幻想の空になく   作:産地直送

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また、主人公が一人で頑張ります。
今までほとんど一人ですが笑


絶望と希望は肉薄する

小説

 

夢を見ていた。

とても昔の夢だ。

家は木で出来ていて、人々は着物を着ている。

妖怪という妖怪が闊歩している。

人々は妖怪を恐れ忌避していた。

自分は妖怪なのか人間なのか分からない視点で動いていた。

目の前に巫女が居た。

見たことがない赤と白を基調としている巫女服で脇の部分がなく、脇が丸見えだった。

容姿はあやふやであまりわからない。

巫女と俺は対峙していた。

殺伐とした状況なのか、自分はどうすればいいかわならなかった。

表情はどうなっているのか分からないがその巫女はこう言った。

 

 

「お前は生きるべきだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ました。

夢を見ていたが、どんな内容か思い出せない。

全身が痛い。

かろうじて動かす事ができ体を起こす。

今まで自分は何をしていたのか思い出そうとする。

確か、コスプレ少女に会っていきなり眠ったから洞窟に運んだ。

だが、洞窟には肉塊がいて…俺は逃げて……捕まり……

 

「うっ…うぅ…」

 

恐怖を思い出し身震いし、吐き気がする。

周りを見渡して肉塊が近くにいないか確認する。

そこで始めて夜になってる事に気がつく。

幸い今日は満月で月明かりで真っ暗ではなかった。

そして、周りには木々が連なっているだけで何もなかった。

心から安堵する。

 

「これからどうしようか…とりあえず、何処か人が沢山いる所に行きたいな…」

 

そうだ、必ず人はいる。

コスプレしていた少女もいるのだ。

人はいるのだ。

 

「…は!コスプレちゃん‼︎」

 

すっかり忘れていたがコスプレ少女を洞窟に置いてきていた。

全身の痛みを堪え立ち上がる。

流石に夜の月明かりだけでは足跡は分からないが、とりあえず自分が倒れていた逆の方向に進む事にした。

痛みで全身がフラフラしていた。

何度も足がもつれ倒れそうになりながらも歩み続ける。

暫くすると、幸運にもさっきいた洞窟を見つける。

肉塊がまた襲ってくる事があるかもしれないので警戒しながら洞窟に入る。

しかし、そこには肉塊も、コスプレ少女もいなかった。

真っ暗であまり見えないが血などは飛び散ってはいないみたいで、ここで争った形跡もなかった。

とりあえず洞窟から出て離れる。

肉塊が今はたまたまいないだけで帰って来るかもしれないからだ。

コスプレ少女については今はなんとも言えなかった。

逃げたかもしれないし、丸呑みにされたかもしれない。

考えてもキリがないし、今はそれどころか自分の状況が酷すぎて他人の心配なんてできなかった。

様子を見に来たがいないならもう探しようがなかった。

とりあえず、最初の目的である人の集落を探すためにとりあえず森を出る事にした。

それからずっと歩き続けた。

空腹に耐え、疲労に耐え、睡魔に耐え、歩き続けた。

体感で二時間か三時間ほど歩くと森の切れ目のようなものが見えてきた。

希望が湧き出て、歩行速度が早まる。

やっと、やっと森から出れる。

ただそれだけで歓喜していた。

森から出る。

もう空の端は明るくなり始めていた。

辺りは平原のようになっていて、小さな草が生い茂っていた。

少し向こう側に道のように草が生えてない所も確認出来た。

あとは道なりに進めば何処からか着くだろう。

そんな希望を抱き、また歩きつづける。

暫く歩き続けると辺りはすっかり明るくなっていた。

 

「はぁ…徹夜かな?」

 

少し、笑みが零れる。

もう、色んなものがピークだった。

そこで、ようやく人工物のようなものが目に入る。

遠目に見ても明らかに江戸時代のような作りの建物が並んでいた。

が、そんな事はどうでもよかった。

ようやく、人に会える。

それだけの喜びが心を満たしていた。

体に鞭打ち走り出す。

どんどんその集落が近くなると同時に期待も高まる。

ようやく、集落の入り口のような物の前で来た。

ただただ、喜びに満ち溢れていた。

泣きそうに成る程だった。

今まで感じた事のないほどの安心を感じていた。

そこで、押さえ込んでいた疲労、睡魔、空腹、痛みが一気に襲い掛かり

視界が揺れ、安堵したその表情のまま気絶した。

 

 

 

 

 

◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎Kosuzu side◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎

 

 

本居小鈴は目を覚ます。

いつもは遅くまで本を読んでいたりして起きるのは遅いのだが今日は自ら目を覚ました。

珍しい事もあるものだと思いつつ。布団から這い出る。

 

「うぅ…寒い…」

 

春だからといっても朝はまだまだ寒い。

近くに置いておいた自分の普段着にいそいそと着替え始める。

ここでようやく時計に目がいく。

 

「えっ?まだ4時半じゃない。二度寝しようかな…いや、でも目覚めちゃったし今からまた寝るのはなぁ…」

 

着替えが終わり今後の予定を考える。

こんな早く起きてしまったのだから、普段しない事をしよう。

だからと言ってあまり大それた事は出来ないし、近所迷惑だろう。

そうだ、散歩でもしよう。

普段は店番などで屋内に篭りっぱなしだ。

こういう時に少しでも体を動かさないといざって時に動けなくなってしまう。

それにこの時間帯はほとんど人はいないだろう。

みんながいないときに出歩く優越感もあるだろう。

お母さんもこの時間帯なら寝ているだろう。

こっそりと出て行けばバレない。

 

「そうと決まれば!善は急げ!」

 

外も寒いので、半纏を着てこっそり出て行く。

 

「ふぅ…寒いなぁ」

 

冷たい空気を胸一杯に吸い込み歩き出す。

空はもう明るく、道にもちらほらと人が歩いていた。

 

「とりあえず、人里の端まで散歩しましょうか」

 

いつも通り平和な人里を歩き、通り行く人に挨拶をしながら進んでいく。

そうするといつの間にか人里の出入り口まで来てしまった。

 

「人里って広いようで、思ったより

狭いなぁ」

 

とりあえず出入り口の前まで来る。

そこには平和な人里には見かけないものが倒れていた。

 

「えっ⁉︎行き倒れ⁉︎」

 

男性が倒れていた。

見た感じ、服装が人里ではあまり見られない格好だったので外来人だとわかった。

顔立ち的にあまり小鈴と変わらないくらいだと思った。

 

「生きてる…よね?」

 

脈を確認する。

ゆっくりとだが脈がある行くている。

 

「どう…しようか…なぁ?」

 

はっきり言ってこのまま見て見ぬ振りをして帰っても良かったが、それでは自分の精神衛生上あまりよろしくなかった。

でも、連れて帰ったところでどうしようもなかった。

家は基本、母親と小鈴の二人暮らしで父親がたまに古本を抱えて帰ってくるくらいだった。

この男を連れて帰ったところで母親が何というのか、考えたくもなかった。

結果、自分では何もしてあげられないと感じた小鈴は見て見ぬ振りをしようとした。

その時、男のポケットに巻物らしきものが見えた。

小鈴の家は鈴奈庵という貸本屋を営んでいる。

小鈴は本が好きでよく店番をしていたが、最近は一人で店を営業できるようになり、一人で店を開いていた。

そんな小鈴の好奇心がその巻物に手を伸ばさせた。

巻物を取り出し、題名を見る。

 

「百鬼夜行絵巻…後巻⁉︎うちで抜けてる絵巻じゃん‼︎」

 

驚きのあまり声を張り上げる。

この男がまさかこんな物を持っているとは考えもしなかった。

何としてもこの絵巻が欲しかった小鈴は考えた。

この男を助けて、恩を売ればこの絵巻を手に入れることが出来る。

私は絵巻を手に入れ満足、男は助かる。

まさに一石二鳥だ。と考えていた。

 

「よし、しょうがないなぁ…」

 

絵巻を自分の懐にしまい。

男の腕を持ち上げる。

引きずってしまう形になってしまうが致し方ない。

とりあえず小鈴は鈴奈庵に男を持ち帰ることにした。

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