IFストーリー〜もしも過去に残っていたら〜   作:幼馴染み最強伝説

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彼女達のフラグは折れない

 

 

 

(あ〜、眠みぃ)

 

亡国企業の幹部達を一網打尽にし、どの国家の法律も通じない刑務所こと『檻の中の愚者(イン・ザ・フール)』へと半ば強制連行を終えた将輝達がIS学園へと帰還を果たしたのは凡そ二時間前の出来事だった。

 

現時刻は午前七時半。何も知らない生徒達が元気良く何時もと変わらない朝を迎え、食堂にて目覚ましの朝食を摂る時間だ。

 

そう。何も知らない。

 

無知は罪だと語った者がいた。けれど、知り過ぎる事もまた身を滅ぼす。

 

そして彼女達の場合、無知ではなく、知る必要がないだけだ。前者には当てはまらず、『表』の世界の住人として『裏』を知らず、生涯を終える。知ってしまう者もいるが、ごく稀だ。

 

少なくとも、将輝はそういった『裏』の人間達から生徒達を護るのが、自身の役目であると思っているし、実際副会長就任直後はそう説いた。その功績を讃えられようと讃えられまいと彼女達が『IS学園の生徒』である以上、無条件で護る。それが将輝の信念だった。

 

欠伸を噛み殺しながら、眠気覚ましにコーヒーを淹れて一人、食堂で休息を取っていた。

 

もちろん、周囲には生徒達が存在するが、皆、友人達と会話を楽しんでいる。その風景を見た将輝の頬は自然と緩んだ。

 

(色々あったが、やっぱりこういうのが一番だよな)

 

などと自らが勝ち得た平和に浸っていた将輝が何気なく、テレビに視線を向けたちょうどその時、お天気コーナーをしていた朝のニュース番組に突如緊急特番に切り替わった。

 

『緊急ニュースが入りました。昨晩未明、亡国企業(ファントム・タスク)と呼ばれる大規模なテロ組織が数名の少年少女の手により壊滅されたとの情報が入りました』

 

「はぁ?」

 

『情報の発信源は不明ですが、午前一時頃、全世界のテレビ局のシステムが何者かにジャックされ、その時、全てのチャンネルがとある映像に統一されたようです。今から映像の一部をご紹介します』

 

画面が切り替わり流れたのは、つい数時間前の将輝だった。亡国企業の幹部達とのやり取りや自動人形達を事も無さげにあっさりと捻り潰す姿。トドメに彼等を連行する際に笑顔で一言を放ったシーンは狙ったかのようにズームされていた。

 

要所要所の絶妙なアングル。全世界のテレビ局のシステムを同時ハッキングする異常性、何よりその異常を行動に移そうとする変態思考。思い当たるのは一人だけだった。

 

「たぁぁぁばぁぁぁねぇぇぇぇぇぇぇ‼︎」

 

椅子から勢い良く立ち上がった将輝は周囲の驚きを尻目に食堂から一気に駆け出した。目指すはただ一つ、寮の束の部屋であるが、食堂を出て最初の曲がり角を曲がった直後、元凶たる彼女がそこに立っていた。

 

「あ、まーくん。おはよう」

 

「おはようじゃねえ!なんだ、あれ⁉︎俺達が昨日やった事全部全世界に知れ渡ってんじゃねえか!」

 

「気に入ってくれたかな?」

 

「馬鹿!何であんな事しやがった!誰にもバレないようにするのが、今回の作戦の一つだっただろうが!」

 

普段からぶっ飛んだ行動をする度、怒る将輝ではあったが、それはどちらかというとツッコミを兼ねているという節があった。『悪ふざけも程々に』と所謂セーフティーのような役割を果たしていた将輝であったが、今回ばかりは違う。作戦開始当初から、今作戦は関わった者以外誰にも知られない事が目的であった。『表』の住人が『裏』の世界を知る必要はない。故に将輝は情報の秘匿を何よりも最優先とし、それを全員承諾した筈だった。だというのに束はそれを破った。今回ばかりは悪ふざけで許されるような代物ではない。

 

「やっぱり不服?だよね。まーくんはそういう人だもん。自分が助けたっていう事実を助けた相手にすら知られるのを嫌がる。「褒められたいからやってる訳じゃない」って。まるで正義の味方みたいに無償で助けちゃうんだもんね」

 

「正義の味方なんて大層なものやってねえよ。俺は俺に出来たから、助けられたから助けた。助けられない奴は助けないし、見捨てる」

 

「そうだね。でも、ずっとその罪悪感はまーくんの中にある。本当は助けられたんじゃないか、ってね。見捨ても、結局見捨て切れないんだよ。まーくんは優し過ぎるから」

 

「………そんな事……ねえよ」

 

「その言い方だと説得力ないよ?」

 

「……………その事と今回の事、一体何の関係がある?」

 

「簡単な事だよ。まーくんは自分の行いを知られないようにしようとした。IS学園の生徒(私達)を助ける為だけに動いた。去年と同じだね。まーくんの信念は曲げられないし、私達もそういう所が好きだから、曲げたくない………だから、私はまーくんが救おうとした対象外の奴等に教えただけだよ。「今、お前達が平和に生活が出来ているのは藤本将輝っていう人のお蔭だ」って」

 

そういう束の瞳に何時ものような巫山戯た雰囲気は感じられず、真っ直ぐに将輝を見据えていた。

 

将輝はIS学園の生徒達の安全を脅かした亡国企業を壊滅させた。其処に他意はなく、ただ純粋に彼女達の安全な学園生活を送ってもらいたいという節な願いから来たものだ。故に誰にも知られない事を良しとした。何も知らない事はそれ自体が幸せであると。

 

しかし、束はそうは思っていない。救われたなら自身を救った人間の事は記憶に刻んでおく事が義務であると、何も知らずにのうのうと生きる事は罪であるとした。だが、学園の生徒達にそれを知らせる事は将輝の信念に関わる。だから束は学園の生徒達に向けて発信する事はなかった。リアルタイムで中継する事で彼女達に直接ではなく、朝の緊急特番で間接的にその功績を伝え、全世界の人間達にそれを知らせた。

 

「私は許せない。貴方のお蔭で成り立った平和を、それが当たり前であるように過ごす人間が存在する事が。もし今回の行動が気に入らなくて、私の事を嫌いになるならそれでもいい。でも、私は今回の行動に何の未練も後悔もないから」

 

真剣な面持ちで放たれた言葉に将輝は大きく深い溜息を吐いた後、いつも通りの表情に戻った。

 

「はぁ……………わかった。今回の件はお前が俺を想ってしてくれたんだ。それ以外ならもっとキレてたかもしれないが、そう言われたら俺にはどうしようもねえよ。だからお前の事は嫌いにならないし、今回の件は不問にする。けど、またやったら二度と口きかないから覚えとけ」

 

「ふふ……うん。わかった、旦那様のご命令だもんね」

 

将輝の忠告に笑顔で答える束。

 

目下の問題は解決した………かに見えた。

 

『副会長ー‼︎』

 

ニュースを一通り見終えた生徒達が一斉に将輝目掛けてダッシュしてきていた。因みに目はハートマークの表示になっていたりする。

 

「しまった⁉︎早く逃げないといけなかったんだった!」

 

「まーくんガンバっ!」

 

「ガンバっ!じゃねえ!取り敢えず逃げるぞ!」

 

「ふぇっ?何で私も⁉︎」

 

「黙っとけ、舌噛むぞ!」

 

将輝は束をお姫様抱っこすると一目散にその場を走り去った。向かう場所はただ一つ、生徒会室のみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「入室するぞ!」

 

扉を蹴破る勢いで蹴り開けた将輝はすぐさま生徒会室の扉を閉めて、ホッと息をつく………事は出来なかった。部屋に入った瞬間、将輝の視界に入ったのは、何故か着替え中の千冬の姿だった。

 

「将輝にしては珍しい。ノックもせずに入って来るとは。何かあったのか?」

 

「何かあった事にはあったが、今この瞬間が異常事態だよ………」

 

上半身が下着姿であるというのに千冬は特に隠す事もなく、普段通りの様子で会話をしていた。当然将輝はそちらを直視出来るはずもなく、顔をそっぽに向けていた。

 

「そ、それはそうと今朝のニュースは知ってるか?」

 

「ああ。ほんの一時間前に束に聞いたからな。将輝以外は全員知ってる」

 

「肝心の俺に伝わってないとか問題外だろ……他の皆は?」

 

「そのニュースを録画する為に自室に帰った。私は一夏に頼んだ」

 

「私もおかーさんに頼んだよ」

 

「馬鹿だろ、お前ら⁉︎」

 

「因みにミハエにも伝えたが、真顔で「それは永久保存するしかないわね」と言っていたぞ」

 

「この三ヶ月でキャラぶれまくりだな!ミハエ!」

 

彼女達のある意味では予想通りの行動におもわずツッコミを入れる将輝。つい先日まで「気に入らないから殺す」と言っていた者と同一人物とは思えないデレっぷりに叫ばずにはいられなかった。

 

「ていうか、良かったのか?あれ、お前も映ってたろ?」

 

「ああ、そういえばそうだったな。別に問題あるまい」

 

「そうか?結構問題あるような……」

 

「十中八九、注目が集まるのは将輝の方だからな」

 

「デスヨネー」

 

ドヤ顔でそう言う千冬に将輝は肩を落とした。

 

以前、将輝が過去に飛んできて間もない頃の亡国企業の下っ端による襲撃の際は紆余曲折を経て、IS学園生徒会の功績となったわけだが、此度の亡国企業壊滅に関して言えば意図して束が将輝の言動を一分も漏らさず、全国放映した。そうなると当然千冬達も映っているわけだが、ただでさえ「世界で唯一の男性IS操縦者」として全世界の人々に知られているにもかかわらず、更には裏から世界情勢を牛耳っていた組織を壊滅させた人間ともなると注目しない人間はいない。近いうちに歴史の教科書に載るのは確定コースである。

 

「たっだいま、戻りましたー!って、副会長じゃないですか⁉︎お帰りなさい!」

 

バン!と勢い良く扉を開けて入ってきたのは楯無。将輝達と同じく不眠不休であるにもかかわらず、逆に普段よりもテンションが高かった。

 

「お、おう。ただいま、寝てないのにテンション高いな、楯無」

 

「仕事上、寝ないのは慣れてますので。何なら三日くらいは余裕です。それはそうと!見ましたよ、ニュース!いやぁ〜、相変わらずカッコいいですね、副会長。惚れ直しました。カンストしていたメーターがさらにぶっちぎりました」

 

「メーターってなんだよ………まあいいや。お疲れ様、華凛」

 

楯無の本当の名前を呼び、頭を撫でる。その行動に楯無は気持ち良さそうに目を閉じた。

 

「あざといぞ、副会長」

 

「男にあざとさなんてねえよ、静」

 

「よく言う。行動の一つ一つがあざとさの塊のような男が」

 

「意味わかんねえよ。そういえばヒカルノはどうした?」

 

「私は人外、あいつは常人」

 

「納得」

 

一般生徒が聞けば一体何の話をしているのか、わからない略され方ではあるが、意味としては「私の身体能力は常軌を逸しているから速かったが、ヒカルノは普通に運動神経が良い程度だから少し遅れる」という意味である。

 

「帰ったゾー」

 

「思ったよりもずっと速い……ってお前何つけてんの?」

 

遅れるといった割にはすぐに到着し、息も切らしていないヒカルノを見て、一瞬不思議に思う将輝だが、その足に付けられていたものを見て、首を傾げた。

 

「ん?これは私が開発したシークレットブーツだよん。中には電力で動くローラースケートと超小型のミサイルが収納されてて、コンクリートくらいなら壊せるよん」

 

「なんて物騒なものを……」

 

電動ローラースケートだけで十分なのに……と将輝は表情を引き攣らせる。

 

「将輝達の足手まといになるのは嫌だからナー。今から鍛えて間に合わないなら、それ以外で間に合わせるしかないし」

 

にゃはは、と笑いつつもヒカルノは少しだけ寂しげであった。自分だけ理解出来ない人外の境地。愛する者と同じ世界を見られない事がヒカルノにとっては辛かった。だが、束同様、細胞を弄り倒すような真似をする事は出来ない。ならば他の物で補おうとした結果がこれなのだ。因みに今は持ってきていないものの、部屋にはその他大量の武装があったりもする。どれもISにこそ及ばないが、間違いなく人間程度はオーバーキルである。

 

「ヒカルノなりに思う所があるならそれでいいが………何だろう。皆、逞しすぎて守る必要性が皆無なんだが」

 

「護られてばかりじゃ私達の気が済まないからね〜。最終的にはまーくんを護れるようになる予定です」

 

「もっとも、将輝の勝てないような化け物相手に私達が相手になるのか、甚だ疑問だがな」

 

「言いたい放題だな。ま、少なくとも俺の身体が動くうちは絶対護るから。最終まではいけないと思っておけよ……うん?」

 

ちょうどその時、ポケットに入れられていた携帯が振動する。着信相手は久しく連絡の取っていなかった日比谷直斗からのものだった。一瞬、何の用だ?と疑問に思うが、ニュースの事を思い出し、内容もそれだろうと予想する。

 

「もしもし、暇人総理。用は無いみたいだから、切るな」

 

『はい、ストーップ。さりげなく電話切ろうとしない。用なら言わなくても理解してるだろう?』

 

「いや、サッパリ」

 

わかっているが、あえて知らない振りをする将輝に電話の向こうで日比谷は渇いた笑い声を上げた。

 

『はっはっはー、じゃあ教えてあげよう…………やってくれたね⁉︎亡国企業‼︎」

 

先程までの愉快そうな口調から一転、電話口から怒声が響き渡る。

 

『本当何やってんの、キミ⁉︎いくら襲撃されまくったからって、自分達で叩き潰しに行くって。洋画じゃないんだから。しかもわざと素顔を晒すって何考えてんの⁉︎』

 

「それは俺のせいじゃない。勝手に動いた事については反省も後悔もしてない。俺の大切な物に手を出したんだから、反撃するくらいは良いだろ。まあ、後の事で面倒がそっちに行ったのは謝るけど」

 

『え?謝んなくて良いよ、別に』

 

またもや怒気の含まれた声から一転、普段通りのものに戻る。このようなテンションのアップダウンの激しさではやはり束と日比谷は似た者同士である事がよくわかる。

 

『僕が怒ってるのは僕に黙ってキミが勝手に亡国企業を壊滅させた事さ。何れは僕が潰す予定だったから、早坂くんもあえて泳がせてたんだけど………暇潰しが一つ無くなっちゃったよ、残念』

 

あくまで日比谷は将輝達が自らに黙って亡国企業を壊滅させた事に対し、怒っていただけだ。おまけにその怒りも将輝達が無茶をした事ではなく、自分が目をつけていた玩具を横取りされたからというものだった。

 

『でも、まあいっか。キミが素顔を晒してくれたお蔭で各国首脳陣から現在進行形で引っ張りだこだからね。当分はこれと残党狩りで暇潰しが出来るよ』

 

「捕まえたらあの施設に送ってくれると助かる。金や権力で出られると面倒だから」

 

『わかってるよ。キミは卒業まで学園生活をエンジョイしなよ?後始末くらいは僕がしてあげるから』

 

「さっきまでの悦楽主義者みたいな発言とは思えない常識人発言にビックリですよ、総理?」

 

『こう見えても総理大臣なんでね。国民の、ましてや子ども達に全てを背負わせる程、馬鹿になった覚えはないよ』

 

からかう将輝に戯けた調子ではあるが、真剣に返す日比谷。確かに将輝の言う通り、日比谷は悦楽主義者である。何でもできてしまうが故に暇を持て余し、暇潰しと称しては関係者全員の顔から血の気が引くような事をやってのける日比谷ではあるものの、暇潰しの為に何もかもを無茶苦茶に引っ掻き回すという事はしない。常識はある程度は守るし、大人としての立ち振る舞いも当然心掛けている。

 

『さて、小うるさいお爺様達の相手でもしてくるよ。キミが女の子達といちゃついているうちにね』

 

「いちゃつか……いや、そうだな。せいぜい、いちゃつかせてもらうとするよ、老害共の相手頑張れよ、総理様」

 

そう言って将輝は電話を切った後、将輝は扉の向こう側で響き渡る喧騒に額に手を当てる。

 

「取り敢えずその前にほとぼりが冷めるまで逃げた方が良いかもしれないけどな」

 

 

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