声がして振り向いた。
声がした筈だった。
振り向いた時、視界に何もなかった。
あれだけ、大きな声がしたのだ普通そこには人がいるはずなのだが、振り向いただけでは見ることができなかった。見えた物は自分が歩いてきた時に見た木々が連なっているだけで何も変わりがなかった。
あまりの不気味さに食欲は失せる。
しかし、諦めずに声主を探そうとして一歩踏み出す。
ムギュ、
何かを踏んだ。
明らかに自分が歩いた時にはなかった物が足下にあった。
恐る恐る視線を下に移す。
そこには、倒れているコスプレをした少女がいた。
「え?…」
思わず声が出る。
理解が出来ない。
森の中で遭難しかけ、空腹に耐えかねキノコを食べようとして、忠告され、振り向いたら倒れているコスプレ少女がいる。
常識では考えられない。
何処からツッコめばいいか分からない。
思考回路がショートして、考えるのをやめる。
「……!」
いや、女の子が倒れてるではないか。
コスプレしてようが、遭難中だろうが関係ない、女の子が倒れていたら助けるのが男だろう。
とりあえず、抱き起こして返事があるか確認する。
「えっと…大丈夫ですか?返事出来ますか?」
「………」
返事がないただのしかばねのようだと何処からか出てきそうなほど何も反応がない。
いや、ふざけてる場合じゃないくらいにかなりやばい状態だ。
死んでるんじゃないかと思った。
慌てて心拍数を確認しようと手首を触る。
「すぅ…すぅ…」
寝息が聞こえる。ただ寝ているだけのようだった。
ちゃんと心拍数はあり、手首から温もりを感じ安堵する。
死んではない。
しかし、何故こんな所で倒れていたのか。
とりあえず、このままだと汚れてしまうのでこことは別の場所に移動しようと思い、少女を抱き上げる。
コスプレ少女は魔法使いのような黒と白を基調としたエプロンドレスみたいな格好をしていて、金髪の長いの癖っ毛で左側の髪だけ三つ編みのようになっている。
一緒に箒も持っている。
コスプレにしては気合いが入っていて実物の魔法使いのようだった。
落ち着いた今、よく見るととても可愛らしい顔をしていた。
こんな状況じゃなければラブロマンスしてるとか調子乗っていたかもしれない。
そんな金髪コスプレ少女を抱き上げて箒も持ち移動する。
思った以上に体は軽かったので、楽に移動が出来た。
暫く森の中を歩いていると洞窟のような窪みを見つける。
とりあえずそこまで歩いて行き、少女を下ろす。
あいからわず気持ち良さそうに寝息を立てながら寝ている。
自分のワイシャツを脱ぎ寝ている少女に服を掛ける。
半袖のアンダー、一枚になってしまったが背に腹は変えられない。
自分もその穴の中に入り少女の横に腰を下ろす。
春先で温かいとは言え洞窟の中はひんやりと冷たく、半袖の自分は肌寒かった。
少し落ち着いたので、今までの状況を思い出し、巻物を一度も開けてない事を思い出し、ポケットに入れていた巻物をとりだす。
紐をとき、巻物を開ける。
そこには下駄や茶碗に足が生えているものや、多分一般的に鬼と呼ばれているものや天狗などと言った有名な妖怪、なにかよくわからない妖怪のような何かなどが行列を創り行進していた。
悪趣味な色使いで見ていて不快になるような感覚を覚えるが、何か惹きつけるようなものがありそれを見続ける。
最後に何がまちうけているのか気になっていた。
しかし、そこには何もなかった。
真っ白だった。
落胆と安堵の感情が同時に浮かぶ。
紙を綺麗に巻き紐を結び元の状態に戻す。
落ち着くために洞穴の壁に背をつけ目を閉じる。
色々なことがありすぎた。
心を落ち着ける時間が必要だった。
コツン…
洞穴の奥の方で音がする。
目を開けて、音の主を探る。
目を凝らし暗闇になっている洞穴の奥を見る。
何もないように見える。
石が風とかで落ちただけかもしれない。
気晴らしに石を拾い暗闇に投げ込む。
いつまで立っても石が落ちる音が聞こえない。
本来なら石は暗闇に飲み込まれると思っていた。しかし、投げた小石は暗闇に飲まれる前に壁のようなものに阻まれ自分の手元に帰ってくる。
それと同時に赤色の大きな何かが二つこちらを向く。
壁のようなそれは暗闇から這い出てくる。
自分の身長の2,3倍はあるだろうそれは真っ直ぐに自分を見ていた。
その姿はさっきまで見ていた巻物に出てきていた妖怪の一つと似ていた。