

 

 そら君がマネージャーになった理由

(南ことり)

 

 リビングの机で少女は白いマグカップの中にある甘いカフェモカを飲んでいた。

 ほぐした髪はいつも結んでいる姿に引けを取らないほど少女の可愛さを一層引き出している。

少女の名は南ことり。

おっとりとふわふわした女の子。

彼女の向かい側には、その性格には似つかない母が座っていた。

学校で見せる顔ではなく、母である顔を娘に向けていた。

「お母さん。そら君から話を訊いたけど、どうしてマネージャーにしたの?」

 理由は分ったが、ことりは母の考えを知りたかった。

「前の学校の功績もそうだけど、これから興行も増えいろいろな問題が起こり得る。それに女の子である貴女たちが対応するのは心配なのよ」

「心配?」

 ことりは何が心配なのか分からず眼を丸くして首を傾げる。

「一層に多忙になり健康管理も心配だけど、それよりも、興行の交渉事に何かと男の人の方が有利なのよ。彼はその能力もあるから彼にマネージャーを頼んだの」

 大空の男性だと言う強みと交渉事に長けている事をことりに説明した。

 納得したようにことりは母の話に大きく頷いた。

「そうなんだ。ありがとう。お母さん。これから、そら君と一緒に頑張るね」

 無垢な笑顔を見せる娘に、母は慈愛に満ちた顔で眺めていた。

 

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