ハードパンチャーの金剛デース!   作:アサルトゲーマー

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急に感想が来たので。
書き溜めもこれで完全にスッカラカンなので更新は無いデース。


3 ボンビング

 

 ふと、目が覚めた。

 自分に割り当てられたベッドから体を起こして時計を見てみるとまだ三時らしい。空を見ると星空が見えた。

 もう一度寝なおそうと思ったが昼間の演習の興奮が抜けていないのか眠たくならないので日課のジョギングをしようと思い、廊下に出る。

 しかしこんな時間に起きているのは新鮮だ。空気がいつもよりひんやりしていて気持ちがいい。気分が良くなったのでスキップしていると向かいの本棟の一室の明かりが消えていない事に気が付いた。

 なるほど、テイトクはまだ寝ていないのか。

 テイトクは可愛い奴なのだ。顔はもちろんではあるが、私たち艦娘に苦労を悟られまいと頑張っているところとか、なんだか放っておくことができないタイプといえるだろう。

 

 …決めた。ジョギングは止めにしてテイトクのお仕事を手伝いに行こう。夜更かしは肌に悪いと警告しなければいけないし、ひょっとすれば彼女の気が引けるかもしれない。

 今の私は女だが、女性に好意を向けられるのは吝かではない。というよりかなり嬉しい。そのための努力を怠らないのは英国人の魂ゆえか、ただ単に女好きなだけか。

 気が付けば私は走っていた。ジョギング程度ではない本気走り。そのままの勢いで部屋に飛び込んでテイトクに抱きつく。

 

 しこたま怒られた。

 

 確かに夜中に騒ぐのはいけない。ドアもノックすべきだった。頬ずりもアウトだろう。おそらくこの辺りがボクサー時代にもてなかった理由ではないのかと思うのだが、自覚したところで止められない。

 開き直った私はテイトクの隣に座ってお仕事の補助を始めることにした。難しい漢字だらけだったので一分で挫折した。

 やることが無くなってしまったし邪魔するのも悪いので何となく窓から外を見ていると、海のほうで何かが光った。

 ぞっとした。それはクルーザーに乗っていた時に最後に見た光景に驚くほど似ていたのだ。

 

「いたっ!金剛、何して…!」

 

 気が付けば私はテイトクを抱きかかえて床に体を投げ出していた。そして大きな爆発音とガラスの割れる音が響いて大きな衝撃にもみくちゃにされた。幸いにも砲撃らしきものは私たちの部屋には直撃しなかったようで怪我は無い。

 私はテイトクを抱えたまま安全な場所、地下作戦司令室に向かって走り出す。サイレンが鳴り出し、鎮守府がにわかにざわめき出した。

 ドアを三つほど蹴飛ばし、階段を駆け下りて水密扉を開いた先の地下作戦司令室でテイトクを下ろす。ここは41センチ砲の爆撃にも耐えうるように設計されたシェルターのようなものでこの鎮守府でもっとも安全だ。

 しかしいまだに爆発音は絶えず続いていて、このままではこの辺り一面が更地になってしまう。そうテイトクに告げると逆襲作戦のリーダーに任命された。

 

「現在確認できる敵は少数ですが、タイミングが悪いことに今動けるのは貴女を含めて三人だけです。酷なようですが貴女には矢面に立っていただきます。できますね?」

 

 ヤオモテという言葉には聞き覚えがある。これは日本の古い言葉で、戦場において矢の飛んでくる方を指すらしい。つまりは最前線のさらに一番前、という事だ。

 私はかわいい艦娘たちを盾にするような腰抜けでは無い。テイトクの言葉に私は大きく頷いて返事をする。

 無線機の前に立って通信を始めたテイトクを尻目に私は出撃室へと駆け出す。途中イナズマ、シラヌイと合流し、すぐさま装備を身に着けた。

 ずしりとした金属の重み。しかし同時に力が漲り、私に全能感を与える。もちろんこんなのは錯覚だ、それはボクサー時代に文字通り痛いほど体験した。調子に乗って自分に不相応なことをしても得るのは他人のパンチだけだ。

 私は装備を整える間に二人に作戦を指示する。まあ作戦というほどのものでは無い。私が正面から突撃するから二人にはそれを左右から挟んでもらうというだけだ。

 

「え、でもそれだと金剛さんは…」

「……わかりました。電、金剛さんは私たちのために囮になると言っています。それに報いる方法はわかりますね?」

「…はい」

 

 作戦の説明が終わり、海へと体を投げ出す。昼と違って海は真っ黒で、それはまるで死神の纏うローブの色のようだった。

 しかし恐れることは無い、私には文字通り光の道があるのだから。先ほど不知火から受け取った探照灯の明かりをつけて敵がいると予想できるエリアに向けた。

 チラチラと光るものが見え、少し遅れて砲撃音が響く。こんな真っ黒の海で爛々とライトを照らしている私は間違いなく目だっている事だろう、砲撃が私の周りに着弾してくぐもった爆発音が続く。

 見えないというのは案外怖いものだ。小さい頃など『オバケがでたぞ』と脅かされただけで夜中にトイレに行けなかったほどには。しかし今は違う、暗いならば照らしてしまえばいい。

 私は敵へと直線距離で前進する。どうせ向こうは光で遠近感を失っているのだ、弾は当たらない。当たったところでそれは偶然だ。今の私はバトルシップであり、高い防御力を持った海の要塞なのだから一発二発の被弾など。

 その目論みは正解だった。私は被弾なく5人の深海棲艦をキルゾーンに捉える。シラヌイから教わったのはまだ水平射撃のみで、偏差射撃など夢のまた夢。であれば偏差射撃をしなくても良い距離で撃てばいいのだ。それが前方200メートルであり、私のキルゾーン。

 この距離であれば相手の動きがよく確認できる。目の動き、体のフラつき、意識の方向。私に備わった五感が砲撃のタイミングを確実に捉える。まさに幼稚であり、避けることは箸を扱うよりも遥かに簡単だ。それと同時にこの距離で砲撃は外さない。

 四基ある砲のうち二基を発砲、秒速770メートルの砲弾が深海棲艦に突き刺さる。命中した深海棲艦はまるで石灰で出来た人形のように砕けて、海に溶けて行った。さらにもう二基を発砲、最初の深海棲艦と同じ末路を辿った。

 

『時間です、消灯を』

 

 シラヌイから連絡が入った。私は探照灯の明かりを下ろして一目散に離脱する。これは予め不知火が立てておいた作戦で、魚雷で十字攻撃を行い攻撃が到達する十秒前に消灯するというものだ。明かりに慣れた目では暗闇の魚雷は避けられはしない。

 連続した爆発音が響き、後には静寂。

 

『魚雷通過予定時刻過ぎました。残党を狩ります』

 

 恐ろしい事を言う子だな、と思いつつも再び探照灯で海を照らす。しかし深海棲艦は一人として姿を見せなかった。それを不知火に伝えようとした時のことである。

 

『はわわっ!べ、別働隊です!…きゃあ!』

 

 すぐに発砲音が聞こえた。電の居る方を探照灯で照らすと、深海棲艦が二人いた。まずい!イナズマは先ほど魚雷を発射したばかりで備えがない!駆逐艦の砲は所詮対駆逐艦サイズであり、人型の深海棲艦を相手取るには明らかに火力が足りない!

 私は一も二も無く飛び出した。距離はたった300。近くに岩礁が見えるのでうまく隠れていたのだろう。砲を深海棲艦に向け、発射する。しかし聞こえたのはストライカー(撃針)が空振る音であり、頼もしい轟音は聞こえない。

 

 …そうだ、私は演習用の弾を抜いて薬室に一発詰めて、その後に砲弾を搭載するのを忘れていた。必死で抵抗するイナズマではあるが、どうも緊張しているのか動きが拙い。対面して殺し合うなど慣れるものでは無いので、ある意味では当然と言えた。

 どうする。たとえ石や鉄くずを投げた所で深海棲艦には効きやしない。艦娘と深海棲艦は物理攻撃に対して異常なまでの防御力を誇るのだから。

 

 ふと、である。あることを思い出した。イナズマはミユキとぶつかって怪我をしていなかったか?

 

 それは私の一縷の望みにつながった。右手を大きく振りかぶり、全速を持って深海棲艦に向けて移動する。意識はイナズマに向いていたようで、私の接近にいまいち反応できないでいた。探照灯の強烈な光を顔に向けて照射すると深海棲艦が腕を上げて顔を庇う、私はそのガードを抜けてフックを叩き込む。

 ガードを抜けた拳をくらった深海棲艦は意識を失い海に体を沈め、また石灰の人形のように砕けて溶けて行った。これで分かった。深海棲艦に拳は効く。

 最後の一人に意識を向けた瞬間、機銃で探照灯を撃ち抜かれた。マグレあたりがこんなところで発生するとは、ついていない。そう思ったのもつかの間、深海棲艦が自ら私のキルゾーンに入ってきた。

 全速で前進し、片手を大きく振り上げている。見れば奴の主砲が損傷していた、なるほどイナズマもただやられているだけでは無かったようだ。

 しかし彼女は私に対して殴り掛かってくるという事がどういう事か知らないようだ、その身を持って判らせてやろう。

 最初の一撃は体を大きく逸らすことで躱した。追撃も甘いパンチでありこれも潜り抜ける。そして顔を狙ったパンチが当たらないと気が付いたのか、私のボディーを狙ってきた。それこそが私のねらい目。

 

 私はそのパンチよりも深く屈みこみ、文字通りの一撃必殺をお見舞いした。

 膝から腕までのすべてのバネを使ったアッパーカット。いままで五人の顎を砕いた強烈な技だ、そして彼女で六人目。小気味よい粉砕音が響き、そして空を浮かんだ彼女は顎から粉みじんになって消えた。

 これで終わりか?そう思っていたらイナズマに抱きつかれた。

 

「こ、金剛さぁん…こわかったのです……!」

 

 これは困った。レディの扱いは心得ているつもりだが泣いた女の子は経験がない。あいにく泣かせたことがなかったもので。

 結果私はテイトクの寄こした増援がくるまで泣いているイナズマの前でオロオロとしているのだった。

 

 

 

 

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