地獄少女~彼女に僅かでも幸福を~   作:死徒

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プロローグ3 地獄少女と双子の妖怪

「あいちゃん、大丈夫?」

 

「…は、い…大丈夫…です…」

 

きいとまいに肩を貸され逃走する最中、あいはきいの問いに途切れ途切れ答える

 

無理もない、七つ送りを逃れていたのがバレたことに加え、目隠しをされていたとはいえ両親を目の前で殺されたのだ…あいの心の傷は相当なものだろう…

 

「兄様があいつらを止めていてくれる間に少しでも遠くに逃げるよあい!」

 

「…慶次郎……まい、慶次郎は…あいつらに…負けない?」

 

「…兄様は絶対に負けない! だから私達も絶対に逃げ切るよ!」

 

「…うん…」

 

三人はゆっくりとではあるが、六道郷から少しずつ離れようとしていた

 

 

 

その頃、寅之助に連れられ家に戻っていた仙太郎は…

「……」

 

寅之助によって縄で動きを封じられていた

 

「少しは落ち着いたか仙太郎?」

 

「…ああ、少しは…」

 

それを聞くと寅之助は神妙な顔をする

 

「…恐らく今神社の方ではあいが両親共々生け贄に捧げられようとしているだろう…」

 

「!?……」

 

「…そこへ母様達があいを助けに入る筈だ…」

 

「……父様…縄を解いてくれ…」

 

「…出来ねぇ相談だな…」

 

寅之助はそう答えるとやけ酒を口にする

 

「…母様や慶次郎やまいが命をとしてあいを助けようとしてる中、俺だけが何もしないなんて…そんなこと出来ない!」

 

「お前の気持ちはわかる! だが、さっきも言ったようにそんなことすりゃお前まで死ぬ! 俺を一人にさせるんじゃねぇよ!!」

 

寅之助は涙ながらに声の限り叫ぶ

 

「なら、玉砕覚悟で俺達もあいを助けに行けばいいだろ! どうせ死ぬならみんな一緒…その方がいいだろ?」

 

「!?…馬鹿息子が……」

 

仙太郎の言葉に寅之助は吐き捨てるようにそう言うとおもむろに縄を解いていく

 

「!? 父様…」

 

「なに鳥が豆鉄砲食らったような顔してんだ…お前が言ったんだろ。 あいを助け行くなら早く行くぞ、手遅れになる」

 

「わ、わかった!」

 

こうして仙太郎と寅之助は神社へと急行した

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…どうしたよ…これで…終わりか?」

 

あれから数十分が経ち、数十人の村人を倒した慶次郎は肩で息をしながらも村人達を睨むその眼光は未だ衰えを見せていなかった

 

「な、なんて小僧だ…」

 

「こいつは本当に俺達と同じ人なのか!?」

 

「わ、わかった! こいつももののけなんだ!」

 

「へっ! 自分達の理解におえない相手を見るとその相手を化けものとする…てめぇらと同じ村の出身だと思うだけでヘドが出るぜ!」

 

「こ、このもののけが!…」

 

「い、言わせておけば!…」

 

慶次郎の物言いに怒りに身を震わせる村人達

 

しかし、その中で村長は至って冷静であった

 

「…精々虚勢を張っておくことだ。 隣村にも加勢を要請している…お前もこれまでだ」

 

「加勢、ねぇ…たった一人相手にご苦労なこった…」

 

「加勢のことを聞いてなお減らず口を叩くとはたいしたものだ。 だが一つ良いことを教えてやろう、あの逃げた三人の向かった先から加勢を要請した隣村の者達が来るのだ」

 

「!?」

 

村長の発言に慶次郎はここへ来て初めて驚愕を表情に表した

 

「ようやく顔色を変えたかもののけめ」

 

「…こうなりゃさっさとてめぇらを片づけて三人のとこへ行くだけだ!」

 

慶次郎は荒々しく村人達に襲い掛かる

 

一人、また一人と倒していくが、流石に消耗がきたのか何度か不意打ちや反撃を受け、その身体はどんどん傷を負っていく…

 

そしてついに…

 

ガクン

 

「!? ちっ!」

 

足に急に力が入らなくなり、その場に膝をついてしまった

 

「終わりだもののけ!」

 

降りかぶった村人の鍬による一撃が慶次郎の頭に入ろうとしたその時!

 

ガン!

 

鈍い音が辺りに響く

 

しかし、慶次郎の頭には目立った傷はついていなかった

 

何故なら…割って入った寅之助が慶次郎を庇い、自ら頭部に鍬の一撃を受けたからであった…

 

「ち、父上…何故、俺を庇った!!」

 

「…す、少…し…は…ち、父…親…ら…しい…こと…し…て…やろ…うと…思…って…よ…」

 

「…じ、じゃあ…な……か…な…ら…ず…あい…を…た…す…け…て…や……れ………」

 

最期にそう言い残すと寅之助は息を引き取った…

 

「…父様……」

 

遅れてその場に現れた仙太郎は息絶えた父親を見ると普段の温和そうな雰囲気を消し去り、眼光を鋭くする

 

「…兄者…こんなクズ共に遠慮は要らねぇ…潰すぞ!」

 

「ああ! そして、あいを逃がしきる!」

 

父親を殺され、憤怒の感情を見せた柴田兄弟はその場にいた村人達を文字通り叩き潰した

 

 

 

一方、あい達はというと…

 

「不味いね…あの村長、隣村に応援を呼んでたみたい…」

 

草むらに隠れながらまいがポツリと呟く

 

そう、隣村からの六道郷への加勢が三人の近くに迫ってきていたのだ

 

咄嗟に近くの草むらに身を潜めたのは良かったが、隣村の者達は付近をくまなく捜索しながら歩いているため、見つかるのは時間の問題であった…

 

「…まい、あいちゃん…私が囮になるから、二人はその間に逃げて」

 

「なっ!?」

 

「!?」

 

きいの提案にまいとあいは驚きに目を見開く

 

「そ、そんなこと出来ないよ、そんなことしたらお母様は…」

 

「間違いなく殺されます!」

 

「どの道このまま此処にいても見つかったら殺される…結果が同じなら私はあなた達を逃がして死ぬことを選ぶわ」

 

「「……」」

 

きいの言葉に二人は押し黙ってしまう…

 

「まい、必ずあいちゃんを逃がしなさい! そして…幸せになりなさい!」

 

きいはそう言うと、二人の頭を優しく撫でる

 

「…う、うん…必ずあいを逃がして…幸せに…なる、から!」

 

「あいちゃんも…この村から解放されれば絶対に幸せになれるわ!だからもう少しだけ頑張って逃げなさい!」

 

「…は、い…必ず…逃げて、見せ、ます!…」

 

そんなきいにまいとあいは涙を流し、声を詰まらせながらもそう言葉を返す

 

「約束よ…じゃあ私が三つ数えるのと同時にあなた達は走りなさい!」

 

「う、ん!」

 

「は、い!」

 

「一、二、三!」

 

バッ!

 

きいの掛け声を聞き、二人は走り出す

 

それを見るときいも隣村の者達の見える位置に飛び出し走り出す

 

「居たぞ! あの女は恐らく六道郷から連絡を受けていた例のもののけの仲間だ! 追えー!」

 

「必ず捕まえろー!!」

 

「いや、どっちにしろ近くにもののけや他の仲間もいる筈だ!」

 

「捕まえるのではなく殺してしまえ!」

 

「(山神様…七つ送りに背いたことは私の命を持って償います…だから、どうかあの子達は生かしてあげてください!)」

 

ガシッ!

 

ついにきいは一人の男に捕まり

 

そして…

 

「!?」

 

ドガッ! ドサッ…

 

つるはしによりあっさりと命を絶たれた…

 

 

 

「あい、もうすぐで六道郷を抜けるよ! 頑張って!」

 

「え、ええ!」

 

まいとは違い元々体力がそれほどなく、ここ六年の潜伏生活により更に体力が衰えていたあいは足元をふらつかせながらも力強く返事をする

 

「私の為にみんなが命をとしてくれてる…絶対にあいつらから逃げきってやる!」

 

「そうだね! 急ご!」

 

あいの言葉にまいは笑みを浮かべると、体力の限界が近いあいを気遣い、彼女の手を掴むと再び走り出す

 

だが

 

「見つけたぜー!」

 

「「!?」」

 

きいを殺した後、二人の元へと先回りをしていたらしい隣村の者達が目の前に現れてしまった…

 

「もののけめ! お前が素直に生け贄にならねぇからうちの村まで山神様の怒りをかっちまってんだ!」

 

「覚悟しろ!」

 

「「待てよ」」

 

逃げようにも近くには崖などがあり、直ぐには逃げられず絶対絶命の二人の前に慶次郎と仙太郎がやって来た

 

しかし、仙太郎はともかく、慶次郎は全身ボロボロでまさに満身創痍といえる状態であった…

 

「なんだてめぇら!」

 

「この二人の仲間だよ」

 

「仲間だぁ? なら、てめぇらも山神様に逆らうもののけだー!」

 

男達は一斉に襲い掛かってくる

 

「山神様、山神様…所詮神なんてもんは迷信だ! 大体、たった一人の女にそんな死んでもらいたい神がいたらそんなもんは神じゃねぇ…悪魔だ!!」

 

慶次郎は男達を木刀で吹き飛ばす

 

バキン!

 

しかし、今までの戦闘で酷使してきた影響でついに木刀が折れてしまう

 

「ちっ!」

 

それに舌打ちをする慶次郎

 

更に

 

「ぐわぁー!!」

 

ドボーン…

 

数人の男と交戦していた仙太郎が押し負け、崖から下にある川へと転落、沈んでしまった…

 

「!? 兄者ー!! てめぇらーー!!」

 

仙太郎がやられ、慶次郎は目の色を変えて男達に殴りかかる

 

だが木刀という武装を失い、更に不利な状況となった慶次郎は奮戦するも数の暴力に押されついに…

 

ドドドドドガッ!

 

「ガフッ…」

 

ドサリ…

 

数々の木刀や鉈などの武器を全身に叩きこまれ、血ヘドを吐き倒れ伏してしまった…

 

「く…そ…が……(あ、い……)」

 

慶次郎はそのまま意識を失う

 

「捕まえたぜー!」

 

「いや! 離してー!!」

 

逃げ場が無くなり、仙太郎に慶次郎という抑えが破られたことであいが一人の男に捕まってしまう

 

「あいを離して!!」

 

「邪魔だ!!」

 

ドガッ! ドサリ…

 

あいを守る為、まいはその男に掴みかかるが、背後に現れたもう一人の男に背中を鍬で刺される

 

ガシッ!

 

【!?】

 

「ま、まい!?」

 

「…ま、守る…って…や…く…そ…く…した…の…よ…」

 

刺され倒れてなお、まいはあいを捕らえる男を掴む手を緩めない

 

「こ、この化けもの!」

 

「いい加減に死ね!」

 

ドガッ!

 

「…あ…い…ご…め…ん…ね……」

 

更に鍬を身体に刺され、まいも意識を失った…

 

守る者が誰一人いなくなったあいがそのまま捕らえられ、六道郷の神社に戻されたのはそれから直ぐ後であった…

 

 

 

六道郷・神社

 

ドガッ!…ドサッ…

 

鍬で頭を殴られ、あいは深く掘られた穴に投げ込まれる

 

「こいつらも穴に投げますか?」

 

男が深手を負い失神する慶次郎とまい、物言わぬ骸となった寅之助ときい、宗太郎とこいを指差す

 

「打ち捨てておけ…ただでさえ生け贄をもののけにするのだ…これ以上化けものを捧げ山神様の怒りを買うことはお前とてしたくはあるまい?」

 

村長はその問いに対し、吐き捨てるようにそう返す

 

「わかりました!」

 

男が返事をするとその瞬間、他の村人達があいのいるその穴に土を被せ、虫の息とはいえまだ息のあるあいに止めをさすかのように生き埋めにかかる

 

「……許さない…私を助けようとしたみんなも殺したお前らを…お前らみんな…死んでも怨んでやる!……」

 

こうしてあいは生き埋めにされ、十三年というその短い生涯を閉ざされた…

 

 

だが、話はまだ続き、舞台は数週間後へと進む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慶次郎Side

 

 

なんであいが山神様なんぞの為に殺されるんだ?

 

あいを生け贄にしたとこでなんになるんだ?

 

強いと思っていた自分の愚かさが憎い…

 

神とやらが憎い…

 

あいを守れなかった自分の弱さが憎い…

 

何もかも憎すぎて…死んでも死にきれねぇ…

 

 

 

憎しみの感情に包まれた俺はその直後、圧倒的な力を感じ意識を取り戻す

 

目覚めた俺の姿はそれなりの大きさの体躯に黒い毛並みに尾の部分が鋭い刃になっている面妖な狼へと変貌していた…

 

 

Sideout

 

 

 

 

まいSide

 

 

守るって言ったのに守れなかった…

 

あい、ごめんね…

 

なんでこんな世の中なんだろ…

 

しきたりなんかであいを殺そうとするなんて…

 

兄様のような武力を持たない無力な自分が憎い…

 

世の中が憎い…

 

六道郷の村人達や隣村の村人達が憎い…

 

これじゃ…死にきれないよ…

 

負の感情に支配された私は、死にかけになっている筈の自身の身体が楽になり、変容していく感覚を覚える

 

 

そして目覚めると、私の身体は頭に白の触角と背中から蝶を思わせる純白の羽を生やす不思議な姿に変わっていた…

 

Sideout

 

 

 

 

 

数週間

 

六道郷・神社・夜

 

 

ボゴッ

 

あいが埋められた穴から右手が現れる

 

そして左手も出て、ついには全身が土から出る

 

現れた姿は柴田あいその人であった…

 

そんな彼女に元に二つの影がやって来る

 

「守れなくてごめんねあい…」

 

「すまねぇ…」

 

やって来たのは妖怪へと転生し蝶人になったまいと、同じく妖怪へと転生し狼の獣人へと変貌した慶次郎だった

 

「…慶次郎とまいも人ではなくなってしまったのね…」

 

「…そう、だね…」

 

「まあ、あんなクズ共と同じ種族になったままよりは妖怪にでもなった方がマシだろ?」

 

「…それもそうね…私は今からあいつらを殺しに行くけど、二人も来る?」

 

「当たり前だろ?」

 

「あいだけに殺しなんて辛いことさせるわけにいかないしね」

 

「…ありがとう二人共…いくよ」

 

「ああ!」

 

「うん!」

 

こうしてあいと慶次郎、まいは六道郷の村人と隣村の村人を殺し尽くした…

 

その後、多数の人間の虐殺という大罪を犯したことにより閻魔大王に罪の償いを求められ、あいは地獄少女“閻魔あい”となり、慶次郎とまいはその従者“黒狼剣(こくろうけん)”白蝶妃(はくちょうき)”を名乗ることになる

 

そして、物語は四百年後…現代へと進む

 




川に落とされた仙太郎は生きており、あの後下流の小さな村である老夫婦に助けられその助けられた恩を返す為、原作同様黒飴屋で大成し、三人が霊のようなものや妖怪に転生して生きているとは夢にも思わず、霊を慰めるために七童寺を建てています

よって柴田一、つぐみ親子は現代で生きています
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