どうしてこうなった?! 神による転生者の輪廻物語 作:マーボー
劉side
「――ちゃん。りゅうちゃん……」
真っ暗な意識の中、フィオネの呼びかけが聞こえる。
「劉ちゃん。劉ちゃん……!」
その呼びかけに引き寄せられるように、次第に意識が覚せいしていき、目を開けると心配そうな表情のフィオネがオレのことを覗き込んでいた。
「フィオネ……あぁ、もしかしてさっきまでの夢。母さん達が帰ってきたのかな……?」
自分でも荒唐無稽なことを口にしているのはわかっている。
でもそう思わざるえないのもまた事実だった。
「劉ちゃん……」
フィオネの表情が心配している物から、悲しげな物へと変化する。
もしかしたら、スリープモードとはいえ、あの場にいたクリスやゼロに話を聞いたのかもしれない。
その仮説が、あの話が事実だったことを認識させる。
「何を言ってるんだろうな……。母さんや父さんが……帰ってくるわけないじゃないかッ」
人間の感情と言うのは不思議なもので、事実を認識した途端に涙が溢れ出てくる。
フィオネはその涙をそっと拭い、抱きしめてくれた。
「フィオネ……フィオネぇぇ……」
「うん……」
フィオネは何も言わない代わりに、優しくオレの頭を撫でてくれた。
まるで母親代わりのようなその行動に、母さん達のことを思い出してしまって、柄にもなく大声で泣いてしまうのだった。
「その、いきなりごめんね。でもありがとう。なんとか落ち着けることができたよ……」
「ううん。いいのよ」
未だ抱きしめられてる状態だけど、かなり派手に泣きはらしたこともあって今は涙も涸れ果てていた。
目元に熱を感じながら、時計に目をやる。
時間的には既に明け方だったことから、だいぶ長いこと意識を失っていたことになる。
「…………」
「…………」
お互い無言の状態のまま、でもフィオネはオレのことを抱きしめ続けてくれていた。
それがまたなんとも、オレのことを安心させてくれて、思考も冷静さを取り戻していた。
「そうだ。士朗さんたちは?」
「あ、そうね。桃子さんだっけ? あの人は帰ったみたいだけど――」
きっとオレの部屋から二人のことを視ていたのだろう。
意識を失っている間のことを説明してくれる最中、オレの部屋がノックされたのだった。
「劉、目を覚ましてくれたのか」
「うん。ごめんね、いきなり気を失っちゃったみたいで」
「馬鹿。そんなことは気にするな」
部屋に入った士朗さんがオレのことを抱きしめようとしたところで……
「ところで、君は誰だ?」
ようやくオレのことを先に抱きしめていたフィオネのことを認識したのか、だいぶ遅いタイミングでフィオネのことを訪ねてきた。
いやいや。オレ、今フィオネに抱きしめられてるんだよ?
まず真っ先にフィオネのことも視界に入らないかな?
「……そうだね。士朗さんにはちゃんと話しておくよ」
もしこの場に桃子さんがいたら躊躇うところだったけど、士朗さんだけが相手なら一度魔法を使用したこともある。
その時に少し疑問に思っていそうだったし、ここで話しておくことにしようと思った。
「実は――」
自分が魔法を使えること。
そして、彼女たちはデバイスといって、魔法を行使する際に手助けしてくれる物である、と簡潔にだがざっと説明してみた……のだけど、説明を聞き終えた士朗さんは何故か悲しげな表情でオレの頭を撫でてきたのだ。
「劉。両親を失って悲しいのはわかる。だからといってそんな魔法を使えるなんて……」
「ほ、本当のことだから!」
たしかに、この状況で魔法を使えますなんて説明は間違っていたかもしれない。
だって完全に現実逃避して、脳内の異次元に逃げ込んでしまっている痛い子みたいだもんね。
どう説明すればいい物か、少し悩むが、士朗さんはそのオレの様子を見て、少し微笑んだ。
「なんてね。わかってる。こんな時だからこそ、劉の話を信じようと思うよ。それに、少しは疲れも癒えているようにもみえたから、ちょっとだけ"普段の会話"をしようと思ってね」
「士朗さん……」
きっとオレのことを想ってくれているからこその、士朗さんなりの気遣いなのだろう。
その優しさに気がつくと、オレの頬も自然とゆるむ。
「ありがとう、士朗さん」
「気にするな。さて、劉の両親に会いに行く前に、腹ごしらえをしようか。昨夜からなにも食べてないだろう?」
「た、たしかに……」
今までは食事なんて考える余裕なんてなかったからか、意識すると急激に空腹感を覚える。
「だから一度私たちの家に来なさい。なのはたちも劉のことを心配していることだろうし」
「わかった。本当にありがとうございます」
「だからそんなに気にすることないさ」
畏まった挨拶に、士朗さんは気さくに答えてくれたのだった。
更新が遅くなってしまい、申しわけありません。
次話はなるべく早く更新します。
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