その少女は、やまと、と名乗り……?
佐世保鎮守府
「提督、例の建造が終了したのです」
「おお、ついに終わったか!!」
横須賀鎮守府所属、竹上大佐は秘書艦の電の報告を受け破顔した。
待望の大和型建造完了の知らせである。
嬉しくないというほうが、どうかしている。
竹上提督率いる艦隊は高速戦艦を中心とした編成をしており、遊撃を主任務としていたのだが、近年の深海棲艦の重武装化に伴い火力不足が顕在化していた。
このため、備蓄していた資材での大型建造を含む大規模な建艦計画を立て、実施。
その結果の第1弾が80時間という建造時間であった。
事前に他の提督から聞いていた時間とはちょっとばかり、いや、かなり違うが、おそらく大和型だろう。
建造時間が通常と違いすぎて少々の不安ではあったが、結果オーライだ。
おそらく、問い合わせた時に聞き違えたのだろう。
8時間と80時間、聞き違えた可能性は高い。
これで、敵の主力戦艦群と正面切って戦える。
そうすれば、金剛たちへの負担も減り、さらなる作戦展開が可能になるはずだ。
まずは練度を高め、W島攻略だな。
そんな竹上提督の算段はいろいろな意味で裏切られたのだった。
建造ドックについた竹上と電を待っていたのは一人の艦娘。おそらく、この子が大和型なのだろう。だが、事前に聞いていた大和、武蔵の容姿とかなり違う。
竹上は内心で首をかしげた。
背丈は長門とほぼ同じ程度、色白で黒髪をポニーテールにした彼女は事前の大和型の情報と一致しない。さらに、艤装はスクール水着に魚雷である。
どう見ても潜水艦である。
ちなみに装甲は厚そうだ。とても目にやさしい。
装甲が厚いのは良いとしても、これまでにこのような容姿の艦娘の報告はない。
「君が新しい艦娘だね。私が提督の竹上だ。よろしく頼む。」
「私は秘書艦の電なのです!よろしくおねがいするのです」
「Good morning JAPAN!
私は第7艦隊のシー……じゃなくて、やまとよ。よろしく」
それが、日本のみならず世界中を巻き込む大事件を起こした「原子力潜水艦やまと」と竹上の出会いであった。
やまとは強かった。
演習では……
佐世保鎮守府総司令官の嶋田元帥の対潜防御ラインを突破。
護衛対象であった大鳳に探信音を当て、みごとに撃沈判定を勝ち取った。
「2次元でしか機動できない水上艦が3次元で動ける私に勝てるとでも?」
出撃すれば…
水上艦、潜水艦の区別なく撃沈。
敵の動きを的確に読んだその魚雷攻撃は、およそ恐れを知らないはずの深海棲艦をして心胆寒からしめた。
ある時、やまとは2本の魚雷を発射した。
慌てて回避した軽巡と駆逐であったが、追尾するかのように変針する魚雷を避けようとして、お互いに衝突し2隻とも沈没。そして肝心の魚雷は空母の機関と格納庫に命中し、撃沈。
この光景を見た艦娘たちは
「ぜ、絶対に、やまとさんを怒らせないようにするのです」
「しょ、衝突禁止~~!!」
「ま、そんなこともあるわよね」
と、トラウマを再発させた艦が多数出たとか。
たまたま弾薬を使い切った時に出会った敵潜水艦は、通信用のケーブルで深海に引きづり込んで圧潰させた。
「無茶するなって?いえ、あれは通信準備中の事故なのよ」
と、まあ敵にも味方にも(トラウマ的な意味で)恐れられたのだった。
そして、彼女を秘書艦にして装備開発を行うと大量の資源と引き換えにイロイロな装備ができる。
たとえば、自ら探信音を放ちながら追尾する魚雷とか。
50km先の目標までかっ飛んでいく飛行爆弾とか。
自分の航行音を偽装できる魚雷とか。
そして……
「司令官さん、今回は徹甲弾なのです。さすが、やまとさんですね。砲撃用の装備まで開発できるなんて」
一緒にいた電は感嘆の声を上げたが、竹上は不安に駆られた。
イロイロ規格外とはいえ、さすがに潜水艦で徹甲弾はない。
むしろ、もっとヤバイものかもしれない。
そして見つけるハザードマーク。それも放射能マークである。
装備「戦術核弾頭」
竹上は、見なかったことにして廃棄した。
そして……。
「やまとさんが脱走?」
「敵前逃亡というわけではないらしいが…」
「いずれにせよ、艦娘の脱走は許されない。佐世保鎮守府の総力を持って拿捕せよ。不可能であれば……撃沈せよ」
「私、原子力潜水艦やまとは日本からの独立を宣言します!!」
To Next Voyage ……
最後にSSを書いたのは5年前に某所で書いたのがラストだったのですが久々に一発ネタを書いてみました。
アルペジオの映画を見てなぜか毒電波を受信した。
なお、続きません。