アール、出会う
新しい機体を受け取り、僕、アール・ミュラー・イノセンツィは宇宙で待機している母艦「サングレ・アスル」へと向かっていた。この調子だと、もう半日もすれば発作が来るだろうが、それまでには到着できそうだ。先ほどから僕を襲う眩暈から、自分を責める痛みの周期を割り出す。サングレ・アスルの自室には、痛みで気が狂い自傷行為に及ばないようにするための拘束具がある。この痛みは自分への罰なのだ。あの時犯してしまった罪への。
ガンダムバトルワールドフロンティアオンライン、長いのでGBWFと呼ばれるこのゲームはニューロン接続型のオンラインゲームで、コクーンの中から接続することでまるでゲームに入ったかのような体験ができるという代物だった。一般向けのサービス開始日はこのゲームにとって大きな事件が起きた日でもある。ログアウトが不可能になり、ゲーム内の死は現実世界での死と直結してしまうようになった。絶望し泣く人もいれば面白くなったと笑う人もいた。僕はどちらかといえば後者だったと思う。死ぬのは怖いけど、せっかく始めたゲームなんだから楽しくプレイしようくらいに考えていたのだ。泣いていた人も、しばらくすると泣いているだけじゃ食っていくことすら難しいこのゲームの「現実」を見せられ、しぶしぶ戦いに出ていった。プレイヤーはゲーム開始時に地球側か宇宙側かを選ばされ、大体その二勢力に分かれていた。大体というのは後にどちらにも属さないプレイヤーが現れたからだが、今は置いておこう。次第に、この二勢力の間で戦争が始まった。このゲームを解放する方法は二つ。クリアクエストと呼ばれる高難易度クエスト群をクリアするか、どちらかの陣営が占領されるかだ。前者は時間がかかるが平和的、後者は過激だがクリアクエストよりは早く終わるかもしれない。そして地球側は前者、宇宙側は後者を選んだため戦争が起きたというわけだ。本当はもっと組織やら個人やらの事情も関わってくるのだろうが、今大事なのは戦争が起きた、ということだ。このゲームの戦争には「エース」というものが存在する。戦場で誰よりも敵を倒して帰ってくるパイロットのことだ。システム的には高レベルのパイロットのことを指すのだが、彼は違った。まだ開始間もないころからその類まれな操縦技術で瞬く間に敵を倒し、敵には悪魔として、味方には英雄として崇められる。誰が呼び始めたかはわからないが、彼はみんなから「ジョニー」と呼ばれていた。
2作目です。
前回のスピンオフのような形になっています。
楽しんでいただけたら幸いです。