地獄少女~彼女に僅かでも幸福を~   作:死徒

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プロローグ1 日常

安土桃山時代……

 

 

 

戦国時代真っ只中の乱世ではあったが織田信長の台頭やその後を継いだ羽柴秀吉(豊臣秀吉)の活躍によりその乱世のうねりは徐々にではあるが終息しつつあった

 

 

 

しかし、昔の人々はしきたりや予言というものを信じて疑わなかった

 

 

 

これはそのしきたりによって運命を狂わされた哀れな少女とその親友で後に従者となる双子の妖怪の始まりの話である

 

 

 

 

 

1590年・ 六道郷(むつみごう)

 

 

「「「あいー」」」

 

とある少女を呼ぶ三人の子供の声が辺りに響き渡る

 

「いないな…俺待ち合わせ場所あいに伝えたよな?」

 

困惑気な表情をして弟と妹を見る少年…名を“柴田仙太郎”

 

「うん、仙太郎兄様はきちんと伝えてたよ」

 

それに対し返答するのは仙太郎より三つ年下の妹…“柴田まい”と

 

「兄者は間違いなく伝えてたぜ」

 

その双子の兄…“柴田慶次郎”

 

「そうだよな…ん? あそこに居るのあいじゃないか?」

 

「あっ! ほんとだ! あいー!」

 

まいの呼び掛けに少女…“柴田あい”は顔をあげる

 

「仙太郎、慶次郎、まい…」

 

「あい、どうしたんだそんな顔して?」

 

「…私は普通じゃないのかな…」

 

「…誰かになんか言われたのか?」

 

慶次郎からの問いにあいは涙声で

 

「…蝶が…倒れて…いたから…私が…優しく…撫でてあげたの…そうしたら…蝶が意識を取り戻した…みたいで…飛んでいったの…それを見た…みんなが…“死んだ蝶を生き返らせた、私は化け物だ”って…蝶はまだ死んでいなかっただけなのに…う…うえーん」

 

事情を説明してそのまま、まいの胸元に飛び込んで泣き出してしまった

 

「あいつら…」

 

怒りに顔を歪ませ、腰に差してある木刀を抜き、その場から動きだそうとする慶次郎

 

「待て慶次郎、俺も行く。 あいつらぶん殴ってやらないと気がすまない」

 

「やっぱ兄弟だな兄者! 意見が合う! どれ、さっさと潰しに行こうぜ!」

 

「潰しって…流石にやり過ぎるなよ」

 

「おう、わかってる! 半殺しで済ますから大丈夫だ」

 

「…半殺し…なら大丈夫か、行くぞ慶次郎」

 

「ああ! まい、あいを頼んだぜ」

 

「うん、任せて! 兄様達はあいを泣かせた人達を後悔させてあげて!」

 

まいの言葉に頷くと、仙太郎と慶次郎はあいを傷付けた者達に制裁を加える為走っていった

 

 

「ぐすっ…ごめんねまい、私のせいでいつもあなたや…仙太郎や慶次郎に迷惑をかけて…」

 

多少落ち着くとあいはまいに謝罪する

 

「そんなの気にしないであい。 あなたは私達のいとこで親友なんだから」

 

「ありがとう…」

 

「さっ、 兄様達が戻って来るまで時間が掛かるだろうから私達はうちで遊ぼ」

 

そう言うとまいはあいに手を差し出す

 

「うん」

 

それに対しあいは微笑むとその手を掴み、二人は仲良くまいの家に向かって歩いていった

 

 

 

 

 

「雑魚の癖にあいをいじめるなんてよ…目障りだ消えろ!」

 

≪ひ、ひえぇ~!!≫

 

あいをいじめていた子供達は慶次郎の一喝で一目散に逃げ去っていった

 

「…お前強すぎだ」

 

「そうか? まだまだだよ…父上と母上がせっかくあの天下無双の傾奇者“前田慶次”様と同じ名を俺につけてくれたんだ、俺はもっともっと強くなるよ」

 

「お前にこれ以上強くなられたら兄貴である俺の立場が無くなる…」

 

「なら兄者も鍛練すればいいじゃないか?」

 

「…これでも暇を見つけては欠かさず鍛練してるんだ…悪かったな武術や剣術の才能無くて」

 

「あー、その…悪い兄者」

 

「改めて謝るな慶次郎! ますます自分の才能の無さにげんなりするだろ!」

 

「(ならなんて言えばいいんだよ、あーめんどくさ…)…早くまいとあいのとこ戻ろうぜ兄者」

 

「…そうだな、行くか」

 

このまま会話をすれば兄弟で殺伐とした状況に陥ると悟った慶次郎はまいとあいの元に行くと話を変え、仙太郎も意図せずかはわからないがそれに乗り、二人は彼女達の元に向かう

 

なんだかんだ兄弟だけあって息の合う二人であった

 

 

「「ただいまー」」

 

柴田家(仙太郎兄妹方)

 

「兄様達お帰りなさい」

 

「二人共お邪魔してます」

 

「仙太郎も慶次郎もお帰り。 いじめられたあいちゃんの為に仕返しするなんて良くやったわね。 お母さんもあいちゃんが迫害されるのには腹が立っていたのよ、あいちゃんはこんな可愛くて良い娘なのに」

 

そう言うと仙太郎兄妹の母…“柴田きい”は朗らかに笑うとあいを優しく抱きしめる

 

「あぅ…お、おば様、は、恥ずかしいです…」

 

「ふふっ、ほんと可愛い娘、こんな娘が子供にいるなんて“こい”が羨ましいわ」

 

赤面し、恥ずかしがるあいにきいは微笑むとあいの母であり、自身の妹…“柴田こい”を羨む

 

「ちょっとお母様! 娘なら私がいるじゃない!」

 

「まい、確かにあなたは私の自慢の娘よ…だけど、あいちゃんみたいに大人しくない、お転婆娘じゃないの」

 

「お転婆…ううぅ…言い返せない自分が情けない…」

 

まいの発言に他の四人は笑い合う

 

この頃はあいは多少の迫害を受けてはいるものの生活は普通に出来る程であった

 

だが……六道郷に古くから伝わるとあるしきたり、七年ごとに村の安寧を神に願う為の行い…“七つ送り”の生け贄にあいが選ばれた瞬間…悲劇が起こる… 





この小説での仙太郎達の母は健在で、父は身体は弱くないので普通に野良仕事に出ています

あいがいじめられると毎回慶次郎が制裁を加える為、原作程いじめる者はあまり多くはありませんが、それでも一部の者達は原作同様あいをもののけ扱いしています
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