IFストーリー〜もしも過去に残っていたら〜   作:幼馴染み最強伝説

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生徒会の一存

 

(………負けて、しまいました)

 

決勝戦後の閉会式。真耶は列の最後尾で項垂れていた。

 

エネルギーが尽きたのはほぼ同時だった。間違いなく、あの試合で打てる手は全て打ってきた。あれ以上の試合結果を望むことは出来ない。

 

だが、強いて言うなら最後の一瞬、真耶に迷いが生じた。射撃兵装に切り替えるか否かが脳裏をよぎった事でブレード投擲のタイミングが僅かに遅れたのだ。あの時、迷う事なくブレードを投擲していれば結果は変わっていたかもしれない。結局は最後の最後で経験の差が二人の勝敗を分けた。

 

周囲から見てみれば代表候補生で専用機持ちの二年生相手に一年生があらん限りの知恵を振り絞って後一歩の所まで追い詰めたという事実は賞賛するべきものだが、真耶にとってはそんな事はどうでもいい。

 

ただ、勝ちたかった。自身の敬愛してやまない人物と同じ世界にいたかった。

 

来年の秋になれば、生徒会は一新される。そうすれば真耶は確実に生徒会入りを果たすであろうが、それでは意味がない。彼女はただただ将輝の役に立ちたいが為に生徒会役員になりたかったのだから。

 

「一先ずはお疲れ様。今回のトーナメントは参加者にとっても、観戦者にとっても、非常に有意義な時間となったと思う。特に決勝戦は俺たちから見てもかなり良い試合だった。特に山田真耶さんの発想力には観戦していた皆も度肝を抜かれたと思うし、瞬時加速を習得した努力も評価すべき点だ。そう言った点を鑑みて、彼女は我が生徒会に相応しい人物だと言える………とはいえ、優勝者は別の人物だ。ミハエ・リーリスさんも彼女の発想力に押されながらも対処し、最後は紙一重だが勝利を収めた。彼女も是非我が生徒会に入っていただきたいのだが…………」

チラリと将輝はミハエの方を見るとミハエは静かに頷いた。

 

「残念ながら、彼女は生徒会入会を辞退した。よって、生徒会入会権は準優勝者である山田真耶さんに与えられるものとする」

 

「え……?」

 

将輝の言葉に真耶は勢いよく頭を上げた。何故?どうして?という疑問が脳裏で錯綜する。

 

試合前も最中も、二人は互いに愛する者と同じ世界に立たんが為に全力でぶつかりあった。その結果、真耶は敗北し、ミハエは勝利した事で願いを叶える権利を得た。だというのに、ミハエは自ら勝ち取った権利を在ろう事か捨てたのだ。

 

戦ったからこそわかる。自身もそうだが、彼女とて生半可な覚悟で戦っていた訳ではない。それこそ全てを賭けて戦っていた。その結果、掴み取った勝利と願望をミハエは真耶に譲ったのだ。真耶からしてみればその行動は全く理解出来ないものだった。

 

「山田真耶さんの生徒会入会については後日正式な手続きを済ませてからにする。ある意味ではこの結果に納得出来ない者もいるかもしれないが、それは本人に聞くといいよ。残念だが、俺は答えを持ち合わせてないからね。今回ISを貸し与えられた十五名は明後日までに教員か或いは篠ノ之博士に渡しておくように。それと今日は疲れただろうからしっかりと休むように。これにて第一回ISトーナメント大会終了を宣言する。生徒会からの話は以上だ」

 

将輝がそう締め括るとトーナメント参加者は一斉に散っていく。皆の話題は既にトーナメントから別のものに変わっており、その中に浮かない顔をした者は真耶を除いて他にいなかった。そして真耶もまた閉会式が終わると同時に足早にミハエの元に駆け寄った。

 

「リーリス先輩!」

 

「何かしら?山田さん」

 

「何故ですか⁉︎どうして生徒会入会を辞退したんですか⁉︎リーリス先輩は………将輝先輩と同じ世界にいたかったんじゃなかったんですか?」

 

始めこそ責め立てるような口調ではあったが、すぐに尻すぼみになる真耶。確かに真耶にはミハエの行いは理解出来なかったが、もしそれが考え抜いた末の結果であれば咎める権利は持っていないからだ。かといって、それを聞かずして真耶は生徒会に入る事など到底出来ない、そう思っていた。

 

「確かに私は彼の事が好きだし、同じ世界にはいたいわ………だけど、それは生徒会にいなくても出来ることよ」

 

「え?」

 

「だって私、彼と同じクラスだもの」

 

確かにミハエは将輝同じクラスだ。しかし、それを言えば千冬や束、静やヒカルノも同様だ。それを踏まえた上でミハエは生徒会に入りたいのだと真耶はそう思っていたし、事実そうだった。

 

「私ね、考えたの。織斑会長達は同じクラスの上で生徒会という同じ組織に所属しているわ。つまり私より彼といる時間が長くなるわ。だから生徒会に行くまでの間は私の方を優先してもらえるようになるじゃない。それに彼から聞いたのだけれど、彼以外の生徒会メンバーは頭を抱えたくなるほど行動が個性的らしいから、それどころではなくなってしまうもの。始末書を書くのに追われる日々なんて真っ平ご免よ」

 

そう嘆息するミハエに真耶も微妙な表情になる。

 

真耶は生徒会に用があり、何度か訪れる事があったのだが、その度、束やヒカルノに全力でツッコミをいれる将輝の姿があった。マシな日はそれで終わるのだが、酷い時は其処から一時間耐久校内リアル鬼ごっこが開催され、真耶もそれを手伝ったりもした(鬼が束なのでむしろ返り討ちにあうが、餌としては上々)。もしあの環境にマトモな部類であるミハエが入れば将輝と共にストッパーの役目をさせられ、生徒会を辞めるころには胃薬を常備している可能性もある。現に将輝も常備する程までいってはいないが、酷い時だけは飲んでいる状態だ。

 

「その表情。貴女も彼処の酷さを知っているのね。ならわかるはずよ。彼と一緒にいる時間と精神的ダメージを差し引きするとゼロどころかマイナスになりかねない。だから私はあえて入会せず、それでいて彼と一緒にいられる時間を増やす方を取ったの…………それに他に理由もあるわ」

 

「他の理由?」

 

「一年生である貴女が二年生で専用機持ちの私を後一歩の所まで追い詰めた。ただでさえ、一年もの差があるというのに量産機と専用機の差すらものともしない健闘ぶりは誰の目から見ても素晴らしいものだったわ。もし、貴女が専用機持ちでなくとも同級生だったのなら、私は決勝戦に出る事すら出来なかったでしょうね」

 

「でも、それは……」

 

「そう。たらればの話よ。貴女は一年生で私は二年生。専用機持ちの代表候補生とそうでない代表候補生。この事実は変わらないわ。けれど一年後なら話は変わってくると思うの。今日の試合、世界各国の政府の人間が見ていたけれど、その中には日本政府の人間もいたはずよ。となると、そう遠くないうちに貴女も専用機持ちになるわ。確かにあの空間は精神的に悪影響を及ぼす場所ではあるけれど、次の段階に進むという意味では彼処ほど素晴らしい場所はないわ。人間としても、IS乗りとしても強者の集いし組織なのだから」

 

(強者どころか人類超越者の集まりのような気が………もしかしてリーリス先輩は私も人外になれと暗にそう言っているのでしょうか?無理です!あんな境地には絶対たどり着けません!校舎の外壁を走って登ったり、タックルで壁を壊したりなんて!)

 

「…………買い被りすぎです。私にはあの領域は無理です……」

 

「貴女、壮絶に勘違いしているようだけれど、人外になる必要はないのよ。私は強くなりなさいと言っているだけだから」

 

「そ、そうなんですか。よ、良かったぁ………」

 

(この子もこの子で何処か変ね。ある意味、私よりあの環境に適合しているのかもしれないわ)

 

危なっかしい天然さと妄想癖を持つ真耶の特性を今のやりとりで見抜いたミハエもまた将輝達の影響を受けている事を本人は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー以上が今回の尋問の結果です。篠ノ之博士特製の嘘発見器も使用しましたので、全て真実かと」

 

「了解。ご苦労様、楯無」

 

トーナメントの後始末が終わった後、俺達は生徒会室に集まって、捕獲出来た十六名の尋問結果を聞いていた。結局、あの金髪の人には逃げられ、交戦中に何人か流れ弾やらで死んだ。おまけに捕まえた奴らは下っ端も下っ端で、大したことはわからなかった。

 

「いえいえ、当然の事をしたまでですよ。それに強いて言うなら労いの言葉よりも見返りをですね……」

 

「駄目だよ、たっちゃん!それは私が先なのだ!」

 

「いくら大恩ある篠ノ之博士といえどこればかりは譲れません!」

 

「「ぐぬぬぬ……!」」

 

「お前ら何やってんだよ……」

 

睨み合う楯無と束に溜め息を吐く。大仕事が一つ終わったというのに、こいつらと来たらいつもと変わらずテンション高えよな。その元気さを少しは分けて欲しいもんだ。

 

「分けてあげようか?房中術で」

 

「じゃあいらねえや」

 

元気をもらうどころか消耗するだけだっての。第一、そんな心得ねえだろうが。

 

「それはそうと将輝。お前から逃げおおせた奴が侵入者の中にいたと織斑から聞いたのだが……」

 

「ぬわにぃ⁉︎将輝から逃げおおせるなんてどんな化け物だよ、そいつ⁉︎」

 

静の疑問にヒカルノが椅子を倒しながら立ち上がった。遠回しにというか、かなりストレートに人外扱いされたが、割と日常化してきたのでスルー。

 

「経験の差だよ。表しか知らない学生と裏で生きる人間のな。それに相手はかなり優秀なテロリストだったよ。今までの奴なんて比較にならねえくらいな」

 

今日つけられた傷の八割以上がそいつにつけられたものだ。防弾防刃素材で出来た服じゃなかったら、もうちょっとダメージがあったかもしれないな。それでも負ける気はしないが。

 

「将輝にそうまで言わせるとは………是非とも手合わせ願いたいものだ」

 

「阿呆。戦闘狂みたいな事言うな。第一、相手は人殺しを厭わないテロリストだ。極力、お前らを闘わせたくない」

 

十中八九、こちらの無双で終わるだろうが、万が一という事もある。何かあってからでは遅い。出来うる限り、俺以外にそういう危険な目にはあって欲しくない。俺は多少の怪我なら大した痛みもないし、すぐに治るが、皆は違うからな。

 

「最近、将輝が過保護になってきた件について。同意がある人挙手〜」

 

ヒカルノがそう言うと全員同時に手を挙げた。おい、誰が過保護だ誰が。ていうか、過保護でもいいだろうに。一応全員嫁な訳だし………男が命賭けて護るのは例えISが有ろうと無かろうと当然の事だろう。

 

「にゃははは、未来の旦那様は過保護すぎるにゃぁ」

 

それくらい大切に想ってるって解釈は出来ねえのか………いや、多分した上でこれなんだろうな。だから余計にタチが悪い。

 

「話を戻すが、将輝と交戦し、逃げおおせたその者はやはり以前この学園を襲撃した組織と同じなのか?」

 

「ああ。だからこそ、片っ端から捕まえて少しでも全貌を掴みたいんだが………」

 

「そう甘くはない……という事か」

 

「かといってずっと手をこまねいている訳にもいくまい。後手にばかり回っていては何れ大きな被害が出る」

 

それに守ってばかりはしょうに合わんと千冬は言う。確かにまだ彼方が俺達を意識していないお蔭で被害をほぼゼロで一網打尽に出来ている訳だが、一人逃してしまった以上、今後は俺達の相手をする事を前提に仕掛けてくるかもしれない。そうなると危ないのは俺よりも一夏や箒だろう。正面からぶつかりあって勝ち目がないのであれば、人質を使うのは定石だ。いくら護衛に更識がついているとはいえ、組織の規模を考えるとそう楽観してはいられない。となるとそろそろ此方からも仕掛けた方が良いかもしれないな。

 

「束、ヒカルノ」

 

「OK。三日ちょうだい」

 

「あいつら丸裸にしてやるよん」

 

「調べるだけで絶対に仕掛けるな。やるなら確実に徹底的に叩き潰したい」

 

大戦後から今まで存在出来るような大規模な組織だ。おそらく頭は一つだけじゃないし、世界中にいるはずだ。一匹ずつ潰していくのはあまりに効率が悪いし、雲隠れされかねない。逃げられてまた再興されるのも面倒だ。

 

「ところでまーくんから逃げおおせたっていう女の名前、教えてくれる?そいつの動向調べておくからさ」

 

そういえばまだ名前を教えてなかったな。ある意味俺が逃す好きを作った要因でもある訳だから言ってるつもりになってたけど。

 

「金髪でロングヘアーの女だ。名前はーーーオータムだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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