きんいろモザイク ~THE GOLDEN STORY~ 作:legends
気がついたらうわあああ! 一年と半年以上も期間を開けてしまったから読者の皆様を待たせてしまったぁぁぁ!!
え? 別に待ってなんかない? ていうか前置きはいいから、一年半以上もほったらかしにしてたんだからはよ執筆せえや? ……いやほんとその通りです。
まともに執筆せずに迷走していた訳ですから、読者の皆様には自分の小説を待っていなくてもいいとはいえ、やはり何かしら書かないと失踪したかと思われます。申し訳ございませんでした。
という訳で、前置きが長くなりましたが、今回は夏から秋にかけてのお話です。どうぞ。
「あれはわたしとカレンがベンチに座っている時だったの……」
「え、待っていきなり何その流れ」
「という訳で回想スタート!」
「聞いて!?」
「ねえねえ、あの子達って姉妹かなー」
それはふと、わたしがカレンと一緒にベンチに座っていた時、道を歩いている人達にそう言われていた。
他にも「そっくりー」だとか、「どこの国の人?」と言われていた。
別に悪口とかそういうものじゃないから悪い気はしないけど。
「日本ではわたし達よく姉妹に間違われるねー」
「きっとアリスがちっちゃいからデスね!」
そうわたしが言ったら、カレンが小馬鹿にしたように笑いながら言った。
「えっ?」
「同い年に見えないデスー」
カレンにそう言われてちょっとムッときた。
「なっ、何言ってるの、お姉ちゃんはわたしだよ!」
「えーっ、アリスは妹デスよ!」
「違うよわたしがお姉ちゃん!」
そう言い合っている内にざわざわと人混みができた事を知ったのは、わたし達が落ち着いた後だった。
「…………と、夏休み中こんな事があったんだけど!」
「そ、そうだったのか」
本当にいきなりだった。アリスがナレーションっぽく回想を始めたと思ったら、夏休み中に起こった出来事だった。
しかし、どちらが姉かについて言い合ってたのか。素朴な疑問だがどちらが姉かと言われれば―――。
「うーん、多分誰に聞いてもアリスの方が妹って答えると思うなー」
今の考えを代弁するかのように陽子が言った。アリスには悪いけど。
「そうね。可愛い妹……みたいな」
「ほらーっ! 妹デス!」
綾やカレンも同意していた。逆にアリスは困っている表情だった。
「全世界の妹……」
「全世界の!?」
忍が目を輝かせながら言った言葉に、思わず俺が反応してしまった。
「ケンはどうなの!?」
おっと思わず俺にも意見を求めてきた。
「悪いけど、俺も妹かなって思う。ていうか、なんでそんなに姉にこだわるんだ?」
「だって……だって昔は……」
「健君、小さい頃はアリスの方が大きかったんですよ。写真で見ました」
アリスがどう言おうか困っていると、忍が代わりに話してくれた。
そうだったのか、小さい頃は自分が大きかったからそれを譲らないと。
「昔は泣きながらわたしの後ろをついてきたのに!」
……前に自分もその事に似たような事があったから、何か想像できちゃうな。
「…………。もーっ、こんなに大きくなっちゃって! おねーちゃんは悲しいよ!」
「?」
と、アリスが何か考える間があった後、カレンに向けてそんな事を言った。言われた当人は疑問符を浮かべていたが。
てか、今の間は何?
✩✩✩
「最近日本語に慣れすぎて、英語がカタコトなんデスよー」
「そんな事ってあるのか?」
カレンがふと、そんな事を言ってきた。ごくたまに英語を話している場面はあるが、別にカタコトでもないような……。
「でもカレンは日本語もカタコトよね」
確かに綾の言う通り。まだ何処か不自然な感じがするというか。
「何語なら上手く喋るんだよー」
「陽子、そう言ってやるなって」
何かちょっと煽りに聞こえた笑いながら言う陽子に軽く忠告。
が、カレンがちょっと考える素振りをすると。
―――場所は変わって図書館。
「アリスー、勉強教えて下サイー」
「いいよ。何の教科?」
「英語」
「えぇー!?」
というやり取りがあったとか。
ハーフとはいえ、笑いながら言う事じゃないでしょカレンよ……。
実はついこの間、テストがあったのだ。その答え合わせついでに図書館に来ている、という訳だ。
意外な事にカレンが英語の点数が低かったらしく、こうしてアリスに教えて欲しかった……らしい。
「カレンったら解答欄ずれて答え書いちゃってるよー」
「せっかく合ってるのに!」とテスト用紙を見ながら言うアリス。確かにそれは勿体無いな。
「アリスは頭良いんですよねー」
忍の言う通り、綾と同様に成績が優秀だ。こないだのテストでも良い点を取っていた。
「アリススゴ~イ!」
「!」
忍が言った事を受け止めたカレンが、目を輝かせながら素直にアリスを褒めた。
多分だけど成績は自分の方が上、と思っていたのかアリスはえへへと照れてはいたものの―――。
「私も一緒に勉強します!」
てへへーと忍が笑いながらテストプリントを持ってくる。
「シノ、私と同じところ間違ってマス!」
「本当ですねー」
きゃあきゃあと笑いながら言い合う二人。いやそんな笑い事になんないとは思うんだけど二人共……。
「辞書取ってくる!」
しゅんと落ち込んだ気分でアリスが席を立つ。何か蚊帳の外のような状態だったからなぁ。
「分からないとこあったから俺も行くわ」
「あっ、私も行くデス!」
俺とカレンも席を立つ。
それから俺が探している中、近くでアリスが「ん~~~っ」と棚の一番上まで手を伸ばしていた。
「私が……」
「いいよっ自分で取れるからっ」
「だから私が肩貸すデスよ!」
まだ自分が姉だという事が抜けきれていないのか、アリスがぷんぷんと何処か可愛らしい怒りを見せたが、カレンは肩車で助けるという。
「これで取れマス」
そう言ってアリスを肩に乗せるが―――。
「あぶっ、危ない!」
「!?」
アリスが態勢を崩した。流石に見捨てる訳にもいかず、カレンが立ち上がる時限りだが、アリスの背中を俺が手で支える事にした。
そうして無事、辞書は取れたのだった。
「あ、ありがと、ケン」
アリスが何処か申し訳なさを含めたお礼をしてきた。きっと、間接的にとはいえ手で支えた事だろう。
「いいって。ああでもしないとアリス怪我すると思ってな」
「流石デス! ケンの前世は王子だったのデスね!」
「んな大袈裟な。てかカレン……また少女マンガ読みすぎたな」
今カレンが言った事。実はカレンは最近マンガを嗜んでいる。正確にはホームステイするようになってから、だが。
少年少女マンガは特に指定なく読んでいるから多分その影響だろう。
「まあいいや。俺は他に探すもんあるからあっちに行くわ」
そう言って移動しようとしたら―――。
「エロ本デスか?」
「えっ!?」
「違うわ!! 参考書だから!」
とんでもない発言しやがったよこの子。アリスは一瞬で顔赤くなったし。
多少ながら血が上がった事で、後になって図書館で大声だした事に気付く。罪悪感が……。
と、参考書を探していると、同じく参考書を取ろうと綾が手を伸ばしているという、先程の似たような光景が。デジャヴ?
「綾、取れないのか?」
「え」
周りに誰もいないし、とりあえず俺なりの善意で助けようと声をかける。
すると、突如として綾が顔を赤くし荒げた声を出す。
「じっ、自分で取れるわよ! 肩車なんかしなくても!」
綾、実はさっきの光景見てたんじゃないのって思えてしまう。
「いやしないぞ、恥ずかしいだろ……」
そのために踏み台を持ってきた。
「えっ、しないの?」
「しないわ!」
恋人や同性ならまだしも、流石にねぇ。
✩✩✩
「ふぅスッキリ……ってあれ?」
中休み。トイレで用を足し、教室に戻ってくるとアリスが窓際で黄昏ていた。
何か様子がちょっと変に思い、声をかける。
「アリス、どうした?」
何か溜め息も吐いていた。
「うん……ちょっと……」
アリスもなんというか、物憂げしている様子。
「アリスが良ければなんだが、話してはくれないか?」
何か悩んでいるのであれば、力になってあげたい。そう思っての言葉だった。
アリスは少しの間逡巡していたが、話してくれた。
―――何でも、つい先程アリスとカレンで忍にサプライズプレゼントをしたという。これはアリスの提案で、彼女は扇子を、カレンが外国の切手だったらしい。
で、アリスのプレゼントを喜んだが、カレンのプレゼントの方がもっと喜んだという。その際の忍は「エスパーみたいですー!」……との事。
「それで、わたしがカレンみたく超能力が使えたらなと思って」
「いや普通使えないからね? あとそれ超能力じゃないからね?」
アリスがガーンとくる理由は分からなくもないけど、どうせ忍の事だから外国のものが欲しかったんだろ。丸分かりだ。
「まあでも、それはちょっと酷いよな。忍に注意してくる」
今は教室にいない忍に注意しようとアリスに背を向けると。
「ケン、それはダメ!」
制服の端をアリスに掴まれていた。
「え、でも……」
「シノが悪い訳じゃないの。でもやっぱり、カレンの事をシノは……」
そうして再三溜め息を吐くアリスにどう声をかけたらいいか迷っていると。
「あ……アリス!」
後ろから聴き慣れた声が。忍だ。
いきなり声をかけられたアリスはビクッとした。
「さっきはごめんなさい! 切手に舞い上がってしまって。アリスもプレゼントくれたのに……」
俺がさっき注意しようとした事を忍は謝罪した。別に伝える必要なかったな。
ちなみに俺は、割と大事な話だからさり気なく気を遣って、離れたところで見ていた。
「でも……シノはカレンのプレゼントの方が嬉しそうだったよ。もしかしてシノ、シノは……カレンの方が好きなの!?」
「!」
もしかして、これはアカンやつ?
「え……えっと?」
軽く泣きながら唸るアリスに、キョドる忍。
「!? !?」
「なあ健、何だこの修羅場?」
綾も陽子もタイミング悪く今の様子を見に来たようだった。
その後、更にカレンも合流して、ど う し て そ う な っ たと言わんばかりに二人して忍を取り合っていた(その時の忍はめっちゃ穏やかな笑顔で、綾曰く台風の目)。
「アリス朝の事まだ気にしてるデス? 私が妹でもOKデスよ?」
「そっ、そーゆー問題じゃないのっ」
どうやらカレンの言う通り、朝話した事について気にしていたようだ。
「二人共! ケンカはダメですよ! アリスはアリス、カレンはカレンです」
が、そこへ忍がキリッと真面目な顔で言い、そして言い放った。
「みんな違って―――みんな良いんです」
パァーッとまるで後方に光源があるかのように、忍は輝いていた。
二人はその様子を茫然自失といった感じで眺めていた。が、更に忍は続ける。
「カレンはアリスを追って日本に来たのもそうだし、アリスがカレンの事が大好きなのも私知ってますよ!」
「シノ……」
軽くアリスが忍に照れていると、今度は忍とカレンを交互に見据える。
そしたら二人をぎゅーっとお互いの腕を抱きしめる。
「シノも好きだけど、カレンも同じくらい好き!」
「アリス! 私もアリス大スキ! シノの事も大大大大大スキ!」
「『大』が多いよ!!」
「えー」
「うふふ、ケンカする程仲良しさんですねー」
と、俺が見ていない間にいつの間にか仲直りしていた。
後、朝から二人が一触即発の雰囲気だったと見破った烏丸先生が、カレンに癒しアイテムであるという猫耳をプレゼントされたが、仲直りしていた時点での話だったので、意味なかったらしい。
✩✩✩
「もうすぐ秋だなー」
「そうねー」
放課後。皆して帰ってる最中にそう呟いた。それに綾も便乗。
「健、お前何お爺ちゃんみたいな事言ってんだよ」
「しっつれいな!」
陽子にそう言われ、思わず反応してしまった。
「でも確かに、少し肌寒く感じてきたね」
「そうですね~」
アリスも忍も、夏の暑さを感じてきてなくなっていたのか、そう言っていた。
いつの間にか夏も終わって、いよいよ秋になる。木の葉も散り、いよいよ冬に近づいてるって時間が湧く。それが秋……って何語り部みたく言ってるんだよ俺は。
「こういう時は、肌で温めればイイってパパから聞いたデース!」
「うおぅ!?」
そう思ってた矢先、カレンが勢いよく俺の腕に抱き着いてきた。いや、しがみついたっていう方が正しいのかな?
ていうかカレンのお父さんは娘に何変な事言っちゃってんの!?
「あーっ! 健君ずるいです! アリス、私も!」
「シ、シノ……くすぐったいよ~」
あっちで忍からアリスにくっついて頬撫でしている……アレは肌で温め合うってより、まるで飼い主に懐いた猫だな。
「ていうか前から思ってたけど、カレンってやけに健に懐いてるよな」
「そうね。まるで健に飼い慣らされてるみたい」
「失礼だなオイ!」
さっきから俺を苛めたいんですかあなた方は! 陽子が切り出した事に、今度は綾に失礼な事を言われた。
ふと見ると、忍が頬を膨らませながら言った。
「むう~。私だってカレンとベタベタしたいです」
「いや公共のど真ん中だろうが。それに忍にはアリスがいるでしょ」
「そ、それにカレンが健君とくっついてると金髪の色が落ちていくと思ったら……!」
「訳わからん!?」
すっげー理不尽な事言われた。泣いていい?
「でも、ケンとカレンを見比べても、ケンが兄でカレンが妹って感じがするね」
「あー確かに。分かる分かるー!」
アリスが言い出した事に、陽子が笑いながら同意する。そうかな?
「まあでも、わたしが姉って事は譲れないけどね! ふふん」
「ホント揺るがないよなぁ」
アリスがドヤり、陽子が苦笑いでツッコんだ。でも済まんアリス、今のドヤ顔可愛かった。
「私とケンは一心童貞デース!」
「こらカレン!? それを言うなら『一心同体』な!」
カレンは前より日本語に慣れつつあるが、たまにこういう爆弾発言をしてくる。俺が即言わなければ一瞬で辺りが冬景色に変わっていたかもしれない。
「本当に仲いいわよね。もしかして、しのみたく一緒にホームステイしてるとか……?」
『!?』
あっ、また爆弾発言を。それも綾の追撃。
「あー……えっと……」
俺がいつか明かさないととは思ってたが、まだ覚悟してない時にいきなり言われ、戸惑ってしまう。
綾の投下により、カレンを除いたメンバー(俺含む)が驚愕した。そして、約一名以外が俺に視線を一斉に向けてきた。
「健君……本当に?」
「私達に今まで隠してきて?」
「しかもよく考えれば男女の二人……」
うぐ、三人の視線と言葉が痛い。誤魔化したいが事実は事実なので言葉に困る。
「わ、わたしとシノとお揃いだねっ」
ありがとうアリス。毎回助けられてる気がする。
だがバレたのなら仕方ない。溜め息を吐きながら正直に言う事にした。
「はぁ……こんな形でバレるとは思わなかったが、確かにその通りだ。俺、ていうかカレンの家族側の提案で、俺ん家にホームステイする事になったんだ」
「だから家も同じ方向だったり」
「山登りの時にカレンのお父さんと話してた訳だな」
綾と陽子が言う。二人の意見も当てはまるから頷く。
「健君~どういう事ですか~! 私を差し置いてカレンと二人きりだなんて~!」
「ヴェアアアア忍落ち着けぇ!? 揺らすなぁぁ!」
忍が俺の体をグワングワンと勢いよく揺さぶる。嗚呼、視界が上下に―――。
「って! 違う! 二人きりじゃない! 姉さんもいる!」
忍が言った事に何とか揺さぶりを留め、且つ俺は言い放った。
「ああ……そっか、瑠美姉がいるなら大丈夫だな」
「ええ……なら問い詰めなくても良いわね」
良かった。どうやら姉さんがいる事で、変な気を持たれるっていう事はなさそう、だな。てか綾よ、問い詰めるって何。
まあその姉さんにもよく襲われてるけどね! ……俺の体持つかなぁ。
「うぅ~」
まだ忍は納得できず唸っている。が、次の瞬間にはとんでもない事を言ってくれやがった。
「なら! 私とアリスで! 健君の家に住みます!」
「シノ!?」
「おい馬鹿やめろ!!」
まーた忍のキャラ崩壊始まっちゃった。
こうして何だかんだありながらも、何とかホームステイしているのを打ち明けられたのは良かった。
後、断固として付いてこようとしている
はい、今回も青春の一ページなのでした!(上手い事言ったつもり)
という訳で、やっと10話目……長い。
長い間期間を明けてたので平均より少し多め内容量でお届け致しました。
次回からは秋のお話です。