IFストーリー〜もしも過去に残っていたら〜 作:幼馴染み最強伝説
更新を待って下さっている方々の為にも頑張ってスランプを乗り越えたいと思います。
「ふぅ〜、気持ち良かった」
超絶美味い夕食を食べ終えてからの温泉は最高だ。これで酒が飲める歳になれば、もっと最高なのだろうな。
それにしても驚いたのはここに男性用の浴場があった事だ。確か、原作の時は無かったから浴場分けが難しかった的な事を千冬が言っていた気がする。まあ、細かい事はいいか、あるのに越したことはないわけだし。
今頃千冬達も温泉に浸かっている頃だろうな………は!イカンイカン、変な事を考えては。
しかし、原作一夏程ではないにしろ、今の境遇を思い返してみるとなかなか凄い状況下にあるよな。現時点ではISを動かせる唯一の男で、まだ第一世代しか存在しない時代で第三世代ISを持ってて、しかも同化する事で人外化。知識も豊富で技術も充分ある。ここまで来るとただの憑依者というより劣化神様転生者みたいな感じだな。まあ、特典なんて都合のいい代物があれば色々とスマートに解決出来たんだけどな。
「過ぎた事を言っても仕方ないか。二回目を問題なくこなせ……ば……?」
「え?」
生徒会メンバーが寝泊まりする部屋の扉を開けたまま、俺は放心状態になった。
それは当然の反応だ。何故なら誰もいないと思っていた部屋の中には上半身には何も付けておらず、下半身にも下着のみの束がいたからだ。着替えの最中だったのだろうか、下着やその他の衣類が足元に落ちている。因みに背中を此方に向けている状態だったので、胸は見えていない。
マズい………大いにマズい。何で千冬達と一緒に温泉に向かった筈の束がここにいるのかはさておき、ただでさえ、こいつは俺に夜這いを仕掛けてくるほどの奴なのに、偶然とはいえ、俺の方から束の裸体を見てしまった。束の事だ。また何かぶっ飛んだ発言を………
「き、きゃぁぁぁぁ⁉︎」
そうそう。こういう在り来たりな悲鳴……って、何でだ⁉︎
俺は束の予想外の行動に思わず中に入って勢い良く扉を閉めた。
「な、な、何で其処で悲鳴を上げる⁉︎いや、普通の反応だが、お前がそんな普通の反応するなんて、どういうつもりだ!」
「ど、どういうつもりって言われても………とにかく恥ずかしいから……見ないで」
「お、おう……すまん」
まさか束がこんな普通の反応するなんてあり得ん。それに何かおかしい、何処かしおらしいというか、まるで何時もの束じゃないような………。
其処で俺は罪悪感に苛まれながらももう一度束の方を見た。
何時もの謎のハイテンションさはどこにもなく、しゅんとしたままだ。まるで飼い主に怒られた犬のような感じだな。耳が下に垂れて………ん?耳?
「束。お前兎耳のカチューシャはどうした?」
何時も何が何でも外そうとしない束の頭には今兎耳のカチューシャがない。俺の問いに束はゆっくりとした動きで俺の足元を指差した。
「ま、将輝くんの足元に…ある」
将輝くん……て。こいつキャラ変わりすぎだろ。もしかしてこのカチューシャはあいつのやる気スイッチ的なあれなのか。それとも束がわざとそういう態度をしているかのどちらか。俺としては後者の方が普段通りでやりやすいんだが………それはそうと。
「取り敢えず、部屋出るからその間に服を着てくれ」
確かめたい事がある為、カチューシャは持って出る。束も特に何も言わなかった辺り、一気に後者の線が強くなったのだが、何とも言えない。
そうして待つ事三分。中から「入っても良い」との言葉が返ってきたので部屋に入ると束が普通に浴衣を着て、部屋の中央で正座をしていた。これにもびっくりだ。束が正座なんて堅苦しい事をするなんてまずあり得ないからな。ここまで来るとわざとしているというよりも、実は束じゃないってオチの方がしっくりくる。
「一応聞くけど、お前は篠ノ之束で合ってるよな?」
「うん………私みたいな人はそうそういないし……」
束にはあり得ない自虐発言だと………本格的に誰だこいつ。今しがた肯定の返事を聞いたのに全く同一人物に見えん。やはりこのカチューシャが原因なのか?試してみるか。
近くに寄って、束の頭に兎耳カチューシャを装着する。すると一瞬束の身体がびくりと僅かに痙攣した後、勢い良く頭を上げた。
「はっはっはー!天才篠ノ之束、ここに爆誕‼︎」
謎過ぎるウザいハイテンション。うん、束だな。
「もう、まーくんてば何時もはあんな事言ってるのに、事故を装って私が生着替えしてる所に入ってくるなんて大胆なんだから♪」
「わざとじゃない……て言っても無駄なのはわかってる。それよりもだ、お前さっきまでのは何だ?やっぱり何時ものネタか?」
「ところがギッチョン。ネタじゃないんだよね、あれ。何かよくわかんないんだけど、私カチューシャがないと自信が無くなっちゃってあんな感じになるんだよね〜」
「そうなのか、どれ」
あまりにあっけらかんというものだから、ついカチューシャを取ってしまった。先程までのウザさは何処へやら。束はまたもや別人のように大人しくなった。
「か、返して……」
そう言って手を伸ばしてきたので、ひょいっと躱す。その姿を見ると急にいじめたくなってしまい、ぴょんぴょんと跳ねながら俺の手にあるカチューシャを取ろうとしている。何時もの束ならともかくこの束になら取られる気は全くしない。しかし、まあ何というか滅茶苦茶可愛い。日頃の言動がアレなだけにギャップが半端ない。
束は取れない事に業を煮やしたのか、跳ね回るのではなく、思いっきり屈んでジャンプする。確かにそれは届くことには届くのだが、あくまで俺が動かない事が前提だ。そんでもって、俺は当然躱すのだが、手だけを動かして避けた為、束の落下方向的に俺がいる訳で、そして俺はその事を失念していた。ともすれば必然的に俺は束にそのまま押し倒される形となった。
別にここにいるのは二人だけなので大して問題はない。そう思っていたのだが………
「露天風呂というのも悪くないものだな………ん?」
「どうした、千冬?何か面白いものでも………ほほう」
「えー、なになにどったの?そんなに面白い物が私達の部屋に………成る程」
このタイミングで聞こえて欲しくない声が三つ聞こえた。因みにどんな表情をしているのかはわからない。俺は今絶賛束の胸に視界を覆われている状態だからだ。それでも尚、感覚で束の手からカチューシャを避け続けている俺の勘は凄いと思う。
「私の……カチューシャ……!」
しかし、このままでは色々とマズい。束の大きすぎて男相手には兵器レベルの胸が俺の顔に押し付けられているという事態は俺の理性にとってあまり宜しくない。安眠するだけの理性だけは何としてでも残しておかないと。
やむを得ん。ここは束にカチューシャを返すか。でないと理性も呼吸もヤバイからな。
俺は感覚で束の頭に兎耳カチューシャを装着し直すと何とか離れる。危うく窒息する所だった。まあかなり幸せな窒息だったが。
「……もう、まーくんてば酷いよ。私が自信がなくなるって言った途端にカチューシャ外しちゃうんだもん」
頭にカチューシャを装着し直した束は少し責めるような口調で俺に言う。
「仕方ないだろ、もしかしたらお前がからかうためにやってる可能性も否定出来なかったんだから」
「むぅ、信頼度が低いなぁ、私」
「日頃の行いが悪いからだよ」
別に信頼度が低いわけではない。寧ろ、かなり高いほうだが、口には出さない。絶対に何か言われるのはわかってるからな………あ、考えても駄目か。
と思っていたが、今回は読まれていなかった。今のが読まれていたら「わーい!まーくんがデレたー!」とか言いそうだからな。絶対に読まれたくない。
「安心しろ、将輝。束がカチューシャを外すと大人しくなるのはかなり昔からだ。真実であると私が保障する」
「そうなのか。それなら信用出来るな」
「〜〜〜〜ッ⁉︎」
そう言いつつ再度外す。うん。何というか、真耶に勝るとも劣らない小動物感はかなり癒されるな。いっそ、このままカチューシャ外したままにしてしまおうか。心労が減って何よりだ。
「本当可愛いな。今の束は」
こう涙目になりながら必死に取りに来る感じがものすごく可愛いと感じるのと同時に嗜虐心を唆られる。俺ってSの気なんてあったかな?よくわからないが、今の束は見ているといじめ倒したくてたまらなくなる。これはこれでマズい傾向だな。ということで装着。
「………あのさ、まーくん。一つだけ言わせてもらってもいい?」
「何だ?」
「まーくんがSでも束さんはMだから問題な痛い⁉︎痛いよ、ちーちゃん‼︎束さんの頭が粉々に砕け散るぅぅぅ‼︎」
何時の間にか隣に来ていた千冬が束の頭にアイアンクローをしていた。人体から出てはいけない音が聞こえているが、まあいいか。この束はあまり唆られないし、耐久性が高いから。
「良いではないか。お前はMなのだから問題ないのだろう?」
「いや流石にドが付くほどじゃないからこれは痛すぎるよ⁉︎あぁぁぁ、死んじゃう!死んじゃうから!離してちーちゃん!」
「安心しろ、そう言って死んだ奴はいない」
「そういう問題⁉︎」
「そしてお前がその栄えある一人目だ」
「結局死んでるよ、私⁉︎」
それにしても千冬と束のコントは見ていて実に痛そうだ。一体千冬の握力は何Kgなのか。人外の骨を握力で砕きにいけるとなると百は超えてそうだな。そもそも人間の骨をどれたけ握力があれば砕けるか知らないが。
「驚いたにゃぁ。将輝にはSの気があったなんて。やっぱり私達と同類だナー」
「ドがつかない分だけ、辛うじてマシというところか。ははは、さらに私達の領域に一歩進んだな」
「にゃははは、どんどん毒されてきてるぜぃ」
進みたくねぇ………俺だけは常人の思考のままでいたい。つか、何でこいつら笑ってんの、其処まで俺が変人の領域に至るのが嬉しいのか。もし俺がその領域に至った日にはカオスどころの騒ぎじゃない。ストッパーのいなくなったこいつらはマジでIS学園に旋風どころか暴風を巻き起こしかねない。ただでさえ、学園で使われている費用の三割が破壊されたものの修理なのに。原因の九割が生徒会ってどういう事だ。生徒達のストッパーどころか生徒がストッパーになってるよ。本当、学園長が十蔵さんで良かった。もし真面目な人だった日には胃に穴が空いてる。
「というか、そろそろやめてやらないと本当に死ぬぞ」
束の抵抗は既に弱々しいものになっており、地味に痙攣している。死ぬ一歩手前みたいだ。
「私の経験上、ここから後五分は命に関わることはない」
「……試したのか?」
「…………流石にあの時は少し焦った。まさかあんな事になるなんて………」
束の奴に一体何があった⁉︎死んだのか⁉︎もしかして臨死体験でもしたってのか⁉︎
「わざとじゃないんだ……あの時は頭に血が上っていて、ついうっかり」
俺はいつか千冬が本当に人を殺してしまわないか不安だ。ある意味では千冬が一番目を離してはいけない人間なのかもしれない。
「千冬。頼むから俺の目が届く範囲からいなくならないでくれよ」
友人が殺人犯になるところなんてみたくない。せめて俺の目が届く範囲でなら未遂で止められる。
「ふぇっ⁈そ、それは………その……将輝が良ければ……」
「寧ろ俺以外の奴には務まらないと思うぞ」
「そ、そうか……」
何故其処で赤くなる。暴走した千冬を止められるのなんて俺か、もしくは一夏くらいしか無理だろう。俺は物理的に、一夏は精神的に。しかし何故だろう………そこはかとなく話が噛み合ってないような気がする。
「や、やっと解放されたと思ったら………まーくんがちーちゃんを口説いてた……説明求む」
「何時もの事から連想してみるに」
「二人の会話は噛み合ってないと見るべきだな」
千冬の反応をみるに確かにどう考えても意思疎通が出来てない。
「一応言っておくが、口説いてるとかそういうのじゃないぞ」
「……………わかっているぞ。べ、別に変に勘違いなどしている訳がなかろう」
((((してたな、確実に))))
何となく皆の考えてる事がシンクロした気がする。だって全然誤魔化しきれてないもん。本当に嘘をつくのが下手だな。
「な、何だ、その生温かい目は!」
睨んでくるが、全然怖くない。変に強がっている所為で寧ろ可愛いとすら思う。
「織斑は将輝と会話をする度にイメージの崩壊が著しいな」
「会長としての織斑しか知らない奴は見たらどういう反応するか、一回見てみたいナー」
「誰よりもキャラ崩壊が著しいからね、ちーちゃん」
確かに千冬のイメージ崩壊が凄いことになってる。一応表面上はクールで堅物というイメージを保ってはいるものの、一歩踏み込んでみれば、全く別人だ。もっともその一歩を踏み出すには凄まじい勇気が必要になるけどな。
「どいつもこいつも何だその言い「うるはいでふよ!」」
ものすごい勢いで扉が開かれたかと思うと入ってきたのは浅井先生……なのだが、浴衣は着崩しているし、目も泳いでいる。顔も真っ赤だし、足元も覚束ない。そして何より………酒臭ッ⁉︎
「ひとがせっかくきもちよくのんれいるのにろういうつもりなんれすか⁉︎」
「何酒飲んでんだ、あんた‼︎慰安旅行じゃねえんだぞ!」
「はははははは、こんらのいあんりょこうみたいなもんれすよ。ろうせ、わたしがいらくてもあらたたちがなんとかするれしょうしね」
「職務放棄してんじゃねえよ!俺たちは生徒!あんたは教師!さて問題、授業を教えるのはどーっちだ!」
「わたしたちがあらたたちにおしえられることはもうありませんっ!あらたたちはもうりっぱなしゃかいじんれす!あ、なくなっちゃった、おかわり〜っ!」
「だああああっ!ここは居酒屋じゃねえっての!とっとと自分の部屋に帰れ!」
「………くかー……」
「こんな所で寝るなぁぁぁぁぁぁ‼︎」
本当に何でこの人はIS学園の教師になれたんだ?ていうか、この人採用した馬鹿は誰だよ。
IS学園・学園長室にて。
「ハックション!………夏風邪でも引きましたかな。それにしてもここまで静かというのは久しい。彼等は臨海学校を楽しんでくれているでしょうか」
やはりというべきか、浅井翔子(25)を教師として迎え入れたのはIS学園の良心、轡木十蔵。学園長その人であった。