どうしてこうなった?! 神による転生者の輪廻物語   作:マーボー

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第10話:進展がありすぎる人生って不安を覚えるけど、今のオレにはありがたいなぁって。

病院を後にしたオレたちは、来たときと同じく二人で帰路についていた。

 

「それにしても本当に良かったのか?」

「うん。って、結構いたと思うんだけど」

 

士朗さんが言っているのは、オレがあの部屋から数十分ぐらいで出てきたことだろう。

数時間ぐらい掛かると思っていたからなのか、この道中ずっと何度も訪ねてくる。

 

「劉が本当にそれでいいなら言うことは何もないのだが、私に変な気を遣っていたりしているんじゃないよな?」

「うん。そんな失礼なことはしないよ。母さん達にはちゃんと、今までの感謝と愚痴と、それにこれからのことを話してきたから」

「そうか。……ん? 愚痴?」

「そりゃそうだよ。なんでこんなに早く~とか、オレの成人式には晴れ着を着せるつもりだったんだろ? とか。あとは女装のこととか」

「……容赦がないというか、強くなったな劉」

「これも士朗さんのおかげだね!」

「やめてくれ。私のせいで「亡くなったあとに、劉から愚痴られた」と、あの二人に呪われたらたまったものじゃない……」

 

軽快に会話をしながら、夕暮れ時の空を見上げる。

アテネの話曰く、この世界にはちゃんと天国なるものがある。

ということは、今もあの二人はオレたちのことを見守ってくれているのだろうか。

 

(だとしたら、改めてこれからもよろしく頼むね)

 

 

二人の微笑んでくれる表情を思い出しながらの帰路になった。

 

 

その日の夜。

高町家で夜ご飯をご馳走になっている時に、「一緒に住まないか?」と提案された。

そこまで迷惑は掛けられないと断りをいれたのだけど、そのことに対して、高町家の面々にお叱りを受けてしまった。特に桃子さんに至っては「私たちが迷惑だなんて思うわけがないでしょ!」と涙ながらに本気で叱られた。

そこまで思ってもらえることに感謝をして、有り難く提案を受け入れることにさせてもらった。

明日にでも引っ越す予定だ。

だけど、性は「天道」のままでいさせてくれとお願いすると、快く了承してくれた。

 

そんなこんなで順調に話は進み、本当に翌日には引っ越しを済ませたのだけど、前まで住んでいた家はどうするかという話になった。

これから高町家でお世話になるのだ。オレとしては売って、ここの家計にしてほしいと思っている。両親だって納得してくれるだろう。

しかし、士朗さんをはじめとして、これまた高町家の皆さんに反対された。

なんでも、あの家はオレが独り立ちできる年齢になった時に好きにすると良い。それまでは高町家が面倒をみるとのこと。

それはつまり土地費や家のローンなどを支払ってくれると言うことだ。

流石にそこまでは……と言いかけたのだけど、有無を言わせないあの迫力を前に、オレは何も言い返せなかった。やっぱり本気になった高町家のみなさんは怖いことを再確認できた。

 

 

 

 

「にしても、アテネの用件ってなんだろう」

 

最後に会った日。

オレの誕生日から一週間が経った今日の朝。

士朗さんに頼みこんで剣の稽古が朝の日課になっていたオレは、その準備をしているときだった。

まだ誰も起きていない早朝にアテネから念話が届いたのだ。

その声にはいつものような元気が無く、内容も「今日の夕方ぐらいに前に会った公園に来てくれる? ……できれば一人で」と簡潔なものだった。もちろん断る理由もなかったから了承して、今こうして公園にやってきたわけだけど。

 

(もしかしたら、アテネは今回の件を知っていたのかな。だから責任を感じていて、その謝罪をしたい、とか?)

 

待ち合わせの時刻まではまだ数十分と時間がある。

デバイス陣がいないおかげもあって、一人で呼び出された理由を考えていた。

 

すると急に背後から気配を感じた。

 

「やぁ、アテネ」

「ごめんね。遅くなっちゃったかな……」

「そんなことないよ。むしろ待ち合わせの時間までまだ余裕があるぐらいだし」

「そう……」

 

振り返ってアテネの表情を見ると、やはりそこにはいつものような元気がなかった。

 

「ごめんなさいね。急に呼び出したりして……」

「別に構わないよ。暇だったし。それに、アテネからの呼び出しだったら喜んで受け入れるよ」

「~~っ!」

 

オレの言葉を聞いたアテネの表情が歪んだ瞬間、直ぐにその表情は見えなくなった。

何でかというと、勢いよく頭を下げたからだ。

 

「ごめんなさいっ! 私、劉ちゃんにそう想ってもらえるほどいい神じゃないの!」

「それって、どういうことかな?」

 

まぁなんとなく察しはついた。

やっぱり呼び出された件っていうのは――

 

「私、知ってたの! あの日、劉ちゃんのご両親が亡くなること! だからデバイスも受け渡すのもその日まで遅らせてた……! だ、だって、劉ちゃん。転生した直後にデバイスを与えていたら、きっと、きっと……!!」

 

アテネはその先を言えないようで、言葉の代わりに涙が地面をぽつぽつと濡らした。

 

「今日の呼び出しについては、なんとなく想像ついてたよ。まぁ、デバイスの受け渡しの理由についてまでは思いつかなかったけどね」

 

未だに目の前で頭を上げないアテネに近づく。気配を察したのか、びっくっと身体を震わせるアテネを見て……苦笑を漏らした。

 

「ぷっ、ふふっ。顔を上げてよ、アテネ」

「え……?」

 

アテネは苦笑するオレに虚を突かれたのか、勢いよくこちらに視線を向ける。

 

「ほら、いつものアテネみたいに笑顔笑顔。らしくないよ?」

「や、だって……え? 劉ちゃん、怒ってないの?」

「怒ってもないし、恨んでもない。ここまでオレのことを考えて、想ってくれる相手にそんなことができるわけがないよ」

「ねぇ、アテネ。オレが転生した直後にデバイスを受け取っていたら何をすると思う?」

「……劉ちゃんなら、まず何も考えずに魔法を行使すると思う」

「だよね。実際、デバイスなしで魔法を使ってぶっ倒れたし、独立したAIを持つフィオネやクリス、ゼロなんかが側にいたら魔法の使い方を習っていたと思うよ」

 

それはアテネから厳重に「禁止事項」として刷り込まれていたら不可能かもしれないけど可能性としてはありえないわけではない。

それをアテネもわかっているからこそ、今回のようなことをしたのだろう。

 

「そして、きっと修行を続けていただろうね。あの日のことも魔法でどうにかしようとして、無茶なことをしたにちがいないよ。絶対に」

「……私は、劉ちゃんには無茶をしてほしくなかったの。劉ちゃんにはどんな魔法も扱える才能がある。でもね、たかだか数年、しかも子供の時からそんな大きな魔法を使ったら絶対に只じゃすまないと思った」

 

(アテネの言うとおり、両親が死んでしまったあの日に、それを可能とする魔法を持っていたら躊躇なく行使していただろうな)

 

過去、未来を変える。一から人間を作り上げる。

人の命は蘇生させるのは簡単なことじゃない。

それを深く知った今だからこそ、こんなことを言えるけど、それをまだ知らないままのほんの数日前だったら――

 

「私の神様としての力を行使してもね、どうしても収束してしまう世界の力というものがあったりするの。だから、だから、ね。だから……」

 

再び、頭を下げようとするするアテネに、オレはそれを許さなかった。

距離を詰め、思いっきりデコピンをする。

 

「ひぃぃっっったぁぁああっ!!!!」

 

悲鳴と「痛い」が合わさった悲痛な叫び声をあげながら、涙目でこちらを見てくる。

 

「アテネがなんでこういうことをしたのか。その結果どうなったのか。それについては理解したよ。理解したからこそ、オレはアテネに謝って欲しくない。受け入れがたい事であったのは確かだけど、それでもあれが切っ掛けでオレは成長できたとも思ってるんだ。何も悪いことだけじゃないよ」

「だからさ、アテネ。ありがとう。それと、オレのために辛い思いをさせちゃってごめんね」

「りゅ、劉ちゃん……劉ちゃ~ん!!!!」

「うわっ、ちょ、アテネさん!?」

 

号泣しながらアテネに抱きつかれて、そのまま押し倒されてしまう。

体格差的にそれは当たり前のことで、それを支えるほどの力をまだ持ち合わせていない。

 

「もう、劉ちゃんには敵わないよ。ごめんねっ! 本当にごめんねーっ!!」

「あの、だからアテネさん!? オレの話聞いてた!? 謝らなくていいってば!!」

 

さっきまでのアテネとは打って変わり、泣いてはいるものの、いつもどおりのアテネの雰囲気になっていたことに安堵した。

 

「劉ちゃん……もう駄目。完全に惚れ直しちゃった。結婚しよ?」

「結構です! つかまだオレ子供!!!」

「それは大人になったらいいっていうお約束の?」

「お約束って言ってる時点で、それが勘違いだってことは気がついているよね!?」

「劉ちゃん、好き好き大好きー!」

「スルー!? 受け流すな! とっとと帰って仕事しろ痴女神がーッ!!!!」

 

 

訂正。

以前よりもテンションが高くなってしまったようです。

なんだこれ、さっきまでの雰囲気が嘘のようだ。

その後、「下界して高町家に住む!」と言い始めかねないことを察したオレは、今度また会う時間を作るから、と約束を取り付けてからアテネと別れた。

 

(なんだかここ最近はドタバタしちゃったけど、アテネの件も含めて一段落ついたかな)

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