きんいろモザイク ~THE GOLDEN STORY~   作:legends

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お久しぶりです。




Episode12 学校祭 前編

 どうも、八坂健です。今日は選択科目の音楽で歌のテストがありました。

 

「緊張しましたねー」

 

 テストも終わり、教室に戻る最中、忍がそう言った。俺も音楽を取っているのだが、カレンも同様に音楽を取っていた。

 

「何か黒いオーラが……」

 

 ふと、忍とカレンが一緒に歩いていた時、アリスが不審に思ったのかそう言う。うん、まあ気付くよね。

 

「わあっ!?」

 

「ウタナンテウタナンテウタナンテウタナンテウタナンテ……」

 

 アリスがある方向を見据えると、ブツブツと呪詛の如く呟いている綾がいて驚きを見せる。

 

 うん、綾が歌に自信が無い事には気付いていた。音楽の時間が始まる前にも何かボヤいていたし。

 

「引きずってるのがここに一人」

 

「陽子、それは言わないお約束」

 

「うう……どうせオンチよ」

 

「そんな事ないよ! アヤの歌良かったよー」

 

 綾が悲しみに嘆いていると、アリスが励ましの言葉をかける。

 

「すっごくアヤ! って感じだったよ」

 

「そうそう、綾ちゃんっぽい歌声で」

 

「これでこそ綾! みたいな」

 

「The✩ アヤヤ!」

 

「絶対褒めてない!!」

 

 俺省いた皆がフォローのようで全くフォローではない言葉をかけられ、尚も黒いオーラを出しながらツッコミの声を上げる綾。

 

「綾……次があるさ」

 

「健、もしかしなくても諦めてる!?」

 

 うーん、俺もかける言葉をミスったか?

 

 なんて、思ってる間に綾がふんっとそっぽを向きながら声を上げる。

 

「陽子は声が大きくて凄く楽しそうだったわね!」

 

「ありがと~。これって褒めてるんだよねっ」

 

 照れ隠しなのか、皮肉のつもりが陽子の事を褒めていた。

 

「ケンはバスの大砲デシタね!」

 

「大砲!?」

 

 大砲って……野球とかじゃないんだから。いやまあカレンにそう言われてあまり悪い気はしないんだけど。

 

「シノはまるで歌うパイプオルガンだったよ!」

 

「えぇ~そうですかぁ~?」

 

「人の声じゃねぇ!」

 

 忍がアリスにそう褒められてテレテレするが、陽子のツッコミ通りそれは最早人の声じゃない。

 

「アリスはクラス中が笑顔だったな」

 

「すごいヒーリング効果だったわ」

 

 陽子と綾の言う通り、アリスの歌は聴いていて凄く和やかな気分になれた。クラスの皆がほわぁ~っとなる程だ。

 

「そうだ! 録音して全国放送で流したらどうでしょう! 世界中を笑顔に!」

 

「それはやめて!」

 

 忍の突拍子もない提案にアリスが顔を赤くしながら制止の声を上げる。歌の代表か何かかな?

 

「カレンはすごく上手でしたね!」

 

「それほどデモ~」

 

「所々日本語カミカミだったけどな」

 

 確かに。それでも聴いていて思わずカレンに感動を覚えてしまったぐらい上手かった。

 

「二人のデュエット聴いてみたいわ」

 

 そんな綾の申し出にアリスは賛同の声を上げる。

 

「いいよ! じゃあわたしソプラノね」

 

「ええー私もソプラノがいいデス!」

 

 カレンが不平を言うと、二人が何故か喧嘩を始めた。

 

「私が上デス~」

 

「わたしだよー!」

 

 譲り合いの精神はいずこへ。

 

「二人共ケンカはだめです。では私が―――合いの手を担当します」

 

「アルトじゃなくて!?」

 

 忍が思ったのと違う発言をすると、綾がツッコんだ。

 

 とりあえず、アリスとカレンが共にソプラノを歌う事に落ち着いた。

 

「♪~」

 

「♫~」

 

「金!」

 

 ―――ん?

 

「♬~」

 

「♪~」

 

「金!(パン!) 髪!」

 

 んん?

 

「きん―――「しの! 二人の邪魔しないで!」」

 

 合いの手っていうからにはただ拍手とかするのかと思ってたんだけど、思った以上に違ってたみたい。

 

 その後、俺に対してカレンがワライタケの話をしたりと、駄弁りながら自分達の教室に戻る。

 

「早弁しようと思ったらもう弁当がありませんでした」

 

「何やってんだ陽子」

 

 どうやら得意の早弁を陽子がしようと思ったら、既に平らげていたらしい。昼にすらなってないのに……それにしても燃費悪くない?

 

「私、授業中に早弁するの得意なんだよね」

 

 自分で得意って言っちゃダメなような……。

 

「授業中にお弁当食べちゃだめだよー」

 

 アリスの発言はごもっとも。

 

「でも悪い事ばっかりじゃないんだぞ! 集中力と反射神経が養われるし~」

 

 いや、それもっと別なところで使おうよ。

 

「確かに」

 

 確かに、じゃないアリス。

 

「何より勇気レベルもぐんと上がる!」

 

「勇気レベルも……!?」

 

 陽子がテッテレー! とレベルアップのSEを口にすると、アリスが驚愕の表情になる。

 

「まさか早弁にそんな利点があったなんて……わたしも……」

 

「いや利点じゃないと思う。だからしない事を推奨する」

 

 俺がそう釘を刺すが―――その後の授業中。

 

「一片の悔いなし!」

 

「―――そこの二人!」

 

 何故だか忍も一緒に授業中に弁当を出し、先生に注意されてしまった。なんで忍も一緒に出したんだろ? 旅は道連れ世は情け……は流石に言い過ぎか。

 

 大方、勇気レベルを上げたいがためにアリスが早弁をし、それでアリスだけが怒られないように忍も弁当を出したとかその辺かなぁ。

 

「授業中は授業に集中しなさい!」

 

 授業終わりの休み時間。忍、アリス、陽子の三人が先程の事で綾に怒られた。

 

「陽子が不真面目だから気になっちゃうじゃない」

 

「ごめん」

 

 陽子がてへーと能天気そうに謝る。

 

「アリスが問題当てられた時ちゃんと答えられるか心配だし、しのはよく居眠りしてるし」

 

 ん? 何かおかしな展開に。

 

「気になって気になって! もーっ!」

 

「授業に集中しなよ」

 

 周りを注意しすぎて逆に授業に集中できていないっぽい綾に陽子のツッコミが炸裂した。揚げ足取られたなコレ。

 

「確かに早弁は色々と不味いな。腹減るのは分かるけど、我慢しないと」

 

 俺も陽子に注意換気する。先程陽子が言った通り、早弁自体が悪い訳ではないが、その分早く眠くなったりする等不便な点が多いのは確か。

 

「でもやめられない、とまらない」

 

「かっ〇えびせん!?」

 

 いきなりカ〇ビーネタをぶっこんできたよこの子。

 

「おお、流石は健。いいツッコミ。その調子でツッコミキャラを続けてこうなー」

 

「何なの!?」

 

 陽子にポンと肩を叩かれそう言われた。てかツッコミキャラってどういう事なの……。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

「もうすぐ学校祭だね!」

 

 アリスがふと、開口一番で言い放つ。

 

 そう、もうじき我が高校で秋の学校祭が始まる。テストも終わり、イベントの季節がやってきた。

 

「日本のお祭りは初めてなのー」

 

「それは楽しみですねー」

 

 アリスが気分が浮かれている中、忍が笑顔で言う。意外だな、てっきりアリスはもう日本のお祭りを楽しんでたとばっかり。

 

「ところでアリス、何やら勘違いある気がしてならないのですが……学校祭はそういう感じじゃないです」

 

「え」

 

 ああ、流石の忍も今のアリスの格好を見て気付いたか。他の皆も敢えてなのかツッコまないでいたけれど。

 

 今のアリスの格好はというと、鉢巻に法被という如何にも日本の祭りらしい感じだが、学校祭はそこまで大層なものじゃない。

 

「そ、そうなのケン?」

 

 アリスの近くにいた俺に彼女は訊ねてくる。

 

「まあな。普通、学校でやる祭りは法被・鉢巻は着ないわ。そういう本格的なのは町内とかの祭りで着るのが正しいな」

 

「そんなぁ……」

 

 アリスがショボくれてしまう。

 

「……まあ、まだ祭りのシーズン終わった訳じゃないし、今度そういうイベントに参加してみたらどうだ?」

 

「! うん! そうする!」

 

 祭りに参加する機会はまだあると伝えると、アリスはぱあっと明るくなる。コロコロ表情が変わりやすいなぁ。

 

 そうして、さっきまで着ていた祭りの衣装から普段の制服に着替え終わると、綾が言ってくる。

 

「私達のクラスの出し物は喫茶店。今のところ、メイド喫茶か甘味処で意見が分かれているわ」

 

 クラスの皆で話し合い、出し物が最終的にその二択になったのだ。どちらかといえば、男の俺でもある程度気楽でやりやすい甘味処が良いと思ったのだが……。

 

「二人はどっちが良―――」

 

「メイド喫茶!」

 

「甘味処!」

 

 綾が言い終わるよりも先に忍とアリスの言葉が被る。

 

 そして、二人との間にピシャアと電撃が走った……ような気がした。

 

「争いたくはありませんが仕方ありません……。アリスとて容赦はしませんよ!」

 

「何の勝負だ」

 

 忍が謎のファイティングポーズを取ると、陽子がツッコむ。

 

 直後、忍が先攻とばかりに声を上げる。

 

「引いてくれなければ夜トイレについてってあげません!」

 

「っ!? 今その話は関係ないでしょ!」

 

 恥ずかしい話を暴露され、きゃ~っと顔を真っ赤にするアリス。

 

「甘味処にしてくれなきゃシノの事嫌いになるから!」

 

 次いで後攻。アリスが言い放つ。あれ、雲行きが怪しくなってきたぞ。

 

「なっ、私だって!!」

 

 忍も対抗して言う。

 

「…………!」

 

「…………ッ」

 

 そしてとうとう涙が溢れ出す二人。

 

「か……かんみ……」

 

「メイド……」

 

「そんなに深刻な問題なのこれ!?」

 

 泣きながら言う二人に見かねた綾が言う。って、確かに二択でここまで深刻になるなんて思ってなかったぞ!?

 

「い、いや別に一つにこだわらなくても……二ついっぺんにやればいいんじゃ……」

 

「そうだな。健の言う通り、二つに混ぜちゃおうよ。まさしく異文化交流!」

 

 流石に危ない雰囲気になってきたので、俺が意見を述べると陽子がありがたい事に意見を付け足して言ってくれる。

 

「良いですね。それなら二人共納得です」

 

「そうだね!」

 

 良かった。何とか二人共納得してくれた。

 

「あっ、こういうのはどう?」

 

 すると、アリスが祭りの提案をする。

 

「メイド服を着たシノをお神輿(みこし)に乗せて皆で担ぐの!」

 

「アリスの祭りのイメージとも合って良いかもなー!」

 

 陽子も便乗して言うが、そのイメージを想像をしてしまったら―――。

 

「そんな喫茶店、嫌だ……」

 

「……だな」

 

 綾も同じ考えをしていたのかそう呟いていたので、俺も頷いといた。さっき本格的な祭りじゃないっていう話をしたのに、しかも何で忍が神輿の上に? あれか、巫女とでもいうのか?

 

 とまあ今の意見は即却下され、アリスが再びショボくれたのは言うまでもない。

 

 ちなみに下校途中で教えてくれたのだが、カレンのクラスは劇をやるらしい。彼女が自分達のクラスに来る代わりに是非とも観に来て欲しいとの事。何の役かは秘密らしいが、「まあ期待してくれちゃってOKデスよ。良い席取って置きマス」と女優オーラを出しながら良い席を取っておくという。

 

 ……勿論観に行く予定だが何となく嫌な予感がしたのは気のせい?

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 そうして、学校祭の時が刻一刻と近づいていく。

 

 我が県立もえぎ高校では、学校内中に各教室や部活の案内の張り紙が至るところにあった。これぞ学校祭の醍醐味といったところか。

 

 そんな中で、俺達のクラスでもある一年B組でも着々と準備を進めていた。

 

「おーい八坂ー、これ運んでくれー」

 

「分かったー!」

 

「八坂くーん、衣装のサイズこれでいいかなー?」

 

「ちょっと待ってー!」

 

 役割分担もしっかりと分け、教室の装飾や備品管理等も進めている。

 

 俺はというと、男なので備品運搬とかの力仕事や飾り付けがメインなのだが、メイド服等の衣装の管理調整も行ったり、料理ができると周りが知ってたのか、その合間にメニュー作りを手伝ったりした。

 

「んー、丈がちょっと長いかな。もうちょっと短くすれば床擦らないと思う」

 

「うん、分かった!」

 

 また、その衣装も皆で分担し、大体半々ぐらいで和服の甘味処組とメイド組に分かれるようになった。といっても男子が甘味処で、女子の方はメイドが多数となっていたのだが。

 

 ていうか、今クラスの女子と衣装のサイズ確認をしていたのだが、俺ばっかりに任されているのは気のせいか? 俺、クラスの実行委員とか進行係じゃないのに……。嫌な訳でもないし別にいいんだけど。

 

 何はともあれ、学校祭開催まであと少しだ。

 




予想より長くなったので、前編、後編と分けました。
書いてる途中、きんモザの学校祭って秋頃で合ってたっけ……と時系列が滅茶苦茶になりましたが、紅葉祭と分かりました。

また、劇場版「きんいろモザイク Pretty Days」より学校名が挙げられていたので、本小説にも導入致しました。


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