幻想の空になく   作:産地直送

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ようやく、東方キャラと対話します。
地味に、今まで判明してなかった主人公のフルネームも登場します。


自分の心に正直に

 

意識が少しづつ戻ってくる。

まだ、まぶたが重く目を開けたくなかった。

毛布の温もりを味わっていたかった。

意識が覚醒していくと共に自分の記憶が少しづつ戻ってくる。

確か、人の住んでいる集落に着いて…そこから記憶がない。

気絶したのだろう。

そこで違和感に気付く確か外で気絶したはずで毛布なんか掛かっていることなんかない筈だった。

 

バサッ

 

毛布をどけ、勢い良く起き上がり周りを確認する。

最初に目に入った物は高く積み上げらた本と隙間なく本が詰め込まれた本棚だった。

 

「あれ?もう起きたの?」

 

聞いたことがない女の子の声が後ろから聞こえる。

すぐさま振り返るとそこには背が少し小さめの女の子がいた。

紅色と淡い桜色の二色の着物に緑の長いスカートその上から黄色のエプロンをしていた。

髪の毛は茶色とオレンジの間位の色で、ツインテールのような髪型で髪の結び目に鈴が着いていた。

全体から見て大正時代の女性のイメージがした。

 

「ん?何か私に付いてる?」

 

人間と話してる。

とてつもなく久しぶりで懐かしい感じがし、感極まる。

目から涙が出始める。

 

「え⁉︎…大丈夫?君⁉︎」

 

「いえ、ぐす…すいません。人と話したのが久しぶりだったので…」

 

鼻をすすりながら受け答える。

 

「そっか…あっ!私、本居 小鈴(もとおり こすず)よろしくね‼︎」

 

そういい、小鈴と名乗る少女は手を差し出す。

握手を求めるようだ。

汗やら涙やらが付いた自分の手をスボンで拭き、握手する。

 

「白木…白木 夜孝(しらき よだか)といいます。よろしくお願いします。」

 

「夜孝君ね!よろしく!」

 

快活に彼女は応じてくれる。

女性に限らず話す事を避けてきた自分としては珍しく人と話したかった。

どうやら自分はソファの上に寝かされていたらしく、しっかりと座り直す。

小鈴さんは何処から引っ張り出してきた椅子に座って机を挟んで僕と向かいあった。

 

「えっと…夜孝君は外来人なんだよね?」

 

外来人?聞いたことはないが日本語を話す相手から外来人と呼ばれるのは始めてだった。

 

「えっと…多分同んなじ日本人だと思いますけど…」

 

「あー…そういうことじゃなくて…えっと、何て説明すればいいんだろうなぁ。」

 

そう言いながら彼女は少しだけ頭を掻く。

俺には彼女の言っている意味が分からなかった。

 

「えっと…一から説明するとね。

落ち着いてきいてね?」

 

「え?あ、はい。」

 

そんな事言われると変に緊張してしまう。

次に言われり彼女からの言葉に身構える。

 

「ここは夜孝君が住んでいる場所とは違った世界…というか空間というか…兎に角ここは幻想郷という場所なの」

 

「は、はぁ…」

 

言葉の意味は理解出来ても言っている意味は分からないかった。

 

「えっと…つまりここは日本じゃないって事ですか?」

 

「いや、厳密には外の世界で言う日本の何処かに位置するらしいけど、その認識で間違いないよ!

実際には結界で外の世界から切り取ったみたいな感じらしいよ」

 

そんな馬鹿なと思いかける。

いつもの自分だったら、頭おかしいんじゃないかこいつ病院行けってなるとこだが、ここが元いた世界とは違うということを完全に否定できなかった。

実際に人ならざる物を見てしまったからだ。

それにコスプレ少女や、やけに進歩が遅れた集落、目の前にいる古めかしい服装の小鈴。

はっきり言ってここまで証拠が並んでいては認めざる負えない。

 

「あれ?反応薄いね?もっと驚く!とか戦慄する!とかすると思ってた。」

 

「いや、薄々気づいてましたからね…もう絶望し終わりましたよ…」

 

そう答えながら苦笑する。

 

「あ、そうなんだ…そういえば夜孝君は何であそこで倒れていたの?」

 

「あぁ…それはですね…」

 

この世界に来た経緯とこの集落までの出来事を全て話した。

 

「なるほど、その巻物のせいで幻想郷に来たと…ていうかよく妖怪に会って死ななかったね!」

 

小鈴さんは目を見開き驚く。

 

「えぇ、正直一回死んでるんじゃないかと思うような体験しましたよ。」

 

「じゃあ!夜孝君は幽霊?」

 

笑いながら小鈴さんは俺の足を確かめる。

 

「あ、そういえば夜孝君が持っている巻物についてなんだけど…」

 

小鈴さん少し言いづらそうに唐突に切り出す。

 

「あぁ、これですか?」

 

ポケットに入れっぱなしの巻物を取り出し机の上に置く。

 

「それのことなんだけど…その巻物を私に下さい!」

 

「え?…いや、それはちょっと…」

 

いきなり切り出された話題に戸惑う。

多分周りの蔵書からみてコレクターみたいな感じの人なのだろう。

助けてもらったしあげてもいいのだが、正直これは自分のではない。

ここの世界にはいないだろう柴崎の物だ。

俺の一任であげることは出来ない。

 

「さっき話したとおり、これは自分の物ではないんですよ…

助けてもらったし差し上げてもいいのですが、僕の一任でそれは出来ないんですよ…」

 

「私、貸本屋を営んでてその巻物だけ手に入いらなかったの!それでやっと揃うの!だから、そこをなんとか!…」

 

小鈴さんは目の前で手を合わせ頭を下げる。

貸本屋、確かにかなりの蔵書をしているからここがその貸本屋なのだろう。

 

「えーと…そう言われましても…」

 

「そうだ!外の世界に帰れる方法を知っている人を紹介しますから!」

 

「…え?本当ですか⁉︎」

 

外の世界に帰れる方法があると聞いて立ち上がる。

 

「え…あぁ…うん!確か、博麗神社の巫女が結界に関わってるって噂があったから…」

 

少し信憑性が欠ける返答だったが、そこは信じるしかない。

 

「うーん…」

 

唸りながら考える。

巻物を小鈴さんに渡せば元の生活に戻れて、妖怪などに怯えずにくらしていける。

まあ、多分、柴崎にかなり怒られそうだが…いや、損害賠償問題とかになるのかな。

そうなると面倒だがとりあえず命の危険はなくなるだろう。

小鈴さんを信じ巻物を渡そうとする。

 

本当にそれでいいのか?

 

伸ばしかけた手が止まる。

心の奥にある非日常が今、目の前に

ある。

それをみすみす手放すのか。

元の生活にそれほどの執着があるのか。

元に戻っても、いつもと同じような生活を送るだけでなんの楽しみもない。

そんなのは、生きながら死んでいるようなものだ。

今の現状は悪いか?最悪か?

いや、そんなことはない。

いつ死ぬか分からないこんな世界だが大丈夫なのか、多分大丈夫ではない。

しかし、生きながら死ぬのと死と隣合わせの生き生きとした生活どちらがいいか。

答えは簡単だった。

 

「そうですね…巻物は差し上げます」

 

「え!本当に⁉︎やった!貰えないと思ってた!」

 

小鈴さんは立ち上がり万歳をしながら喜ぶ。

そんな大層な品なのか疑ってしまう。

そこで本題を持ちだす。

 

「それで…ですね」

 

「勿論、約束守りま…」

 

小鈴さんの言葉を遮る。

 

「いえ、元の世界に戻る方法は教えなくて結構です。」

 

「…え?」

 

小鈴さんの動きがピタリと止まる。

 

「その代わり、一つだけ別の約束をしてもらってもいいですか?」

 

「え?うん、いいけど…本当にいいの?」

 

「えぇ」

 

笑顔で答える。

 

「で、その約束は何ですか?」

 

ゆっくりとちゃんと聞こえるように話し出す。

 

「僕をこの貸本屋で雇ってください。」

 

それが俺の答えだった。

 

 

 

 

 

 

 

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