夏色1・2えがおでJUМP
初夏の訪れを感じさせる風が鼻孔をくすぶる。
廃校を阻止するために作られたスクールアイドルμ'sのマネージャーとなり一週間。
カリキュラム通りに練習をしていき成長していると思う。
今日もいつもと同じ練習なのだが、俺は部室前で待っている。
お着替え中なのですよ。俺は秘密の部屋で着替え完了している。
この先には禁断の花園がある。その誘惑に負けないように今日の練習ノートを出す。
ここ音ノ木坂学院は女子高。
俺がここに編入されたのは理由がある。
理事長は実は俺の母親とは随分長い友達らしい。
昔は会っていたが、今は互いの仕事上の関係で数十年は顔を合わせてない。
俺がここに来たのも理事長の厚意であり、廃校の学校を立て直すきっかけの一部だと。
μ'sの力でオープンキャンパスの人が増え、廃校の恐れが免れつつある。
その一押しにμ'sのマネージャーをして学校の生徒を増やす目的と、俺が編入して男子も入れるアピール。
一石二鳥のうま味があると理事長はお考えのようだ。
俺は良く言えば救世主の片翼、悪く言えば良いように使われていると。
ちなみに、ことりとはよちよち歩き時代に一緒に遊んでいたらしい。
母さん情報、覚えてないけど。ことりも知らないだろう。
「大空、入って良いわよ」
お姉さんの声こと絵里先輩の声とともに部屋のドアを開ける。
「皆、そろそろ本格的に新曲作りに取り組もうと思うのだが。いろいろと決めたい事がある」
「決めたい事ですか?」
「センターは私って事よ」
勝手に自分をセンターと決めているにこ先輩は置いといて。
「もうそろそろ夏が近い。それで夏をテーマにした曲を作ろうと考えている」
「いいですね。季節感に合った曲はファンの皆様にも受けが良い物です」
「穂乃果。一つ頼みがある」
「ん? 何?」
首を傾げて眼を丸くして俺を見た。
「センターの素質は穂乃果が一番だ。それは断固譲れない。が、穂乃果以外にもセンターをしてもらいたい。センターは誰でも輝ける場所であり、夢を与えられる場所でもある。それを味わってもらいたいのだ」
「私、センターの素質あるの?」
穂乃果は俺の言葉をまだ飲み込めず驚きを隠せてない。
「センターは人を喜ばせ夢を与え元気を与えられる。それは、センターした者が出来ること。だが、センターという場所を輝かせる者はそんなにいない。それは生まれながらの素質というものだ。それが備わっているのは穂乃果。君だ。穂乃果は自分では知らないと思うが、センターで歌っている時、センターを輝かせている。その輝きは太陽と同じくらいだ。これは、誰にでも出来る事ではない。いや、穂乃果しか出来ないだろう」
皆の前で堂々と穂乃果がセンター素質があると公言したが。
「え、私、その」
穂乃果は言葉が見つからずにしどろもどろ。
「大空は穂乃果をかっているのね。でも、それは、私もそう思うわ」
絵里先輩も俺と同じ穂乃果がセンター素質あると見抜いていた。
「たしかに、穂乃果の声は自然と元気が出ますね」
「うんうん。ほのかちゃんがセンターで踊っていると、なんか、安心する」
幼なじみ二人も同じ思いでいた。
他のメンバーも皆、眼でそれを言っている。
「だから、センターは穂乃果が一番として。他のメンバーにもセンターをやっていく方針を取る。良いか? 穂乃果」
「うん。全然いいよ。皆もセンターで歌って踊ってほしい。穂乃果だけセンターをやるのは不公平だもん」
「決まりだな。次の曲のセンターは」
皆、俺の顔を期待と不安を滲ませた顔で見つめている。
皆、心のどこかでセンターをしてみたい気持ちはあるのだと思う。
一名だけそう思ってないかも。
「今回のセンターはにこと、絵里だ」
「そうよね。私以外いないわよね。って、え? わたし―――――」
「そうだ。いけるか?」
「いけるででしょ。わわわ私はセンターでこそちち、力を発揮するのよ」
にこ先輩は噛み噛みで動揺している。
「もう、何言っているか分からないわよ」
真姫の言う通り、そんなに気負いせずに。
「絵里も、もう一曲の方をセンターとして起用する。大丈夫か?」
「正直、緊張はするわ。ちゃんと出来るかしら」
絵里は不安を隠さず顔に出していた。
「二人とも出来るさ。必ずな」
親指を立てて見せる。
「頑張ってみるわ」
「わわ、私は言われなくとも一番、皆より目立って見せるわ」
とりあえずは、二人のモチベーションは大丈夫だろう。
何かあれば、色々とアドバイスや思いを訊いてみるけど。
「次にその新曲をイベントで発表することになった」
『ええええええええ―――――――』
「ちょっと、大空、訊いてないわよ!」
「今、言ったもん」
「何が今、言ったもんなのよ。もうちょっと、早く言いなさないよね」
にこ先輩が怒気を含んだ声が部屋に響いた。
「さすがに、もう少し早く言って欲しかったわよ。私、今から緊張してきた」
先輩二人に怒られてしまった。
「昨日、決まったんだ。すぐ、知らせるべきだったね。ごめん」
「でも、センターは変えないつもりでいる。それは、もう決めた事」
俺は軽くセンターを決めない。自分の中でイメージした曲を誰に歌わせるとマッチングするか入念に吟味しているから。
九人の中で誰が歌っても違和感はないのだろう。だが、それではダメなのだ。
ピッタリとパズルのように合う者ではないと曲が生きない。
それが、今回はにこ先輩と絵里先輩の二人。
「仕方ありませんね。もう、決まった事ですし、皆さんやりましょう」
「大丈夫だよ。にこちゃん。絵里ちゃん。全力で歌って踊ればいいんだよ」
さすが、センター穂乃果。二人を鼓舞する一言を言ってくれました。
「にこっち。えりち。大丈夫やで。二人なら出来るん」
希先輩も後押する。二人にとって彼女の言葉は大きい。
「ありがとう。希」
「頑張ってください。絵里ちゃん。にこちゃん」
「絵里ちゃんは出来るにゃー。にこちゃんは頑張るにゃー」
「ちょっと、そこ私も出来るわよ!」
「さっきまで噛んでたくせに」
真姫はいつもの本音を漏らす。
「まぁ、まだ先だから今から緊張してもしかたない。あと、もう一つあるのだが……」
何だろう。この重い一言。これを言ったら俺の立場が危うい気がしてならない。
冷や汗が背中から流れそう。
「衣装がな……」
「衣装がどうかしたの?」
凜がキョトンと首を傾げて何を躊躇っているのかと眼を丸くする。
「もったいぶらないで、早く言いなさい」
まだ、口から出す言葉を出せずにいる俺に、にこ先輩がわずかな怒気を孕んだ声で言ってきた。
「……実は衣装は水着なんだ」
『み、み、水着――――――――――――――――』
分かっていた反応だっただけに、俺はため息を零す。
(俺も先方から訊かされた時は驚いたし、妥協点も出したが、夏を彩るイベントだからと水着になってしまった)
「予算は厳重に保管してある。皆には休日か練習のない日に水着を見に行ってほしい」
学校にその資金は預けてあるから問題はない。
「水着のまま歌うのは恥ずかしです。誰か助けて―――」
「みみみ、水着で歌う、ははは、破廉恥です!」
「さすがに、恥ずかしいわね」
花陽と海未はもう沸騰しそうな勢いの赤面。
さすがの絵里先輩も頬を桃色に染め、少し身を捩じらせ恥ずかしさを現している。
「水着は少し恥ずかしいかも」
「そうだよね。私も恥ずかしいよ」
ふわふわとしていながらも、あまり動じないことりも、何事もポジティブで考える穂乃果でさえ恥ずかしさを出していた。
「皆の恥ずかしさは分る。出来ないのなら断ることも出来る」
強制はしない。本人たちの意思を尊重してやるべきだと思うが、本当は出てほしい。
下心とかではないと……思う。 それよりも、イベントとかに地道に参加することでファンの獲得に繋がるから。
「私はやっても良いと思うで」
意外にも希先輩は出ると意思を表明してきた。
いつも、皆の意見を総合的に訊きそれに賛同するのに。
「希はどうしてやって良いと思う?」
「私も恥ずかしくない訳ではないで、でも、色々と経験しないとラブライブ出場も厳しくなると思う。今のうちからこのようなイベントにも参加してファンを集めるのも必要だと思うたから」
今の恥ずかしさより、後の公開を見ている希先輩の眼は炯眼だと感心した。
「すごいな。俺もそこまで考えてなかった。希の言う通りかもしれない。今の恥ずかしさより後の後悔の方が失うものが大きいかもしれない」
「後の後悔とは何にゃ?」
「ラブライブ出場を逃すことだ!」
俺の言葉に一同がはっと驚いた顔を見せたが、まだ、浮かない顔が残っている。
「たかが、イベントの一つ二つ逃してもファンが増えるのも微々たるものだろう。だが! 1000より、1001人のファンを獲得するためにイベントなどに出ることが大切だ」
俺は彼女たちに羞恥というリスクを負わせるが、それも、マネジメントのためだ。
嫌われるかもしれないが、彼女たちがラブライブ優勝出来るのなら安い。
「やろう。皆、恥ずかしいけど、私たちの歌を聴きたいファンのためにやろう!」
「そうね。やりましょう。ファンのために」
「そうだね。皆でやれば恥ずかしくないよね」
俺の声より今回は希先輩の声が大きかったな。
それにしても積極的だったな。
「でも、水着はどうするの?」
凜が俺に素朴な質問をしてきた。
「それは、自分たちで決めていいらしい。その資金も貰い受けている。今は理事長に管理してもらっているけど」
公費だから理事長に預けないと俺が危ない。
「自分たちで好きな水着を選んでくれ。その水着の価格をあとで俺に報告してくれ。後でそれを換算して皆に渡すよ」
「何言ってるのよ。大空も一緒に行くのよ」
「え?」
耳を疑う言葉が絵里先輩から言われた。
「いやいやいや、俺、男だよ。メンズだよ。それはちょっと」
「そそそ、大空も来るのですか?」
海未が俺に迫るように問い詰めてくる。
顔が怖いよ……。
俺も訊きたいくらいだから放してくれ。
両肩を持ち揺さぶりをかけてくる。
「どれが、似合うか見てもらうのも良いやん。そらっちも見たいやろ?」
希先輩悪戯な笑みで言っているが、正直にうんとは頷けないよ。
「大空先輩が一緒に来るのは恥ずかしいですよ~」
花陽は赤面して縮こまっている。
「俺はパスするよ。さすがに、皆の水着選びに行くのはね」
手のひらを出し遠慮すると宣言する。
「一緒に行こうよ~。私たちの水着を大空にも選んでほしいよ~」
「うん。そら君に選んで欲しいな~」
「私は一人で選ぶから別についてこなくても良いわよ」
穂乃果、ことり、絵里先輩、希先輩? が一緒に行こうと誘って来るけど、真姫は反対者。
今回だけは真姫に俺も賛同します。
「ダメだよ。一緒に行くんだよ。だって、マネージャーでしょ?」
「そうよ。これもマネージャーの仕事よ」
穂乃果の思いつきの判断がこんな所で凶器になるとは。
痛い所を突かれてしまった。穂乃果の言葉に何も言えねぇ。
それに加え、絵里先輩の畳み掛けがきたものだから。
「まさか、穂乃果の言葉に負けるとは」
「も~、それ、穂乃果のこと馬鹿にしてるでしょ? 穂乃果だってちゃんと考えてるんだよ」
頬を膨らませ怒ってしまった。
「わかってるよ。それだから今まで来れたんだしな。マネージャーの仕事として一緒に行くよ」
折れるしかないと判断し、一緒に水着選びに行くことを決した。
(ポケットティッシュ大量に持っていかないと)
「ほほほほ、本当に大空も一緒に来るのですか?」
「そうゆうことになってしまった」
「恥ずかしいですー。誰か助けてー」
恥ずかしがり屋の二人は俺が来ることに動揺と混乱の中で叫んでいた。
初夏の訪れとともに眩しい太陽の下、俺は一人コーヒー片手に立っている。
気温はそこそこで23度。天気予報情報。
今日は男にはハーレムとしか言うようにしかない日。
μ'sのメンバーと一緒に水着を選ぶ。
血の雨にならない様にポケットティッシュは多めに常備した。
「お待たせ―」
聴きなれた声が右から聴こえ振り向くと。
ロシアの妖精が俺の許に舞い降りてきた。
「待ったかしら?」
「いえ、自分もさっき来たので」
妖精の名は絢瀬絵里。
ブロンドのポニーテールに見事なスタイルが魅力的な女の子。
モデルの域のスタイルだと俺は思う。
「こーら。先輩後輩はなしでしょ」
人差し指で俺の額を軽くポンっと叩いた。
(絵里先輩――――――。俺のハートを撃ち抜かないで―)
「すすす、すみません」
「こら、また」
ダメだ。可愛すぎる。
制服姿ではなく私服の絵里先輩は新鮮すぎて俺の心は動揺している。
膝まである黒いスカートにモノクロのボーダーシャツ。
シンプルであるが、絵里先輩は完璧に着こなしている。
(普通にパリコレ出れるぞ)
絵里先輩の私服姿を見て思う。
「そ、そんなに見られたら恥ずかしいわ。ど、どうかしら?」
横顔で恥じらう様に聴いて来た。
可愛すぎる。やばい。
いつも、凛々しくしている絵里先輩も、今は恥じらいの姿を見せている。
「とても似合ってる。綺麗だよ」
「そ、そうかしら」
照れている仕草が男心を桃色に染めてくれる。
「絵里、大空も来ていたのね」
次に来たのは西木野のお嬢(真姫)だった。
サスペンダーがワンアクセントとして目立つ赤と黒をチェックシャツに黒いスカート。
俺的にもっと華美で値の張る私服を着て来るのかなと思ったが、意外にカジュアル系。
「何よ。じろじろ見て」
睨むような視線で俺が見ている事に文句を呈した。
「いや、似合ってるなと思って」
「あ、当たり前でしょ!」
ツンッとして眼を逸らされてしまった。
(また、嫌われてしまった)
何度も声かけても、ネコが威嚇して爪で引っかくような感じ。
「せっかく、大空が褒めたのだから、真姫も素直に喜んでいいのよ」
「わ、私は別に」
素直じゃないな。
「遅くなってすみません」
背中から声が聞え振り向いてみると。
海色のスカートに水色カーディガンだが、インナーには純白のシャツが二色を調和している。
(海未は清楚だな。すごく綺麗だ)
「そ、そ、そんなに見られてしまうと……」
「いや、見惚れていたんだ。綺麗だと」
「ききき、綺麗! そそそ、大空はなな、何を言っているのですか!」
「いや、正直な感想だぞ」
「きき、綺麗、わわわ、私が?」
「そうだ。綺麗だ」
「ああ、は、破廉恥です」
真っ赤になった海未は自身を見失っているような気がしてならない。
「遅くなっちゃったよ~」
甘味な味わいがする声が海未の後方から聞えて来た。
白と赤のガーリー柄にピンクのシャツ。
いかにも、ことりらしく可愛くも乙女チックだ。
「ことり。可愛いな。スカートがオシャレだ」
「ほんとう~? これはお気に入りのスカートなんだぁ~」
「ことりに似合うと思う」
「大空君に言われると照れちゃうよ~」
あとは、にこ先輩。希先輩。花陽。凜。穂乃果だな。
さて、次は誰が来るかな?
「遅れたにゃ~」
お、子猫が一人元気よく走って来た。
意外だ。俺の予想は花陽か希先輩が来ると読んでいたのに。
(意外に凜はしっかりしているかもりれないな)
待ち合わせ時刻2分遅れだとしても。
「おおー。凜。早いな」
「でも、少し遅刻しちゃった」
「2分ぐらいだ。気にするな」
デニム柄のハーフパンツに黄色いパーカー。インナーには白いシャツが見え、その白シャツに描かれている猫が可愛らしい。
「ボーイッシュだが可愛いぞ。凜。なかなか似合う女の子はいないからな。凜だからこそ似合う」
「そ、そうかな? えへへ。嬉しいにゃん。大空君もカッコいいね」
凜は桃色に染めた顔で俺の私服姿を褒めてくれた。
ちなみに、俺は明るい土色をしたズボンに白シャツ。アウターとして羽織っているのは、七分袖の紺色のシャツ。
まぁ、慣れ親しんでいる服で愛着が強い服でもある。
そうこうしているうちに、残りのメンバーもやって来て全員集合した。
皆、可愛らしい服で俺が彼女たちと、これから買い物をするとは。
(これがハーレムというものか。世の男子高生たちよ。俺は超絶リア充を満喫する。恨まないでほしい。たぶん、無理な話だけど)
「では、行くか。といっても、俺は皆が行く店は知らないから、今日は皆が俺を先導してくれ」
「じゃあ、いっくよー」
「ちょ!」
穂乃果が急に俺の手を引っ張り駅へと走り出した。
「穂乃果ちゃ~ん。待ってよ~」
「ほ、穂乃果! 待ちなさーい」
「いっくにゃー」
ことり、海未は穂乃果の急発進に戸惑いと注意の声を漏らして後を追った。
凜は穂乃果のテンションにノリノリ。
あ~。俺は今日の夕日を拝めるのだろうか?
こんなハイテンションの始まりで九人の相手をしなければならない。
ハーレムとは疲労困憊という四文字熟語がついてくるものだと思い始めた。
渋谷108まで来たが、ここは、女の子のファッション聖地。
トレンドに聡い女子が集い、日々、ファッションの最先端を行っている女の子しかいない。
ここで、水着を買うとは。男の人口は少ない。
俺はどんな眼で見られるのだろう? まぁ、良くはない印象なのは確実。
(安請け合いすべきではなかった……)
彼女たちの後方で一人後悔して歩く。
「大丈夫ですか? 大空さん」
俺の隣に花陽がいつの間にか隣を歩いていた。
存在感もっと出してくれ。ビビるよ。
「大丈夫だぞ。それより、先輩後輩禁止なんじゃないか?」
「あ、そうですね。マネージャーさんだから。つい、出てしまいます」
「せめて、「さん」付けは直そうな。俺もさん「さん」付けは距離を置かれているようなきがして。寂しいし」
「ご、ごめんなさい」
「謝らくていいさ。花陽は真面目だからそうなってしまうのはわかってるさ。少しずつ変えていこうな」
「はい」
花陽らしいのか分からないが、花陽のファッションは他のメンバーと比べると落ち着いている。
ベージュのスカートに淡い白とピンクのチェック柄の長袖シャツ。
「その服似合っているぞ」
「え、あ、その、こ、これはーー」
一気に花陽の顔が紅白の白から紅に色替えしだした。
「あ、ありがとうございます。大空さ、大空君もカッコいいですよ」
「ありがとうな」
何も考えずに花陽の頭を撫でてしまった。
「あ、すまん。つい」
俺は自分が今、行っている行動に自責と後悔が襲い手を離した。
(気安く女の子の頭を撫でてしまった~)
自分の行動が今さらながらも軽率だと思った。
花陽にふと視線を向けると、彼女の顔は上目遣いで俺を見ていた。
その顔は全く俺の行動に怒気を含まず、むしろ、甘えているような顔でもあるが、俺はどうしたのかと疑問を訴える顔に見える。
「う、嬉しかったです」
「ん?」
ただでさえ、声が小さい花陽なのに、今、花陽が何か言ったが聴き取れなかった。
おまけに、俯いて言った言葉だから、なお更、聞き取れない。
「何でもないです。さあ、行きましょう」
「ああ」
笑顔の花陽が天使に見える。
マジ、エンジェル!
109店内の水着が置いてある店舗前に俺は一人立っている。
男の俺には眼の眼福といった所だが、迂闊に眺める訳にもいかない。
周りは敵だらけだ。どんな眼で見られるか分からない。
ここに居る時点でもうすごい眼で見られていると思うけど。
眼を泳がせて水着を見ると……。
「やばい。すごい水着がいっぱいだ」
唖然と驚愕が混じり俺の眼を止めてしまった。
布面積が少ない物から紐まである水着。
(こんなものは彼女たちには着させられない)
マネージャーとして許すことは出来ない。
華も恥じらう乙女たちだ。
このようなモノは首を横にして拒否することが俺の勤め。
それにしても、やっぱここで一人待たされるのは苦痛だな。
俺の気持ちなどお構いなく皆、水着を選んでいるけど。
今になって思うことが一つ。
俺が選ぶ必要性があるのか?
俺は男だ。遥かに女の子同士で選べば間違いがない。
男目線で選べば、まぁ、男には喜ばれるが、女の子はどう反応するか分からない。