きんいろモザイク ~THE GOLDEN STORY~   作:legends

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今年初のきんモザ投稿です()
さて、コロナウィルスが蔓延している中、皆さんは如何お過ごしでしょうか?
自分はswitchが欲しいです(隙自語)

2020年5月12日:サブタイトルにEpisodeが省略されていたので追加致しました。


Episode14 お泊まり会……それは地獄の始まり?

 学校祭も終わり、その後片付けも済んだ翌々日。

 

 学校休みが片付けの後にあり、その翌日が学校だったという訳だ。まあ、一日挟むものの明日は休みな訳だが。最高かよ。

 

「あのね、親が旅行に行ってて、明日の昼まで帰ってこないの」

 

 皆で下校途中、不意に歩を止めた綾がそう言ってきた。

 

「じゃあ今日は一人でお留守番ですねー」

 

「夜ご飯自分で作るんだーすげー」

 

 忍と陽子がそう言う。

 

 それにしても家に一人か……心細いだろうな。

 

「あ、本屋寄ってっていい?」

 

「いいよー」

 

 そうして再び歩き出し、陽子、アリスが帰り道に本屋に寄ろうとしていると、腕辺りに掴まれる感覚が。

 

「…………」

 

 じぃぃぃと涙ぐみながら綾が俺の制服の端を掴んでいた。

 

「心細いならそう言えって!?」

 

 確かに心配していたが、今にも泣きそうな綾を見て、思わずツッコんだ。

 

 そこから皆で話し合った結果、綾の家にお泊まり会をする事が決定した。

 

 しかし、お泊まり会か……。何分俺は男だ。女子の部屋に泊まるどころか家に入る事自体少し抵抗がある。

 

「ケン、お泊り楽しみデスね!」

 

 だが、その事情は関係ないとばかりに付いていく気マンマンのカレンがいた。

 

 ……まあ、遊びに行く気持ちで付いていくだけならいいか。陽子や忍達もいるし。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

「あれ、どっか行くの?」

 

 一度家に戻り、普段着に着替えて荷物を整えていると姉さんが声をかけてきた。

 

「綾の家でお泊まり会するからって話だから、その準備。俺はお泊まりまでしないけど」

 

 色々と誤解を招かないように、予め伝えておく。

 

「そうなの? 別に泊まっていっていいと思うわ」

 

 いやなんでだよ。

 

「俺は男だよ? 普通女子の家に泊まるのは流石に不味いでしょ」

 

「いいじゃない。綾ちゃんだから健が取られる事はないと思うし」

 

「何の話!?」

 

 ダメだ、姉さんに言っても(らち)が明かない。

 

「とにかく、最悪遅くとも深夜前までには帰ってくるから! カレン、行くよ」

 

「ハーイ!」

 

「ふーん……」

 

 俺はそそくさと準備を済ませて既に準備を終えていたカレンと一緒に出かけて行った。

 

 その際、姉さんが後ろの方で何かブツブツと呟いていたが、聞こえない聞こえない。知らないったら知らない。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

「お、忍達だ」

 

 家から出た後、たまたま前方に忍とアリスが歩いているのを見かける。

 

「ヘーイ! シノー! アリスー!」

 

「あ、カレン!」

 

 カレンの快活な声が響き渡り、忍が喜々として振り返る。

 

「ケンもいるね!」

 

「おう。今から行くところか?」

 

「はい。綾ちゃん待たせちゃいけないですし」

 

 そうか。もう既に行ってると思ったが、そんな事はなかったのか。

 

「もし時間があったらケンの家に迎えに行こうと思ってたんだけどねー」

 

 そうだったのか。なんて気が利く子なんだアリスは。

 

 何でも聞いた話だと、アリスは国語辞典など要らないものばかりを持っていこうとしていたらしい。その際持っていこうとした辞典に対してわたしのバイブルがーと泣いていたっぽいが。

 

 うん、流石にお泊まり会するのに辞典とかは要らないと思う。

 

 ちなみに余談だが、もしカレンがホームステイしていなかったらマンション丸ごと借りていたとアリス談。それを聞いた俺と忍は戦慄した。

 

 スーパーお嬢様……。

 

「いらっしゃい! 待ってたわ」

 

 そんなこんなで綾の家に到着。外で綾がたたたと出迎えてくれた。

 

「おじゃましますー」

 

 忍が一足早く言う。

 

「陽子ちゃんは?」

 

「まだ来てないの。寒かったでしょ? 中に入って」

 

 綾がそう言った途端、カレンが彼女の手をぎゅと握る。

 

「手冷たいデス」

 

「なっ……もしかして、ずっと外で待ってたのか!?」

 

 だとしたら綾こそ中に入っているべきだったのでは。

 

「来るのが遅くて心配して……なんかいないんだからね!」

 

 綾が顔を赤くしながら張り上げた声を出す。

 

「そ、そういう事か。心配してくれてありがとな」

 

「だから違うってばぁ!」

 

 違うと言うが、外で待っている辺り心配してくれた事は本当だろう。俺は感謝しておいた。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 程なくして陽子も到着。その手には何か入っているビニール袋をぶら下げていた。

 

「コンビニ混んでてさー、遅れちゃった」

 

「何か買ってきたのか?」

 

「うん、お菓子とか色々ー」

 

 そっか。お泊まり会するからコンビニ寄ってたのか。納得。

 

「お菓子デース!」

 

 カレン達がはしゃいでいた。陽子めっちゃいい事したんじゃないか?

 

「私達もさっき来たばかりですよ」

 

 忍が待たせていないという事を陽子に予め話しておく。

 

「アヤのお部屋かわいーね」

 

「そ……そう?」

 

 アリスに部屋の内装を褒められ、照れる綾。

 

 ふと、カレンがタンスの引き出しを開けようとしているのを見る。

 

「あっ、カレンそこはだめ!」

 

 俺が注意しようとするよりも先に綾の声が上がる。

 

「ヘソクリ?」

 

「じゃなくて……えっと……」

 

 綾が俺の顔を見て逡巡している。何だ、何が入っているんだ?

 

「ああ、そこにはしたg―――」

 

「陽子、健の前で言わないで!!」

 

 陽子が言い終わる前に綾が彼女の口を塞ぐ。

 

ていうか、どうして知ってるのよっ?

 

え? 何となくそうかなって……

 

透視ね!?

 

いや……

 

 綾と陽子が小声で話しているがよく聞き取れなかった。うーん、何が入っていたのかかえって気になるな。まあ綾がそこまで言いたくないって事らしいからこれ以上は詮索しないでおこう。

 

 そうしたやり取りを繰り広げているうちに日がとっぷり暮れていた。

 

「晩ご飯作るわね」

 

 綾がエプロンを装着して料理支度をし始めようとする。

 

「私達も手伝います」

 

 忍の言葉を皮切りに皆、彼女の手伝いをしようとしていた。俺もその一人だが。

 

 皆、エプロンを付けて各々手伝いを始める。どうやら作るのは肉じゃがらしい。

 

「陽子、醤油大さじ二杯入れて」

 

「よしきた」

 

 芋や人参などが煮立った鍋に、陽子が醤油を入れる。……スプーンで量らずに醤油ボトルそのままで。綾は流石に驚愕した。

 

「!? ちゃんと量って!」

 

「えーいいんだよこんなのは目分量でー」

 

 だからいつも薄味なんだよー。と陽子が嫌味ったらしい口調で言うと、陽子から醤油ボトルを取り上げた。

 

「もうっ、陽子の長所は『大らか』な所だけど短所は『大雑把(おおざっぱ)』だわ!!」

 

 ぷんすかとなんとも可愛らしい口調で陽子の評価をする。

 

「褒めてるのか(けな)してるのか」

 

 ……どっちもじゃね?

 

「―――なら俺がやるよ」

 

 流石に少し見()ねた俺は綾の手伝いをしようとした。

 

「ええ……健できんの?」

 

 陽子にどこか失礼な事を言われた気がするが、まあ多分それは俺が男だから、という事だからだろう。

 

「できるも何も、家で朝と夜は毎日俺が作ってんだぞ」

 

「えっ、健すげー!」

 

 なんていう手のひら返し。昼は母さんが弁当作っているから省くけどな。

 

「じゃあさ、綾の代わりに毎日私に弁当作ってよ!」

 

「んな無茶な!? ていうか言い方! それじゃ何か綾に失礼だ!」

 

 また無茶ぶりされた。これ言われんの何回目だろうな(白目)。てか「綾の代わり」って……言い方の問題かもしれないが、綾がいらない子扱いされてるみたいだぞ。

 

「なぁんだ、最初から健に任せておけば良かった」

 

「あれー何か私いらない子扱いされてるー?」

 

 棒読みで言う陽子。揚げ足取られたな。

 

「いや、そんな事ないぞ。手伝ってくれるだけでもありがたい」

 

 けど、先程までの行動(計量しなかった事)に目を(つぶ)るとすれば、綾の事手伝おうとしていたのは事実だから手伝うだけでも(おお)(だす)かり。

 

「そ、そう? てへへ……」

 

 陽子が照れていた。

 

「この中に卵を割ってくれる?」

 

「OKー」

 

 綾がアリスとカレンの外国コンビに金属ボウルの中に卵を割って欲しいとの事。カレンは承諾の声を上げる。

 

「大丈夫かなあの二人。変な知識を頼りに頭で卵を割るとかないよな?」

 

 俺は何となく不安に声を上げる。しかも頭で割るのは生卵じゃなくてゆで卵だし。

 

「あはは、健君、流石にアリスとカレンはそんな事しませんよー」

 

 野菜の皮を剥いていた忍が笑いながら言う。

 

「だよなぁ。流石にないか」

 

 忍がそう言うなら大丈夫だろうなきっと。

 

「アリス、カレン、卵割れましたか―――」

 

 忍が二人に声をかけた瞬間、「きゃー!」と悲鳴が上がった。

 

 何事かと俺も二人を見ると、金髪の頭が卵の黄身と白身で汚れていた。

 

「ま、まさか健が言った事が当たるなんて……預言者か!?」

 

「んな事言ってる場合かい!」

 

 陽子が場違いな物言いに俺がツッコみの声を上げる。そうしているうちに綾が二人に布巾を上げていた。

 

「二人共、お風呂沸いてるから入って」

 

 綾が気を利かせて頭と顔に付いた汚れを取って貰おうと、布巾で拭いている二人にお風呂を催促する。

 

「私バブルバスがいいデス」

 

「泡!?」

 

 人の家なのに冗談紛いなのか割と失礼な事を仰るカレン。俺の家にもバブルバスないのに……。

 

「ごめんなさい、そういうのはないの」

 

 そう言いながらタンスの引き出しから入浴剤らしき袋を取り出す。

 

「入浴剤ならあるわ、お花の香りとか。どれがいい?」

 

「わたしヒノキ風呂がいいな! 本物のやつ!」

 

 檜風呂!? 高級温泉かよ。

 

「それもちょっと……」

 

 無理だな、流石に。お家の風呂で(ゆず)とかを入れたりして、温泉気分を味わえるみたいな事はできない事はないが、流石に檜風呂は行くのも買うのも高校生の俺達には手を出せない値段だ。

 

 これが純粋な外人の感性だと考えると、恐ろしくなってくるな。

 

 とりあえず二人にはそのまま入ってもらう事に。アリスとカレンが入って間もなくして、何故か忍がうっとりとした表情をしていた。

 

「忍、どうした?」

 

「金髪少女のお風呂って、すごく芸術的……」

 

「どこだよ!?」

 

 多分変な想像をしていたんだろう。二人がどこかの外国の風呂でうふふ、あははとかやってる(さま)、漫画とかで見るような……そんな妄想に、陽子がツッコんだ。

 

「アリスは私と一緒にお風呂に入ってくれないんですよー」

 

 恥ずかしがり屋さんで……と忍が言うが、いくら女子とはいえそもそも日本の風呂に二人で入るスペースなんて無いような気がする。

 

「外国と日本ではお風呂事情が違うのかもね」

 

「でもこないだ私達に『一緒に温泉行きたい』って言ってたよね」

 

「そういえばそうね」

 

 綾と陽子の言ってる事は俺が聞いていない話だ。だけどあくまで女子同士だから、って考えると納得できた。

 

「あれ……私……嫌われて……る……?」

 

「そんな事ないと思う!」

 

 忍の震え声で絶望してるような顔を見ててすぐさまツッコむ。忍の事はアリスも好きだと思うし嫌われてる要素もない……はず。

 

「タダイマー!」

 

「おっ、カレン達上がったか」

 

 そんなこんなしている内にカレンとアリスが風呂から上がってきた。カレンの髪はいつも通りのセットだが、アリスはいつものツインテに纏めておらず、長い髪をウェーブ状に垂らしていた。

 

「……こう見ると、アリスが外国人って実感湧くな」

 

「えー何言ってるの? 私は元々外国人だよ?」

 

 アリスの姿を見て、どうやら独り言を呟いたつもりが聞こえていたようだ。

 

「まあそうなんだけど、ブロンドの髪を垂らしてるといつもと違う感じがしてな」

 

 というより、普段は確か忍“が”ホームステイ中にプレゼントしたという(かんざし)を常に挿しているからか、あからさまな外国人、って印象が自分の中でなかったのかもしれない。ただ見慣れていないってだけかもしれないが。

 

「そうかな? あっ、そうそう、髪で思い出したけどケン、カレンったら酷いんだよ―――」

 

 何でもアリスが言うには、洗面所に置いてあった綾のトリートメントかと思ったカレンが、アリスの髪をとかしている時に掛けたのが、綾のお父さんが使っている―――“育毛剤”だったという。

 

 しかも「違うデス! 漢字だカラ分からなかったデス!」とわざとではない言い訳をしていたらしい。

 

 ……うん、早まる癖を直した方がいいな。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

『ごちそーさまー!』

 

「お粗末さまでした」

 

 夕食も食べ終わり、綾を除く食後の挨拶で締め終わる。

 

 実際、味付けも丁度良かった。また、新たな発見として、陽子が危惧している綾の味付けが薄いのが、単に調味料等の量が単に少ない事を俺が料理に加わっている最中に判明した。

 

 だから今回、丁度良かったのかなと思った。

 

「そういえばシノ、さっき『大事な事忘れてる気がする』って言ってたけど、思い出した?」

 

 アリスが言うが、俺もそうだが多分カレンもそんな事を聞いていない。きっと二人の中で話し合っていたんだろう。

 

「それがまだ……あっ―――そうですっ! 思い出しました!」

 

 おっ、何というタイミングの良さ。思いついた表情の忍。

 

「お母さんが夕飯のおかずに肉じゃがを作ってくれたんでした!」

 

 どうぞ、と肉じゃがが入った容器をテーブルの上に置く忍。

 

「「タイミング悪い!!」」

 

 うーんこのタイミングの悪さ。俺と綾の声が重なった。

 

 ちなみに、この肉じゃがは俺と陽子で平らげました。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

「さて、俺そろそろお(いとま)するかな」

 

 軽く皆と駄弁った後、俺は重い腰を上げて帰る支度をし始める。

 

「エ~ッ、ケン帰っちゃうんデスか?」

 

 カレンが不満の声を上げ、他の皆も俺に視線が集まる。

 

「まあな。俺がいたらまずいだろ。あ、カレンはそのままいてもいいよ。帰るのは俺だけだから」

 

 カレンは女子だから問題ないとは思うが。

 

「えー、別にいいじゃん残っても。お前それでも男か?」

 

「陽子、それ本気で言ってるのか?」

 

 寧ろその男だからダメだと思うのだが。

 

「綾も、俺がいたらダメだろ?」

 

 彼女達を誘わなかったら、今日は一人だけだった綾に訊ねる。

 

「べ、別にいても……いいわよ」

 

「えぇ……(困惑)」

 

 そこは「ダメよ!」とか言うところなんじゃないの?

 

 しかし困った。仕方ない、ここはあまり言いたくなかったが、我が姉を出汁に使う事にする。

 

「そ、それに、家には姉さんもいてだな―――」

 

 そこまで言った直後、俺のポケットから電子音が鳴り響く。

 

「……なんだよこんな時に。わりぃ、ちょっと失礼」

 

 俺は謝りを入れつつ、彼女達から少し距離を取る。

 

 そしてポケットに入れていた携帯を取り出し、画面を見る。相手は姉さんだった。

 

 俺は訝しげに感じながらも、もしかして何かあったのかと思い、通話のボタンを押す。

 

「もしもし? 姉さん?」

 

『あ、健? おいっす~☆』

 

 どこぞの陽気な腹ペコ王女様よろしく、そんな呑気な声が通話口から聞こえ、どうやら切羽詰まった状況ではないようだ。

 

「……どうかしたの? 何か用? これから帰るんだけど」

 

『あっ、そうそう! その事で話があったのよ』

 

 何だろう?

 

『私―――勇の家に泊まる事になったから!』

 

 

 

 

 

「―――は?」

 

 聞き捨てならない姉さんの台詞に、俺は間抜けな声が出てしまう。

 

「姉さん、勇さんの家に泊まるって……それマジ?」

 

『マジマジのマジ! ほら勇、あんたも出てよっ』

 

 何やら向こうで急かしたような声が聞こえたと思うと、別の女の人の声が聞こえてきた。

 

『健君やっほー』

 

「ホントに勇さんだ……」

 

 明らかに姉さんと違う声で、忍達に次いで聞き慣れた声。そして俺をよく(いじ)るお人。

 

 後ろの方から「お姉ちゃんがどうかしたんですか?」という声が聞こえたが、とりあえず割愛。

 

『勇や忍ちゃんのお母さんにも許可取ったし、そこは安心して』

 

 と、再び姉さん。

 

「なるほど、姉さんが泊まるのは分かった。けどそれと帰るのに何か理由があるの?」

 

 姉さんが大宮家に泊まるのは自由だ。俺に止める権利がある訳ではないが、これから帰る時に何か関係があるのか分からなかった。

 

『あんた鍵は持ってってないでしょ?』

 

「あ? 鍵? 鍵―――あっ……」

 

 今の今でやっと気付いた。そうだ、綾の家に寄る前、姉さんが家にいると思って、家の鍵を置きっぱなしにしてたんだった。

 

 しかも一応両親も鍵を持ってはいるが、鍵の管理は基本俺と姉さんになる。そしてその姉さんは大宮宅に泊まるから鍵がない状態で家に帰る事になる。

 

 それに漬け込んで、姉さんに謀られたって事だ。くっそぅ。

 

 ―――ん? 待てよ? 両親も鍵を持ってるって事は……。

 

「いや、でも、流石に父さんや母さんも既に帰ってる頃のはずじゃ……」

 

 綾の家に時計を見る瞬間、通話口から姉さんの『んーん?』という否定らしき声が。

 

『今、父さんも母さんも家にいないよ?』

 

「…………はい?」

 

 今なんつったこの()

 

「いや、いくら何でもそんな嘘には―――」

 

『嘘じゃないですぅー本当ですぅー』

 

 なんで口を尖らせたような口調なんだウチの姉は。って、そうじゃなくて。

 

「じゃあなんでいないんだよ? とりあえず、まずそこを知りたい」

 

 両親は先生の仕事をしている。確かに残業とか重なって、帰るのが遅くなるのかもしれないが、多忙でも日付が変わる前には帰ってきている。

 

 では何故いないのか。その訳を知りたかった。

 

『んーとね、父さんと母さんには健が明日学校休みで友達の家に泊まる事は伝えてるし、私も友達の家に泊まる事を伝えたんだよね』

 

「ふむふむ」

 

『んで、その事を伝えたら、二人はオッケーって言ったの』

 

「なるほどなるほど」

 

『そしたら、父さん母さんは二人きりで過ごすってホテルに泊まる事に―――』

 

「ちょっと待て」

 

 ちょっと待て。大事な事なので二回(以下略)。

 

「なんで親がホテルに泊まるんだよ!?」

 

『それは私が知りたいわよ! まあ大方二人きりでラブラブしたいのかもしれないけど!』

 

「既に息子と娘を産んでるだろ!?」

 

 両親は次男か次女か知らんけど作る気か!? 

 

 しかも電話口から『ぷくすす……』笑いを堪えてるような勇さんらしき声も聞こえてるし!

 

『まあそんな訳で。お二方も今日は家にはいないっていう事です』

 

「解せぬ」

 

 もう頭の中がぐちゃぐちゃで整理が追いつかん。俺はそんな一言しか出せなくなっていた。

 

『弟クンも綾ちゃん家で楽しんできてねー。そいじゃおやすみ』

 

「……おやすみ」

 

 姉さんがテンション高い声で言うのに対し、俺はもうゲンナリとした声でしか返せずにいた。

 

 プツッと電話が切れる音を確認し、俺はポケットに携帯をしまう。

 

「えっと……」

 

 後ろから困っているような綾の声が聞こえた。

 

 この時、忍や金髪ーズはきょとんとしており、陽子は笑いを堪えてお腹を抑えていた。

 

「ウチに、泊まる?」

 

 同情混じりの綾からの問い。そんな彼女の問い掛けに俺は……。

 

「……お世話になります」

 

 素直に彼女の好意に甘える事にし、こうべを垂れた。

 

「ようし! 健も泊まる事が決定したし、怖い話大会をやろうか!」

 

 陽子が快活な声で言う。

 

 なんでお前が仕切ってるんだとか、男が泊まるのに抵抗を感じないのとか、色々言いたい事はあったが項垂れている今の俺には言う元気がなかった。

 

「ひっ、怖い話!?」

 

「ワーイ! Horrorデスね!」

 

 陽子の切り出しに対し、綾がビクッと体を固くし、カレンがいい発音で盛り上がっていた。

 

「もう好きにしてくれ……」

 

 俺の独り言は誰にも気に留められる事なく、そのまま怖い話が始まったのだった。

 

 余談だが綾は怖い話をすると聞いてその場から去っていたが、皆が怖いー、とかきゃーとか言っている内に「どうしてみんな怖い話なんか好きなのよっ!」と寂しさのあまりか定かではないが、仲間に入ってきた。

 

 なお、寝る時は勿論皆と一緒には寝ず、ソファで寝る事に。家でも姉さんやカレンとは別々に寝てるからね。だから何もなかった。なかったらない。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

「健、卵かき混ぜてくれる?」

 

「あいよー」 

 

―――翌朝。俺は早起きし、綾と一緒に朝食の準備をしていた。

 

 ……単にあまり眠れなかった、という事もあるけど。

 

「おはようございます」

 

 そこへ、忍がやってきた。

 

「しの、おはよう」

 

「おはよう忍」

 

 俺と綾も挨拶を返す。だが……。

 

「忍、顔青いぞ。大丈夫か?」

 

 忍の顔が青ざめている事が気がかりだった。

 

「えっ、しの風邪引いたの?」

 

 綾も彼女の事を心配する。

 

「いえ……実はすごく怖い夢を見てしまって……」

 

 忍はそう言う。風邪ではない事に安堵するが、今もがくがくと震えてる事に余程怖い夢を見たんだなと思えた。

 

「あー昨日怖い話をしたからじゃないか? 寝る前に怖い話をすると悪夢を見るってよく聞くし」

 

「そうかも……」

 

『おはよー』

 

 俺と忍が話していると残りの皆が起きてきた。

 

「おはようシノ」

 

「おはようございます、アリス」

 

 目を擦りながらアリスは忍に挨拶を交わし、忍も微笑みながらアリスに挨拶を返した。

 

「アヤ……お水、ある?」

 

「お水欲しいの? あるわよ」

 

 まだ寝ぼけ顔のアリスが、お水を要求してきた。朝起きた時って喉渇くからな。

 

「それで、その夢ってどういう夢だったんだ?」

 

「それがですね、私とアリスが風呂に入ろうとすると、アリスがダメと言ったんです。それでアリスの髪を水につけると―――」

 

「あっ、アリス危ない!!」

 

 俺が忍の言っていた夢の続きを聞こうとすると、水を貰ったアリスが危うくコケようとしたところに綾の大声が響き渡る。

 

 二人してアリス達の方を見ると、アリスの金髪が水でビショビショに濡れていた。そのせいで完全に目が覚めたようだが。

 

「アリス……」

 

 アリスが「あ~あ」とか言っている中、忍は水に濡れた少女をじぃと見据えている。

 

「良かった!!」

 

 そして、涙ぐみながら笑顔で言い放つ。どこが「良かった」のだろう。

 

「ええっ!? 全然良くないよ!?」

 

 流石に水に濡れて良かったとは言えないだろう、アリスはそうツッコんだ。

 

 後から聞いた話だが、夢ではアリスの髪を水につけると、“真っ黒”になるという。

 

 それは忍にとって大ショックものだろう。なんか納得できる自分がいた。

 

 その後は何事もなく皆で朝食を食べたり、駄弁ったりしてしばしの時間を楽しんだ。

 

 こうして、お泊まり会は無事……とは言い難いかもしれないが終了した。忍が「旅行みたいで楽しかったです」と言っていたが、まさにその通りに思えた。




学校祭終わって片付け済んだら、休みだった……いいよね? 少なくとも自分の学校ではそうでした。
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