その巻物は自分の持っている巻物の前巻だった。
手に取った巻物は後巻と同んなじ質感だ。
なぜ自分の持っていた後巻は自分の世界にあり、前巻はここにあるのか。
気になる。
多分中を見てみれば何かわかるだろう、そんなことをおもいながら紐を解き中を見ようとしたその時だった。
「ちょ、危ないから開けちゃ…!」
阿求が注意を促した時にはもう遅かった。
今までに感じたことのない圧迫感がまず最初に巻物から溢れ出た。
それは立っているのもやっとで足はガクガク震えだした。
気持ちが悪くなり、吐き気がする。
自分の中に自分じゃない何かが入って来る感覚。
自分が自分じゃなくなる感覚。
黒くドロッとしたものが全身をめぐり満たしていく。
頭が痛い。
気持ち悪い。
手足が震える。
不快感を必死に抑え力を振り絞って巻物を閉じる。
フッと今までの感覚が消える。
そこで俺は意識が闇に落ちた。
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知らない洞窟のような物の中にいた。
自分は全身を鎖で繋がれているかのような感覚で全く動けない。
「う、おえぇぇ…」
ビチャビチャ
急に吐き気が襲い吐き出す。
吐き出した物はどす黒く蠢いていた。
苦しい、気持ち悪い、誰か助けて
死にそう。
吐き出した黒い物は醜悪な姿になりどこかに歩き出す。
吐いても吐いても終わらない、なくならない。
どんどん溜まっていく。
次々に吐き出し、醜悪な姿になりどこかに歩き出して行く。
こんな事したくない。
苦しい、苦しいよ…
誰か…こ…て…
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「はっ⁉︎…はぁはぁ…」
目が覚めた。
そこから見えたのは和室の天井だった。
悪夢を見ていた気がする。
思い出せない。
しかし、体には気持ち悪さが残っていた。
すると、視界に二人の女性の顔が映る。
「目が覚めたんですね。大丈夫ですか?夜考さん…」
「やっと気がついたのね。はい、お水」
意識が途切れる前と変わらぬ姿の小鈴さんと阿求がそこにいた。
体を起こし、阿求さんから渡されたお水を受け取る。
一気に飲み干す。
冷たい水が体の隅々まで行き渡るような感覚を全身で感じる。
飲み干したコップは阿求に返す。
「すいません。話を聞かずに勝手な行動をしてしまい。」
「そうね、一歩間違えば貴方は妖怪化してるか、死んでたわよ。」
強めな口調で呆れながら阿求は言った。
阿求から危険な妖魔本だと聞いていたのに何も聞かずに開けてしまい反省する。
「まあまあ、私達も予め開けたら危ないよって言って無かったんだししょうがないよ。」
すかさずフォローを入れてくれる小鈴さんに救われる。
「ま、ひとまずなにごともなくてよかったわ。」
「はい、ありがとうございます。」
阿求さんも小鈴さんも何だかんだ自分の事を心配してくれたと思うと胸に何か温かいものが溜まる。
「しかし、変ですね。」
「ん?何が?」
「いや、僕も同じ巻物の後巻を持っていたんですけど開いた時、こんな事は起きなかったんです。」
「あ、確かに!一緒に見たけどこんな強い妖力は出てこなかったよ?」
確か、ぬっぺふほふと言う妖怪を見る際とその妖怪の住処にいた時の合わせて二回俺は巻物を開いていた。
その時は何も起きなかった。
「変ね。偽物だったとか?」
「うーん…見た感じ本物だった気がするけどなあ。」
「そうなると中の妖力が抜けてたということになるわね。」
神妙な趣きで二人とも話し合っている。
はっきり言って自分は初めて知った事ばかりで微妙に思考が追いつけていなかった。
しかし、全てがわからないではこの世界では生きてはいけないだろう。
必死に考え質問してみる?
「そんなことがあるんですか?」
「えぇ、結構稀なケースなんだけど…例えば、封印していた妖怪が出てきた時とかね。」
「なるほど…」
一応理解出来ているつもりだ。
「ま、考えても憶測の域を出ないし今日はもう帰った方がいいわよ?
あ、小鈴だけ泊まってく?」
「遠慮しとくー!」
がっくしと目に見えてがっかりした行動を阿求がとる。
というか、遅い?俺たちが来た時は確かお昼頃だった気がする。
「そういえば今何時ですか?」
「んー多分6頃じゃないかな?日も沈み始めてるし。」
ふすまの間から夕日が見える。
あぁ、長いこと気絶してたんだな。
小鈴さんに申し訳ないなと思う。
「そうですか…ありがとうございます。小鈴さん」
「んー?何かしたっけ?」
「いや、気絶してた間、小鈴さんはずっと待っていてくれてたみたいでしたので。」
「いいよ、いいよ気にしないで。後、さん付けしなくていいよ堅苦しいから小鈴で。」
「え、あ、はい小鈴さ…小鈴。」
女子の下の名前をさんを付けないで話したは久々で少しドキドキするものがあった。
いい加減布団から出て帰宅の準備をし始めようと布団を捲る。
「あ、もう大丈夫なの?夜考君」
「はい、大丈夫です。寧ろ今までより体なんか軽いです。あと僕も夜考でいいですよ。」
体が軽いというのは小鈴の心配を無くすものではなく本当に軽かった。
正に自分の体じゃないくらいに。
「そっか、なら良かったそれじゃ、帰ろうk…きゃ!」
立ちあがり部屋から出るためにふすまを開けた小鈴が躓き転びそうになる。
「危ない!」
反射的に体が動き小鈴の近くまでより支えようとした。
しかし、いくら反射的に体が動いても体を支えるには少し遠いすぎる。
普通の一般人なら不可能な距離だった。
しかし、気づいた時には小鈴を抱えていた。
「だ、大丈夫…ですか?」
「え、あ、うん、ありがと…」
小鈴さんも驚いていたが、一番驚いたのは自分だった。
ごく平凡な高校生がなせる技ではないことを平然としたのだった。
もしかしたら意外と近い距離に布団があったのではないかと思ったが、無駄に広いこの和室の真ん中にあるので多分ありえないだろう。
「いつまで抱いてるのよ!小鈴から離れなさい!」
「大丈夫だから、もう離していいよ?」
なぜか激昂してきた阿求と困惑したように小鈴が話しかけてくる。
考えこんでいて周りが見えて無かったようだ。
そっと小鈴から手を離す。
「貴方、意外に運動神経あるのね。」
「いや、外の世界で剣道はやってましたがここまでの距離は流石に…」
「ま、何でもいいわ帰るなら早くしないと日が沈むわよ。」
さっき見た時より太陽は地に沈んでいた。
このことを考えるのはまた今度でいいだろう。
急いで買ったものを持ち、玄関に向かう。
「「お邪魔しました!」」
俺と小鈴は稗田家を後にした。