IFストーリー〜もしも過去に残っていたら〜   作:幼馴染み最強伝説

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原作まで後少し!張り切っていきましょう!

アンケートは現在1のZeroと3のしないが同率中。アンケートに答えて下さった方ありがとうございます。

他の方も宜しければ、アンケートを手伝ってくださると嬉しいです。


WHITE CHRISTMAS

「まーくん!クリスマスだよ!」

 

「だから、パーティーの準備してるだろ」

 

今日は十二月二十四日。

 

世間はクリスマスイヴという事で、何処もかしこもクリスマスムードに染まっていた。

 

そして将輝達も例外ではなく、冬休みということで織斑家には将輝、千冬、束、静、ヒカルノ、真耶、楯無、クラリッサ、ミハエ、一夏、箒、鈴。そして何故かアリーシャとナターシャの計十四人が集まっていた。

 

「何故貴様らがここに……」

 

「まぁまぁ、そんなに睨まないでよ、クラリッサ♪祭りは皆の方が楽しいでしょ♪」

 

「そうそう。第一、私達は最強に呼ばれて来たのサ。謂わば客人なのサ♪」

 

「くっ……ならば、そうグダグダしていないで手伝え」

 

「「嫌」」

 

「嫌……ではない!将輝殿!この者達を叩き出してもよろしいかっ!」

 

「落ち着いて。アーリィもナターシャもあまりクラリッサをからかってやるなよ?あ、そこの装飾とって」

 

「はーい。っと、これ?」

 

「そうそう。それをあそこにつけて」

 

「りょうかーい」

 

「くっ……将輝殿と私では雲泥の差なのはわかっているが、こうも露骨だと無性に苛立ってしまう……!」

 

「気にする事無いのサ。ナターシャは入学してきた事情や年齢を考えると、年上に甘えたい年頃だから、多めに見てやると良いのサ」

 

「……では、貴様はなんだ?」

 

「私?私は面白ければそれで良いのサ♪」

 

カラカラと笑うアリーシャにクラリッサは強く拳を握るが、最早苛立つのもバカらしくなってきたのか、ため息を吐いて、作業に戻っていく。

 

アリーシャも、ナターシャが将輝の手伝いをし始めたので、手持ち無沙汰になったので、小学生組の方へと歩いて行った。

 

「少年少女達。キミ達は何してる?」

 

「ツリーの飾り付け、後はお願い」

 

「そういえば、日本には短冊に願いを書いて、吊るす事で願いを叶える文化があったっけ」

 

「それは七夕ですね。本当ならクリスマスにこんな事はしません」

 

「んん?じゃあ、どうして?」

 

「なんていうか……誓いみたいなものなんです。俺達には目指すべきものがありますから」

 

そう言う一夏の目を見て、アリーシャは目を丸くする。

 

確かに書かれている願いを見てみても、それらは少し小学生のお願いとしては現実味があり、それでいて、なかなか夢見がちとも言えるものだ。何より面白いのは三人共、共通して同じ事を書いている事だ。

 

彼等の目指すもの。それは偏に「最強になる」。シンプルでいて、かつ未だアリーシャすら知らない世界だ。

 

だが、彼等は知っている。最強というものを。それでいて、なおその高みを目指し、己を磨いている事をアリーシャは知らなかったが、なんとなく、直感的に彼等ならいずれそうなるだろう、とそんな気がしていた。

 

「……そっか。なら、頑張るのサ」

 

そう言って、アリーシャは踵を返した。

 

(最強……か。考えてもみなかった)

 

あれだけ最強というものに興味を示していたアリーシャだが、自身が最強になってみたいという事は露ほども思っていなかった。

 

ただ、本当に強い者達と闘ってみたい。ただ、面白さのみを追求していたアリーシャには無い飽くなき向上心は、アリーシャの心に僅かに光を射した。

 

「さあて、私もお手伝いでもするのサ」

 

そう呟いて、アリーシャが手伝いに将輝の所へ行く。

 

「最強。何か手伝えそうな事はある?」

 

「大体は終わったからなぁ……後は、ミハエがケーキを作ってくれてるから、その手伝いとかになるが……」

 

「そいつは好都合。こう見えても、料理は得意なのサ♪」

 

「好きなのか?料理とか」

 

「ただの才能。大体のことはやり方を教えてくれれば、すぐに出来るようになるからネェ」

 

「……羨ましい限りだ」

 

あっけらかんと言ってのけるアリーシャに、将輝は少しだけ恨めしそうに呟いた。

 

その声音にアリーシャはきょとんと首をかしげる。

 

「そっちも似たようなものじゃないカ?」

 

「違うよ、俺には才能がない。だから、アーリィよりも努力しなきゃならないし、色んなことを覚えなきゃならない……でもさ」

 

「?」

 

「それを大切な人達を護れない言い訳にしたくないだろ?俺は才能がないのに最強にいるんじゃない。才能がないからこそ最強になれたって思ってる」

 

「……よくわからないナァ。でも、まあ。それがあれだけの信頼を勝ち得ている理由っていうのはわかったサ」

 

「変な話して悪かった。ミハエを手伝ってやってくれ」

 

「承ったのサ」

 

キッチンへと歩いていくアリーシャの背中を見つめ、将輝は何処となく雰囲気が変わったな、と感じていた。

 

「ふむ。結局はジョゼスターフも『IS学園生徒の一員』だったわけか」

 

ふと、隣に立っていた静が感慨深そうに呟いた。

 

「?そりゃそうだろ。彼女はIS学園の生徒だ」

 

「そういう意味ではない。私が言いたかったのは、ジョゼスターフもファイルスも『将輝に変えられた人間』だったということだ」

 

「……別に俺は何かした覚えはないが?」

 

「意識的にしろ、無意識的にしろ、だ。将輝、お前は凄い。そうやって周囲の人間を変えていくのだからな」

 

「偶々だろ。俺は、他人の在り方を変えられるほど、優れた人間じゃない。ただきっかけがなかっただけだよ」

 

飾り付けを終えた将輝は手をパンパンと叩き、乗っていた椅子から飛び降りる。

 

「それでも、俺に何かあるとすれば、それはーー」

 

「将輝。準備が出来たし、楯無もゲスト二人を連れて来たぞ。そちらはどうだ?」

 

「こっちも今出来た。すぐ行く。……さてと、この話は終わりな。やっぱり褒められまくるのは慣れてない」

 

そう言って将輝は苦笑する。

 

この時代に来た時から、何時だって将輝本人は褒められる事に対して、一つの苦手意識を持っている。

 

嬉しくないわけではない。ただ、単に気恥ずかしいのだ。

 

ある意味ではそれが将輝の弱点といえた。

 

そんな将輝に静はやれやれと肩をすくめた後、自身もまたリビングへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ行くよ〜、せーのっ」

 

『メリークリスマス!』

 

パンッ!パパパンッ!

 

クラッカーの音が響き、いよいよ織斑家クリスマスパーティーが開催された。

 

男女の比率が1:7という何とも女子率の高いクリスマスではあるが、そんな事などお構いなしに将輝達はわいわいと楽しんでいた。

 

「んー!やっぱりまーやんの料理は美味しいね!」

 

「途中から一夏くんも手伝ってくれたんですよ。この歳なのに、すっごくお料理が上手で」

 

「家事は基本的に一夏がしてくれていたからな。一夏の料理の腕は私が保証する」

 

「でたでた、千冬のブラコンが。まぁ、美味いのは確かだけどナー」

 

「ケーキも美味しいですよ!ミハエ先輩は職人張りの腕ですよねっ!」

 

「そんなに煽てても何も出ないわよ。というよりも、貴女は妹達の前なのだから、少しは礼節を弁えなさい」

 

「言うだけ無駄だ。こいつも色々な意味で束と同族だからな」

 

「まあまあ先輩方。パーティーなんだから、そういうのは無しでいきましょ。こういう時こそフリーダムに」

 

「貴様はフリーダム過ぎるぞ、ナターシャ・ファイルス」

 

「そういうクラリッサちんは堅すぎると思うけどネェ」

 

「鈴。行儀悪いぞ?折角作ってもらったりしてるんだから、もっと行儀良くしろよ」

 

「あんたはあたしのお母さんか。別にししょーだって、あんな感じだからいいのよ」

 

「姉さんに礼儀を求めるのは、な。いくらなんでも無理がある」

 

各々に言い合いながら、食事をしたり、言い争ったり、バトったりしている中、楯無に連れてこられたゲスト二名こと、更識シスターズは他のメンツの謎のテンションに完全においてけぼりにされていた。

 

その状況を見るに見かねてか、反対側の席に座っていた将輝が声をかける。

 

「どうしたんだい?楽しめてないようだけど……」

 

「……楽しめてないっていうより、なんでこんなに楽しそうなのかわからない」

「だろうね。俺も、いや、俺達もなんでこんなに楽しいのか、そこのところはよくわかってない」

 

将輝の返答に更識シスターズの次女、刀奈は怪訝そうな表情で見やる。

 

初対面ということもあって、刀奈は警戒しているのだが、それ以上にやはり将輝の噂を完全に警戒している。

 

隣に座っている三女の簪は単純に人見知りなので、完全に刀奈の後ろに隠れるような形となっているものの、視線だけは将輝の方へと向けていた。

 

「まぁ、結局は慣れと勢いだと思うよ。こいつらと関わってると、わけのわからない事でテンションは上がるし、その場のノリと勢いでしでかす事もある」

 

「それって後先考えてないだけなんじゃ……」

 

「そうとも言う。けど、そこには反省も後悔もないよ。人生はより楽しく面白く謳歌した奴の勝ちだからね」

 

そう言ってにこりと笑う将輝に刀奈は楯無の言っていた事を思い出し、緊張の糸が緩む。

 

「……貴方って変な人ですね」

 

「最近よく言われる。まぁ、奇人変人の相手をしてたんだから、そうなるよ」

 

「でも、悪い人じゃなさそうです……ね、簪ちゃん?」

 

「…………」

 

特に何も言わないが、簪はこくりと頭だけ動かして肯定する。

 

そうして将輝はIS学園のメンバーと話をしながらも、刀奈や簪にも時折話しかけ、簪はともかく、刀奈も徐々に楽しみ始めていた頃。

 

「よーし!じゃあ、そろそろ良い子の皆にプレゼントの時間だよー!はい、小学生組の皆さん集合〜!」

 

束号令の下、一夏達五人の小学生組が束の下へと集まっていく。

 

「まずはいっくんと箒ちゃんから……じゃじゃーん!」

 

「束さん。これって……」

 

「私が三日三晩かけて創った日本刀。一応ISの近接ブレードを受け止めるだけの耐久性はあるし、刃は潰してあるから、危険性はないよ。いっくんはちょっと短めのを二つ。箒ちゃんは普通のを一つね」

 

そう言って差し出された日本刀を受け取る一夏と箒だが、ずしりと伝わってくる刀の重さに顔をしかめる。

 

「姉さん。この刀、少し重いような気がしますが……」

 

「うん。改善に改善を重ねてもこれが精一杯。今の二人には重いかもしれないけど、長い目で見れば、ちょうど良くなるよ。それに並の刀じゃ、折れる可能性もあるわけだしね」

 

当然の事だった。

 

通常の日本刀を創るための材料を用いておらず、完全に束の独学とオリジナル性で創られたこの日本刀は従来のものよりも僅かに重い。

 

だが、それは今の一夏と箒には、であって、高校生にもなればその重みには慣れていて、次は使いやすさや剣技に耐えうる耐久性を求め始める。

 

ともすれば、これが最善なのだ。

 

「次はりんりんね〜。はい」

 

「………なにこれ?」

 

「中国にある飛刀をアレンジしたやつ。りんりん、前にお手軽な武器が欲しいって言ってたからさ。飛び道具にも使えてある程度打ちあえる武器創ったの」

 

そう言われて、鈴は最近一夏や箒と手合わせをした時になんとなく「扱いやすい武器が欲しい」といったのを思い出した。

 

半ば冗談のつもりであったが、仮にも師匠である束は弟子の要望には当然の事のように答えた。

 

「後は……刀奈ちゃんとかんちゃんだっけ?」

 

「は、はい」

 

束に声をかけられて緊張に身体を強ばらせる刀奈。

 

将輝の時は別の緊張があったが、束は全世界で最も有名な人間。将輝の場合は意図的に流した悪い噂もあり、顔を合わせた時は警戒していたが、束に関しては特に悪い噂は流れていないので、普通に緊張していた。

 

「えーと、刀奈ちゃんの方にはこっちで、かんちゃんの方はこれね」

 

刀奈に渡されたのは扇子と特殊スーツのような物。そして簪は兎印が入ったパソコンだった。

 

「刀奈ちゃんの方は今後の事も考えて、その二つね。扇子はISが殴っても折れないし、各種機能つき。スーツの方も特殊仕様だし、伸びるから大人になっても余裕で使えるよ。かんちゃんの方はたっちゃんから機械好きってきいたから、私特製のパソコン。今ある最新鋭のパソコンの五倍くらいの性能はあるから。なんなら片手間で政府のシステム中枢にハッキングくらいはできるよ」

 

「あ、ありがとう……ございます……」

 

「あ、あり、が、とう……ござ、い、まし、た……」

 

二人とも初対面にもかかわらず、凄まじい物を渡してくる束に困惑しながらお礼を言うが、束からしてみれば、二人は義妹のような立ち位置になるので、全然ウェルカムだった。

 

「プレゼント渡しが終わったところで〜……」

 

「皆で『王様ゲーム』やろうぜぃ!クラちゃん!」

 

「はい。既に必要な物は用意しています」

 

シュバっとクラリッサの手元には十六本の黒い棒が用意されていた。

 

「王様ゲーム?なんですか、それは?」

 

小学生である一夏達は当然のごとく、王様ゲームを知る由はない。

 

そこにすかさず、説明役の真耶が説明をする。

 

「ルールは至って簡単です。『王様だーれだ』の掛け声と一緒に一斉に棒を引きます。王と書かれた棒を引いた人が一から十五の数字を指定し、命令できます。王様の命令は絶対ですが無理難題なものは無効になりますから気をつけてください」

 

「解説ありがとうね、マヤマヤ。いっくん達がルールを把握したところで、始めたいと思いまーす」

 

「ちょっと待った。なんでクリスマスに王様ゲームするんだ?」

 

「ノンノン。そんな野暮な事聞いちゃいけないよ、まーくん。世間一般のクリスマスは雰囲気を楽しむけど、その定義に私達が当てはまると思う?」

 

「………ないな」

 

寧ろ、そんな雰囲気をぶち壊してしまいかねないのがこの生徒会のメンバーだった。

 

確かに彼女達もクリスマスの雰囲気を楽しみたくないわけではない。

 

それどころか、二人きりになって良い雰囲気になったら、聖夜であるというのを良いことに将輝にあわよくば押し倒してもらおうかなとすら考えていたりするのだが、これだけの人数、そしてこのメンバーとなれば話は別だった。

 

面白ければなんでも良い。そして何よりーー

 

(王様ゲームなら、まーくんにあんな事やこんな事も命令できちゃうしねっ!乗るしかない!このビッグウェーブに!……的な)

 

皆で遊ぶことを目的としていると称し、将輝に嬉し恥ずかしな事をしてもらおうというのが、束の算段であり、それを瞬時に千冬達も察し、キュピーンと目を光らせた。

 

「さてと、まーくんも納得したところでぇ……せーのっ!」

 

『王様だーれだ!』

 

クラリッサの握っていた黒い棒が一斉にひかれる。

 

最初に引いたのは………

 

「あ、私ですね」

 

楯無だった。

 

「それじゃあ……四番の人は五番の人の頭を撫でてあげてください」

 

指名された四番の棒を持っていた将輝は五番の棒を持っていたクラリッサの所へ行き、頭を撫でる。

 

「……恥ずかしいですね。ですが、そこはかとなく嬉しくも……」

 

「どうした、クラリッサ?大丈夫か?」

 

「いえ、お構いなく。大丈夫ですので」

 

そうして頭ナデナデが二十秒程続いた後、再度クラリッサの元に棒が集められた。

 

「じゃあ第二回戦っ!せーのっ!」

 

『王様だーれだ!』

 

一瞬の沈黙が流れた後、その棒を手にしていたのは……

 

「私が王様!」

 

ナターシャだった。

 

(ふっふーん。先輩方の考えてる事なんて私にかかれば一発で分かっちゃうんだから。しょうがないから、手伝ってあげよっと)

 

ニヤリと不敵に笑ったナターシャはビシッと指差して告げる。

 

「十五番はお姫様抱っこされながら二番の頬にキスしちゃいなさい!」

 

決まった、ナターシャがそう思った瞬間。

 

ギンッ!

 

ナターシャが宣言すると共に、鋭い殺気を帯びた視線がナターシャに突き刺さった。

 

思わず、悲鳴をあげそうになったナターシャは「なんで?」と疑問を浮かべるが、それも仕方のない事だった。

 

十五番は簪で、二番が将輝だったからだ。

 

人見知りの簪に初対面の相手に、剰え頬にキスを要求するなど鬼畜の所業である。

 

しかし、口と口ではないため、無理難題というわけではなく、簪が死ぬ気で拒まない限り、中止にはならず、死ぬ気で拒んだ場合は将輝の心がおれる。

 

因みにこの中で楯無だけが、誰にも負けない殺意をナターシャにぶつけていたりするが、器用な事に殺意をナターシャにぶつけながら、優しい声で簪を心配していた。

 

「簪ちゃん。無理しないでね。嫌……というか、無理なら変わって……じゃなくて、辞めてもいいのよ?」

なかなか欲望の混じった発言ではあるが、それでも楯無は簪を心配していた。

 

簪は将輝と楯無を交互に何回か見た後、言葉を詰まらせながらも、答えた。

 

「……わ、私、やる、から。大丈夫、だから」

 

「簪ちゃん……」

 

理由はどうであれ、勇気を出した簪に軽く感動を覚えている楯無。その横で刀奈も感動していた。理由はどうであれ。大事なことなので二回言う。

 

「じゃ、じゃあ、お願い、し、ます…」

 

「こちらこそよろしく。お姫様」

 

互いにそう言って、将輝は簪をお姫様抱っこする。

 

そして簪が少し動けばキスが出来るように、敢えて高めに持ち上げる将輝だが、やはりというべきか、簪は手前で止まっていた。

 

こきゅと簪は唾を飲む。

 

人見知りな事もさることながら、簪は年齢問わず異性と触れ合った経験はほとんど無い。

 

だというのに、いきなり頬にキスをするというのはハードルが高いどころの騒ぎではないが、やると言ったのは、これを機に自分も変わりたいという意志からである。

 

例え、最初は強制された事からであっても、自分も楯無や刀奈のような人間になりたいと願っている簪は、この行為を経て、自分という人間に変化をもたらしたかった。

 

(……やる。私も、お姉ちゃんたちみたいになる!)

 

覚悟を決めて、簪が動いたその時ーー

 

「大丈夫?やっぱり辞め……ん」

 

「ーーーーっ⁉︎」

 

頬にキスをするはずの簪の唇が簪を心配して声をかけようとした将輝の唇と重なった。

 

全員の思考がフリーズし、復活するまでの十秒間、二人の唇は重なったままだった。

 

三分後。

 

「えーと、じゃあ三回戦」

 

あまりの出来事に脳の処理が追いつかず、気絶した簪を寝かせ、再度王様ゲームが再開される。

 

因みにナターシャ(粛清確定)だけは二度と王様を引くまいと決心をして、望んでいる。

 

『王様だーれだ!』

 

「よしっ!王様は私よっ!」

 

王様の棒を掲げたのは鈴。

 

流石ナターシャの様なヘマはしない。だが、無言のプレッシャーを浴びている鈴は冒険に出た。

 

「じゃ、じゃあ八番と十一番は…ポッキーゲームで」

 

「あ、私だね」

 

「私ですね」

 

ひょいっと手を挙げたのはなんと篠ノ之姉妹。

 

互いに顔を見合わせ、そして箒は最悪だという表情を束は最高だという表情になった。

 

「さあさあ、箒ちゃん!王様の命令は絶対!お姉ちゃんと一緒にチュッチュしようね〜」

 

「何故私がこんな目に……出来ることなら一夏と……」

 

そう言いつつも、束の咥えたポッキーの反対側を咥える箒。

 

「よーい、スタート!」

 

鈴の掛け声と共に束の目が光る。

 

(箒ちゃんなら意図的に折りかねない。でも、私はそんなこと許さないもんねっ!)

 

目を光らせた束が勢いよくポッキーを食べようとした瞬間。

 

勢い余ってポッキーが真ん中から折れた。

 

「あ゛っ」

 

「折れたので終わりですね」

 

「ちょっ、タイム!さっきのなし!今の事故!」

 

「折れたら終わりですから。諦めてください、姉さん」

 

「うわーん!なーんーでーさー!」

 

「「うるさい!」」

 

悲痛な叫びも、呆気なく千冬と静の拳によって鎮められた。

 

「痛たた……もう酷いよ、ちーちゃんもシズちゃんも。いくら耐久性が高いからって容赦なさ過ぎるよ」

 

「御託はいい。早くするぞ」

 

「せっかちだなぁ、ちーちゃん。じゃあ行くよー」

 

『王様だーれだ!』

 

「あら。私が王様ね」

 

勝ち誇った笑みを浮かべて答えたのはミハエ。

 

その様子に密かに歯嚙みする面々だが、そんな事など御構い無しに、ミハエは言う。

 

「では七番の人。そうね……王様に向けて騎士の誓いを立てる……というのはどうかしら?」

 

涼しい顔でそう言うミハエだが、其の実内容はかなり深刻だった。

 

最初のうちは誰もが躊躇われる自身への命令もそうだが、騎士の誓いを立てるというのは、つまるところ騎士になりきって、それっぽく言わなければならない。恥ずかしなればやり直しという、一種の羞恥プレイである。

 

ミハエとしても、当然将輝にして欲しいところではあるが、この際面白ければ良いと日頃隠されていたSの気が僅かに顔を覗かせていた。

 

「さて、七番は誰?」

 

「うぅ……俺、ですね」

 

「あら、これは可愛い騎士さんね………おしかったわ」

 

同じ男でも将輝の方が良かった。

 

そう言う感情を隠す事もなく、小声でそう呟く。

 

対する一夏はやはり恥ずかしそうに顔を羞恥に染めながら、束に耳打ちされた言葉を告げる。

 

「えー、コホン。我が剣と誇りを持って、降りかかる邪悪を打ち倒す。騎士として、私は命を賭して貴女を護り抜こう」

 

「及第点ね。その歳でそんな顔を出来るなら、きっと貴方は彼と同じ人間になれるわ」

 

「?ありがとうございます?」

 

「多分褒められてないぞ、一夏」

 

将輝と同じ人間になれると言われ、取り敢えず礼を言う一夏だが、箒はそれが指すところを知っているためにぼそりと呟いた。

 

そこからどんどん王様ゲームはヒートアップしていく。

 

アリーシャがクラリッサにハリセンで叩かれたり、千冬のアイアンクローをヒカルノが喰らったり、わさびの大量に入った寿司を真耶が食べさせられたり、一分間のくすぐり刑を楯無から刀奈が受けたり、箒が一夏に壁ドンをしたりととても楽しんでいた。

 

そしてそれが二十回目を迎えた頃。

 

「つ、ついに、ついに私が王様だー!」

 

そういって王様の棒を掲げたのは今の今まで王様になっていなかった束だった。

 

「この時を待ってたよ!十三番の人!これを一気飲みね!」

 

「十三番……俺だな。コーラの一気飲みとかなかなかえげつないな」

 

差し出された五百ミリリットルのコーラのペットボトルの蓋を開けて、将輝は言われるがままに一気飲みをする。

 

それを見届けた束はニヤリと不敵に笑った。

 

「なんだこれ。美味いけど、変な味……が……」

 

「飲んだね、まーくん」

 

「束。一体あのコーラに何を入れた?」

 

「何も入れてないよ〜。ただ、元々あれはただのコーラじゃなくて、ジンコーラだけどね!」

 

「それってお酒って事ですよね⁉︎」

 

「ふふふ。確認しなかったまーくんが悪いのさ。それに無理難題じゃないしね!」

 

悪どい笑みを浮かべる束だが、対して将輝の反応はない。

 

天井を見上げたままの姿勢で固まっていた。

 

「篠ノ之博士?反応が全くないんですけど……」

 

「あ。あれ?おかしいなぁ……流石に少しきつめにはしたけど、意識が飛ぶほどって訳じゃ「束」あ、まーくん。大丈夫ーーッ⁉︎」

 

『ッ⁉︎』

 

その時、突然将輝が束の唇を塞ぐ。

 

それも一瞬ではなく、じたばた暴れる束が沈黙するまでの間である。

 

「ぷはっ。ごちそうさま」

 

「きゅ〜」

 

目をぐるぐると回して、束がパタリと床に倒れる。

 

振り返った将輝を見たとき、全員思った。

 

『酒を飲ませちゃダメな人だったー⁉︎』と。

 

しかし、将輝は止まらない。

 

次はミハエの前に行くと、顎をくいっと手であげる。

 

「さあ、次はキミの番だ」

 

「む、無理矢理は感心しないわね……」

 

「そう?嫌そうじゃないし、寧ろ嬉しそうだけど?」

 

「そ、そんな事ーーん」

 

その先は言わせないとばかりにまた将輝は唇を塞ぐ。

 

一瞬肩を強張らせたミハエも、すぐに肩から力が抜け、二十秒後には陥落した。

 

「仕方ない。ここは将輝には悪いが寝てもらうぞ」

 

キスをされているのは羨ましいものの、これ以上の暴走は見過ごせないと千冬が不意打ちで気絶させようとするが、それはあっさりと防がれる。

 

「ッ⁉︎酔っても強いか!」

 

「ダメだよ、千冬。暴力は。可愛い女の子なんだから、な?」

 

将輝は千冬の手首を引っ張り、腰に手をまわすと、そのまま完全にホールドし、キスをする。

 

(し、しかも、ディープ、だとっ⁉︎)

 

日頃の将輝から考えられないような濃厚なキスに千冬は思考が麻痺していくのを感じる。

 

引き放そうにも将輝の力は強く、千冬の力は弱くなっていくばかりで、抵抗虚しく、千冬も沈んだ。

 

そして三時間後。

 

「痛っ……あれ?なんで俺布団で寝てるんだ?つーか、頭痛い」

 

「……お兄ちゃん……?もう……朝?」

 

ゴジゴシと目を擦って眠たそうにしている簪は睡魔によって思考が鈍化しているのか、普通に将輝に話しかける。

 

「ううん、まだ夜だから寝てていいよ」

 

「……わかった」

 

そう言うと寝ぼけているからか、簪はとてとてと歩き、将輝の布団の中に潜り込むとそのまま眠ってしまった。

 

「簪ちゃん……まぁいいか」

 

起こすのも悪いと思い、将輝は頭が痛いことも相まって、そのまま布団の中に潜り込んだ。

 

その後、彼女達の間では将輝に度のキツイアルコールを飲ませてはいけないという暗黙の了解が築かれるのだった。

 

 




というわけで、どさくさ紛れに更識シスターズ登場。

後、将輝が酔うとキス魔になるという事実が発覚しました。

なんとなくクリスマスっぽくなくてすみません。
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