「う、うちの娘が…七つ送りに…」
「そ、それは…本当…ですか?…」
あれから数ヶ月後が経ち、あいが七歳になった直後、六道郷の村長があいの家を訪ねて来た
あいが七つ送り…生け贄に選ばれたことを伝えに…
それに対しあいの父…“柴田宗太郎”と母…こいは動揺を隠せない
「我が六道郷が更なる繁栄を迎える為に必要な生け贄にお前達の娘が選ばれたのだ、光栄に思うがいい」
「…は、はい…つ、慎んでお受けいたします…」
「…か、感謝…い、いたし、ます…」
村長から冷淡に告げられる言葉に二人は声を詰まらせ、震わせながらそう答える
「用件は以上だ、後日娘を迎えに来る…後腐れないよう別れを済ませておくことだ」
伝え終わると村長は帰っていった
「宗太郎さん…」
「…みなまで言うなこい…お前の言いたいことはよくわかる…俺も同意見だ…村には悪いがあいを七つ送りの生け贄になどさせる気はない!」
「!? ですが、どうやって」
「仙太郎達にあいを匿ってもらう…七年堪えきれればあいが生け贄にされることはなくなる…」
「…でもあいではなく七年後にはまた別の娘が犠牲に…」
「…そうだな…自分達の娘は逃がして他の娘は犠牲にしようとする…死んだら俺達は間違いなく地獄へ行くな…だが、それでも俺はあいには生きて欲しいんだ!」
「…それは私もですよ宗太郎さん…私達は殺されても構いません…あいに生きてさえ貰えれば…殺されるなら私もお供しますよ」
「…済まないな、こい」
「…ふふっ、私達は夫婦じゃないですか、気にしないでください」
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次の日、宗太郎とこいは仙太郎達を自宅に呼び出していた
「頼む! あいのことを頼めるのはお前達しかいないんだ!」
「…そんなことをして…村のみんなにバレたら…」
「なんだよ兄者! 兄者はあいが生け贄にされてもいいのか!?」
「兄様がなんと言おうと私はあいを守ります!」
「俺だってあいには生きていて欲しい!…でも…」
「仙太郎の気持ちは俺達も良くわかる…山神様のお怒りがあったら村が大変なことになるってな…こんなことやっちゃいけねぇことだってのもわかってんだ…ただ…このままじゃあいが不憫でならねぇんだ! 頼む!」
「お願い仙太郎、あいを守ってやって!」
宗太郎に続き、こいも仙太郎に懇願する
「兄者!」
「兄様!」
「くっ……」
山神様の怒りにより六道郷に災難が降り掛かってしまうことと、あいを救いたい気持ちに揺れ動く仙太郎
そんな時
「仙太郎…」
「!」
不安気に自分を見るあいに仙太郎の心は決まった
「…わかった、俺達があいを守る」
「へっ! 良く言ったぜ兄者!」
「あい、私達があなたを守るからね!」
「三人共、ありがとう…」
こうしてあいを秘密裏に匿うことが決まり、七つ送りの当日、彼女を生け贄に捧げたと見せ掛け、山奥のとある祠に隠れさせた
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六年後…
仙太郎兄妹があいを匿ってから六年もの歳月が経ち、仙太郎は14歳、慶次郎とまいとあいは13歳になっていた
あいを七つ送りの生け贄にしなかったのが原因か、はたまたただの偶然か六道郷では六年連続で凶作が続いていた
「…また今年も不作、か…」
「だな。 まあ、来年は豊作になるだろ?」
「お前は相変わらず楽観的だな…」
「俺は兄者と違って神とかあんま信じてねぇからな」
「お前それあまり他のやつらの前で言うなよ」
「わかってるよそんなこと…」
慶次郎は耳をほじりながらそう言うと直後に真面目な表情をし声を小さくして
「それで、今日は兄者があいのとこ行く日だろ?」
と言った
「ん? ああ、そうだ」
「嫌な予感がする…今日は特に用心しとけよ」
「わかった、心しとく」
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「「ただいま」」
「お帰り兄様達」
「お帰り」
仙太郎と慶次郎が家に帰るとまいときいが出迎えた
「…あいちゃんが七つ送りにされてもう六年ね…正確にはされたことになって、か」
「うん、お母様」
きいの言葉に返答するまい
当初あいが匿われていることを知らされていなかったきいだったが、毎日米が少し減っているということを見抜き、まいに尋問?をしたところ彼女が観念してあいを匿っていることを語るとそれを他の村人に話すことをせずに逆にあいを守ることに手を貸していた
「今日は仙太郎があいちゃんのとこ行く番ね。 はい、あいちゃんのご飯」
「ありがと母様、それじゃ行ってきます」
辺りが薄暗くなり始めた頃、仙太郎は家を出て、あいのいる祠へと向かっていった
それを木の陰から覗いている数人の者達が居たことを知らずに…
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山奥の祠
「あい、俺だ、仙太郎」
仙太郎の呼ぶ声にあいは祠の襖をゆっくりと開ける
すると、おかっぱ頭だった髪が腰まで届く程のロングヘアーになり、美少女へと成長したあいが現れた
「今日は仙太郎が来てくれたのね」
「ああ。 これ母様から飯とおばさんから受け取ってきたお前の着替えだ」
「ありがとう」
「あい、今日は晴れてるから水浴びしたらいいんじゃないか」
「でも今日は月明かりが出過ぎているわ…誰かに見つかってしまう可能性が…」
「今は米の不作で村は大慌てだ、誰もこんな山奥には来ないよ」
「…そうね」
こうしてあいは仙太郎と共に近くの川に水浴びに出向いた
チャポン
あいが水に浸かる音が静かな辺りに響く
「…気持ちいいかあい?」
いとことはいえ美少女が全裸で水浴びをしている光景に自らは後ろを向いているとはいえ顔を真っ赤にしてそう問い掛ける仙太郎
「うん」
「そりゃ良かった」
それからしばらくして水浴びを終えたあいは新しい服に着替え直し、仙太郎と祠に戻ろうとしていた
その時
「こういうことだったのか」
「「!?」」
以前からあいをいじめていた三人組の少年達がその場に現れた
そう、仙太郎を村から追ってきていたのはこの三人だったのだ
「村が不作続きなのはこいつがまだ生きていたからだったんだな!」
「許せねぇ! このもののけ! 仙太郎お前もだ!!」
「くっ! 逃げろあい!」
「仙太郎…」
「早く!!」
必死の形相の仙太郎にあいは頷くと更に山奥へと走り出していく
「逃がすか!」
「どけこの野郎!」
「ぐあっ! やめろ!」
抵抗するも二人をあいの元に行かせてしまい、仙太郎は一人でも食い止めようとするが
ガシッ
「!?」
ドサッ
更に現れた者に仙太郎は組伏せられてしまう
「くっ…!! 父様!?」
仙太郎を組伏せたのは父である“柴田寅之助”であった
「父様離してくれ! このままじゃあいが!!」
「仙太郎やめろ、お前まで俺の前からいなくなるな!」
「ど、どういうことだ!?」
「母様も慶次郎もまいも…あいを守る為に死ぬ気で行動すると言っていた…」
「!?」
「慶次郎の勘は良く当たる…特に嫌なことに関してはな…」
寅之助の言葉に仙太郎は思い出す
『嫌な予感がする…今日は特に用心しとけよ』
と、慶次郎が口にしていたのを
仙太郎はいつも通りバレないと何処か慢心していた自分を思い知らされる
「とにかくお前はこれ以上何もするな…辛いだろうがな」
「……」
苦虫を潰した顔をする仙太郎
「いやあぁーー!!」
そこへ捕らえられ、絶望の悲鳴をあげるあいの声が辺りに轟いた…
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六道郷・神社
あい、宗太郎、こいが目隠しをされて跪づかされる
「さっさとそいつらをまとめて山神様へと捧げてしまえ!」
「そーだそーだ!」
「やっちまえ!」
村人達の無慈悲な言葉があい達にぶつけられる
「待ってください! あいを殺(や)る前に私達から殺してください!」
「あいは七つ送りの生け贄になることを受け入れるつもりでした! 親である俺達がこの娘を守りたい一心でこのような真似をしたのです! 殺すなら俺達から殺してください!」
「…良かろう、ならばお主達から山神様への手向けにしてやる」
ガン! ドサッ…
ゴス! ドサッ…
村長の一声の直後、二人の村人の鍬による一撃で宗太郎とこいは頭をかち割られ即死した…
「お父様ぁー!! お母様ぁー!!」
両親を殺されたことによりあいは悲痛な叫びをあげる
「さて、あい、お前も生け贄に捧げてやる」
あいに向け、鍬が降り下ろされようとした時だった
「ガッ!」
ドサッ…
鍬を持っていた一人の男が突如倒れた
「な、なんじゃ!?」
突然のことに慌てふためく村長と村人達
「助けに来たぜあい」
「遅くなってごめんねあい」
「あいちゃん…あなたのお父様とお母様助けられなくてごめんなさい」
やって来たのは慶次郎、まい、きいの三人だった
慶次郎が木刀を持っていることから、鍬を持った男を倒したのは慶次郎だったようだ
「き、貴様ら!」
「もののけの味方をするか!」
「何故儀式の邪魔をする!」
「儀式だぁ? ただ女一人殺そうとしてるだけだろうが! それにその女の親も殺しちまいやがって…てめぇらの方が余程鬼畜の化けもんだぜ!」
「なんだと!?」
「こ、小僧が!…」
「なんという口をきく!…」
「てめぇらは俺が死んでも食い止めてやる! まい、母上! 此処は俺に任せて二人はあいを逃がしてくれ!」
「ええ」
「お願い兄様」
きいとまいはあいの拘束を解くと彼女の手を掴み逃走を図る
「逃がすな! 追え!」
村長の言葉に村人達は逃げた三人を追おうとこぞって動き出す
「おいおい、俺のこと忘れてないかね?」
ドガッ!
だが、慶次郎の木刀による一撃に村人達は一度に数名が吹き飛ばされる
「こ、小僧、貴様…」
「三人を追うつもりなら先にこの俺を倒して行くんだな!」
「そ、村長…」
「どうしますか!? あの小僧…柴田慶次郎はあの歳でこの村一番の猛者(もさ)…」
「俺達であいつを倒せるんですかい!?」
「怯むな馬鹿者共! 強いとはいえたかが一人、物量で押しきってしまえばいいだけの話だ!」
そう言うと村長自ら鍬を持ち、慶次郎を睨みつける
それを見た村人達も様々な農具や木刀をあちこちから取りだし、次々に慶次郎と対峙を始める
「…さて、三人を逃がす為の殿(しんがり)…始めようとするかね…うおぉーーりゃーー!!」
慶次郎は不敵な笑みを浮かべると、雄叫びを上げながら村人達に向かっていった
…自身が必ず敗北するということを承知の上で…
あいの両親や仙太郎兄妹の両親の名はオリジナルです
年齢等も原作と違う部分もあるかと思いますが、ご都合ということで
慶次郎とまいの容姿について
慶次郎は仙太郎の目元を鋭くし、髪を花の慶次の前田慶次風にしている外見で肉体はかなり筋肉質です
まいは幼少期、13歳時共に髪はセミロング、目は若干つり目ではあるもののあい同様美少女です