IFストーリー〜もしも過去に残っていたら〜   作:幼馴染み最強伝説

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やっと投稿できた〜。

オリキャラ含め、かなりの人数の個性的なキャラがいるため、なかなか難しいところです。原作までの道のりは遠し。ついでに言うとそろそろネタ切れ感が半端ない今日この頃です。

そう言うわけですので、今までに比べてかなり時間軸は飛び飛びになると思います。あえて残しておいたイベントを消化しつつ、一区切りつくまで突っ走りたいと思います!



うたわれるもの

入学式を終えて、かれこれ二ヶ月が経過した頃。

 

IS学園はやはり平和そのものだった。具体的には平和過ぎた。

 

「ふぅ……ようやく終わった」

 

「お疲れ様。珈琲淹れようか?」

 

「ああ、済まない」

 

書類の山を処理しきった千冬が軽くのびをしていると、目の前にカップが置かれる。

 

将輝の問いに答えてからものの数秒しか経っていないのだが、それでも目の前に出てきたのは聞く前から答えがわかっていたからである。

 

「ふむ。やはり仕事の後の将輝の珈琲は美味いな」

 

「そいつはどうも」

 

相槌を打ちながら、将輝も自分の為の珈琲を淹れる。何百、何千と行われたその動作はまさしく『執事』という言葉が似合っている。

 

「千冬も慣れたもんだな。一年の頃はほぼ全部俺に投げてきてたのに」

 

「仮にも生徒会長を任されている身だ。流石に副会長に全部任せきりというわけにもいくまい」

 

「千冬らしいな。是非とも、若干二名にもそれを見習ってほしいもんだが……」

 

「「ぎくっ」」

 

ジト目で見ると若干二名ーーもとい束とヒカルノはチェスで遊びながら、気まずそうにそっぽを向いた。

 

相も変わらず、この二人だけは仕事をする気が全くない。

 

そもそも、戦力として数えてないともいえるが、それでも仕事をしている横でボードゲームをしたりしているのを見ていると、文句の一つも言いたくなるというのが、妥当な反応だ。

 

「全く……デスクワークが面倒なのはわかるが、もっとやる事ないのか?静ですら、実務の方はマトモに働いてくれんのに」

 

「ですら、とは失礼だな。私は比較的働いている方だと自負しているのだが?」

 

「実務以外はやる気がないからなんともな」

 

「……そう言われると返す言葉がないな」

 

「じゃあ、働け」

 

「頭を使うのは授業だけで十分だ」

 

即答で返す静。

 

分かりきってはいた事なので、将輝は最早諦めているのだが、そのしわ寄せが後輩達二人に行くと考えれば、些か偲びない事である。

 

「悪いな、真耶、楯無。この三人がもう少しマトモに働いてたら負担が減るんだが……」

 

「好きでやってる事ですから。先輩は気にしないでください。それに先輩の方が仕事量多いですし……」

 

「寧ろ、私達が来るまで、これ以上を一人で捌いていた副会長の負担が計り知れませんよ。機能してたんですか、ここ」

 

「辛うじてな」

 

二人が来る以前は当然のごとく、ほぼ一人で生徒会を回していた将輝。

 

因みに一度だけ、無理がたたって体調を崩した時だけは一時間ほど生徒会メンバーがマトモに仕事をして、まさかの悪化する事態が発生し、うかうか寝ていられないと結局は将輝がする羽目になったという出来事もあった。

 

「まぁ、来年度からの生徒会は私達の世代と違って上手く機能するだろう」

 

「こんな個性派揃いのメンバーなんて早々いないだろうし、選ぶのも教師じゃないしな」

 

「先輩方が選ばれるんですか?」

 

「いいや、引退する私達が決めても意味はないだろう。一応、真耶か楯無。お前達二人に選考してもらう予定だ」

 

「えぇ⁉︎私達がですか⁉︎」

 

勢いよく立ち上がり、驚きの声を上げる真耶に、将輝はさも当然とばかりに言う。

 

「来年の生徒会は前生徒会の内情を知ってる二人のどっちかが会長、どっちかが副会長の予定だしな。ヒカルノ、例のものは?」

 

「ほい、将輝が言ってた項目に当てはまる生徒のリスト」

 

ヒカルノは四つ折りにした紙を将輝に手渡し、将輝はそれを真耶と楯無に渡す。

 

「一応、それらしい生徒はリストアップしてもらった。その中から三人から五人次期生徒会メンバーを選んでくれればいい。リスト外の生徒を自分でスカウトするのも当然ありだから、何もその中にいる生徒だけの話じゃないから、最終的な判断は二人に任せる」

 

「い、いいんですか?」

 

「次の生徒会の事まで俺達が口を出すわけにもいかないだろう?仕事とかの引き継ぎは………まぁ、する必要もないだろうし、後は次のメンバーを決めるだけだ。なら、俺達が手を出していいのはこれぐらいだろう。本当なら、何もしないほうが良かったんだろうが、色々迷惑かけたしな」

 

「そんな事ないですよ〜。旦那様のサポートをするのが、良き伴侶というものですし。当たり前のことをしてただけですよ」

 

「そうか。悪いと思って、俺なりに何かお返しでもしようかと思ったが、当たり前の事をしてただけなら楯無は無しだな」

 

「ちょっ⁉︎タンマ!ストップです!前言撤回!さっきの無し!めちゃくちゃ迷惑かかってました!ですからお返しプリーズ!」

 

「そんなに焦らなくてもさっきのは冗談だ。お前には別の意味で迷惑かけっぱなしだからな」

 

生徒会の雑務をこなす楯無ではあるが、それよりも『更識』として、将輝は楯無に手を借りている。それは弟や妹を護衛してもらっている千冬や束もそうなのだが、当の楯無が全く気にしていないために貸し借りは無しとなっている。

 

「まーくん!私は!私は⁉︎」

 

「いや、お前はかけてる方だから。次の生徒会メンバー用に専用機でも作ってやれ、無償で」

 

「やだっ!なんかくれないとやってあげないもん!」

 

「はぁ……じゃあ、デート一回」

 

「良し乗った!」

 

即答だった。束の返答には一部の迷いも見られず、わかった上で言ったとはいえ、こうまで単純であるとやはり溜め息の一つも出るというものである。

 

そしてそれを黙って見過ごさないのも彼女達である。

 

「おい待て将輝。何故働いていない束はありで、私達にはないんだ」

 

「そうだ、私達にもデートの権利を要求する」

 

「そーだそーだ!タバねんだけズルイぞー!」

 

やはりというべきか、将輝の発言に不平不満を漏らす三人。

 

将輝とてそれはわかっていたので、もちろん三人にも何かしらの形でお返しをするつもりだった。

 

「わかってるよ。真耶と楯無はともかく、お前らは話し合ってどの順番で何をするか決めとけよ」

 

「どこか行くんですか、先輩?」

 

「んー、ちょっとな。すぐに帰ってくる」

 

いつの話になるかわからないというのに、既にやいのやいのと盛り上がっている四人を尻目に将輝は真耶にそう言うと生徒会室の扉に手をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お呼びでしょうか、副会長閣下」

 

「だから閣下は必要ないって」

 

びしっと敬礼するクラリッサに将輝は苦笑する。

 

「それで、ご用件とは?」

 

「大した用じゃないさ。ただ、監視はもうしなくていいって言いに来たんだ」

 

「それならば直接出向かれなくても……」

 

「いや、一応俺の我儘を聞いてもらってたし、御礼くらいは面と向かって言った方がいいからね。ありがとう、クラリッサ」

 

「はっ。……恐悦至極です」

 

気恥ずかしそうに頬を赤く染めるクラリッサ。

 

軍人という職業柄、そういった至極当たり前の事に慣れていないクラリッサからしてみれば、面と向かって礼を言われるというのはなんともむず痒い事だった。

 

「今回のお礼はまた今度改めてさせてもらうから、空いている日があったら言ってくれ」

 

「いえ、私は……」

 

「まあ、そんな事言わずに。俺はまだ君に正当な報酬を払ってないからね。貸し借りはキッチリしておかないと」

 

「ですが……」

 

「なら、俺の顔を立てるって事で手を打たない?」

 

そう言われてクラリッサも沈黙する。

 

そう言われてしまえば、クラリッサはどう足掻いても拒否できない。

 

将輝に手間をかけさせまいと拒否しようにも、それでは将輝の面目を潰してしまうためにこれ以上否定する事は出来ない。

 

将輝としても、例え片手間だったとしても二ヶ月もの間、ナターシャ・ファイルスの監視を務めてくれていたクラリッサに御礼だけ言って、それで終わりという事にはしたくなかったので、少しばかり意地の悪い言い方になってしまってはいたが。

 

「………了解しました。後日こちらの予定をお伝えします」

 

「うん。そうしてくれると助かるよ」

 

「では、失礼します」

 

クラリッサは綺麗に一礼すると、きびきびとした足取りで教室へと帰っていく。

 

真面目な態度もさる事ながら、どれをとっても無駄のないその動きは流石は軍人と言わざるをえない。

 

とても数年後に始まる原作であれ程までに日本のサブカルチャーに毒されていた人間とは到底思えない。

 

「さて、監視は外した。話があるならこそこそしてないで出てきなよ」

 

「わおっ、ホントにバレた」

 

戯けた口調で廊下の角から現れたのは金髪の女子生徒。

 

まだ幼さの残る顔立ちから新入生と呼ぶにふさわしくはあるが、その新入生の中でも彼女は一層幼い顔立ちをしていた。

 

それもそのはず、彼女はこの学園における最初にして唯一の飛び級制度を利用した生徒であるからに他ならない。

 

「アーリィには聞いてたけど、ここまで鋭いなんて、恐れ入っちゃうわ」

 

「気配の消し方に関して言えばなかなかだと思うよ。クラリッサは気付けなかった。けどまあ、俺から隠れる気があるなら、感情も殺したほうがいい。ついでに言うと違和感も無くすべきだ」

 

「……難易度高くない?」

 

「それを承知でこの学園に入ってきたんだろう?ナターシャ・ファイルス」

 

女子生徒ーーナターシャ・ファイルスはそれもそうかと納得したような表情を浮かべた。

 

伊達にたった一人で全国家の抑止力として機能しているわけでない。難易度は現時点において世界で最も高く、そうでなければ抑止力たりえない。

 

「それで?キミも俺に挑戦するのが目的かい?」

 

今までは大体の人間がそうだった。というよりも、それ以外の人間はそもそもここまでこそこそと動き回ったりはしないので、そういう事を考える人間しか、こういった行動を見せないのだ。

 

そして何より、楯無との出会いを彷彿とさせる既視感はナターシャが何かしら企んでいる事を将輝に感じさせた。

 

しかしーー

 

「いいえ、私は何もしないの」

 

「………はい?」

 

「より正確に言えば、『藤本将輝を刺激するな』が大統領の判断。私は単に貴方に懐柔されにきた小娘というわけ」

「………そう来たか」

 

こればかりは流石に想定していなかった。

 

クラリッサの時もそうであったが、各国家は今、全力で将輝に対してゴマをすっている状態だ。

 

クラリッサの場合はドイツという国家への干渉権と特殊部隊を献上する形でその力を引き入れようとし、当然のごとく、失敗した。

 

そして今度はナターシャという一個人を将輝の物とする事で自身の国家を守ろうとしている。

 

将輝は基本的に無意味に滅ぼさず、そして自身の守る対象である者達の意見は聞き入れる。

 

例え、どれだけ怪物扱いされていたとしても、そこだけは世界にも広く知れ渡っている。

 

故にそこに漬け込もうとしていたわけだが、アメリカが取った行動は、ナターシャを将輝の守る対象とし、ナターシャの願いを将輝が肯定するという形にしようとしているわけだ。それはどの国家を滅ぼしてくれ、というものではなく、ひとえにアメリカだけは滅ぼさないでくれという懇願のみであるが、それさえ通れば、アメリカという国家は最大の危機を乗り越えることになる。そしてアメリカは最大の矛と盾を手に入れることが出来るのだ。恐れるものなど何もなくなる。

 

だが、アメリカという国家は一つの事実を知らない。

 

どんな意図があり、どんな思惑を持って、将輝に寄って行こうとも、無自覚のカリスマによってそれらを自ら捨て去ってしまうということを。

 

「君はそれで納得してるのか?」

 

「せざるを得ないんですよ。私一人で祖国が守れるのなら、安いものと思うでしょ?」

 

「まぁ、単純な重さでいえばね」

 

「そういうわけだから。私の事は好きに扱ってよ、玩具にでもしたければ、どうぞご自ゆ……痛っ」

 

「なんとなーく、わかったよ。君と楯無が似てるって感じた理由が」

 

ナターシャに軽くデコピン(割と痛い)をして、将輝は嘆息した。

 

二人に共通していたのは「何かを企んでいる」という点だけではない。

 

明らかに自分という存在を捨て、蔑ろにしている。

 

楯無は原因不明の病から、ナターシャは国家を護らなければならないという重責から。

 

どちらも大きくかけ離れた理由ではあるものの、結果としてそこにあるのは自棄になっているという確固たる事実だ。

 

そしてそれらは到底見過ごせたものではない。やろうと思えば、今すぐにでも止めされられるのだが、そうなった場合その見返りが来るのは他でもないナターシャである。

 

故にこの場においては将輝は何もしない。

 

「大統領サンに言っとけ。「こっちは何もしなけりゃ何もしない。ただ、あんまりふざけた事してると、世界地図から消えると思え」ってな。俺は別に国を護ろうなんて思ったことは無い。ただ『護りたい人達を護る』それだけだ。それは俺のエゴだから、頼んで無いってやつもいるだろうし、その結果としてそいつの母国が滅ぶかもしれない。だが、それでも頭は下げない。非を認めるってことは自分のやり方が間違ってると認めることだからな」

 

「………」

 

「君がどんな覚悟を持って、ここに来たのかは知らないが、『奴隷』なんて要らない。君はIS学園の生徒として、アメリカの代表候補生として、この三年間を有意義に過ごせ。少なくとも、君がIS学園の生徒である限り、俺を殺したいと思って殺しに来ても、俺はその度に君を無力化するだけだ、それ以上は何もしない」

 

「………その言葉を信じろと?」

 

「信じる信じないは君の自由だが、普通に学園生活を送ってくれる方が俺も気楽でいいよ」

 

そう言うと将輝はくるりと踵を返し、その場を立ち去ろうとする。

 

「ん、ああ。ひとつ言い忘れてた」

 

「今度は何?」

 

「敬語。一応年上だし、礼儀だから。五歳も離れてるなら尚更ね」

 

あまり敬語などを使われ慣れていない将輝ではあるが、流石に五歳も離れているとなると他の生徒達にも示しがつかない上にあまり規則に厳しくは無い学園ではあるが、他の生徒達が快く思わない可能性もある。

 

無論、将輝自身としてはその辺の事はどうでもいいのであるが。

 

「わかっ……りました」

 

「ん。じゃあな、ファイルス。また何かあったら俺のところに来なよ」

 

ひらひらと手を振りながら、今度こそ将輝はその場を後にした。

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