IFストーリー〜もしも過去に残っていたら〜 作:幼馴染み最強伝説
アリーナの一角で起きた大爆発に試合を見ていた全員が息を飲んでいた。
爆発の大きさもそうだが、将輝は今に至るまで一度たりとも生徒会の人間との戦い以外でダメージを受けた事はなかった。それ故、彼は『無敵の副会長』とまで称されていたのだが、彼女達の目の前で起こっている光景はそれを揺るがしかねない事態だった。
五十以上のグレネードによる大爆発。発現から爆発まで五秒あったものの、当の将輝は爆発寸前まで爆破地帯から逃げる事はなかった。そうなると今の常識では爆破直前にIS一つの重荷を持って離脱する事など先ず不可能。そしてあの規模の爆発であれば下手をするとエネルギーを全損している可能性すらあった。
どよめく客席の中、ただ一人金髪の少女ーーーミハエ・リーリスは小さく溜め息を吐いた。
彼女も一度だけ、将輝の強さを知ろうと挑んだ事があった。結果は言わずもがな完敗。擦り傷一つ与える事が出来ずに酷く落ち込んだのは記憶に新しい。だがその敗北もあって、彼女は凄まじい成長を遂げ、生徒会メンバー以外で唯一マトモに試合を成立させられる人間と噂になっている。しかし、あくまで試合が成立するだけであって、勝てる訳ではないので彼女は歯痒い思いをしているのだが、そんな彼女だからこそ、今の光景はとても滑稽に見えた。
(新入生はともかく、彼の凄さを目の当たりにしてきた二年生がどうして気がつかないのかしら。
第一、負ける事など許さない。この学園に来て、初めて男につけられた黒星。軍にいた頃ですら男には一度たりとも負けた事などなかった。その自分に敗北を刻んだ人間がこんなところで負けていい筈がない。何より、日頃から将輝の命を狙ってきた彼女だからこそ、爆発寸前に将輝がとった行動を予測する事が出来た。
「私が認めた男は誰にも負けないのよ」
アリーナの一点を見つめる彼女の口から自然に零れた言葉が将輝に対する信頼の証である事を彼女は気がつかなかった。
管制塔で見ていた生徒会メンバーと彼女達のお蔭で管制塔で見る事の出来た真耶アリーナでの大爆発を見ても驚く程に普通だった。
「いや〜、またどデカい花火だナー。将輝を倒す為とはいえ、自爆特攻とは考えたにゃぁ、あの新入生」
「流石はイタリアの代表候補生。発想が豊かだ。まるで味方全員で勝てなかった強敵を道連れにしようとしている無駄にかっこいいサブキャラのようだ」
「嫌に具体的な例だね。凄く稀だけどこういう時、束さんボケられないから困るんだよね。やっぱりシズちゃんにはツッコミに回ってもらわないと」
「お前のボケは一々他人を巻き込むから駄目だ。それよりも将輝のIS、機能制限が外れていないか?明らかに第一世代の加速力を超えていたが」
「機能制限?何ですか、それ?」
「えーとね。まーくんの機体は第三世代の未来型ISだから現代に合わせて、機能制限してるんだよね。それでも第一世代よりスペック高いし、まーくんは未来の操縦技術を習得してるから、ちーちゃんやシズちゃん、後何だっけ………あ、そうそう。ミハっちくらいしか戦いにならないんだよね」
「第三世代の未来型IS?未来の操縦技術?えーと、それってつまり、将輝先輩は未来人って事だったり…………流石にそれはないですよね」
「そだよ。ていうか、マヤマヤはそれわかっててここにいるんじゃ……」
「全然知りませんでした」
『………』
アリーナの試合を見ていた五人の間に不穏な空気が流れ、千冬と静とヒカルノの視線が束に突き刺さった。因みにその視線は「何、アッサリばらしてんだ馬鹿野郎」と訴えかけていた。
「さ、さあ、私は用事を思い出したから、当分ラボに籠ろ「待て、束」な、な、何かなちーちゃん。私とっても忙しいんだけど………っていうか、頭が割れるように痛いぃぃぃぃ⁉︎」
そそくさと逃げ出そうとした束の頭を千冬が鷲掴みにして、ミシミシという人体から出てはいけないような音が聞こえていた。因みにそれを止めようとする者はいない。真耶も真耶で「え?将輝先輩って未来人なんですか⁉︎」とわたわたしている。
「将輝が帰ってきたら、束の処遇について相談だな」
「学園の屋上からバンジージャンプなんてどうだ?命綱無しの」
「それか人食いピラニアが生息する川で一時間スイミングとか」
「どっちも私ただじゃ済まないよね⁉︎」
「「「うだうだ言うな、阿呆兎」」」
「酷っ⁉︎ちーちゃんやシズちゃんはともかくヒカリんまで⁉︎マヤマヤ〜、傷心の束さんをその母性の塊で癒して〜」
「え?きゃぁっ⁉︎」
千冬の拘束から逃げ出した束はそう言って真耶に飛びつく。美少女二人の組んず解れつの光景はとても目の保養になる光景であるが、ここにいるのは全員女子なので特に喜ぶ事はなく、三人も結果的に真耶が束を引き止めている形となっている為、アリーナの中継に視線を戻す。そして其処に映っていたのは爆発による煙ではなく、アリーナの上空に楯無を抱えて佇む
五十以上ものグレネードが爆発する寸前、夢幻の機能制限が解除された。
おそらく俺が緊急事態であると判断した事で、一時的に機能制限が解除され、俺は
それにしても危なかった。まさか更識が自分自身の身を顧みずにあんな作戦を実行するとは思わなかった。もし、俺が未来人ではなく、男でIS操縦者として凄いだけだったなら、俺も更識も肉体的なダメージは必ずあった。何せ、性能を一時的に第二世代レベルまで引き上げて、瞬時加速まで使ってまでノーダメージに出来なかったんだから。
ハイパーセンサーで客席を見てみれば、全員爆発の方に気を取られていて、其方を見て唖然としている。気がついていないのか?いくら段違いの速さで抜け出したとはいえ、この大きさの物なら気づくと思うが…………あ、ミハエだけこっち見てる。何かよくわからないが、凄く誇らしげな表情をしてる。
「大丈夫か?」
「……何ですか、さっきの……ISが出せる加速力じゃないです」
更識は瞬時加速による反動でやや放心状態になっている。瞬時加速って使った瞬間、ブラックアウトしかけるからな。ISの機能のお蔭でそれはないにしろ、意識してない状態で瞬時加速の負荷がかかったのだから仕方のない事だ。
「続けるか?更識」
「続けたいのは山々ですけど……秘策も使ったので、もう貴方に勝つ為の手が残ってませんし、勝ち目もありせん。ですから、貴方の言う通り、また日を改めます。その時に私が生きているかはわかりませんけど」
二年以内に死ぬと言われている更識にとってはもしかしたら今日にでも死んでしまうかもしれないという恐怖と闘っているのか。それなのに自暴自棄にならないのは凄いと思う。俺ならとっくに死んでるかもな。
「その事だけどな。更識、お前賭けをしてみる気はあるか?」
俺の言葉に更識は首を傾げる。
「賭け?」
「ああ、一か八かの勝負だ。文字通り生きるか死ぬかのな」
そんな訳で俺と更識の試合は更識の降参により、俺の勝利となった。
自らの身を顧みず行った自爆特攻によって、夢幻のエネルギーは一割消費したという事実は二年生達を二重の意味で驚かせた。また変な異名が付きそうな気がするが、状況が状況だっただけに仕方ない事だ。そして今俺は更識を引き連れて、アリーナのピットに帰還し、案の定五人は当然のように待っていた。
「つー訳だ。束、何とかなるか?」
「何とでもなるけど何か?」
事情を聞いた束の返事はあっけらかんとしていた。そもそも管制室なら俺と更識の会話を聞いていてもおかしくない筈なのだが、更識に興味がなかった為に覚えていないんだとか。ついでに言うとこいつ俺の秘密を真耶にうっかりばらしてしまったらしい。はっはっはー、取り敢えず処刑だ。
「試合前にも言ったけど、私は脳だけ無事なら、後は何とかなるって言ったでしょ?結果論だけどね」
「
彼女には出来れば普通でいて欲しい。俺のこれはあくまで自分自身の行動が招いた結果だし、後悔なんてしていない。半年以上経過して、かなり慣れはしたが、最初の頃は加減をするのに文字通り骨が折れた。今では骨や筋肉もかなり破壊と再生を繰り返した事で強化され、ちょっとやそっとで折れたりはしなくなったし、エネルギーが切れてもある程度融通が効くようになった。しかし、結局の所、俺はエネルギーがある以上、人間ではない。ISと同化しているので、リアルにサイボーグだ。それも不完全な。こんな人でも機械でもないナニカになるのは俺一人でいい。
「辞める必要はないよ。それにまーくんクラスなら、少なくとも
「治るんですか……?私の病気は?」
束の二年も余裕があるという言葉に更識は思わず聞き返していた。まぁ、感覚が違うよな。俺も二年しかないっていう感覚だし。
「治るとか治らないの話じゃない。私は治すのさ。それが天才篠ノ之束だからね」
更識の問いにぶっきらぼうだが、しっかりとした返事を返している所を見ると束も本当に変わったと思う。半年前なら「はぁ?お前と話してるんじゃないんだけど」とか言ってそうなのにな。やっぱり友達が増えると人間変わるもんだな。
「で、私がその子を治したら、まーくんは私に何してくれる?」
「秘密をばらした事を不問にして、何でも一個言うこと聞くってのは流石にふざけてるか?」
「まさか。普段デレてくれないまーくんが言うこと聞いてくれるってだけでも良いのに、ばらした事を不問にしてくれるなんて、お釣りが返ってくるレベルだよ。て事で、まーくんの気が変わらない内にさっさと終わらせたいから、ついてきて」
「は、はい!」
そう言って管制室を後にする束と更識。ついてきて、なんて束の口から出るような台詞じゃないな。何となくだが、更識も束に気に入られるような気がする。
「本当に束は変わったな。中学までが嘘のようだ」
「リーリスの事も一応覚えていたしな」
「まぁ、単にリーリスがどうでも良い人間じゃないってだけかもしれないけどナー」
「それはそれで束が友好的になったと捉えて良いじゃないか。うん、友達が多いのはいい事だ」
「何か将輝先輩言ってる事が篠ノ之先輩のお父さんみたいですね。あ、別に変な意味じゃないですよ?」
変な意味ってどういう意味だろう。無駄に達観していて、ジジ臭いとか言われたら、俺泣くかもしれない。いくら憑依型転生者で精神年齢が二十歳だからって、まだ高校生から垢が抜けた程度でしかない。いや、まだ見た目も心も高校生か。だって高校卒業してないんだし。
「それにしても良かったのか?何でも言う事を聞くなどと無責任なことを言って」
「タバねんなら、代償に将輝の貞操を要求してきそうだにゃぁ」
「寧ろ恋人をすっ飛ばして、結婚すらあり得るというのに、どうする気だ?」
「皆さん何言ってるんですか。いくら篠ノ之先輩が将輝先輩にベタ惚れだからって、そんな事頼むはず…………将輝先輩、どうしたんですか?顔色がものすごく悪いですよ?脂汗までかいて」
三人の言う通りだ。あいつなら「さあ、治してあげたんだし、約束守ってよね。じゃあ早速私と結婚しよう!法律?大丈夫、さっき変えてきたから!新婚旅行は何処に行く?何なら一年かけて世界旅行でもいいよ?お金はたんまりあるからね!でもでも、初夜を過ごすのはやっぱり日本がいいな!」とか言いかねない。てか、俺ここまで束の考え読めるとかスペック高くね?違うか、あいつが頭良すぎて馬鹿なだけだ。知ってるか?天才って知能が高すぎると馬鹿になるんだぜ(束限定)。しかし、ああ言った手前、最早変えることはできないし、そもそも今はもう更識を治療?してるかもしれない。まあいいか。最悪、結婚を回避して、貞操捧げるくらいの努力はしよう。一人の命と引き換えに美少女と行為に及ぶのは自ら望んでいなくとも、十分に幸運な事だ。少なくとも、望む望まざるに関わらず、憑依転生前はそんな雰囲気は微塵もなかったので、幸運どころの騒ぎではないが。少なくとも今は更識が無事人間のまま助かる事とあいつが頭おかしい事を言いださないのを祈るだけだ。特に後者。
不幸少女はもれなく救済。何時だって我が作品に不幸のまま、終わる人間がいてはいけないのだお。
束が科学者というよりも医者っぽくなった。でも束のは医療というよりも改造に近いから、あくまで科学者なのだ!
そしてあっさりと露見する将輝の秘密。まあ、前にオリ自らフラグを立てたから当然の結果だよね(棒読み)