「ユニバアァァスッ!!」
白い機体のサーベルから、Iフィールドの閃光が走る。
その光は、瞬く間に同色に塗られた敵の機体を貫き、沈黙させた。
『おお!』
周りから上がる歓声。
先程まで接戦を演じていた、いつもは相方として組んでいる『スローネ・ゼーレ』――またの名を『パーフェクト・スローネ』――それを倒したことにより、生じた歓声だった。
『Battle ended』
機械的な音声で伝えられたのは、試合終了の合図。
森林に包まれたフィールドに最後まで立っていたのは、サーベルを突き刺した髭のモビルスーツだった。
†
「と、いうわけで、準決勝第一試合『ミハ兄の暗示を持つ幽波紋:スローネ・ゼーレ』対『カリスマおぜう:ターンゲイザー』は、カリスマおぜうさんのターンゲイザーの勝利です。おめでとーございまーす!」
司会の店員さんが、バトルの結果を告げる。
ここは、都内のガンプラショップ。その一角で、今日は月に一度のトーナメント形式のガンプラバトル大会が催されている。
結構大きな大会で、今日集まったのは、六十四人ほどだったと記憶している。無論、ターンゲイザーガンダムを駆る、カリスマおぜうこと私・『
今、準決勝を勝ち上がったところだが、今回は相手が良かったとしか言い様がない。
準決勝の相手・ミハ兄の暗示を持つ幽波紋は、私の普段からの相方の『カチューシャ』という親友で、その行動パターンは大体覚えていたし、そもそも、あちらのスローネ・ゼーレは支援機の色が強いから、一対一で勝負するのは、あちらに不利だったのだから。
因みに、ここの大会では皆ペンネームを使用するため、ウケを狙って私やカチューシャのような名前にする人も多い。
私は、対戦する設備の台から降りて、カチューシャと合流する。
「やっぱり、雪新は強いわね」
私を見つけて話しかけてきたカチューシャは、ロシア人の血を引く女の子。劣性遺伝の赤毛が綺麗で、背が高め。あと、クールビューティなところは私の憧れでもある。
「そんなことないですよ。それに、ゼーレがフルアーマー化してたら、勝てなかったかもしれないです」
「まあ、それはやってみてからのお楽しみかしら。まだ制作途中だし。それにしても、さっき凄い叫んでたね『ユニバアァァス』って」
「えっ!? 私、そんなこと言ってましたか!?」
「ええ、皆に聞こえるくらい。ねえ、もしかして、最近ターンエー見た?」
「き、昨日、夜更しして……」
「ハリー大尉がカッコよかったって?」
「は、はい……」
「ふふ、気持ちはわからないでもないけどね」
私は自分の顔がどんどん赤くなっていくのを感じていた。
赤面癖は、どうにかして治したいな、と思う。
「もう! からかわないでください!」
「ごめんごめん」
私がカチューシャにじゃれていると、会場内にアナウンスが響いた。
「さあ、準決勝第二試合! 『オ・ノーレ:ターンX.ストレンジ・サーフェイス』対『狸鬼:スーパーゴトラタン』対戦者は準備をお願いしまーす」
呼ばれた対戦者が、ステージへと上がる。
しかし、これはまた……
「濃いなぁ。いや、面子が」
「そうですね……、スーパーゴトラタンって、無限の核パワーとか使いそうじゃないですか」
「それも面白いかもね。さて、始まるみたいだよ」
対戦する両者が、お互いの場所にGPベースをセットして、ガンプラを置く。
狸鬼のスーパーゴトラタンは、白兵戦を無視した砲撃戦仕様といった風体で、常時ビームキャノンを装備しているようだ。
それと対比するように、オ・ノーレのターンX.SSにはバックパックがない。通常のターンXなら片腕だけのはずのシャイニング・フィンガー溶断破砕マニピュレータも、両腕についている。
あと、頭部の虫のような触覚がなくなっている。一見するとスモーにも見えるくらいに。
「……可愛くないターンXですね」
「逆に通常のターンXに可愛さを求めていた雪新に驚きだわ」
「可愛くないですか!?」
「の、ノーコメント」
そして、試合が始まる。
『あたし、ターンX.ストレンジ・サーフェイス、出る!』
『スーパーゴトラタン、行きます!』
操縦しているプレイヤーの音声は、会場内にダダ漏れになっている。
私も、あのような感じで叫んでしまったんだろうなあ……
始まって早々に、ゴトラタンの長距離ビームがターンXを襲った。
しかし、相手のゴトラタンも牽制程度に撃ったのだろう、精度はは低く、命中はしない。
そして、ゴトラタンは、大量のビームとミサイルによって、弾幕を形成する。
これが重火力型モビルスーツの基本戦術で、最も効果的だ。わざわざ被弾するところに突っ込んでいく人もいないから。
そう、思っていた矢先――
『おおお!!』
会場からまた歓声が上がる。
私がモニターを見ると、そこには溶断破砕マニピュレータを両手に展開して突進するターンXその姿があった。
ビームは両手で、ミサイルは分離した足などからのビームで捌いているようで、一見無理な突進に見えるが、その防御はわかる人でないとわからないように思える。
劇中では月光蝶システムで物質を分解吸収できるターンXだが、ガンプラバトルでそんなことをしたら流石にやりすぎなので、月光蝶システムは、Iフィールドに機体に効率的にダメージを与えるだけのものになっている。
『このターンX凄いよォ!! 流石ターンエーのお兄さん!』
どっ、と会場から笑いが起こる。
どうやら、オ・ノーレさんはユーモアのある人間らしい。
どういう人なのか観察しようとするが、ホログラムのせいで操縦している姿は見えない。
そうこうしているうちに、ターンXはゴトラタンへと張り付く。
完全に砲撃戦仕様にしていたであろうゴトラタンは、張り付かれた時点で負けを確信したのだろうか、それでも、なんとか距離を取ろうと足掻くが、最後は右腕のシャイニング・フィンガーに押しつぶされてしまった。
「はい、準決勝第二試合『オ・ノーレ:ターンXストレンジ・サーフェイス』対『狸鬼:スーパーゴトラタン』は、オ・ノーレさんのターンXの勝利です。おめでとーございま-す! えー、決勝戦は三十分後に行うので、皆さん飯食っちゃってくださいねー」
司会の店員さんは、自分自身も差し入れのサムライドを一気に三本ほどジョッキに入れて飲みながら、控室に戻っていった。
あれ、大丈夫なんでしょうか。この店、私の家の経営なんですが、過労死とか洒落になりませんよ。
「雪新? お昼にしましょう」
「え、あ、はい。そうですね。何にしましょうか」
「ラーメンがいいわ」
「好きですねぇ。でも、私はファミレスがいいです」
「あたしは、どこでもいいよ?」
「「!?」」
どこへ食べに行くかという算段をしていると、急に後ろから声をかけられた。
短い金髪の少女。
年齢は、高校二年生である私達と同じくらい。
「あのー、どちらさまですか?」
「あれ、さっきのバトル見てくれてなかったの? ターンX.ストレンジ・サーフェイスの――」
「オ・ノーレさんですか!?」
「そうそう。知ってんじゃん」
「さっきはホログラムで見えなかったんです」
オ・ノーレさんは「なるほどね」というと、気さくな笑顔を向けてきた。
「君らの機体、凄い興味あるな。食事がてら、お話でもいかが? コンパの語源は共にパンを食べるってことなんだぜ」
コンパ、というのは、よくわかりませんが、とにかく食事ということなら。
「いいですよ! 私も、あなたのターンXに興味ありますし、いいですよね、カチューシャ?」
「私は、構わないわ。スローネ改造のヒントになるかもしれないしね」
「へへ、じゃあ決定だ。それで、どこへ行くのかな? ここらへんには詳しくなくてね」
「はい、案内しますね」
†
案内、と言っても、どこにでもある普通のファミレスだ。
それぞれ食べたいものを注文してから、適当に話をする。
「あ、そうだ、改めて自己紹介しますね。私は中務雪新。高校二年生です」
「エカチェリーナよ。同じく高二」
「うんうん、あたしは、オ・ノーレこと月光蝶の伝道師、日比谷奏多。現在十六歳ね。あ、エカチェリーナのことカーチャって呼んでいい?」
「いいわよ。というか、あなた――不躾だけど――高校にはいってないの?」
「自分、アメリカで飛び級で大学院卒であります!」
「ええ!? そ、そうなんですか。凄いですね」
「言動からは俄かには信じ難いわね……」
「専攻は量子力学であります。サー」
「カチューシャ、量子力学って何ですか?」
「簡単に言えば、凄く小さい世界の物理学ってところね。光が粒子と波っていうのは習ったでしょう?」
「え、えーっと……」
「プラフスキー粒子の一定条件下での安定化についてどうたらこうたらとか、わけのわからんことをやってたんだよ。そんなことよりも、ターンゲイザーについて教えて欲しいな!」
「ええ、いいですよ」
私は、ターンゲイザーについて、あまり多くを語るわけにはいかないが、どういう機体なのかを奏多に説明した。
まず、一番の特徴は、背部のヴォワチュール・リュミエール放射スラスター。
ヴォワチュール・リュミエールの陽子の膜をナノマシンの膜に変えることによって、エネルギー変換効率の上昇と、さらに月光蝶の高度なコントロールが可能になる。
「ターンゲイザーは、私の妹が作ったんです」
「妹?」
「はい。妹は、模型製作が得意ですが、ガンプラバトルの技術はありません。ですが、私はそれができたので」
「へぇ、そういう経緯なんだ。いや、実際かなりのものだと思うよ、あんたのターンゲイザー。妹のために勝ってきたわけだ。どうりでね」
「ふふ、ありがとうございます」
「すると、そっちのスローネも?」
奏多がカチューシャのスローネを見て言う。
「これは、私が作ったの。ほら、スローネって三機種全部コンパチみたいな感じじゃない。全部合わせたらどうなるかなって」
「うんうん、面白いねぇ。もしかして、スローネのステルスフィールドの応用で粒子を放射して、ターンゲイザーを加速させたりするのかな?」
「! 凄いです! よくわかりましたね。流石院卒」
「でしょでしょ」
「そこ否定しないんだ」
「へへ、美人と天才は謙遜すると嫌味に見えるからね」
奏多がそう言うと、私達二人は「ああ、確かに」と思ってしまうのでした。
「自分で天才名乗っちゃうくらい、あたしは天才なんだってことさ。ふははは」
「あれ、そういえば、今は何をされているんですか。私達と同じ歳ですよね」
「何って、遊人」
「へ?」
「ちょっと前まで静岡のニールセンラボで客任教授みたいなのやってたんだけど、ちょっと旅したくなっちゃってさ。ぶっちゃけ金も売るほどあるし、日本を放浪しようってね」
「ターンXと一緒に?」
「そう! まさにそれ。最近じゃ色んな場所でガンプラバトルができるからさ、金と携帯とストレンジ・サーフェイスがあればそれだけでいいんだよね、ははは」
「名前のとおり、奇妙なことやってるわけね」
「親父は働けとか言うんだけどね、金銭を手に入れる手段としての労働とかこれ以上やる必要ないし、この大会終わったらどうしよっかなって、考えてたところ」
「労働はいいものだと思いますよ?」
「そう思えるだけ幸せだ」
「雪新は出場名の通りお嬢だからね。アルバイトも何もやったことはない。そういうの、わからないんだよ」
「ホワイトドールのお嬢さん! 差詰、ローラ・ローラだ! なるほど、こりゃますます決勝が楽しみになってきた。気合入れて調整しないと――じゃ、そういうことで、お先に」
「あ、待ってください!」
金を置いてファミレスを出ていこうとする彼女を、不意に私は呼び止めた。
「うん? 何さ」
「もし、私が勝ったら、あのお店で働きませんか? 私の家の経営ですし……」
「その意図は」
「えっと、その、よくわからないですけど……」
上手く言葉にできない私のことを察したのだろう。奏多は、一瞬考えるような動作をしてから言う。
「いいよ。じゃあ、あたしが勝ったら、ローラ・ロ-ラのドレスを着てもらうからな!」
そう言って、彼女は店を出た。
「何だか、嵐が通り過ぎたみたいだね」
「あははは……」
†
「やあ、待っていたぞ。兄弟」
「せ、せめて姉妹にしません?」
決勝戦、奏多は先にステージへ上がって私を待っていた。
手には、戦闘の痕跡を全く感じさせないのっぺりとしたターンX.ストレンジ・サーフェイス。
自信満々の笑顔を湛えた彼女に、私は少しだけ羨ましさを感じた。ストレンジ・サーフェイスというより、ファニー・サーフェイスだ。
「さあ、それでは決勝戦。兄弟機対決となりました! まずは、今大会のブラックホース、オ・ノーレのターンX.ストレンジ・サーフェイス!」
呼ばれた奏多は、意気揚々と右拳を天に突き上げる。
うわぁ、本当に自信満々だ……
「対するは、我らが出資者、カリスマおぜうのターンゲイザー!」
ちょ、そんな紹介の仕方はないでしょう!
私は、あたふたしながらとりあえず頭を下げる。
すると、会場から笑いが起こる。うう、恥ずかしい……
「それでは参りましょう! 対戦者は、ガンプラをセットしてください!」
私は、ステージに設置された装置にGPベースとガンプラをセットする。
『Beginning Plavesky particle bispersal.Fiard1:space』
舞台は、宇宙。
これには、少し残念だ。別の場所なら、ターンエーの原作再現の余地もあったかもしれないのに。
軌道エレベーターが見えるので、どうやらガンダムOOの世界の宇宙らしい。
「ターンゲイザー、行きます!!」
『ターンX.ストレンジ・サーフェイス、出る!!』
あちらの声が聴こえてくる。
通信システムを使用しているようだが、盛り上げるためなのか。
ターンゲイザーは、カタパルトから射出されて、宇宙空間へと放り出される。
フィールドの中央には、軌道エレベーターの柱部があり、そこが主戦場になる設計なのだろう。
外では司会の店員さんが実況しているようだが、最早耳に入ってこない。
しばらく進んだ、軌道エレベーターの柱付近。未だ、相手のターンXの姿は確認できない。
さて、どこにいるのか、とりあえず上下を警戒しながら、軌道エレベーターを下に向かって外周している。
しかし、何もない。
一体どこへ――
「ッ――」
上方からのアラート音に、私は回避運動を取る。
すると、さっきまでターンゲイザーがいた場所を、鉄板らしきものが通過した。そして、大気圏に突入して燃焼していく。
これは……!?
『ブレイクピラーだ』
「知ってますっ!!」
ブレイクピラー。
機動戦士ガンダムOOの劇中、衛星兵器の攻撃によって軌道エレベーターのピラーがオートパージされたテロ事件。
メメントモリを用いずにこんなことをするとなると、Iフィールド系の技術を用いているに違いない。
それにしても、分離したピラーの数が多い。
私は一度ピラーが落下するコースから外れて、難を逃れようとするが――
『ところがギッチョン!』
そこへ、ピラーに紛れて接近していたターンXのオールレンジ攻撃システムの一つである足が迫ってきた。
そして、ターンゲイザーに向かってビームを放つ。
「くっ!」
私は、それを逃れようと振り返るが、さらにその先にはピラーが降り注いでいる。
八方塞がり。まさにそんな状態。
『さあ! 一体どうする!』
私は、迫り来るビットとピラーを前に、苦肉の策を使う。
エネルギーは温存しておきたかったが、仕方ない。
「ヴォワチュール・リュミエール!」
武装を展開すると、周囲にボール・ド・リューヌという光輪が発生し、それがピラーを弾いてくれる。
これで、ピラーに対しての抵抗力を得たターンゲイザーは、ピラーの中を突っ切って、ターンXのビットを回避する。
それにしても、未だターンXの姿が見えないというのは妙だ。
こちらより機動力があるはずだから、先について仕掛けを施すのは簡単だが、それにしても、姿が見えない。
「どこかに――どこかに、いるはず」
脚部ビットの有効射程なんて高が知れている。
それを鑑みれば、この軌道エレベーター周辺にいるのは間違いないはずなのに……
ピラーの影響を受けずに、私を攻撃できる場所、それは――
「ここですね!」
私は、ピラーの外れた脆い外壁をボール・ド・リューヌで打ち破り、軌道エレベーターの内部へと侵入した。
『ご明察♪』
内部では、足をパージしたままのターンXが腕を組んで待っていた。一々偉そうだなぁ。
私は、ターンXに向けて、ビームライフルを数発、牽制で撃つ。
ターンXはそれへの回避行動として、地球に向かってスラスタ^ーを吹かせた。
ここは低軌道だから、このままいくとすぐに自由落下を始める。
ターンシリーズの機体は単独での大気圏突入・離脱にも耐えられるように設計されているけど、普通のモビルスーツでは絶対にできない芸当だ。
私も、その落下に付き合って、共に軌道エレベータ内を降下しながら、Iフィールドサーベルと溶断破砕マニピュレータを交える。
ビーム特有の音をBGMに、私達は舞曲を踊るように、お互いに丸い軌道エレベーターの中を回る。
機体の速度は、もうどれくらいまで達しただろうか、恐らく大気圏には到達しているのだろうが、戦闘をしているせいで下を見る余裕がない。
すると、先にターンXが逆噴射をかけた。
私も、それにつられるように逆噴射をかけるが、次の瞬間――
ゴンッ!!
「ッ!!」
ターンXは即座に逆噴射をやめて、地上に向かって加速した。
そのターンXに気を取られて、ターンゲイザーは内部の突起に伽藍洞の胴体をぶつけてしまった。
自由落下でかなりの加速度がつくはずなのに、これ以上まだ加速する気でいるのは正気の沙汰ではないとも思ったが、彼女の実力なら。どんなことをしでかしても不思議はない。
私も、それに追従するように加速して、今度は下が見えてきているため、適当なところで穴を開けて、軌道エレベーター内から脱出する。
空はピラーの破片で鈍色と青に分かれていたが、地上は都市と砂地ばかりだ。
これじゃ、地球はいいところだ、なんてとても言えない。
『いい、凄くいいぞ! さあ、そろそろ神の国への引導を渡してあげよう!』
「何をッ!!」
同じく軌道エレベーターから飛び出してきたターンXにサーベルを振るうと、今度は右腕からビームを出してきた。
私は、それを回避するために右へ逸れるが――
「あっ!」
ターンゲイザーの右腕が、いつの間にか分離していたターンXの左腕に掴まれていた。
『これが、ブラッディ・シージュシステムの真骨頂! シャイニング・フィンガー!!』
そして、溶断破砕マニピュレータによってターンゲイザーの右腕は木っ端微塵に吹き飛ぶ。
しかし、私も負けじと、ヴォワチュールリュミエールの加速を使って急接近し、ターンXの右腕をサーベルで切断する。
『チィ!』
ターンXはそのサーベルを足で払いのけると、今度は左腕で私の左腕のサーベルと切り結んできた。
『妹さんのガンプラッ! 凄まじい性能だ! だがね――――!!』
ターンXは一旦こちらから離れて、手足を広げ、背中からナノマシンを散布する。
あれは、月光蝶システム!
ターンシリーズに搭載されている、黒歴史最強の兵器。
でも、月光蝶システムなら、こちらにもある。
ヴォワチュールリュミエール機構を取り入れた、効率化月光蝶システム『ヴォワチュール・クレール・ド・リューヌ』なら、パワー負けは絶対にしない。
私は、そう信じて、ターンゲイザーの月光蝶システムを作動させる。
そして、二機のターンが激突する。
重厚な見た目に反して、お互いに伽藍洞なモビルスーツ同士、甲高い音が鳴り響く。
『純粋に戦いを楽しむ者こそッ!!』
「自分を捨てて戦えるものにはッ!!」
思わず言っちゃった!
しかし、月光蝶は、お互いの機能を阻害して、原作通り、機能不全に陥ってしまいそうだ。
『原作みたいだって思ったろう!』
「だったら何です!」
『ターンXトップなんだよォ!』
その瞬間、ターンXの頭が外れて、月光蝶を放出している本体と離れていく。
力場の影響か、その速度は決して早くない。
未だ拮抗している月光蝶に煩わされている身では、あれは狙えない。
だけど、まだ――
「月の扉を開く!!」
背部放射装置から放射されるナノマシンが、一気にその数を増す。
これが、VCDLの真の実力。月光蝶のために搭載されたシステム。
『何!?』
ターンゲイザーの月光蝶が、ターンXの月光蝶を侵食していく。
そして、今まさに飛び立とうとしているターンXトップに――
『オ・ノーレェ!!』
直撃した。
†
「いや、参った参った。まさか、月光蝶が破られるとは」
「えへへ、やりました」
私達は、大会の後始末を終えてから、店のベンチで休憩していた。
カチューシャも、実際にあそこまで出力を上げたのは初めて見たらしく、今度検証してみたいとのことだ。
「ていうか、奏多さん、オ・ノーレって……」
「準決勝でユニバースとか叫んでたのは誰だったかしら、あたしにサーベル突き刺す時にノリノリで――」
「か、カチューシャ!」
「ははは、君らはやっぱり面白いな。それで、あたしに働き口をくれるんだろう?」
「そ、そうですよ。来週からここで働くようにもう話は通してありますからね」
「はいはい。――それはそうと、雪新のローラコスプレ、やっぱり見たいな。なぁ、カーチャ?」
「ああ、そうね。それは私も見たいと思ってたの。帰りに秋葉原にでも寄りましょう」
二人とも何を……!?
か、かくなる上は――
「……だ」
「「だ?」」
「断固辞退します……!!」
私は、全速力で駆け出した。
ぼくのかんがえたさいきょうのがんだむ。
それにしてもターンエーが公式チート過ぎて草です。