IFストーリー〜もしも過去に残っていたら〜   作:幼馴染み最強伝説

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いよいよ、あえて避けてきていた体育祭イベントですっ!

次はクリスマス!そして正月……はわからない。バレンタインは多分します。後は………卒業式イベントですかね?

かなり展開が早くなりますが、そろそろネタ切れですので原作に行きたいというのもあります。四十数話割と頑張ったと思います。

あ、後絶賛アンケート中ですので、宜しければそちらもお願いします。


カーニバルファンタズム

パン!パンパン!

 

九月下旬。

 

まだ夏の暑さがそれとなく残っている今日この頃。

 

乾いた音が雲一つない青空に木霊する。

 

『さあさあ!いよいよやって来ました!IS学園第一回体育祭!昨年一昨年と諸事情により、開催できなかったわけですが!今年は無事!開催する事が出来ました!今回の放送はわたくし!前回の大会で実況役を務めました放送部部長、ルルド・シューマンが務めさせていただきます!』

 

(((((日本人じゃなかったのか………)))))

 

『藪から棒な呟きが聞こえましたが、今日は無礼講!祭りだ祭り!カーニバルでファンタズムに聖杯ちっくな物を求めて、学年立場問わず、盛大に弾けましょう!』

 

ルルドのスレスレの発言にも、整列していた女子生徒達は拳を突き上げて、声を上げた。

 

そう。今日この日はIS学園開校して以来、初めての体育祭なのである。

 

因みに何時もなら前に立って話している将輝も今日は生徒の列の最後尾に立っていた。

 

「やはり彼女に任せて正解だったな」

 

そう呟いたのは隣に立っていた千冬。

 

このIS学園では出席番号順ではなく、小中学のように身長が低い順に前から並ぶようになっている。

 

将輝が最後尾であるのは当然ながら、千冬は女子の中でも高身長である為、最後尾にいる。因みに僅差で静が一つ前に立っている。

 

「だな。どうにも生徒会のメンツは限度のある盛り上げ方しかできないしな。それに種目に参加する以上、ずっと司会もできないし………そういや、束は?」

 

「熱中症だ。こんなにも天気がいいと予想よりも早くにダウンしたらしい」

 

「どんだけ引きこもり体質なんだ、あいつ……ヒカルノの方は?」

 

「ヒカルノは束と違ってよく外出をする上、趣味が素潜りだからな。耐性はある」

 

「そういえばそうだな」

 

元はと言えば、原作の知識からとはいえ、素潜りをヒカルノに進めたのは将輝である。

 

最初の頃は濡れたまま生徒会室に入ってきていた為、説教していたものだが最近はそれも無くなっていたせいか、失念していた。

 

「ついでに束にも何か始めさせるか」

 

「………続くと思うか?おそらく将輝としている時しかしないぞ」

 

「………提案しておいてなんだがそんな気がしてきた」

 

束に限って、長期間も同じ事をしている事などあり得ない。それは将輝達にとっては周知の事実だ。例外があるとすれば、それが将輝の頼みであるかどうか。ISですら、全く同じ事をする事はないのだ。

 

「私語が多いぞ、元会長、副会長」

 

小声ではあるが、将輝と千冬のやり取りを見かねて、前にいた静が口を挟む。

 

「真耶にーー現会長に見つかったら、小言を言われるぞ」

 

「む……確かにな。真耶の説教は長い分、堪える」

 

静の言葉に千冬は同意した。

 

そして静が言ったように、既に将輝達三年生は生徒会を事実上引退していた。

 

まだ新規のメンバーがクラリッサ以外には正式に決まっていないことや、予定よりも早くに引退した事で完全ではないものの、殆どの仕事は真耶、楯無、クラリッサの三人がしていた。無論、将輝や千冬も手伝っているが、今まで程ではない。因みに今までは基本的に生徒会に回されていた仕事が将輝関連であった事の影響か、以前ほどに忙しくはなかったりする。

 

「まぁ、最悪将輝がいれば、それも問題はないがな」

 

「そうだな。私達では無理だが、将輝なら頭を撫でてやるだけで真耶も一発で落ちる」

 

「あのなぁ………」

 

強ち間違いではない辺りが千冬や静らしくはあり、将輝も反論しようとするも、言葉を詰まらせる。

 

実際、真耶も千冬達には厳しく出来る(ヒカルノ命名『まーやんかいちょーモード』)ものの、将輝相手となると厳しくなれなかったりする。というのも、離れていれば問題はないのだが、目を合わせようものならば、すぐに通常運転に戻ってしまうのだ。故に、唯一の真耶キラーでもある。

 

三人がそうして話しているうちにもどんどん話は進んでいく。

 

『記念すべき第一回目の体育祭!当然ながら豪華景品も用意されております!』

 

豪華景品という言葉に生徒達は「おおっ!」っと声が上がる。当然、これは現生徒会が用意したもので、将輝は話は聞いていたものの、内容は知らないため、僅かに期待を抱く。

 

『その豪華景品とはーーズバリ!藤本将輝三年生の一週間の貸し出し権でございます!』

 

「………はぁっ⁉︎」

 

『いやぁ、ぶっちゃけ私としてもテンション上がりまくりです!あの藤本三年生が私達のクラスに来る可能性があるのかと考えると正直興奮が収まりません!お願いだから勝って、私のクラス!立場上、一つのクラスは応援するわけにはいきませんが、今だけはさせていただきます。割と本気で勝って!豪華景品を貰う為の条件はわからないけど、とりあえず!』

 

ルルドの言葉に生徒達は気にも留めず、きゃあきゃあと騒いでいる。

 

将輝達と同じクラスの人間達は奪われまいと闘志を燃やしていたりする。

 

因みに将輝はもう色んな意味で悟りを開いていた。

 

こんな事態は今に始まった事ではない。寧ろ、クラスの人間をバラバラに一人ずつデートと言われないだけマシである。

 

問題は一年生や二年生に豪華景品が与えられた場合ではあるものの、この時代のISにおける知識は既に九割以上将輝は持っているため、三年生の授業だろうが、正直言ってサボったところで問題ないのである。

 

『さて、そんなわけで選手宣誓をお願いします!生徒会長!』

 

そう促されて出てきたのは真耶なのだが、何時もとは全く違う様相であった。

 

服装こそ、体操着にブルマと全員統一された服装であるが、眼鏡はかけておらず、頭には鉢巻が巻かれていた。

 

「私達はスポーツマンシップに則って、正々堂々、全力を尽くし、競い合うと誓います………あ、豪華景品も大切ですが、大事なのは皆さんが楽しめたか否かですから、目一杯楽しんでください」

 

宣誓を終えた後、付け足すように言う真耶に生徒達は「はーい!」と肯定の声を上げた。

 

「いいお返事です。では、第一回IS学園体育祭を始めましょう!」

 

真耶の言葉とともに雲一つない青空に花火が打ち上げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いよいよ始まった体育祭。その記念すべき第一種目は障害物競争だった。

 

第一走者目の生徒達は各々に軽いストレッチをしながら、静かに闘志を燃やしていた。

 

「第一種目が障害物競争とは、真耶にしては、また初っ端から飛ばすな」

 

「そりゃそうですよ。決めたの私ですもん」

 

将輝の独り言に当然のように答えたのは、自然な流れで隣に立っている楯無。

 

これも最早いつもの事であるため、将輝は特別反応するでもなく、普通に会話を続ける。

 

「決めたのがお前って言うので、なんか不安になってきたんだが………まさかとは思うが、障害物の内容決めたのもお前か?」

 

「いえ、私じゃありません」

 

「そうか。なら安心ーー」

 

「クラリッサちゃんです」

 

「ーーなんて出来るわけなかった⁉︎」

 

将輝の驚きの声と共に走り始めた第一走者の生徒達は凄まじい勢いで走り出し………不意にその場から消えた。

 

『おおっと!スタート地点から十メートルの地点に巨大な落とし穴が〜!しかも中には何やら怪しげな生物がいます!見ているだけの私も気持ち悪さに身の毛がよだちます!』

 

走っていた生徒達は全員例外なく、落とし穴に落ち、おおよそ日本では見られそうにない、というかどう考えても普通はいそうにない生物が蠢いていた。

 

「なんてもの仕入れてるんだ、あの子は⁉︎」

 

「あー、焦らなくても大丈夫ですよ。見た目がアレなだけで、無害らしいので。強いて言うなら、人によってはトラウマになるくらいらしいですし」

 

「それはそれで問題だと思うんだが……っていうか、何故にクラリッサに任せた……」

 

「本人が『恩ある将輝さんの為にインパクトのある競技にしたい!』と豪語してましたので。私としましても、内容はともかく、その意気込みは素晴らしかったので任せました」

 

「まぁ、ある意味じゃ、インパクト強すぎて忘れられねえ……」

 

落とし穴を超えた先には即席の軍用トラップ、さらにその先にはセントリーガン(ペイントボール)、そしてその先には巨大な扇風機による突風の中での綱渡り[因みに横は泥沼)。やっとゴールが見えたと思えば、またもや落とし穴という最早障害物競争と呼べる代物ではないのだが、どういうわけか、皆嫌がる素振りを見せずに十二分に楽しんでいたので将輝は何も言わなかったものの、取り敢えず、一言だけ、クラリッサに伝えようとプライベート・チャネルを繋いだ。

 

『来年からはこの競技禁止な』

 

「何故⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三種目ーー玉入れ。

 

「今度は比較的マトモな種目だな」

 

うんうんと頷きながら、将輝は玉入れの玉を手に取る。

 

玉もよくある物で、中に特別な物が入っているわけでもなかった。

 

「玉入れかぁ」

 

「なんだか懐かしいね〜」

 

「これなら元生徒会メンバーにも勝てるよ〜」

 

そんな事を言いながら、生徒達はそれぞれ紅白の玉を拾っていく。

 

『それでは始め!』

 

パァンッ!

 

という乾いた音とともに一斉に玉が籠の中に投げ込まれ………なかった。

 

「なにこれ⁉︎」

 

「籠が避けてる⁉︎」

 

投げ入れようとすると、籠がそうはさせまいと縦横無尽に動く事で回避していく。

 

「ならば、これでどうだ!」

 

避ける籠に業を煮やした静が動きを止めようと回避方向を予測し、阻むように投げる。

 

だが、牽制であることすらも籠は読み、牽制には全く目もくれず、ぶつけて止めようにも通常の玉ではビクともしなかった。

 

「にゃははは、無駄だよん。それは私が作った特別製。力技じゃ止まらないんだナー」

 

そう言って高笑いをするヒカルノ。

 

相も変わらず、この手のイベントになるといの一番に参加したがるのは天災の性らしく、この競技のみにおいては開発者として不参加となっている。

 

「くっ。ヒカルノ製とは……」

 

力技で止まらない事に歯噛みする静。しかし、その二つ隣の籠では一人の生徒が涼しい顔をして、籠の中に玉を放り込んでいた。

 

『おおっと!リーリス選手!縦横無尽に動く籠の中に着実に玉を入れている〜!』

 

「こんなもの。回避方向を読めば簡単よ」

 

他の生徒が投げて縦横無尽に回避する籠の中にミハエは当たり前のように入れていく。

 

狙撃手(スナイパー)であるミハエは『狙う』という行為においては千冬や静を上回る。

 

避ける際に生まれる僅かなロスを狙って、確実に籠の中に玉を入れていた。

 

「機械程度で私のスナイピングから逃れようだなんて、百年早いわ」

 

『そして決めゼリフ〜!流石は生徒会に匹敵すると謳われているナンバーワンスナイパーだぁ〜!』

 

「凄いな、ミハエ。流石は一流の狙撃手」

 

「……そう手放して褒められると恥ずかしいわね」

 

将輝からの賞賛に頬を赤く染めて呟くミハエに、そしてそれを見て羨ましいと思う生徒達は必死に狙うも、結局はミハエとその他数人の生徒しか決められずに終わるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第五種目ーー借り物競争

 

「もう騙されねえぞ。絶対に碌な事書いてねえ」

 

第一走者である将輝は両足に三十キロの重り(人外ハンデ)を装備して、そんな事をつぶやいた。

 

ここまで始めからクライマックスの障害物競争に始まり、小休止とばかりに大縄跳び、籠が籠の体を為していない玉入れ、そして組み体操である(将輝以外は女子なので将輝は除外)。

 

奇数はぶっ飛び、偶数で休むという展開を見せているこの運動会だが、種目は全部で十種あり、確実に最後が一番酷いことになる事を考えれば、ここからは下手をすると休めるような競技が消え失せる可能性が高い。

 

そして、将輝の予想通り、碌な事にならなかった。

 

開始音がなり、ハンデを物ともせず一番を走る将輝は地面に置かれている巾着袋の中に手を入れて、紙を取り出して、見てみる。

 

『いますぐ抱きたい人』

 

「はぁ⁉︎」

 

読んだ瞬間に、将輝は本部席ーーつまり、現生徒会メンバーのいる方向を見る。

 

しかし、真耶も楯無も、当然クラリッサも首を横に振った。

 

「さては……束だな。あの野郎……」

 

一体なんてものを書いているんだとばかりにそれを破り捨てる将輝。

 

よくよく考えれば、束がこの運動会の準備に一度だけ手伝いをしに行っていた時点で、勘付くべきだったのである。将輝や千冬、静というストッパーがいない以上、束は当然のように暴走するのは火を見るよりも明らかなのだ。

 

そうしているうちに他の生徒達も来ていたのだが、その内容を見て、将輝と同じような声を上げていた。

 

『人生の忘れ物』

 

「何それ⁉︎」

 

『封印された黒歴史』

 

「なんで私が元厨二病って知ってるのよ⁉︎」

 

『元副会長の貞操』

 

「借りるどころか凄く欲しいです!いや、寧ろ奪って!」

 

どれを取ってもマトモな事が書かれておらず、全員紙を見ては四苦八苦していた。

 

そしてその癖、置かれた巾着袋の数はゆうに百を超えており、その横には予備として段ボール箱が用意されている始末である。

 

「ああクソ!ちっとはマトモなやつないのか⁉︎」

 

文句を言いながら開いた十枚目。

 

そこに書かれていたものはやはり普通ではなかったが、今までの中で一番マシという事もあり、将輝は保健室からつい先程出てきたばかりの未だフラフラ状態の束の元へと向かった。

 

「来い、束!」

 

「え?流石の束さんも今はつらーー」

 

「うだうだ言うな。さっさと来い。無茶苦茶な事ばっか書いたのお前だろ。その罰だ」

 

そう言って、将輝は無理矢理束を引っ張っていく。

 

弱っている束を担がず、歩かせた事により、一位ではなく、三位になってしまったものの、なんとかゴールはできた。

 

「うぇ……気持ち悪……酷いなぁ、まーくん。ボロボロの私を連れて行くなんて、一体どういう」

 

壁にもたれかかる束が将輝の方に視線を向けた時、将輝の顔はすぐ目の前にあった。

 

「え、えーと、まーくん?何この体勢?」

 

「『壁ドンしたい相手』」

 

「え?」

 

「書いてた内容だ。いいか、一回しか言わないからな」

 

軽く深呼吸をした後、将輝は真剣な表情で言う。

 

「もしもこれ以上、変な事してたら……お仕置きな」

 

「ッ⁉︎⁉︎」

 

耳元で囁きかけられた内容に束は身体をぞくりと震わせる。

 

しかし、それは悪寒などの拒絶反応ではなく、一体どんな事をされてしまうのだろうという期待感から来るものであり、束の思考は一時停止状態となっていた。

 

「返事は?」

 

「は、はい……」

 

「いい子だ」

 

そう言って束の頭をポンポンと撫でると、将輝はその光景を見て騒いでいる生徒達の方へと帰っていた。

 

思考が停止て、ポカンとしていた束だが、少ししてからハッと我に返った。

 

「まーくん!ワンモアプリーズ!録音するから!録音して一人でする時にーー」

 

バタリ。

 

いつものテンションで急に立ち上がったせいで、束は貧血を起こしてその場に倒れ、またもや保健室送りとなるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休憩ーー昼食タイム

 

「というわけでっ!副会長、お昼食べましょう!」

 

「いや、副会長はお前だっつーの」

 

「細かい事言わないでくださいよ。貴方が卒業されるまでの間は、今の生徒にとっては副会長なんですからっ♪」

 

そう言って抱きつこうとする楯無だったが、直前で服の襟を掴まれる。

 

「楯無。食事中くらいは落ち着け、ゴミが入ったらどうする」

 

「大体お前は生徒会副会長だろう。節度のある言動をだな」

 

「節度のある言動をって……お二方に言われても……あ、いえ、なにもありません」

 

言い返そうとした楯無だが、軽く睨まれて押し黙った。

 

「そうね。この二人に限ったことではないけれど、あまり節度のある言動があったとは思えないわね」

 

「そればっかりはミハっちが言えた義理じゃないと思うよん」

 

「私は生徒会ではないからいいのよ。それにあの程度では将輝くんは気にも留めないでしよう?」

 

(流石に気にも留めなかったわけじゃないが……まあいいか)

 

おにぎりを頬張り、将輝は苦笑する。

 

いくらなんでもあれだけ命を狙われて歯牙にもかけないなどということはないが、別段掘り下げる必要もないので、何も言わなかった。

 

「ところで篠ノ之さんは何処へ…….?」

 

「そういや……んぐ。あいつが昼飯にいないのは珍し「まぁぁぁくぅぅぅぅぅん!」あ?」

 

ドドドドドという音を立てて走ってくる束。

 

将輝は全員に目配せをしたあと、一つ頷いて………脱いでいた靴を束めがけて投げつけた。

 

「あ痛ぁっ⁉︎」

 

「砂埃立てるな。真耶と楯無の作った飯と、ミハエの作ってくれたケーキが台無しになるだろ。埋めるぞ」

 

「そ、それなら先に口で言って欲しかったかも……あ、ホントだ!ケーキだ!いただき……あばっ⁉︎」

 

「篠ノ之先輩。先に手を綺麗にしてくださいね。後、デザートとはお昼ご飯を食べたあとです」

 

「えぇ〜……しょうがないなぁ」

 

仕方ないとは言っているものの、真耶にそう言われる事は束もわかっていたらしく、置かれていたお手拭きで手を拭いてから、サンドイッチを頬張る。

 

「美味しい!やっぱり汗を流した後のご飯は格別だね!」

 

「お前は何もしていないだろう」

 

「言っている事は正しいのだがな。束が言うと説得力に欠けるな」

 

「にゃはは、仕方ないよん。タバねんは私よりもインドアの弱引きこもりだかんね〜。日光に耐性がないのは当然だナー」

 

「あ!三人して私を馬鹿にして……その気になったら私だってやれるもん!まだ本気出してないだけだもん!」

 

「それ、やる気のない人間の典型的な台詞ね、篠ノ之さん。やめておいたほうがいいわ」

 

「あまり無理しないほうがいいですよ、篠ノ之博士。無理は身体によくありませんし……」

 

「それに篠ノ之先輩の凄さは十分知ってますから。無理に対抗意識は燃やさなくても大丈夫ですよ?」

 

「ミハっちそれ絶対に馬鹿にしてるよね⁉︎後二人の心配が痛い!痛いよ!こうなったら……」

 

束は弁当の中にあった唐揚げ、野菜炒め、青椒肉絲、卵焼きetc……を一気に食べた後、ケーキを一口で平らげる。

 

「私だってやればできるってところを見せてやるんだから!皆、首を長くして待ってて!」

 

来た時のようにそのまま走り去っていった。

 

「大丈夫ですかね……篠ノ之博士」

 

「大丈夫だろ。今回に限っていえば大した事は出来ないしな。それに一応日光に耐性はなくても人外だ。熱中症になっても水やれば生き返るし」

 

「それも……そうですね」

 

一瞬考えた楯無だったが、そういえば束も人間じゃなかったことを思い出して、すぐに杞憂だと心配を振り払った。

 

そして将輝達が昼食を取っている頃、一年生の代表候補生達はというと……

 

「さて、昼食も済ませた。後はこれを………ん?ナターシャ・ファイルス。貴様、その手にあるものはなんだ?」

 

「これ?シュネーバル。美味しいよね」

 

「美味しいよね。じゃない!それは将輝殿にお渡しするはずだったものだ!」

 

「いいじゃん。減るものでもなし」

 

「減るだろう!……おい、アリーシャ・ジョゼスターフ。貴様も何を食べている?」

 

「レープクーヘン。初めて食べるけどねなかなか美味しいのサ♪」

 

「それも将輝殿にお渡しするはずだったものだ!ええい!どいつもこいつもやっとの思いで作り上げた物を盗み食いしおって!生徒会執行権を使用する!そこになおれ!今すぐ挽き肉にしてやる!」

 

「それは嫌よ。てわけで退散」

 

「私も逃げるのサ♪」

 

「待て、逃げるな!」

 

ISを部分展開したクラリッサがナターシャとアリーシャを殺意全開で追い回していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終種目ーー騎馬戦

 

リレー、綱引き、棒倒しと様々な競技を経て、いよいよ最後の種目へと辿り着いた。

 

騎馬戦はもちろん全学年全クラス対抗で将輝達旧生徒会メンバーは同じクラスということでそれぞれ別のクラスの代表ということになっていた。

 

「結局束の奴出てこなかったな」

 

一応束は他のクラスへと割り当てられているのだが、一向に姿を現さないことに将輝が首を傾げた………その時。

 

「ふはははは!世紀の大天才!篠ノ之束、ここに降臨!」

 

そんな掛け声とともに現れたのは体操着とブルマ姿ではなく、長袖長ズボンに麦わら帽子を被ってその上に鉢巻を巻いている束の姿だった。

 

「これで私も日光対策はバッチリだよ!」

 

「いや、それだと日光は防げても熱中症にならないか?」

 

「そこはご心配に及ばずだよ、まーくん。何せ、束さんはーー」

 

ふっと不敵な笑みを浮かべて束は言う。

 

「下着を着けてないからね」

 

「阿呆か、お前は⁉︎」

 

「さらにこの服は束さん仕様で風通しも良いから、殆ど裸の時の大差ないんだよね〜。どうどう?まーくん、興奮した?」

 

「そうだな。とりあえず、お前は即退場させるべきだっつーことがよくわかった」

 

拳をパキパキと鳴らせながら、将輝は答えた。

 

だが、この競技、何も将輝と束の独断場ということわけではないのだ。

 

「私達を忘れてもらっては困るな、将輝」

 

「IS無しでのルールありの試合か。久々に昂ぶるな」

 

「一年半ぶりに副会長との試合……リベンジさせてもらいますからね!」

 

千冬、静、楯無の三人は楽しそうに笑みを浮かべる。

 

今回はヒカルノ、ミハエ、真耶の三人は完全な肉体バトルということで観客側に回っているため、参加していない。

 

そしてクラリッサ、ナターシャ、アリーシャも騎馬戦には参加しているものの、この五人の闘いには静観を決め込もうとしていた。

 

『試合が始まる前から早くもヒートアップ!人間を超越した存在達とも言われていた旧生徒会メンバーの試合はいったいどうなるのでしょうかー!』

 

静寂に包まれ、参加者、観客共に息を飲む中ーー。

 

パァンッ!

 

試合開始の合図が響き渡り、それに合わせて一斉に騎馬がスタート地点から動き始めた。

 

「野球部の意地!今こそ見せる時よ!」

 

「それならこっちは空手部の意地ッスよ!」

 

「将輝殿に挑めないのは残念だが、先程の菓子の恨みは返させてもらうぞ、ナターシャ・ファイルス!」

 

「なんで私だけ⁉︎良いわよ、やってやろうじゃない!」

 

「うーん、良い乱戦具合。これは楽しめそうサ♪」

 

綺麗に将輝達だけを避けて闘いを繰り広げる生徒達。

 

それもそのはず、将輝達の近くにいけば、巻き込まれるのは明白なのもそうだが、邪魔をするわけにはいかないという事も関係していた。

 

そして当の将輝達はというと、目にも留まらぬ速さで手を動かし、相手の頭に巻かれている鉢巻を奪おうと一進一退の攻防を繰り広げていた。

 

「やるな、楯無!私達とここまで渡り合えるとはな!」

 

「それは私も鍛えてますから!ていっても、タイマンなら余裕で負けますけどね!」

 

「バトルロイヤル!良い響きだな、こういうのは一度やってみたかったぞ!」

 

「シズちゃんてばホントに戦闘狂だね!でも、楽しいのは事実かも!」

 

「今回ばかりは俺も同意だな。まぁ、今回くらいははしゃいでも良いだろっ!」

 

『おおっと!凄まじい攻防です!全く見えません!やはり人間をやめています!流石は我が校を護り続けてした生徒会メンバー!そこに常人が立ち入る隙はありません!』

 

実況のルルドや観客達はヒートアップしていく騎馬戦(バトル)に感化され、熱気が渦巻いていく。

 

開始して五分。

 

周囲の生徒達が勝敗を分けていく中、五人の勝負は未だ終わりが見えずにいた。

 

というのも、五人が五人とも、全員と戦う姿勢を崩さないために、誰かが一方的に狙われるという事もなく、またそうした場合、牽制数の減った相手が狙われる。本来なら最初に脱落するはずの楯無も、騎馬役の生徒達が上手く参加したり離脱したりを繰り返しているおかげで未だ倒されてはいなかった。

 

そしてその変わらない状況に痺れを切らしたのは……やはり束だった。

 

「うにゅ〜、そろそろかたをつけさせてもらうよ、まーくん、ちーちゃん、シズちゃん、たっちゃん!」

 

そう言って、束が両手を突き出すと……なんと手が伸びた。

 

「くっ……まさかここに来て機械仕掛けだとっ!」

 

「そんなのアリですか、篠ノ之博士⁉︎」

 

「ちっちっちー、武器を使ってはいけないとは言ってたけど、これは補助アーム。武器じゃないのだよー!」

 

「そんな屁理屈が……」

 

「通じると思うなぁぁぁぁ!」

 

キレ気味に放った将輝と千冬の二人の拳が、呆気なく補助アームを砕いた。

 

「……あれ?二人ともまた強くなってる?」

 

「さあな、それはそうと……」

 

「油断大敵、隙ありですね!」

 

束が気を抜いた一瞬の隙をついて、楯無は束の被っていた麦藁帽子ごと鉢巻を奪った。

 

「まずは一人!……あ」

 

「ではこれで二人目だな」

 

束から鉢巻を奪い勝ち誇っていた楯無から静が鉢巻を奪い取る。

 

「後は私達三人だけか」

 

「先程は束の反則まがいの手段で戦況が変わったが………」

 

この三人は誰もそんなことはしない。必ず正攻法で勝ちに行くだろう。

 

それは誰もがわかっていた。それ故にーー将輝は頭に巻いていた鉢巻を取った。

 

「?将輝。何をしている?」

 

「見ての通りだ、よ!」

 

将輝は外した鉢巻を宙へと投げる。

 

将輝の突然の行動に、全員の視線が宙へと向けられた。

 

その瞬間が勝敗を分けた。

 

視線が外れた瞬間、将輝は一瞬のうちにして、千冬と静の鉢巻を取り、自身の鉢巻も取った。

 

『……こ、これはなんということでしょう!『鉢巻を取られたら負け』というルールを逆手に取り、藤本選手、鉢巻を囮に使い、見事、織斑選手と黒桐選手から鉢巻を取りました!』

 

「…してやられた、というわけか」

 

「今回も将輝の勝ちか。いい加減、他のものでは勝ちたいものだな」

 

そうごちりつつも、何処か嬉しそうな様子で千冬と静は将輝を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、IS学園第一回体育祭は無事終える事が出来ました。それもこれも皆さんの協力のお陰です。ありがとうございました」

 

設置された檀の上に立ち、真耶がぺこりと一礼をするとぱちぱちと拍手が起きる。

 

「それではいよいよ今回のMVPの発表をします」

 

その言葉に生徒達は息を飲み、祈りを捧げ始めた。

 

このMVPに選ばれれば自身のクラスに一週間もの間、将輝が来る。

 

それは将輝の事が大好きな生徒達にとっては何よりも嬉しいことである。

 

「MVPは………参加した生徒皆さんです」

 

「「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」

 

ほぼ全員が間の抜けた声を上げる中、真耶の意図を汲んだ将輝達だけが微笑んだ。

 

「今回の体育祭の目的は大いに楽しむこと。それらを最大限達成してくださった皆さんがMVPです。藤本先輩には少し忙しい時間を過ごしてもらうことになってしまいますが、先輩なら必ず受けてくれますので安心してください」

 

(そうきたか……ま、その通りだから何も言わなくていいな)

 

「では、これで閉会式を終わります。最後に皆で片付けをしてから、解散ということにしますので、よろしくお願いします」

 

その一言で生徒達は散り散りになり、各自で協力しあって片付けをしていく。

 

将輝も片付けをしようとするが、その前に足取りは真耶の方へと向いていた。

 

「お疲れ様、真耶」

 

「あ、先輩!お疲れ様です」

 

将輝を見た瞬間にキビキビした態度から一転、何時ものほわほわした雰囲気の真耶へと変わる。

 

「今日の体育祭。新生徒達の仕事としては大成功だったと俺は思う。楽しかった、ありがとう」

 

「それもこれも皆さんの協力あっての賜物です。それに結局は先輩に色々負担をかけてしまいましたし……」

 

「そこは気にしなくていい。後輩っていうのは先輩を頼ってナンボだしな」

 

将輝はそういうと真耶の頭を優しく撫でると、真耶は気持ち良さそうに、気恥ずかしそうに顔を俯かせる。

 

「じゃあ、俺は片付けに行くから。学園唯一の男手だしな」

 

「は、はい!今日は本当にはありがとうございました!」

 

「はは、本当はこっちが礼を言うべきなんだけどな………どういたしまして」

 

こうして、IS学園第一回体育祭は大盛況に終わり、生徒達に忘れられない一日として記憶に刻まれることになった。

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