日常的な非日常へ
幻想の空になく
普通の人生を送る。
それが一番楽で全てから逃げている。
そんなことは分かり切ったことでそれが悔しくないのかと聞かれた所で何か思うとこがあっても悔しいとは思わない。
刺激的な人生を送るには色々なものを捨てる覚悟が必要だと思うからだ。
そんな面倒くさい事をするなら社会という激流に流されて目上の人に合わせて過ごした方が楽でいいのかなぁと適当な事を考えてる自分が情けないというかなんと言うか…。
はっきり言って刺激が欲しくないと言えば嘘になる。ゲームや漫画のような刺激的な世界に憧れる。
「…い…き…」
そんな事を考えているのもこの学生時代だけなんだろうなと考えていると何もしてなくても疲れてくる。
「おい…らき…」
あぁ…帰ったら何しようかなぁ…どうせ誰もいないし何してもたいいよな。
そうだ、あの漫画最新巻買わないとなぁ…
「おい!白木‼︎」
今までしていた思考が途切れ自分が置かれている状況をここで始めて気付く。
「え…あ、はい!」
またやってしまった…最近ぼーっとするのが癖になってる。
剣道の師範の柴崎が呆れ返った様な顔をしている。
「お前またか…明日の合宿の話聞いてたか?」
「あー…えー…聞いてませんでしたすいません…」
もうそんな時期か、去年はきつかったなー…毎年だけど…
「白木…お前高校入ってからぼーっとすること増えたなぁ…これだから最近の若者はなってないというか…はぁ、とりあえず白木!」
「は、はい…」
「罰として残って剣道の道場の掃除と外の倉庫の掃除しろ!」
「え、マジか…(小声)」
「返事は‼︎」
「はい!」
「掃除をすれば心の整理がついてぼーっとすることもなくなるだろう!
よし、それじゃあ明日に備えて今日はここまでだ!」
「「お疲れ様でしたー‼︎」」
はぁ、やっと終わったさっさと掃除して帰るか…はぁ…ここの道場地味に広いんだよなー…
俺が通ってるこの剣道場はどこにでもある地元の道場だ。しかし、良くは知らないが元々ここの一家は有名な武家でここら辺一帯を統括していたらしい。
そんなことは昔の事で今ではただの道場だ。
昔の名残なのかここの道場は広く、そして立派な庭があり、立派な蔵がある。
柴崎が言ってた倉庫は多分その蔵の事だろう立派な蔵なんだが今は竹刀や防具などの剣道の用品が隙間なく詰まっていてさながら倉庫になってる。
柴崎師範は別に厳しくないむしろ優し過ぎと言ってもいいのではないかと思う。
俺が高校の部活の剣道部に入らずにここの道場に通っているのはその為である。
「白木また怒られてるぜ」
「またかよ…懲りないなぁ」
「そんなことより帰りに…」
ザワザワ…ザワザワ…
他の生徒の会話を横目に俺は防具を脱いで道場に着て来た服に着替える。
ラブコメの漫画みたいに可愛い女の子が来て倉庫掃除手伝ってくれないかなぁ…それ以前にこの道場に女子いないんだった。
なんて、バカみたいな事を考えているうちに着替え終わったのでさっきまで練習していた道場に戻りモップをかける。
さっさと終わらせて、次に倉庫に向かう
こちらの方が厄介だった。
乱雑に散らばった竹刀に防具、溜まりに溜まった埃、良く分からない物が入ったダンボールが山積みになっている、終いには二階みたいな階段も見つけてしまった。
「一階だけでいいよなぁ…」
そそくさと掃除を始める。
最初に窓を開けて竹刀と防具を拭いてまとめて仕舞う。
ダンボールは空の物は畳んで外に出す。
大体片付いたので箒で掃いて埃を掻き出す。
掃除は好きではないが得意だと自負してる。
細かい所が気になるたちなんだなと思ってまた溜息をつく。
「ふぅ…一階を片付けたら二階が気になって来たな…」
はしごのように急な階段が二階へと続いていて明らかに埃っぽくなっているのがわかる。
こうなると恨むのは自分の性格で一階も掃除したら二階も掃除したくなる。
「とりあえず、様子だけでも…」
まあ、様子をみたら確実に掃除をするのだろうと思いつつ手すりのない急な階段を上る。
二階はそこまで広くなく真っ暗だったが鼻をつくカビ臭い匂いにむせ返るほどの埃が空気中に舞っていた。
僅かな光が漏れる窓を開けて全体を見渡す。
「なんだこれ…」
最初にきた時は気付かなかったが光が入り全体が見えるようになるとその異様な光景に気付く部屋自体はスッキリしていて一階のような物が雑多な様子ではないが確実におかしい点があるのだ。
部屋を覆い尽くす量のお札と真ん中に鎮座する巻物があったのだ。
その光景に恐れを抱くと同時にそれを飲み込むほどの好奇心が湧いてきた。
普通の人生を渡る事を決めかけていた自分に転がり込んだ非日常。見逃す理由がないとこの時は思った。
冷静に考えると他人の家の物で勝手に触ってはいけないのは当たり前なのだがそんなことはどうでもよかった。
「ちょっとだけなら…」
台座から巻物を取り題名の様な文字を読む
「百鬼夜行絵巻 後巻…前巻はないのかな?」
百鬼夜行の知識は妖怪が行列をつくり闊歩していて見ると死ぬ程度しか知らない。
それでも、あんな量の札が貼ってあるのだ。
何か重要な物に違いない。
それだけで巻物を開ける理由は十分だった。
「見ても問題はないよな…」
はちきれんばかりの好奇心を抑え込めず紐を解き絵巻を広げようとする。
好奇心は猫をも殺す
そんな言葉があった、何も知らなければ被害に会う事もないと言った感じの意味だったなと思い出した時には遅かった。
その時起こった事ははっきり言ってあんまり覚えてない。唯一覚えているのは頭が割れる程の頭痛と体が浮く浮遊感に無限に広がってそうな闇が見えた事だけだった。
◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎
目を覚ました時、最初に感じたのは石の硬い感触と握っているザラザラした紙の質感だった。
ゆっくりと目を開け、ゆっくりと立ち上がるそこで始めて自分の置かれた立場が分かる。
「…ここは…どこなんだ…」
そこに広がっていた風景は…