きんいろモザイク ~THE GOLDEN STORY~   作:legends

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前回の投稿から日が経ちました……。申し訳ないっす。



Episode13 学校祭 後編

 学校祭の準備も滞りなく進み、祭りを翌日に控えるようになった。

 

 夜、俺の家にて。晩飯を作ったのも含むが、準備期間で疲れてソファで寛いでいると金の髪が目の端に映る。

 

「ケンー、学校祭、楽しみデスね!」

 

「そうだな。カレンも、劇の方は大丈夫か?」

 

「ハイ! バッチリデース!」

 

 学校祭の前日という事もあって、家にホームステイしているカレンがリビングにてそう言ってきた。

 

 家でも元気なカレンは、学校祭を余程待ち遠しく思ってるのか、ウキウキしていた。

 

「この際だからカレンの演目と役を教えてくれないか?」

 

 何の劇をやるのか気になった俺は意地悪くカレンに聞いてみる。

 

「NOー! ケンでもダメデース。明日を待ってくだサーイ!」

 

 だが胸の前で×の印を作り、家でも頑なに劇の詳細を教えてくれなかったカレンだった。

 

「健、明日学校祭なんだっけ」

 

 ふとそこへ、姉の瑠美姉さんが俺の側までやってくる。

 

「そう。ところで姉さんは学校祭に来るのか?」

 

 唐突に言われたので、もしかしてと俺は聞いてみる。

 

「そうね。明日は休みだし行ってみようかしら。カレンと一緒に」

 

「いやカレンも明日劇だから」

 

 この()は素でボケているのかわざとなのか分からん。

 

「そうだったっけ?」

 

「そうだよ(断言)」

 

 素で、だったわ。

 

「まあいいわ。折角健が働いてる姿撮れるし、堪能してきましょうかね」

 

「堪能って何。というか撮るなよ?」

 

「そっか、撮るのは(いさみ)の役目か」

 

「そういう問題じゃないから。てか、勇さん来るの?」

 

 姉さんは首を縦に振った。忍も明日学校祭で家にいないはずだ。その影響で見に来るのだろうか。

 

「そう言ってたわ」

 

「そっか」

 

 まあ大体予想ついてたが。

 

 ともあれ、明日は学校祭だ。早い内に寝ないとな。

 

「明日も早いし、そろそろ寝ようかな」

 

「あっ、じゃあ私と寝ようか」

 

「寝ないわ! 姉さんの自室があるだろうが!」

 

「ルミー、ケンと一緒に寝るんデスかー? ナラ私もケンと一緒に寝マース!」

 

「カレンも乗るな!?」

 

 今日はぐっすり寝れそうだ(白目)。

 

 

 

 

 

✩✩✩

 

 

 

 

 

 そして、学校祭当日。

 

 始まる時間より少し前に学校に着いた俺とカレン。カレンは劇のため、本番が始まる前に最後の練習をしに行った。

 

 俺達のクラス、1-Bの催し物である「カフェ処 和洋折衷」の最終仕込みをしていた。

 

 その中で、俺と陽子、アリスが甘味処組で、メイド組が忍と綾の組み合わせになっていた。

 

「綾ちゃん似合うー」

 

「かわいーい」

 

「やめてえええ!」

 

 忍と陽子が綾のメイド姿を似合うと褒め、クラスの皆からも見惚れていたが、言われた当の本人は凄い恥ずかしがってた。

 

 いざ本人が着ると緊張する辺り、恥ずかしがり屋な部分はまだ目立つな。

 

 それはさて置き、メニューの確認をする。実際、飲み物以外は既に出来上がっているのだが、余る・足りなくなる場合にも備えて、多すぎず少なすぎずを考えた量になっている。

 

 肝心のメニューはというと、ティーカップに日本茶、湯呑みにコーヒー、ケーキにあんこ、お団子にチョコレート……。

 

「まるで私達のような喫茶店ですね」

 

「そうだねー」

 

 忍、アリスはほのぼのとそう言うものの。

 

「カオスな喫茶店だな……」

 

 陽子が言い放つ。店名が「和洋折衷」というからには間違ってないが、混ざりに混ざって確かにカオス。

 

「アリス達ー、お客さん来るから準備してー」

 

「はーい」

 

「はいっ」

 

 クラスの女子の一人がそう言うと、忍がいつものように、アリスが意気込んで返事をする。

 

 そっか。いよいよ開店するんだな。

 

 ちなみに今回、教室内のほとんどがクラスの女子で、他の男子達は校内を回ってチラシで宣伝したり、商品を売りに出る予定だ。メイド喫茶が含んであるので女子がメインになるのは当然といえば当然だが。

 

 かくいう俺もその一人なのであるが、何故か今回は裏方に徹して欲しいとの事。どうやら料理ができる上、男子だから重いものや足りなくなった食材等をすぐ持ち運べるから……らしい。

 

 確かに一理あるかもしれないが、言い方が悪いとパシリに近い。まあ頼られてると思えばいいか、今回は。

 

『いらっしゃいませー!』

 

 仕込みの最終確認を終えたと同時に、女子の多くの声が響き渡る。どうやらお客様第一号が来店してきたようだ。

 

 料理や作っているところが見られないようカーテンを敷いているからお客さん自体は見れないが、開催してすぐ来てくれたのは素直に嬉しい。

 

「あれっ、大人の人達が来てるよ?」

 

「一般のお客様ですよー」

 

 ふとアリスと忍の声が聞こえてきた。普段学校には学生や教職員といった人達しか入れないが、こういった大掛かりなイベントでは立ち入れる事が多い。自分達の高校の学校祭もその一つである。

 

「いらっしゃいませー。お好きな席へどうぞー」

 

 忍が物腰柔らかそうな口調で言うと、アリスも続けて言った。

 

「イ……イラサイマセェー、日本語ムズカシィネー」

 

 それも、カタコトで。大人とか滅多に合わない人に声を出したのだから仕方ない。

 

「健、あんこと日本茶頼めるか?」

 

 そうこうしてる内に陽子から注文が入った。

 

「分かった」

 

 基本、女子が表立っているが、俺は表には出ないようにしている。見栄えの問題かもしれないが。

 

 さて、頑張ってやっていきましょうか。

 

 

 

 

 

✩✩✩

 

 

 

 

 

 その後も、何事もなく続いていく。

 

 思った以上に盛況らしく、学校外、学校内問わずに来店してくるから人気が高いと窺える。

 

 ……男子の来店率が地味に高いのが、メイド姿の女子が見れるからと思ったが、そこはそれ。こういうイベント以外ではメイド姿なんてお目に掛かれないだろうから、たまにはいいんじゃないかなと思う事にした。

 

「メイドなんだから、ご主人様って言わないとね!」

 

「うっ……嫌よ恥ずかしい」

 

 盛り付け等を済ませている最中、カーテンの内側に入っている陽子と綾がそんなやり取りをしていた。

 

 確かに、最初はメイドではなく甘味処の方をやりたいと言っていた綾だが、周りから推されて結局メイドの方をする事になった。

 

 彼女はこそこそと裏方の方にいたが、陽子にそう言われていた。

 

「ほらほら客来た!」

 

「……健~」

 

 陽子がカーテンを少し開き、行ってこいと言わんばかりの合図に恥ずかしがっていた綾が俺に助けを求めてくる。

 

「いやダメでしょ。そこは女子の綾が出た方がいいと思うし、俺が出ても何の得にもならない」

 

 見栄えが悪く……とまでは言わなかったが、こう見えて実はやる事多くて忙しいという点もあった。

 

「だってさ綾。これは諦めて行くしか!」

 

「う……うぅ仕方ないわね」

 

 陽子にも後を押され、結局綾は勇気を振り絞って客の傍に行った。

 

「いらっ……い……いらっしゃいませ。ご、ご……」

 

 お、後ちょっとで―――。

 

「ゴゴゴゴゴ……」

 

「何の効果音だ!」

 

 出なかった。そして陽子が謎の効果音にツッコんだ。惜しかったな。

 

 

 更にそこから時間は過ぎていき―――。

 

「烏丸先生いらっしゃいませ♡ 愛の込もったお団子食べてください!」

 

 忍の言葉通り烏丸先生が来店し、作った団子を忍が渡したいと提案してきたので、彼女に託す。

 

「まー、美味しそう。いただきます♪」

 

 先生が食べる様子をカーテンの間から窺う。

 

「あれ、確か忍は間違えて団子の一つに間違えてわさびを入れたけど誰も当たってない」

 

 そこで唐突に思い出した。団子はあらかじめストックがあったので、その作り置きの中に忍が一個だけわさびを入れるという鬼畜行為をしていたのを。

 

「えっ」

 

 料理を手伝っていたクラスの女子の一人からもそんな声が漏れていた。幸い、誰にも当たってないのだが、烏丸先生にも当たらない事を祈る。

 

「う゛っっ?」

 

 しかし、それも虚しいが如く、鼻と口を押さえて(うずくま)る烏丸先生。

 

「キャ~ッ! 先生、どうかしたのですか!?」

 

「何だか、これ辛いわぁ」

 

 どうやら、運悪く当たってしまったようだ。

 

……誰がこんな事を―――!!」

 

「おい」

 

 つい声を上げてしまったが、俺は確信犯を知っている。なのにも関わらず分かりやすくシラを切っているヤツがいる。これは鬼畜こけし……。

 

 後で先生にお詫びしておこう。

 

 

 

 

 

✩✩✩

 

 

 

 

 

「キター!」

 

 む、この如何にも仲良くなれそうで明るい声は……。

 

「カレン! いらっしゃい!」

 

 アリスの声で誰かが判明した。そのカレンは劇の合間を縫って来たのかな?

 

「いいなーウェイトレス! 可愛いデスネ!」

 

「カレンは接客とか得意そうだなー」

 

 確かにと、声には出さないが陽子に同意する。

 

 ……唯一の不安が「おっとお客様! 私は商品には入りませんデスよ!」とかそういう煽りに近い事を言いそうなところがネック。

 

『いらっしゃいませご主人様!』

 

 おっと次のお客だ。それまでにてきぱきと捌かないとな。

 

「八坂くーん、お茶とコーヒー、それからあんこケーキとチョコ団子おねがーい」

 

「はいよ―――ってあれ……」

 

 クラスの女子から注文を受けた時、カーテンの隙間から見えた人物を見て固まってしまう。

 

「どうかしたの?」

 

「い、いや何でもない」

 

 同じ子に心配されたが、何でもないとこっちの作業に集中する。まさか“あの二人”が来るとは思ってなかったからだ。こんな作業をやっているとこはあまり見られたくない。

 

 まあ、こっち(カーテン内)にいればそのうち帰るだろう。

 

「八坂くん、それ終わったら交代するよ」

 

 だが、そんな考えを打ち破るが如く、クラスの女子の一人がそんな事を言ってきた。

 

「え、もう? 早くない?」

 

「いいのいいの。開店の時から休みなしでずっと働いてたでしょ? 流石に君一人をずっと働かせるのも悪いし」

 

 どうやら働き詰めも悪いと、善意で彼女達は俺に交代させてくれるようだ。確かにずっと一人だけだと疲れるからその申し出はありがたいが、“あの二人”とばったり会う可能性が上がった。

 

 とりあえずその子に分かったとだけ伝え、交代する事に。そそくさと出ていけばバレないとは思う。

 

「あっ、健君だー」

 

 それも虚しく、眼鏡をつけて帽子を被った一人(勇さん)にバレる事に。

 

「おっ、我が弟君(おとうとぎみ)の和服姿! 勇、撮って撮って!」

 

 そして、俺の事に気付いたマスク姿の二号(姉さん)が何故か興奮しながら勇さんに撮れ撮れ合図をかました。てか弟君って何。

 

「分かってるわよ瑠美。どれ、ちょっと一枚を……」

 

 その瞬間パシャリと、撮られた。しかも勇さんは一枚と言っておきながら、パシャパシャと何枚もシャッターを切っている。俺に限らず、綾や陽子まで……。

 

「わたし的には綾ちゃんが和服で、陽子ちゃんがメイド姿なんだけどなー」パシャパシャ

 

「そう? 綾ちゃんも陽子ちゃんも今の服似合ってると思うけど」

 

 勇さん、撮るな。そして姉さんもノリに乗ってないで、勇さんを止めるぐらいはして。

 

「あのぉーお客様、撮影の方はちょっと―――」

 

 そんな時、その行為に見かねたのか陽子が止めに入った。でも陽子は“彼女”の事に気付いていない?

 

 その声を聞いた途端、勇さんが帽子と眼鏡を外し、姉さんもマスクを外す。

 

勇姉(いさねえ)!? それに瑠美姉!?」

 

 陽子が勇さんと姉さんの存在を見て驚き、それを遠巻きに見ていた綾も驚いていた。

 

「じゃーん」

 

「陽子ちゃん、久しぶり~」

 

 何処か余裕がありそうな態度で陽子に接する二人。

 

「イサミ!」

 

「あっ、お姉ちゃん! 来てくれたんですか!」

 

 アリスと忍も勇さんに気付いたようで、彼女達の声にカレンも気付いたようで此方に駆け寄ってくる。

 

「あっ、ルミもいるんデスネ!」

 

「やっほーカレン」

 

 カレンが姉さんの事も気付いていた。

 

「姉さん、本当に来るとは思ってなかったよ」

 

「ええっ、姉さんって―――健君のお姉さん!?」

 

「えっ! ケンってお姉さんいたの!?」

 

 俺がそんな事を言うと、忍とアリスが驚く。そっか、忍はあんまり会った事ないし、アリスに至っては会った事ないな。

 

「まあね。こんな不甲斐ない姉だけど、どうかよろしくして欲しい」

 

「ちょっと健、それはどうなのよ」

 

 俺の言葉に姉さんが食いついてきた。

 

 それはそれとして、姉さんが皆(途中で綾が近づいてきた)に挨拶を交わした。

 

「改めて、八坂 瑠美でーす。忍ちゃんは久しぶり。それで、貴女がアリスちゃん? よろしくね」

 

「ひゃい! よ、よろしくお願いします!」

 

 アリスは姉さんのよろしく発言に緊張したのか、噛み噛みながらもお辞儀をした。

 

「おっ、そこにいるのは綾ちゃん? 綾ちゃんも久しぶり~」

 

「は、はい! ご無沙汰してます!」

 

 綾も何処かアリスと似たような口調だった。二人はちょっと人見知りしてるのかな。

 

「そんな堅くなんなくていいって。皆、どうぞ弟をご贔屓(ひいき)にお願いします」

 

「そこは馬鹿にし返すんじゃないのか。てか、贔屓すんな」

 

 てっきり、馬鹿に返してくるのかと思ってたら、予想の斜め上の発言をされた。贔屓のポイントがないんだがそれは。

 

 ちなみに勇さんと姉さんの知り合いに、白川 湊(しらかわ みなと)さんという友人がおり、三人で見かける事も多々ある。

 

「それにしても、アリスの和服、可愛いわね」

 

「そうね。とっても似合ってるよ」

 

「えへへ」

 

 勇さんと姉さんにアリスの和服姿を褒められ、素直に照れている。

 

「お姉ちゃん、瑠美さん、私は?」

 

「ん? いつも通り?」

 

 勇さんの言葉で、忍がガーンとした表情に。まあ、普段の服装がね、うん。

 

「いや、可愛いよ」

 

 姉さんが咄嗟にフォローする。ただ姉さんはあまり知らないだろうが、彼女の普段の服装がアレ。

 

 最後に会ったのが中学校の頃だったか。その時はまだ外国色に染まってなかったから「純粋で可愛いー」と姉さんが言っていたが、今の忍を見るとちょっとヤバいかも。下手したら幻滅するかもしれない。

 

「んじゃ、俺交代時間だから」

 

「ええー? 早くない?」

 

 何となく居心地が悪くなったからその空間から抜け出そうとしたら、陽子にそう言われた。やっぱそう思うか。

 

「クラスの子に言われてさ、働き詰めも悪いから休憩してって」

 

「そっかー。もうちょっと健君が働いてるとこ見たかったなー」

 

 勇さんにもそう言われる。働いているっていってもカーテンの中中心だけど。

 

「分かったー。じゃあ健、お土産よろしくー」

 

「パシリか!? そんな金ないわ!」

 

「あっそれいいわね。健君、何か奢ってよ」

 

「私も私もー」

 

「アンタ等は俺を一文無しにさせる気ですか!?」

 

 陽子、勇さんと姉さんにそんな事を言われ、思わずツッコんだ。その場が笑いに包まれる中、俺は「ったくよー」と声を漏らしながら教室から出て行った。

 

 

 

 

 

✩✩✩

 

 

 

 

 

「こうして見ると、色々やってんだな」

 

 俺は一人学校内をぶらぶらと回りながらそう呟く。忍達はまだ交代時間になってないので今は俺一人だけだ。

 

 歩き回りながら他のクラスでは何をやっているのかと見て回っていたが、中々興味深かった。

 

 ある教室では漫才をやっていたり、ネズミの被り物をしていた子達がいたり、手芸部が立派な出し物をしていたりなどと、様々な出し物をしていた。

 

 また同じ出し物があるとこが意外に少なく、被っている場所もあまりないという印象だった。

 

「あっと、忘れてた。カレンの劇はいつからかなーと」

 

 俺は唐突に思い出す。体育館で開かれるパンフレットをポケットから取り出し、開く。

 

「まだ大丈夫だな」

 

 俺は安堵する。まだ時間に余裕があると分かればまだ校内も回れる時間があるってものだ。

 

 もう少しだけ、俺は学校内のイベントを堪能して回る事にした。

 

 

 

 

 

✩✩✩

 

 

 

 

 

「もうすぐカレンの劇が始まります!」 

 

 その後、忍達も交代時間に入り、俺と合流。

 

 軽く校内を回り、いよいよカレンの劇の時間が訪れる。

 

「演目は白雪姫です」

 

「ベタだなー」

 

 陽子が言う。確かに有名どころだ。同じような物語として「人魚姫」とかも有名どころの一つ。

 

 「白雪姫」。確かいじわる王妃である魔女が『鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?』から始まって、それに腹が立った魔女に毒リンゴを食べさせられた白雪姫が殺され、王子による口づけで最終的にハッピーエンドで終わる物語だっけ。

 

「カレンは何の役かなー」

 

 アリスの言う通り、カレンは何の役かは想像つかなかった。物語に登場する小人じゃ言っちゃ悪いけどインパクトに欠けるし。もしかして姫役とか?

 

「私、白雪姫って大好きなの!」

 

 綾がルンルン気分で足取りを早めていた。

 

「恋愛モノ全般が好きなんだよ」

 

「ああ、通りで」

 

 陽子の言葉で俺は納得する。少女マンガとか好きそう(小並感)。

 

 そして内容の劇だが、俺が予想していたよりも遥か上のモノになっていた。

 

 劇が始まり、有名どころのシーンに入る。

 

「白雪姫が死んじゃったー」

 

「死んじゃったー」

 

 小人役が白雪姫の役に向けてそう言っていると、舞台から光がある一点に灯る。

 

 そこには(さむらい)らしい衣装を着ているカレンの姿が―――ってあれ、白雪姫って時代劇的な要素一ミリもなかったような……。

 

 観客の皆も何事かとばかりに食い入るようにカレンを見る。

 

「待たれい。私がその者の魔を断ち切ってしんぜよう」

 

 如何にも侍口調で言い放つカレン。そして小人役の人が白雪姫役から距離を取ると、カレンは刀(真剣ぽく見えるが多分本物ではない)を鞘から抜くと―――。

 

「は―――っ!」

 

 まるで姫役の真上に何かがいるように、一気に切り裂く!

 

「ツマらぬモノを切ってシマッタ、ゼヨ」

 

 そして、キンと刀を鞘に収めながら決まったという台詞を吐く。

 

 

 うん、なぁにこれぇ。

 

 隣の綾はショックを受けたかのように絶句。忍やアリスも何が何だか分からない表情だった。確かに分かる。明らかに白雪姫ってこんな時代劇が被った物語じゃないよね。

 

 カレンのクラスの皆もカレンの役に誰もツッコまず劇を進めていく辺り、彼女がやりたかったであろう役を尊重したのか? それなら、もう少し渋ろうよ。

 

 まあ何はともあれ、こうして劇は幕を下ろした。何か後味の悪い感じにはなったけど。

 

 ―――色々あったが、これにて学校祭は終了だ。長いようで、あっという間だったな。

 




アニメの方では食べ物自体は作り置きがあったのですが、一部除いて実際に作る事にしています。

てか後編なのに前後編と文字量のバランス悪すぎィ!

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