IFストーリー〜もしも過去に残っていたら〜 作:幼馴染み最強伝説
臨海学校に行く事が決まってからの最初の休日。
俺はIS学園の生徒御用達のショッピングモールに来ていた。
ここには以前、千冬達とリアル鬼ごっこをした時や服を買いに来た時なんかに利用した場所だ。
誰と来ているのかというと相変わらずの四人とだ。提案したのは俺からだ。
そこはかとなく、誰と一緒に行くかで修羅場になりそうだったので、先に皆で買いに行くかと提案した。最初に言い出しておけば、文句を言われるような事もないし、全員同意してくれた。
そういえば楯無の奴も来たがってはいたが、今日は家の用事とかで来れなかったらしい。まあ仕方ないよな。ぶっちゃけ、楯無は臨海学校に来ない訳だし。
まあそんな訳で俺は四人と一緒に買い物をしている訳なのだが…………視線が痛い。
いや、わかるぞ、同志諸君。こんな美少女侍らしてたら誰だって嫉妬だとか憎悪だとかを孕んだ視線で見てしまうのが当たり前だよな。これが普通の美少女であればの話だがな。一番マトモな千冬でさえ、たまにぶっ飛んだ事になるんだぞ。それを考慮してみてくれれば、その中にも同情してくれる人がいてもおかしくないはずだ………うん、わかってるよ。わからないから負の感情しか篭ってない視線になるんだよね。多分、俺は今世界中の誰よりも殺意をその身に受けている男に違いない。
「どうした、将輝?顔色が良くないようだが」
「気のせいだろ。俺は元気だ」
「ならいいが…………あまり無理はしないでくれ」
いたって健康だ。顔色が悪く見えるのは周りの怨念の所為に違いない。
当然ながら今の千冬の服装はIS学園の制服ではない。
黒いジーンズに薄手の白いシャツの上に上着を羽織っているという簡素なものであるが、黒を基調としたその服装は実に千冬に似合っている。薄い生地であるが長袖なのでパッと見暑そうに見える。理由を聞いてみたら『肌をあまり露出させたくない』らしい。学園の制服もロングスカートだしな。本当はズボンが良かったらしいが。
対照的にヒカルノは水色のワンピースを着ている。こいつの性格なら制服でくるか、もっとボーイッシュな服装かと思ったのだが、意外だった。髪も何時もは結ってツインテールのようにしているのに服装に合わせてか結っていない。これだけ見ればさながら深窓の令嬢のようだ。普段を知っているだけにギャップが凄い。
静はシャツの上にグレーのパーカーを羽織り、ハーフパンツという出で立ちだ。おそらく目立たないように敢えて自分の雰囲気に合うクールな服装ではないものにしたのだろうが、これがまた似合っているため、普通に視線を集めている。
束は最早安定の一人不思議の国のアリス状態。どんだけ気に入ってるんだこいつ。というか、恥ずかしくないのだろうか。少なくとも、俺は一緒にいるのは恥ずかしい。せめてうさ耳のカチューシャだけは外して欲しかった。
俺の服装は…………言わなくていいか。かなりラフな服装だって事だけ言っておけば。
そうこう考えているうちに着いたのは水着売り場。取り敢えず俺は男の方の水着売り場に行こうとして………襟を四人共に掴まれた。引っ張る力が強過ぎて、一瞬宙に浮いたんですけど。
「何処に行く気だ」
「寧ろ、何で止めたのか聞きたいんだが」
「私達の水着選び」
「将輝が決めないと意味ないだろう」
「まーくんを悩殺する為のものだしね」
何ともまあストレートだが、それは携帯で写真を撮って送ってほしい。セシリアと行った時もそうだったが、周囲の視線が半端なく痛いんだ。幸い、女尊男卑の風潮は俺の出現により、原作時に比べるとマシだが、それでも男性よりも女性の方が社会的優位である事に変わりはない。だからもし何処ぞの馬鹿が難癖つけて通報すれば面倒な事になるわけだ。まあ、あのぼっち総理大臣に頼めば何とかなるかもしれないが、あの人に貸しを作るのは本意ではない。後の見返りが怖すぎて。
「そういう訳だ。諦めて付いて来い」
「後で私達も将輝の水着選びに付き合ってやるからさぁ」
それはそれで不安なんだが…………きっとろくな物を選ばない気がする。
「わかったよ、ついて行く」
ここまでくるとごねるだけ無駄なので、仕方なくついて行くことにした。
周囲の女性からの視線攻撃に晒されるのを覚悟で入ってはみたが、今日は偶々なのか、それとも何時もなのか、俺の他にも女性の付き添いで入っている男性がいた。見た所、全員カップルのようだから、俺くらいだな、独り身なのは。
「別に束さんは今すぐ恋人になってもOKだよ?何なら嫁でもいいくらい」
「心読むな、阿呆。とっとと水着選んで来い」
俺がそう言うと束はすたこらさっさと水着を選びに行った。あいつ時々俺の心読むんだよな。どういう理屈か聞いたら「そこに愛があるからさ」とか無駄にかっこいい事言いやがった。まあ二言目に求婚してきたから台無しだが。
それにしてもスカート然り、女性はよくもまあ露出度の高いものを好んで着るな。一回女子にはなったが、あの時は違和感MAXだったし。まあ男性もブーメランの奴とかあるけどあれって速く泳ぎたいからチョイスするんだよな?多分。まだ見てないが、俺はトランクス型かサーフパンツみたいなのを選ぼうと思ってたりする。妥当だしな。
「将輝ぃ〜、これどっちが良いと思う?」
最初に二択まで絞れたのはヒカルノか。どれ、あまり露出度の高いものじゃなかったら、何でもいい…………は?
「お前それ本気で悩んでんの?」
「あったり前だ!これでも花も恥じらう十代乙女なんだからな!」
何でだろう。ものすごく良いニュアンスの言葉の筈なのに、安っぽく聞こえる。
それよりもだ。何をどう間違えたら水着選びでダイバースーツチョイスするんだよ。てか、よく売ってたなそれ。因みにもう片方は布面積が必要最低限しかない水着。俺はヒカルノの感性を理解出来ない。
「で、どっちが良いよ?」
「両方ダメだろ。お前泳ぐっていうか、めちゃ魚捕る気満々じゃん」
濱○優かっつーの。○金伝説じゃねえんだぞ。
「お前、花も恥じらう乙女っていうなら、もっと女の子っぽいもの選べよ」
「え〜、例えばどんなやつだよ」
どんなやつ……か。ヒカルノのスタイルを考えるとやはりビキニタイプか或いはスポーティーなタイプの物の二択になるが、後者の方が潜水目的のヒカルノには合ってるな。
「そうだな…………これとかどうだ?」
俺が指差したのはフィットネス水着。全体的に縦ラインが施されたデザインとなっていて、ボディラインを強調するようなものだ。色も青や緑のものなのでヒカルノには非常によく似合うと思う。
「じゃあそれにする」
「凄いあっさりしてるな。もっと悩むと思ったが」
「え?何で?」
「いや、こっちの方が動きやすい!とか言ってごねるかと思った」
「あー、これ?こんなの着る気ないよん。こういう極端なのを選んだら、将輝が選んでくれると思ったからナー。普通に頼んだら断られるけど、ふざけたチョイスしたら、絶対将輝は私に似合うのを探してくれると思ってたし」
成る程。つまり俺は見事に嵌められたという訳だ。テンションがいつもと変わらなかったから、素で言ってるものとばかり思ってた。因みに俺が普通に頼まれても断るのは単に自分の感性が信用できないからだ。ファッションセンスねえからな、俺。束みたいにぶっ飛んでるってわけじゃないけどな。
ヒカルノは俺が指差した水着を取ると、そのまま会計の方に向かっていった。あんまり自信はないが、ヒカルノが喜んでいるからいいか。
「ヒカルノの水着は将輝が選んだのか」
やや不服そうな声でそう言ったのは両手に水着を持った静だった。右手には鮮やかな赤色のビキニなのだが、パレオの付いているタイプのもののようだ。もう片方の手に握られているのは………やっぱり紐みたいなやつ。なんなんだこいつら、あれか?ツッコんでほしいのか?ツッコミ待ちか?それならせめて場所を選んでくれ。
「私も将輝に選んでもらおうか……」
「いや、ヒカルノのあれはチョイスが酷かったから俺が選んだだけだ。静はその赤いやつで良いと思うぞ。かっこいい感じで」
「そうだろう。私もこのカラーリングが気に入ってな。そうかそうか、将輝がそう言うならこれにしよう」
「そうしてくれ」
良かった。静は納得してくれたようだ。いくら女性のを選んでいるからといって、女性用水着を手に取るのはなかなか勇気がいるからな。
「ところで、こっちはどう思う?」
「露出度高いから却下」
何こいつら、俺の事どんだけ信用してんの?いや、信用してくれてるのはありがたいが、誘惑するのは勘弁していただきたい。俺だって男なんだから色々と溜まる訳だ。ただでさえ、二泊三日の間、四人と寝泊まりしなければいけないというのにそんな眼福……じゃなかったエロいやつ(言い直せてない)着られてたら、帰るまでに絶対理性崩壊してるっての。マジでミハエが言ってた通りになるかもしれない。
「将輝になら襲われても構わんぞ?」
「往来でそういう事言うな。てか、お前も心読めるのかよ」
俺に人権はないのか。この調子だと千冬もヒカルノも俺の心の声読んでそうだ。頑張って隠す術を覚えよう。でないと何かの間違いでボロが出て、いじられかねない。
「まーくんまーくん!私の水着も選んで!」
「お前のは………これでいいや」
「何か凄いテキトーだ⁉︎しかも何これ⁉︎」
俺が選んだのは水着っていうか、殆ど着ぐるみ。原作でのほほんさんが着てたようなやつの兎バージョン。のほほんさんのは○カチュウぽかったけど、こっちは某魔法少女のやつみたいだな。俺あれよく知らないけどあれって兎みたいだよね。
「いや、束に似合うかと思って」
「うわ!心の底からそう思われてるよ⁈どんだけ私を子ども扱いする気だー!」
「子ども……じゃないのか?」
驚いた。まさかこいつ子どもじゃなかったのか。見た目は高校生、頭脳は幼稚園児じゃないのか。おおっ、天才幼稚園児だな。
「むかーっ!其処まで言うなら試着してきてあげるよ!束さんの魅力はこんな着ぐるみ程度じゃ隠せないもんね!」
ズドドド……という効果音が似合う勢いで束は試着室へと走っていく。因みにここの水着売り場は『女性のみ』試着がOKで、試着された水着はクリーニングするそうだ。女性優遇はこういうところできっちりと浸透している。束と入れ違いで来た千冬は首を傾げていた。
「束の奴、どうしたのだ?」
「さあ?よくわからん」
わかることにはわかるのだが、まあどっちでもいいだろう。
「でだ、将輝。これどっちが良いと思う?」
そう言って千冬が見せてきたのはスポーティーでありながらメッシュ状にクロスした部分がセクシーさを醸し出している黒水着と一切の無駄を省いた機能性重視の白水着。
これって確か………原作で一夏に聞いてたのと同じやつだな。時間軸的にはこっちのほうが先になるわけだが。
一夏のやつは理由は忘れたが、黒ではなく白を選んだものの、癖を見抜かれて結局黒になったんだっけ。臨海学校の時は黒水着の方を着てたし。
「白の方」
俺は黒ではなく白を選んだ。理由としては原作でも見たし、年齢こそ違えど一度見た水着だからだ。ならば違う方を見てみたいと思うのは当然の心理だ。
「どうしてそう思う?」
「白の方が新鮮だから。千冬ってクールだから、黒っていうイメージがあるから。現に今も黒が基調の服装だし」
千冬のイメージカラーは黒って感じだしな。案外、対照の白でもいけるかもしれない。
「そうか。私も何方かといえば白の方が新しい感じがして良いとは思っていた」
「それは良かった。てっきり千冬は黒の方が好きなのかと思ってた」
「好きではあるが、固執する程ではない。単に黒を基調とした服装の方が五月蝿い奴に絡まれなくてすむからな。それに今回は将輝の意見が聞きたくて来てもらったんだ。将輝の意見を優先するさ。第一、この水着はーーー」
其処で千冬の言葉は遮られた。言葉を遮った人物はつい先程試着室へと向かった束。
「どうだ!束さんの魅力は!」
ドヤ顔で胸を張っていう束。本人はおそらく俺達三人が自分の魅力に驚いていると思っているのだろう。しかし、千冬も静も表情から察するに正反対の事を考えているな。
「「「滅茶苦茶似合ってる」」」
「なっ⁉︎」
余談だがこの後、それを聞いた束が暴走を起こして、危うく水着売り場というか、このショッピングモールが地球上から消えかけた。