幻想の空になく   作:産地直送

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幻想郷の記憶

 

 

 

人里には人がたくさん居た。

人里というのだからそりゃあ人はいるのだろうが、幻想郷に来てからまともな人をあまり見てこなかった自分から見て安堵の一言だった。

やはり建物の外観と同じように住んでいる人達の服装は外の世界で言う江戸時代とかの服に似ていた。

なので、外の世界から来た自分の服装は明らかに異質で歩いていてもジロジロと見られていた。

まあ、今の自分はあのコスプレ少女に上の黒いシャツを取られてしまったので外の世界でも中々異質なものとして見られるだろう。

いきなり案内をするといって外に連れ出した小鈴さんはまず服屋に寄って周りから浮いている自分の服を選んでいた。

一生懸命選んでくれたが結果的に突然飛び出してしまったので俺が会計を済ませた。

通貨は外のものと同じだった。

次に日用品を買うために雑貨店へ、

その次に食料を買うために八百屋へ

と案内ではなくただの買い物になっていた。

いずれも外の世界と同じようなものばかりだった。

ほぼ自分が払っていた。

今月のバイト代がほぼ消失した頃に小鈴さんが急に

 

「ちょっと寄り道してもいい?」

 

と言い出したので寄り道する事になった。

そして現在俺と小鈴さんは大きな屋敷の前にいた。

今まで見たことがないほど大きな武家屋敷だった。

小鈴さんはいつも通ってるかのように自然に扉の取手のような物を扉に叩きつけながら

 

「ごめんくださーーい‼︎」

 

と大きな声で人を呼んでいた。

少しだけ待っていると中から使用人の女の人が出てきて

 

「あらー!小鈴ちゃんじゃない!阿求様ならいつもの部屋にいるわよ」

 

「いつもありがとうございます!」

 

とだけ言ってスタスタと敷地の中に入っていった。

出来るだけ小鈴さんから離れないように自分も続く。

 

「小鈴さん、ここ何処なんですか?」

 

あまりに立派な庭を通りながら小鈴さんに聞く。

 

「私の友達でもあり、常連の客って感じでもある人の家ってとこかな」

 

「じゃあ今日は何しに寄ったんですか?」

 

「借りた本を貸してもらいにきたんだよ」

 

と言いながら靴を脱ぎ家の中に入っていく。

自分も小鈴さんに習って靴を脱いで中に入る。

 

「さ、着いた!阿求ー入るよー!」

 

屋敷の中で最も大きそうな部屋で小鈴さんは足を止めて声をかける。

すると中からトタトタと足音が聞こえた後にいきなり襖が開け放たれ中から小鈴さんと同じくらいの女の子が飛びたして小鈴さんに抱きついた。

 

「こっすずーーー!」

 

「うわっ!阿求いきなり何するのよー」

 

「むっ、小鈴から私以外の匂いがする…」

 

「え?」

 

「これは…男の匂い!」

 

部屋から出て来た女の子は俺の方を向き獣のような目を向ける。

思わず逃げたしたくなる。

 

「貴方の匂いかしらぁぁあ?」

 

人間でないような形相でジリジリと追い詰めてくる。

一歩一歩近づいてくる。

自分でも引き攣った顔で後ずさる。

 

「ちょっと、阿求怖がってるよー」

 

「はっ⁉︎小鈴大丈夫?何かされてない⁉︎」

 

「大丈夫だよ。あ、それとそこの男の子今日からうちで居候する事になったんだよー」

 

「は?え⁉︎なんで?」

 

「うちのお母さんとお父さんが暫く帰って来れなくなって、私家事があんまり出来ないから変わりにやってもらいに」

 

「えーと、始めまして白木夜考と言います。」

 

凄く怖い形相でこっちを睨んでいる。

出来るだけ人懐こいような笑顔を浮かべようとするが、あまり積極的に人と関わって来なかった為こういう時にちゃんとした笑顔を見せる事が出来なかった。

 

「私の家に来たらいいじゃない!」

 

どうやら俺の自己紹介は無視みたいだった。

 

「それも、よかったけど私店があるし…」

 

「くっ、」

 

急に目の前の少女はこっちを向いて俺の引き攣った笑顔をジロジロと見ている。

 

「居候ねぇ…ふーんそっかぁ…私は稗田阿求《ひえだあきゅう》よ」

 

「よ、よろしくお願いします…」

 

「小鈴に手出したら…どうなるかわかるわよね?」

 

阿求と名乗る女の子は睨みながら小鈴に聞こえないように小声で話しかける。

 

「ゴクッ…」

 

思わず生唾を飲み込む。

 

「二人ともなに話してるの?」

 

「何でもないよ!ところで小鈴は何しに来たの?」

 

さっきまで睨んでいたとは思えないくらいの笑顔を向ける。

 

「阿求に貸してた本あったでしょ?あれを返しに貰いに来たの」

 

「あーあれね、ちょっと待ってて」

 

阿求は部屋の中に入っていった。

 

「えっと…いろいろ凄い人ですね…」

 

「んー確かに凄いよ。一度見たものは忘れないし私の知らないこと沢山知ってるし」

 

「へー…確かにそれは凄いですね」

 

「でもねー、さっきみたいに良く触ってくるんだー」

 

「へ、へー…変わってますね…」

 

やはり変人は変態なんだなと確信した瞬間だった。

 

「誰が変わっているんですか?」

 

突然後ろから声がして驚く。

 

「はい、これ借りてた本。これ凄い妖魔本だったから取り扱いは気をつけた方がいいわ」

 

阿求が小鈴さんに巻物を渡す。

 

「ありがとう!大丈夫だよ!私は慣れてるから」

 

「妖魔本ってどんな本なんですか?」

 

「んーと、簡単に言うと妖怪が作った本で妖力が備わっている本のことかな?うちでは沢山扱ってるんだよ」

 

「それと妖魔本は自分の存在を残したりするのにも使われていてその妖怪の妖力が残っていたりするわ」

 

「なるほど、見せてもらってもいいですか?」

 

「いいよー気をつけてね」

 

巻物を受け取り題名を見てみるとそこには『百鬼夜行絵巻 前巻』と書かれていた。

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