絶対小説エタらせるマン
供養

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艦隊コレクションVR

 艦隊これくしょん。

 それはかつてはブラウザゲームとしてリリースされた。

 始めはソーシャルゲームとして。次はコミックや小説として。さらに次はアニメとして。

 そうしてメディアミックス化が進み、そして十数年の時が経った。

 当時、ゲーム機といえばゲーム機またはパソコンとディスプレイ、そしてコントローラーが必要になるものが一般的であった。しかし今は違う。

 VRシステムと呼ばれる拡張現実シミュレーターの台頭。これがゲームの常識を変えた。

 このシステムは専用の機器によってPC上で処理されているデータを現実の事として脳に認識させる。『ゲームの中に入って冒険する』という夢のような出来事が本当に出来るようになったのだ。

 

 最初期はVRハードもソフトも50万は下らなかった。だがそれでも飛ぶように売れたので徐々に一般化していき法整備も進み、最新VRハードのおおよその値段が10万を下り始めたあくる日。とあるゲームが発売された。

 

 

 その名は『艦隊これくしょんVR』。

 

 

 

□□□

 

 

 

 今、俺は自宅にて『艦隊これくしょんVR』のパッケージを握りしめている。

 そう、買ってしまったのだ。超ハイスペックPCを要求する最新AIとグラフィックを持つあのゲームを。

 思えば長かった。このゲームが発売される事を聞いてPCの要求スペックを見た時に愕然とし、PCショップに走った事。KADOKAWA神による情報の小出し。度重なる発売延期によるストレスマッハ。

 もうぶっちゃけハゲるかと思ったが別にそんなことは無く。やっとの思いで手に入れたとなれば感動にむせび泣くことも一つや二つ、あるというものだろう。

 感動に浸るのは別の機会にして俺はパッケージのビニールを破り、ディスクをそのままPCに放り込む。インストールに時間がかかるので今のうちに説明書を読もうという魂胆だ。

 読んでみれば中身は簡単。体感型ゲームなので自分が歩こうとすれば歩くし、『メニュー出ろ~』と念じれば半透明の板っぽいインターフェイスが出るそうな。

 

「ふむふむ…なぁるほど」

 

 大体はいままで出てきたVRゲームと変わらない。なので適当にページをめくっていくと『提督モード』と『艦娘モード』について書かれているページに当たった。

 このゲーム、なんとどちらにでもなれるのだ。一粒で二度美味しいとはこのことで、提督モードでやれば戦略シミュレートと鎮守府の運営が楽しめ、艦娘モードでやれば戦闘を楽しめると書いてある。

 ちなみに自分は戦略には興味ないので艦娘モードでやる気満々である。14ページへと書かれていたのでペラリとめくった。

 えらく不吉な数字だが別になんてことはなく、難易度や使用する艦種について書かれているだけだった。難易度は『イージー』『ノーマル』『ハード』『ハーデスト』『インフェルノ』から選べる。ノーマルより上が充実してるとかどこの防衛軍だよと突っ込みたい。

 艦種のほうは小さいカテゴリーになるほど機動に優れるが装甲と攻撃力に劣ると書かれている。空母については別ページに書いてるらしい。

 なんでも艦種は駆逐、軽巡、重巡から選べるようだ。戦艦はまた別カテゴリー。まあここまでは事前情報で知ってたけど。ちなみに俺は駆逐艦にする気マンマンである。

 で、提督モードも流し読みしてみたがゲームのインストールにはまだ時間がかかるので攻略スレをちょこっと覗いてみた。そして大発見。

 

「まじか!難易度で提督変わんの!?」

 

 これは初耳もとい初見だった。続くレスによると『イージーは優しいイケメン』『ノーマルはナイスミドル』『ハードはおっぱいさん』『ハーデストはゴリマッチョ』らしい。だがインフェルノについては一切書かれてなかった。

 …き、気になる。これはアレだ。とりあえずインフェルノでプレイしてみて提督のご尊顔を拝見した後、難易度が合わないようだったら別難易度でやってみよう。

 そんな事を考えていたらインストールが終わったみたいだ。よし、画質音質難易度もろもろ最高設定でVRハードを被ってレッツプレイ! 

 

 

 

 そんなわけでキャラメイクもパパパッとやって終わらせ、白くて四角い箱の中みたいなステージでのチュートリアルが始まった。難易度は最高設定なのでゲーム的なアシスト、オートエイム等は最低限だ。リロードも当然手動。燃えるぜ。

 自らメイキングした体の調子を確認していると砲撃のやり方が図解付きで解りやすく表示された。早い話目標に砲を向けて引き金を引けば良かろうなのだ。

 しかし照準もないのにどこで狙うのかと思っていれば、構えた瞬間に視界に解りやすい着弾コースが表示された。試しに撃ってみれば正確に命中。アシストオフなので風とコリオリの影響は考慮されてないので何とも言えないが、至近距離で外すことはまずないと言える。

 お次は再装填の仕方だ。初期装備なので砲一つにつき一発しかはいらない。今回も図解で解りやすいように描いてくれている。俺はそれを見ながら砲後部を開いて装弾し、また閉じる。これで射撃準備OKだ。弾が掴みやすく装弾も意外と簡単なので頑張ればFPSの主人公並みに連射できるようになるかも。

 そして出てきました真打魚雷さん。これは「魚雷撃ちたい」とか思っていると発射されるようだ。まあ足で引き金は引けんよね。俺は吹雪型ベースなので足についているそれをじっと見ながら発射させる。発射された魚雷を目で追っていると海面に浸かったそれがハイライトされて見やすくなっているのに気が付いた。

 チュートリアルさん曰く自分の発射した魚雷だけはハイライトされるらしい。しかしアシストなしではたとえ僚艦であっても他人の魚雷は見え無いようだ。

 そして再装填なのだが…なんとクリップ式である。三つつながった魚雷を発射管に叩き込んでクリップを外せば良いらしい。試しにやってみるとこれが気持ちいい。

 バシュっと撃ってスッと次を取り出してガチっと叩き込んでパキっと外す。チュートリアルなので誰も文句は言わないので好きなだけ繰り返して遊んだ。

 最初は「バシュッ…スルッ…ガリョリ…パキン」くらいだったのが回を重ねて熟練していくたびに音が小気味よくなって行く。そして最後の一回は「バシュッ、スッ、ガスッ、ピーン」くらいの音になった。これが理想のテンポってやつか、クリップの飛ぶときになるピーンという音が気持ちいい…。

 そんなしょうもないことで満足した俺はチュートリアルを終えてストーリーモードを起動した。今からワクワクが止まらないぜ!

 

 

 

 目を開けると、そこは戦場だった。

 いや正確には跡地といった感じだけど、いくらなんでもこれは無いんじゃないんですかねぇ。海は燃えてるわ謎の船のパーツが浮かんでるわ、深海棲艦の残骸っぽいのが浮いてるわ…。

 あ、なるほど。確かにインフェルノですわこれ。地獄絵図って意味の。そんな事を考えているとインフォメーションが開いた。デッドスペースとかSAOでお馴染みの半透明の板である。

 それにはプロローグとでかでかと書かれていて、下の方に何やら説明書きがされていた。

 

 ん、何々…?

 それを読んでみると水面の歩き方とダッシュの仕方が書かれていた。歩くのは陸を歩く感じでいいらしいがダッシュは足に力を入れる感じらしい。

 マーカーにそってダッシュしてみましょうと表示されたので足に力を入れてみる。するともの凄い勢いで飛沫を飛ばしながら自分の体が急加速した。

 おおーっ!

 これはなかなか気持ちの良いものだ。吹雪型ベースのこの体でこの加速力だったら島風はどんなんだろうと考えながらマーカーを辿っていく。

 マーカーの終着点につくとそこには行く手を邪魔する大きなスクラップが。そしてインフォメーションの文が変わる。

 主砲を使ってみよう、である。細々した説明があったが早い話、スクラップを主砲で排除しろとのこと。弾の入ってない連装砲に弾を詰め込み、主砲をぶち込む。そしてチュートリアルとは違って凄まじい砲撃音が耳を叩いた。

 …かなり耳が痛い。確かにハワイで銃撃ったときはこんな感じで耳がキンキンしたし難易度的にもアシストないしなぁ。発射直後は周りの音が聞こえなくなるのか、注意しないと。

 そしてさっき気が付いていたけど、喋れない。驚愕の声の声を上げようとしたのだが一言も発せれなかった。あれぇ?KADOKAWA神曰く艦娘とコミュニケーションを取ることで連携力がアップするとか言ってたんだけどなぁ…。まさかこれも難易度的な制約?連携すんなってか。

 そんなことを考えながらスクラップに開いた大穴をくぐる俺。そんな時にまたもインフォメーションが開き、超至近距離~密着距離で砲撃した場合はクリティカルが出てダメージ10倍!とか表示した。つまりすぐにでもそれをする機会があるんだという事で、落ち着いて再装填。

 周りに意識を向けながら穴を潜り終えると空が暗くなった。

 

 上から来るぞ!気を付けろ!

 そんなコンバット越前的な直感で後ろに飛び退くとイ級さんが上から登場。なんか威嚇してるけど俺はヒーロー物の変身シーンで攻撃しない系の空気読むタイプではないので砲を口の中に突っ込んで撃ったらあっさり爆散した。

 他に敵がいないか見回してみるも、スクラップやら船の残骸やらでなにも無い。というよりも行き止まりである。

 壊れる壁でもあるのかと二歩くらい踏み出したら後ろのスクラップが崩れ、退路が塞がった。振り返るとインフォメーションがあった。敵を全滅させよう!と書いているので今から起きるのはザコラッシュだろう。

 壁際に追い込まれるのは拙いので中央まで急いで移動するとイ級が三体現れた。相手の攻撃力のほどは解らないが、とにかく当たらないようにしよう。難易度的に下手に喰らって即死とかだと目も当てられんし。

 とりあえず囲まれているので正面のイ級に向けてダッシュ。戦術がどうのこうのは解らないのでとりあえず各個撃破である。正直俺は現実の射撃でもFPSでもクソエイムのヘッポコなのでもっぱら格闘専門である。

 いつもやってるFPS、『デューティーコール』にあった盾も投げナイフも無いので敵の弾を避けつつ至近距離で射撃、これだ!

 全力で突撃を敢行すると正面のイ級が口から砲を覗かせこちらに向ける。そんな所に砲があったのか!と驚きながらもサイドステップ。砲撃音が聞こえ顔の横を砲弾が掠めた。

 これ以上撃たれてはたまらないのでイ級に組み付き、口の中に砲を差し込んで引き金を引く。するとヤツはあっけなく爆発四散。残り二体居るのですぐさまその場を離れると水柱が二つ上がった。

 一つ減らしたとはいえ挟撃はキツイ。主砲は撃ち切ってしまったので再装填しなければならないが、撃たれながらではうまくできない。ならば…という事で足の魚雷に注目した。装弾数は六、一匹につき三発使える計算である。何の躊躇もなく放ったそれはそれぞれの目標に向けて海の中を進んでゆく。それを見たイ級の攻撃の手が緩んだのですかさず再装填。さっきまで練習していた甲斐あって体が自然に動いた。背中にある格納庫から魚雷クリップを両手に持ち、両足の発射管に同時に差し込んでクリップを外す。──この間実に二秒!

 再度発射しさらに再装填を何度も繰り返す。魚雷の飽和攻撃によってイ級は全力回避を余儀なくされ、そして避けきれなくなるとその腹に魚雷を受けて沈んでいった。

 

 勝ったッ!プロローグ完!

 

 内心ガッツポーズしながら敵の居なくなったフィールドで再装填を終えるとうめき声が聞こえてきた。それはしわがれた男性の声。少なくとも艦娘ではないそれの発生源へと進んでみると、転覆したタンカーと何らかの資材の間に挟まって動けなくなっている、偉そうな格好をした老人がいた。

 

「すまんが…手を、貸してくれ…」

 

 俺の姿を捉えた老人は苦しそうな声で助けを求めてきた。ひょっとしてコイツが提督?




絶対エタらせるマン先生の次回作にご期待ください!

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