IFストーリー〜もしも過去に残っていたら〜   作:幼馴染み最強伝説

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国立IS学園生徒会執行部

 

 

 

「はぁ………どうしたもんかねぇ…」

 

トーナメントから二日後。とある喫茶店にて俺はある事に頭を悩ませていた。

 

何故学園でないのかというと、気分転換と息抜きを兼ねているのだが、絶賛脳味噌フル回転中なので、息抜きという意味合いはないに等しい。

 

凡そ学生が考えるべき事ではなく、それでいて一般人が考えるような事でもない。

 

今から一ヶ月以内に俺たちはとある組織に喧嘩を売る。そのとある組織とは世界中で暗躍し、この世界でおそらくは最も強大とされる組織。

 

名は亡国機業。

 

原作においても殆ど情報がなく、それなのに重要な事件の裏にはその組織の影があった。

 

組織の規模も、構成メンバーも、剰え幹部一人の名前すら知らない俺が無謀にも其処に喧嘩を売れるのは単に信頼出来る仲間達のお蔭だ。そして信頼出来る仲間達は俺を筆頭に人間の領域を逸脱した奴らばかり。ただの高校生風情では負け戦も甚だしいが、俺達が集まれば世界とだって戦える。少し前までは何を馬鹿なと思っていたが、今はなんとなくだがそう思える。自信がついたのか、単に慢心しているのかは自分の事なのでわからないが。

 

まあ、攻める方に関しては特に心配していない。寧ろ、今の今まで防戦を強いられていた所為でフラストレーションが溜まっている千冬や静がやり過ぎないか心配だ。こっちとしては誰も殺さず、殺されず、全員豚箱送り(束特製史上最凶の牢獄)にする予定で、もれなく刑に服してもらう。九割は終身刑だろうが、テロリストの末路なんてそんなもんだろう。

 

心配すべきはそこじゃない。此方が攻勢に出るからといって、迎撃に組織の奴ら全員が来るはずもない。迎え撃ってくる奴に逃げる奴、組織を裏切る奴もいるだろう。そして何より厄介なのが、俺たちを無力化するために俺たちの血縁者に手を出す事だ。守る方法など腐る程あるのだが、生憎とその為の時間がない。となると個別に護衛をつけるのではなく一箇所に集める必要があるし、集めた後の護衛は何にすべきだろうか。やはり更識の人間に束とヒカルノ特製武装か?それにIS学園の防衛機能を働かせれば鬼に金棒だが、それでも多勢に無勢、完璧に守りきるのは不可能だ。いっそ事情を話して教員や専用機持ちにも動いてもらうか………いや、ダメだ。それだともし取り逃がした奴らがいた時に矛先がそっちに向きかねないし、リスクが高すぎる。

 

「はぁ…………どっかに都合良く強そうな奴転がってねえかな」

 

などと戦闘狂じみた発言をしたその時、向かいの席に何者かが座った。別に混んでいるわけでも無いのに向かいに座るものだからIS学園の人間かと思ったが、そうではないらしい。

 

「よぉ、一昨日ぶりだな、バケモノ」

 

金髪のウェーブがかかった髪に整った容貌。それとは対照的な粗暴な口調と獰猛な笑みを浮かべているのは先日、俺と交戦した女性ーーーオータムだった。

 

二十二対一という圧倒的不利な状況下での久々の俺の全力戦闘に不利と見て、あの時は大したやり取りもせずに逃げ出したから本拠地にでも帰っているかと思ったが、まだこの辺りを彷徨いていたらしい。

 

「何の用だ?」

 

「あぁ?別に用なんかねえよ。ただ、面白そうな面を見つけたから来ただけだ」

 

「何だ。てっきり、一昨日の続きでもしに来たのかと思った」

 

「ハッ!あれはてめえを掻っ攫ってこいっつー組織の仕事だったからやってただけだ。てめえには私が殺せて、私にはてめえが殺せない。それがわかった時点で金積まれねえ限り、誰がてめえみてえなバケモンの相手なんてするかよ」

 

酷い言われようだ。確かに武装したテロリスト大勢対素手の高校生で圧倒してりゃそう言われてもおかしくはないか。金を積まれれば動くというあたり、組織の忠誠心云々よりも自分ありきって所か。

 

「それにしたって、ちったぁ警戒した方が良いんじゃねえか。隙だらけだぜ、てめえ」

 

「生憎と殺気には鋭い。爆睡してたって反応出来る」

 

後、貞操の危機もな。でないと今頃(性的に)美味しく食べられてるだろうし。

 

オータムの出現に反応出来なかったのは彼女に殺意がなかったから。まあ、こんな街中で殺意だだ漏れとか洒落になってないしな。

 

「ケッ、可愛くねぇ餓鬼だぜ」

 

悪態をつきながら彼女は懐からガムを取り出して口の中に放り込む。

 

「意外だな」

 

「あん?何が?」

 

「てっきり煙草吸ってると思ってた」

 

「バァカ、こちとら仕事の関係上、イメージダウンに繋がるような事は出来ねえんだよ。女が煙草臭えといくら表面が取り繕えてても警戒される可能性が高えからな。まあ、私ならそれくらい何とか出来るが、面倒な仕事はとっとと終わらせたいタチなんでな。お前んところは妙に無用心っつーか、今思えば誘われてたんだろうな。部下揃いも揃って捕まっちまったが、私には関係ねえ。私だけ生き残ってりゃいいんだよ」

 

おおう………そんな邪悪そうな笑みを浮かべられても反応に困る。流石は自称悪の組織の一人だな。見た目も発言も悪っぽい………ん?待てよ。

 

「オータム」

 

「あぁん?人の名前を気安く呼んでんじゃねえよ。様つけろ、様を」

 

「あんたは亡国企業(組織)に忠誠心はあるか?」

 

オータムの要求はスルーして話を続けると軽く舌打ちをしつつ、オータムは答えた。

 

「んな殊勝な心掛けがありゃ、今頃私ゃ檻の中だ。自分の身可愛さに逃げ出したりしねえよ」

 

「つまり、組織に忠誠心はないんだな?」

 

「ねえよ。私はあくまで金積まれてるから仕事してるだけだ。それに見合わねえなら仕事なんざ放棄するに限る。まあ、そんな事は今回が初めてだけどな」

 

組織には所属しているがギブアンドテイクで動いてるって事か。分かりやすくて結構。組織に忠誠を誓ってますっていう相手なら先ず話にならないからな。

 

「てめえ、一体何企んでやがる。まさかたぁ思うが」

 

「そのまさかだよ。俺は………いや、俺達は亡国企業(あんたら)と戦争する気だよ。そんでもって出来ればあんたをこっち側に引き入れたい」

 

俺が肯定するとオータムは一瞬惚けた後に爆笑する。ただでさえ、静かな店内に響き渡る声だが、幸いにも店内にはオータム以外男性しかおらず、声の発信源が女性であるため、止めようとする者はいない。その代わりに非難の視線は俺に向けられる。そりゃそうなるわな。原因は俺な訳だし。

 

「こんなに………ククク……笑わされたのは久しぶりだぜ。今の、もしネタで言ってるなら流してやるよ。マジで言ってるなら…………てめえはやっぱりただの餓鬼だ。一介の高校生風情が私をどうやって引き入れる?資金力なんざ其処が知れてるし、そもそも規模が違う。話になんねえよ」

 

「生憎と俺はともかく仲間の方の資金力は国家予算よりもあるらしいぞ」

 

「は?」

 

「科学者って儲かるんだな」

 

「いやいや、ちょっと待て。んだよ、国家予算よりあるって。ぶっ飛び過ぎだろ。もうちと現実的な話しやがれ」

 

「IS創る度に大金入ってくるらしいし、それくらい余裕じゃね?」

 

「………」

 

あ、沈黙した。この手のタイプが呆気に取られるなんて俺結構凄いこと言ってるって事なのか?この程度で驚いてたら、うちではやっていけないが、誰もギャグに対する耐性なんて求めてないから別に良いか。

 

「ま、まあ、百歩譲ってだ。金を積んだとしても、てめえがいくらバケモノでも限度があるだろ。世界規模の犯罪組織と数人の餓鬼。何もかも上手くいって、一割消せれば良いほうじゃねえか?其処にISの生みの親がいたとしてもな」

 

今までの経験からオータムは忠告してくれているのだろう…………あれ?こいつ良いやつなんじゃね?原作だと噛ませ感が半端なかったのに。

 

「ん?おい、てめえ、何か勘違いしてるみたいだから言っとくが、私は消される一割に含まれたくないだけだぜ。餓鬼と心中なんざ死んでもごめんだ」

 

あー、そういう事か。それなら納得だが…………その心配は無用だ。一滴の血も流させはしない、なんて出来過ぎたことは言わないが、少なくとも俺以外のメンバーの手は汚させない。人殺しになるとすれば俺だけでいい。

 

「ちっ、気まぐれでも餓鬼と話すんじゃなかったぜ。あばよ、バケモノ」

 

「ちょい待ち」

 

「あんだよ。しつけえぞ」

 

やや苛ついた様子でオータムは去ろうとしている足を止める。そんな怒んなくても良いじゃん。怖いから睨まないでいただきたい。

 

「気が向いたらでいい。IS学園に来てくれ」

 

「てめえ人の話聞いてたのか?つか、よくよく考えたら私年上なんだから敬語使え」

 

「現状敵であるあんたに敬語は必要ないだろ」

 

味方になっても使うかはわからないけどな。俺敬語とか苦手だし。何で千冬には使えたか?簡単だ。人間、命がかかわると多少の無理は出来るようになるもんだ。死にたくはないよな。

 

「其処については同意してやる。てめえと私は敵だ。それだけは変わらねえって事を覚えとけ」

 

そう言い残すと今度こそオータムは立ち去る。交渉は失敗か。成功する確率は元からゼロに近かったし、そもそもオータムの気性の荒さを考えて話し合いが出来ただけめっけものだろう。

 

ちょうどその時、ポケットに入れていた携帯電話が鳴る。画面には『貴方のお嫁さん♪』という単語が表示されていた。いや、俺のお嫁さんいっぱいいるんですけど…………最後についてる音符で誰なのかは一発でわかるけどな。

 

「もしもし」

 

『ヤッホー!元気~!まーくんのアイドル束さんだよ~!』

 

何時の間にか、皆から俺限定に変わってるが、そこは華麗にスルーだ。

 

「何かわかったのか?」

 

『そだよ~。悪の組織っていうくらいだからもう少し捻りがあるかと思ったけど、全然大したことなくて、思ったよりも早く終わっちった』

 

そりゃ、束やヒカルノが本気出せばどんな所のセキュリティーもあってないようなものだろう。飛んでくる銃弾をティッシュ一枚で防げって言ってるようなものだ。なんて無理ゲー?

 

『そんな訳で早く帰ってきて~。そろそろ私やヒカりんもまーくん成分補充しないと死んじゃうから』

 

「はいはい、わかったよ」

 

成分ってなんだ。前々から思っていたが、俺は何か特殊なエネルギーを身体から出しているのか?なにそれ怖い。

 

代金を支払い、俺はIS学園へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室に戻ると既にメンバーは全員揃っていた。

 

案の定、校外に出ていた俺が最後らしい。

 

「ぶぅ〜、遅いよ、まーくん」

 

「すまん」

 

頬を膨らませて文句を言う束。電話口ではああ言っていたのに生徒会室に来ても飛びついてこないあたり、場を弁えている、という事だろう。少し前までなら考えられない状態だが。

 

「さて、全員揃った所で始めるか。ヒカルノ」

 

「ほいほいっと」

 

千冬に促されてヒカルノが空中に大型のディスプレイを投影する。こういう時、束にさせないのはちょくちょくふざけた要素を入れてくるからだ。そのせいで理解に時間がかかる時もあるので、必然的にふざける事のないヒカルノになる。

 

「組織の構成人数はトップから下っ端まで全員で三億人。半分以上が下っ端で、将輝が相手にしたオータムって奴も数多ある実働隊の小隊長らしいよん。中間管理職みたいな奴ら下っ端の三分の一くらいで、幹部クラスはそれの五分の一くらいかにゃぁ。その他諸々、どのポジションにも当てはまらなそうな奴らを差し引いてみてみたわけだけど…………トップはやっぱりひとりじゃないみたいだよん。で、これがその一覧とそいつらの『表の』職業」

 

表示された画面が切り替わり、亡国企業を統括しているであろう面々が表示される。そいつらの職業は皆、揃いも揃って社長やら政府の官僚ばかり。この手の統括者達は表の仕事はそういう職業ばかりというのはよくあることだが………良かった。国のトップはいないらしい。

 

どんな立場であれ、例外なく豚箱行きだが、国のトップを捕まえるとなると、善政であれ悪政であれ、国の政治が確実に荒れる。官僚を捕まえても少なからず影響はあるが、代わりはいるだろうし、問題はないだろう。

 

「………ん?ヒカルノ、その日本人の顔わかるか?」

 

何となく見たことのある名前を見つけ、顔写真を表示してもらう。やはりか。

 

「副会長………この人って……」

 

「ああ、何か企んでそうだとは思ったが、そういう事らしい」

 

「二人とも、知り合いか?」

 

静が不思議そうに聞いてくる。そういえば、生徒会の人間は顔を知らなかったな。あの場に繋いだ時もすぐに楯無に代わったし、あいつは映像には映っていなかったのかもしれない。因みに束は誰こいつ的な感じで首を傾げているのにはスルー。お前あの場所にいただろ。名前はともかく顔は覚えとけよ。

 

「知り合いっつーか、話し合いをしただけだよ。重要人物保護プログラムの事について、な」

 

「あー………いたね。そんなやつ。まーくんに論破された無様な政治家が」

 

そもそも論争にすらなってなかったけどな。それにあっちがこっちを餓鬼だと思って調子ぶっこいてたし、こっちには勝つための手札が揃ってたから勝てただけだ。

 

画面に映し出されたその人物は政治家、早坂鉄朗。

 

重要人物保護プログラムという原作開始前の重要イベントをへし折る為に俺と束が乗り込んだ国会議事堂の中で話し合いをした相手。重要人物保護プログラムの政策を打ち出した人物であり、張り付けられた笑みが寧ろ怪しさを引き出していた。確実に黒い事を考えていると思ったが、こういう形で繋がっているとは思わなかった………っていうか、あのぼっち総理大臣、絶対知ってただろ。あの人を見透かしたような人間が知らないはずがない。知ってて泳がせたということか。あれならやりそうだ。

 

またこの男とは話し合う事になりそうだ。あの時の事について。

 

「ちょっとそれたけど、話を戻すよん。この組織を統括してる奴ら二十七人。当然ながら国籍はバラバラ、いる場所も別々なわけだけど…………一網打尽にする方法が無いわけじゃない」

 

「今から一週間後。一年に一度ある顔合わせを兼ねた報告会みたいなのがあるらしいんだ。警備もかなり厚いし、場所が街中のどデカイビルの地下だからISも使えない。間違いなく命懸けだね」

 

「俺は関係ねぇよ。命のやり取りするのは初めてじゃないからな」

 

自分で言っておいてあれだが、学生の身にして死線は幾度となく越えてきた。心配なのは千冬達だが…………多分訊くまでもないし、訊くと怒られるだろう。

 

「千冬、静、束、ヒカルノ、楯無。悪いがお前達の命は俺がもらうぞ」

 

「ふっ、改まって言うから何を言うかと思えば、愚問だな」

 

「将輝がここに残った時から私達の命は将輝の物だよ」

 

「そういう事。まーくんの行くところに私達の影ありって感じかな」

 

「将輝は私達の旦那様だからナー。生きるのも死ぬのも同じだよん」

 

「ですから、私達を残していなくならないでくださいね、副会長」

 

わかってるさ。皆を残していなくなるなんて事は出来ない。これだけ依存されていると、もし俺が姿を消せば、全員自暴自棄になりかねない。文字通り、俺と皆は運命共同体だ。

 

「良し。作戦決行は一週間後!あいつらに喧嘩を売る相手を間違えたって事を教えてやろうぜ!」

 

 

 

 

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