IFストーリー〜もしも過去に残っていたら〜   作:幼馴染み最強伝説

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最強を目指すもの

 

「ふぅ……やっと終わりか……」

 

IS学園初日を無事乗り切った俺は息を吐く。

 

師匠に言われてわかってはいたことだけど、来てみるとそれ以上に辛い。

 

二組にいる男子とも結局話せずじまい、同じ男として是非仲良くしたいところなのに。

 

「織斑」

 

「あ、ししょ……じゃなかった。藤本先生」

 

「それ、早いところ直せよ。織斑先生に怒られるぞ」

 

溜め息を吐いて、師匠は言う。

 

なんていうか……千冬姉も師匠もプライベートとあんまり雰囲気が変わらないから、呼び分け辛いんだよな。出会った頃の師匠なら全然大丈夫なんだけど。

 

「そういえば、藤本先生はちゃんと分けられてるんですね」

 

「まあな。こんなのは慣れだ慣れ。………それに俺の場合はこっちの方が先だった事もあるし」

 

こっちの方が先?よくわからないけど、やっぱり慣れるしかないのかぁ……。

 

「それよりもだ。はい、これがお前の寮の鍵だ」

 

「ありがとうございます」

 

「一応、昔俺が使ってた個室でな。諸事情で防犯レベルは完璧だ」

 

「……その諸事情って……」

 

「……みなまで言うな」

 

師匠が遠い目をした。きっと、高校時代のドタバタを思い出してるんだろう。

 

俺は千冬達からの話からしか聞いたことはないけど、それでも痛い程師匠の苦労が伝わってきていた。俺が師匠の立場なら一ヶ月と保たない。

 

「ともかくだ。部屋は個室だし、気は楽だろう。もう一人の男子は隣の部屋だから、機を見て会ってみろ。俺はともかく、お前なら仲良くできるだろ」

 

「先生はもう会ったんですか?」

 

「同類として見ておく必要があったからな。ま、想像とはかなり違ったが、悪い奴じゃない……と思う」

 

微妙な表情で師匠は言う。師匠がこんなことを言う相手なんて珍しいな。よほど変わった人間なのか、それとも気難しい奴なのか、どっちにしても仲良くしたいよな。

 

「何かあったら寮長室に来いよ。でも頻繁に来ると怪しまれるから程々に」

 

あくまでも旧知の生徒と教師というスタイルに師匠は拘るらしい。バレたら世界がうるさいとかなんとか。

 

「ところで先生。この後って時間ありますか?」

 

「あー……ちょっと用事みたいなものがあるな。どうした?」

 

「久しぶりに手合わせしてもらおうかと思って」

 

俺は腰に携えた刀を持って言う。彼これ一年くらい師匠と手合わせしてないから、久しぶりにどれだけ差が縮まったのかを見てみたい。師匠達用に作った技もあるし。

 

「わかった。極力早めに済ませるから、先に剣道場に行ってウォーミングアップしとけ」

 

「なら、そのウォーミングアップの相手は私がしてやるぞ、一夏」

 

そう言って現れたのは箒。

 

箒とは月に何回か手合わせをするけど、ここ最近はISの事で忙しかったし、箒も先にIS学園の寮に入ったから、手合わせはしていなかった。

 

「箒だとウォーミングアップじゃ済まないんじゃないか?」

 

「大丈夫です。お互いに程々にしておきますので」

 

そうは言うけど、俺も箒もいざ始めたら絶対に全力でぶつかり合う。程々にはならないと思う。

 

でも……。

 

「わかった。頼むぜ、箒」

 

師匠とも闘いたいが、箒とも闘いたい。

 

一ヶ月もお互いに顔を合わせていなかったんだ。俺に新技を編み出す猶予があったように、箒にもそれはあるはずだ。

 

「では、審判役はわたくしが引き受けましょう。お二人も試合に集中したいでしょう」

 

「いいのか?こう言ってはなんだが、私達の試合は常人では追えないぞ?」

 

「ご心配なく。わたくし、『視る』事には自信がありますの。狙撃手(スナイパー)ですから」

 

そういえば、オルコットさんはミハエさんの弟子なんだっけ。なら、俺達の試合も普通に視えるか。

 

「それならいい。審判役はオルコットに任せよう。一夏、早く行くぞ」

 

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺と箒とオルコットさん、そして俺達三人についてきた女子生徒の大勢が剣道場に来ていた。

 

剣道部の人は、初め何事かと驚いてたけど、事情を説明したら、快く承諾してくれたのだが、そこからまた観客は増えて、人数が凄いことになっていた。

 

「ギャラリーが随分増えたな」

 

周囲を見渡して、箒は溜め息を吐くが、全国大会三連破しているという事もあって、このギャラリー数に慣れた様子だった。

 

俺はこういうのには全く慣れてないけど、試合に集中したら、大丈夫だろう。

 

「ルールはどうなさいますか?」

 

「寸止めの一本勝負だ。一夏もそれでいいだろう?」

 

「ああ。それでいい」

 

ようはいつも通りって事だ。

 

今のところ、戦績は四百八十五戦二百三十九勝二百三十六敗十分とかなりの接戦だ。でも、このうち俺たち二人だけでやったのもあって、もめた時はじゃんけんで決めてるから、何十戦かは勝敗が変動する。

 

俺は腰に携えていた二本の刀を抜き、箒は抜刀術の構えを見せる。

 

「では、始めてくださいな」

 

オルコットさんが開始の合図を告げると同時。

 

ヒュッ。

 

ギィィィン!

 

首めがけて放たれた斬撃を二刀で受け止める。

 

相変わらず、抜刀したタイミングが辛うじてしかわからない。

 

これが箒の『神速』である所以。

 

剣が速すぎて、剣筋が見えない。

 

箒の剣は一撃一撃が速さに特化していて、俺では殆ど見えない。

 

それでも止められるのは、その瞬間に生じる箒の意思。その時に何処を狙うのか、ある程度予測することができる。

 

だが、ここからだ。

 

元来、抜刀術は一番速いわけではなく、単に所作を省くが故に、『構えや流れから軌道を読まれず、相手を斬る』というもので、普通に抜いて構えて斬るよりも速いだけで、初めから構えている相手の場合は相手の方が速い。

 

当然、箒も例外ではない。

 

速くなるのは抜いた後だ。

 

風切り音と共に剣戟が放たれ、俺は只管防ぎ、躱す。

 

一度流れに乗った箒は止まらない。どこまでも速くなり、ピークに達した頃には俺では追えなくなる。

 

だから……!

 

俺はジャンプして、箒の頭上へ行く。

 

「はああああ!」

 

「甘いぞ、一夏!」

 

俺と箒の刀がぶつかり合い、激しい金属音を響かせる。

 

こっちは二つ、あっちは一つなのに手数の多さでは殆ど互角。ましてや、位置的有利は俺にあるのにだ。やっぱり箒は強い。たった一月の間にまた強くなっている。

 

でも、大体わかった。

 

「ッ⁉︎」

 

俺は箒の剣戟、その全てをいなす。

 

最小限の動きと力でだ。

 

速さで追いつけないというなら、無駄を無くすだけだ。

 

そして着地すると同時に今度はこっちが攻め立てる。

 

数十手にも及ぶ攻防。

 

僅か数秒の出来事が途方もない時間と思える程濃縮された時間の中で、俺と箒は剣戟戦を繰り広げる。

 

だが、それが数十回に及んだとき、俺と箒は止まった。

 

それは気づいたからだ。

 

お互いに一手足りないということに。

 

そして、お互いにまだ隠している技があることに。

 

これはあくまでもウォーミングアップで、いつものように力と技を全て出し切る試合じゃない。

 

「なあ、箒」

 

「なんだ、一夏」

 

「一つ提案がある」

 

「奇遇だな、私もある」

 

一呼吸おいた後、俺達は口を揃えて言う。

 

「「次で終わりにしよう」」

 

ニヤリと笑い、お互いに構え直す。

 

俺はいつも通りにだったが、箒は今まで一度も見たことのない上段打突の構えだった。

 

「我流ーー」

 

「秘剣ーー」

 

身を屈め、俺は箒に肉薄した。

 

「双連舞!」

 

先にしかけたのは俺の方だった。

 

一呼吸のうちに四連撃を放つ、俺の最速の剣技。

 

以前ならほぼ同時にしかけて、勝つのは俺だった。

 

そして今回放つ俺の方が先にしかけた。これならーー。

 

「燕返し!」

 

俺の勝利が決まる直前、放たれた一撃は確かに二本存在していた(・・・・・・・・)

 

「そこまでです。今回の試合は、篠ノ之さんの勝ちのようですわね」

 

俺の首に突きつけられた剣を見て、オルコットさんが言う。

 

確かに、今のが実戦なら俺は首を落とされて死んでいた。

 

そしてだからこそ気になる。

 

「箒。さっきのは……」

 

「燕返し。未完成だが私の奥の手だ」

 

手にしていた剣をおさめて箒は言う。

 

「先程の技……わたくしの目がおかしいのでなければ、同じ時、同じタイミングで篠ノ之さんの剣が二つ存在していたように見えました」

 

オルコットさんの疑問はもっともだ。

 

彼女程、俺はしっかりと見えなかったけど、確かに『線』が二つ存在した。

 

「いや、お前の目はおかしくない。もっとも『同時』というにはおざなりだがな……先生はわかりますよね」

 

「ああ。正確に言えば、ほぼ同時だな。一撃から二撃の間にコンマ数秒差がある」

 

気がつくと、剣道場の入り口に師匠がジャージに着替えて立っていた。

 

「何時からいたんだ、師匠」

 

「ついさっき。 裏技使って終わらせてきた。後が怖いけどな」

 

用事があるって言ってた割にあんまり時間がかかってないのはそういうことなのか。

 

「さてと……それで、さっきの箒の技の事だが……驚いたな。誰にも教えてないんだが」

 

「「「え?」」」

 

誰にも教えてないって……まさか、師匠はあれが使えるのか⁉︎

 

「あー、先に言っておくが、俺は使えないぞ。ただ、あの技の完成形を知ってるだけだ。おおよそ、人間に使える代物じゃないしな」

 

俺達の表情を見て、即座に師匠は否定する。

 

でも、さっきの箒の技の完成形を使える人がいるなんて……世の中は広いなぁと感心させられる。俺の知らない師匠レベルの人達がまだこの世界にはいるんだ。

 

「さっきの燕返しの完成形は『一度の内に同時に三回斬る』っていう剣技……っていうか、魔剣だな。それで絶対不可避の技とするわけだが、箒の場合は同時じゃなく、誤差がある。だから、仮に俺や織斑先生に使っても、一撃目を止めて二度目にいかせない。そうすればあの技は不発に終わる」

 

「……おっしゃる通りです。流石は将輝さんですね」

 

「わたくしには同時に斬ったようにしか見えませんでしたわ。わたくしもまだまだですわね」

 

こうして師匠が説明しているのを聞くと、まだまだ遠い場所にいるというのを実感する。

 

でも、いずれはこの人に勝たなくちゃいけない。

 

それは五年後か十年後か、もしかしたらもっと年をとってからかもしれない。

 

けど、この人が完全に現役を退く前に、俺はこの人を超えたい。

 

それが俺の……俺達の願いだ。

 

「さて……ウォーミングアップが終わったなら、次は本番だな。休憩はいいか?」

 

「ああ!俺はいつでもいけるぜ!」

 

「そうか。ならいつでもこい」

 

その瞬間、師匠からさっきまでの優しい雰囲気が消える。

 

でも、この人は本気じゃない。この人が本気になるのはあの世代にいた人達が相手の時だけだ。

 

それでも俺達では師匠に一撃与えることもできない。俺達のレベルはまだ人間の範疇にいるからだ。

 

なら、限界を超える。

 

人を超えて、修羅になる。

 

俺の時の流れが師匠にとって遅いなら、その流れを濃縮する!

 

「おおおおっ!」

 

ダンッ!

 

俺は床を蹴り、師匠へと迫る。

 

一瞬、師匠の目が見開かれたものの、俺の剣戟はかわされ、ありえない速度で放たれた拳が俺の顔面に迫る。

 

何時もなら、寸止めされて気づく拳だ。でも、今はーー躱せる!

 

身を屈めて、師匠の拳を躱し、そのまま胴を斬りつける。

 

それもひらりと躱される。

 

だが、いつもと違うのは、次の師匠の動きが『視える』ことだ。

 

「我流ーー双連舞!」

 

最速の連撃。

 

さっきは箒に負けたけど、今は違う。

 

この状態なら……この人の世界にいるなら、俺の一撃はーー!

 

「今日は驚きの連続だな。少し見ない間に随分成長したもんだ」

 

「ッ⁉︎」

 

捉えた。そう思ったはずの俺の一撃は空を切っていた。

 

そして次の瞬間ーー。

 

「はい。俺の勝ち」

 

頭に軽く拳骨が落とされた。

 

因みに軽くと言ってもこの人の中ではなので、割と痛い。

 

「ま、また届かなかった……」

 

俺はその場にへたり込みながら、溜め息を吐いた。

 

弟子入りしてから今まで、俺が師匠に攻撃を当てられた試しがない。

 

それは防御もありきでだ。一度も届いたことはなかった。

 

「いや、今回は驚かされた。ほれ、髪の毛が何本か斬れた」

 

師匠が指差したところを見ると、確かに師匠の前髪が何本かが他とは別に短くなっていた。

 

と、届いたのか?この人に?

 

いくら本気じゃないって言っても、いくら一時的とは言っても、ようやくこの人の世界に辿り着いたんだ…!

 

「まさか、意図的にリミッターを外してくるとは思わなかった。なんていう技だ、あれ?ていうか、よくあんなの思いついたな」

 

「いや、なんていうか……師匠を目指してたら、勝手に。名前とかはつけてない」

 

俺がつかず離れずいられた期間はあまりなかったけど、それでもこの人の強さに憧れた。

 

それは腕っぷしだけじゃなく、その心の強さにもだ。

 

この人みたいになれたら、俺も大切な人を護れる存在になれるんじゃないかって。

 

「じゃあ、『一刀修羅』でいいんじゃねえの。まんまそれだったしよ」

 

「なんだ、八重垣。お前も試合しに来たのか?」

 

「馬鹿いうんじゃねえ。殺されるわ」

 

八重垣……?ってことは、こいつが三人目?

 

口は悪そうだけど、あんまり変な奴には見えないけど。師匠も普通に話してるし。

 

「つーか、強すぎね?いつからここはIS学園から破軍学園に変わったわけ?」

 

「破軍学園?それ、なんのラノベだ?」

 

「あ?ばっか、お前落第騎士知らねえのかよ。アニメ化してんだろうが」

 

「いや、知らないけど」

 

ぼーっとしている間に二人の間でよくわからない会話が成立していた。ブレイザーがどうとか、ブレイズじゃないのかとか、多分アニメがどうとか言ってたから、そっち方面なんだろう。

 

それはともかく、良い機会だし、仲良くなっておこう。

 

「っと、そういや、忘れてたわ。俺は八重垣龍二。よろしくな」

 

「お、おう。俺は織斑一夏、よろしく」

 

普通にフレンドリーに自己紹介してきて、握手を求められた。

 

あれ?全然思ってたのと違うんだけど。普通に良いやつじゃないのか?

 

「お前……なんでそんなに普通な癖して俺にはあんなだったの?」

 

「は?んなもん、お前がイレギュラーだからに決まってんじゃねえか。引っ掻き回されるの嫌なだよ」

 

「お前もイレギュラーだけどな………ま、よくある踏み台よりマシだ」

 

「ありゃダメだ。脳内お花畑過ぎて、マジで頭沸いてる」

 

この二人……仲良いのか?悪いのか?

 

なんでかタメ口なのを突っ込まないこともそうだけど、そもそも二人の中に俺達にはない共通の認識がある。

 

知り合い……ってわけでもなさそうだし、特別強いってわけでもなさそうだ。隙だらけだし。

 

「あ、やばい。そろそろ行かないと千冬に怒られるな。皆、完全下校時刻までにはちゃんと寮に帰れよ」

 

そう言って、師匠は去っていった。

 

帰れよ、と言われたけど……ぶっちゃけた話。今、俺立てないんだよなぁ……。

 

あの技を使うと疲労で倒れる。今回は倒れるとまではいかなかったけど、当分立てない……ん?

 

「立てないんだろ?部屋まで背負っていってやるよ」

 

「なんでそれを……」

 

「細かい事は抜きだ。女子に背負わせるのも問題だし、今回限りで俺が運んでやるよ」

 

「龍二……お前、良いやつだな」

 

「は、はぁ?べ、別にてめえのためじゃねえよ。ここでお前を放っていったら、俺が変な目で見られるからだ!勘違いしてんじゃねえぞ!」

 

普通に褒めただけなのに、顔を真っ赤にしてキレられた。そんなに怒らなくても。

 

そして、何故か箒とオルコットさんを除く周りの女子はほんわかした表情で俺と龍二の事を見ていた。例えるなら……そう『こんな子現実にもいるんだなぁ』みたいな。




ほぼオリジナルのストーリーって思いついてても、難しいものですね。

特にオリキャラがいる分、展開は全く違ってますし、なかなか執筆が進みません。

後、何気に三人目はフレンドリーです。単にイレギュラーもとい将輝が同種なんであんな感じになっただけで。

そして誰得なツンデレ要素を追加。色んな意味で似ているオリキャラ達でした。
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