魔法少女リリカルなのはStrikers IRONMAN   作:赤い配管工の人

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アメコミの泉第七回

『マーベル』という単語を持つヒーローは四人も存在する。


今回は初の空中戦!17301文字を書いたらこうなっちゃったZE☆
フェイトちゃんが苦労人なポジションはオレちゃんの独断と偏見だよん♪

フェイト「!?」



#16

真っ暗になった廊下に誰もいない廊下をペタペタと歩く少年がいた。

 

足元に照らされたライトを道しるべにしトイレで用をすませ半分目が閉じそうになりながらエリオは歩いていた。

 

寝る前にコップ一杯の水を飲んだせいか寝れなくなり、布団から飛び出しトイレに行かずにいられなかった。

 

(次からは少しだけ飲んで寝よう……)

 

うとうとしながらも部屋に入りもう一眠りしようとした時、ある音を感じた。

窓から見ると星のようなモノが光をたなびきながら飛んでいる。

 

途中で螺旋に回り、ジグザグ飛んでいく姿に半開きの目が一瞬に全開に開き、エリオを釘付けにした。

 

アレを見ている間三回願いを念じると叶う『流れ星なのか』と少年は思った。

 

だがアレはどう見えても流れ星ではない。

 

あの光は一体何なのか

 

興味本位であれを見るため寝間着のまま靴を履き静かに足音を立てず部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

上は雲と星が点々と散らばり、下には夜の街から溢れだすネオンがあちこち存在する。

 

深夜になっても街の明かりは消えず人々は仕事疲れを癒すため飲みに行ったり、家に帰り会社に遅れないよう寝る者もいる。

 

そんな夜の中、海上の上空を飛行するモノがいた。

 

月明かりによって全身が眩しさを放ち逆放物線を描き飛行する。

 

バイタルは良好、スーツの各部もリアクターもどこにも異常がない。

 

そんな最高の環境に恵まれながら彼はこの空を飛行する。

 

「HEEEEEEHHHH HHHHAAAAAAAAA!!」

 

荒野を走り廻るカウボーイのごとく、右手に握る綱を回すようにテンション高めで出した。

 

無理もない、飛ぶ前にハイテンションで飛ぶなと言われても一秒でそんな命令を撤回させる。

 

今、自分しかいないこの夜空で彼は思い返していた。

 

(最高だ。今の気持ちを言葉で表すならそれしかねぇ!長い名言や偉人の言葉を借りる必要もねぇ!)

 

新しい刺激を見つけた子供のようにはしゃいでいた。

 

夜空とネオンを眺め、ディスプレイを確認する。

表示されたデータに視線を重ねると二重に表示され詳しいデータが出てくる。

名称、高さ、土地の詳細情報にどこも間違っていない。

 

さすがここ(ミッドチルダ)のサーバーだ。性能が断然違う。

 

高度計異常なし、方角も正常。さてさて通信でヤツの機嫌でも聞いてみますか。

 

 

「こちらカイリー。そっちの調子はどうだ?」

 

 

 

 

 

「……あなたのデカい声で耳が未だキンキンしてますよ」

「ハハハ、スマン。そこは笑ってごまかしてくれ」

 

顔をプイッと背ける仕草をするシャリオにカイリーは笑った。

 

「で?」

「カイリーさんの言う通り、システムは依然良好です」

 

シャリオは表示されたディスプレイに目を向け、LIVEと表示された中継を元に間違いを探す。

 

(どこも間違っていない。さすが私)

 

ふんふんと頷きながら作業をするシャリオを見て

 

「顔より夜景を映した方がいいか?」

「お願いします♪」

 

顔をじっと見つめるより景色を映した方がいいか。

 

しょぼんと気分が沈みながらも設定を外部カメラに変更し景色を映した。

 

一秒も掛からない内に画面が変わり、一人称視点に変更される。

 

街のネオンがあちこちに輝き、星たちもそれに負けまいと光を放っていた。

 

二つの光を受けながら飛行する姿はまるで彗星のようだ。

 

「今から独り言に入るから回線を切る。随時報告は忘れるなよ?」

「了解。じっくりと楽しみなさいませ」

「お前もな」

 

そう言いつつ、彼女との通信を切った。

 

中継画像だけ送って彼女がご満悦になっている中

 

(バードストライクに当たる戦闘機並みのスピードだ。コイツは)

 

密着空間の中でGの圧力に掛かりながら思いにふけていた。

 

このスーツを造った親父の気持ちになった気分だ。

 

知恵と技術で造られたこのスーツは使いようによっては兵器部門ベスト3に入るレベルだ。

 

それを金儲けの商品にせず、人を救うためだけに造った彼の才能は見事だ。

 

 

 

(…感謝の言葉は向こうに帰ってから言おう)

 

「何をお考えに?」

「2000字クラスの感想を考え中」

「せいぜい出来たとしても100字にも満たしません」

「まぁ、間違っていないがな」

 

つまらない冗談を交わしながら会話している最中に通信が鳴った。

 

(もうギブアップか?アイツは夜型(・・)じゃないか)

 

あやしいと思いながらも回線を開くと

 

「……こんな時間になにやってるんや~?」

 

ニコニコとこちらを微笑みながら怒りの色を隠さない女性がいた。

 

八神はやてだ。

 

「……」

「……」

 

空間に沈黙が入った。彼女がこちらを黙って見つめる中

 

「…ピーと音が鳴りましたらお名前とご用件をお願いします」

「……ナぁニやっとんじゃァァ!!おんどりゃあ!?」

 

余りの声量に思わず目を瞑りたくなった。

 

関西弁の恐怖の迫力が伝わる。

 

彼女の心配の種を増やさまいと決めていたがそれを破ってしまった事に悔う。

 

乙女の機嫌を取る方法を探しながら口を開いた。

 

「朝メシに付き合うからそれで手を打とう」

「ナメてるやろ?どこにでもいる女と一緒だと思ってるんやろ!?」

 

彼女の表情から見るとキレてしまってるようだ。

 

パジャマの上にジャケットを着て、肩の上にリィンが乗っている姿を見てクスリと小さく笑う。

 

傍にははやてに殴られ、頭にたんこぶが出来てうずくまっているシャリオを心配しているフェイトとそれを眺めているなのはがいた。

 

どうやら普通に戻ったらタダでは済みそうにないようだ。

 

だがテストは始まったばかりで、ここで切り上げたら面白くもなんともない。

 

どのような言い訳を出そうと考えている中で

 

「とりあえず早く戻ってきィ!今なら処分は軽くするで」

「早く帰らないと背が伸びないですよ!」

「そうだよ、もう遅いから明日にして早く寝よ。ね?」

 

おどおどと口を出すフェイトと怒っているはやてとリィンを見て答えを出した。

 

「通信を遮断、今から言う言葉をメッセージにして届けろ。テスト続行だ」

「何勝手な事しとるんや!?」

「アンタも朝早いんだろ?夜更かしは美容の天敵だぜ?おやすみ」

 

ニコリと悪い笑顔を作り画面が消え、データ採取モードに変わったディスプレイだけになった。

 

「通信を切られたです…」

「……」

 

リィンの報告を聞き、手を当て深く頭を抱え込んだ

どうしてこういう問題児がいるのか?受難はまだ続くようだ。

 

やはり彼を扱う事は出来ないのか?ヒーローとはこういう類なのか?

 

男はなんで無茶するのか彼女には想像できなかった。

 

実際彼女の友人はほとんど女性ばかりで男性の友人は数人しかいない。

もう少し男友達を作るべきだったかとそう結論にしようとした時

 

「待ってくださいはやてちゃん!メッセージが届いてます!」

 

突然リィンが言葉を上げ、そのメッセージを読み上げる。

 

彼女達はそれを聞くように耳を寄せ合い、静聴した。

 

「このメッセージは今、ヘルメットに出力した声を記録しメッセージにしたものだ」

「生憎口下手だが読んでくれたら幸いである」

「アンタの言う通りこのテストは明日にしてもいいはずだ」

「だがオレは出来上がったモノをすぐにテストするタチでね、メカニックとはそういう性だ」

「このスーツは親父が造った『マークⅡ』を元に二人と協力し、初めて出来たヤツだ」

「太陽が上る午前にやったら目をやられてしまうと同時にコイツを晒してしまう」

「初めてのテストにいきなりミスはしたくない」

 

「だから今この瞬間がベストな条件だ。今なら低レベルのオカルト週刊誌が扱うネタになって一部の目にしかつかない」

 

「不具合を見つけそれを直すチャンスは今しかない」

 

「このテストに掛けさせてくれ」

 

彼の長いメッセージがそこで終わり、はやては少し小さく息をつく。

ヒーローとしてデビューする際にいきなり失敗したくない。

夜という絶好な状況でテストをしたいのも分からなくもない。

どうして男の子はこう無茶をして心配させるのか今までの人生を振り返りながら思う。

 

(なのはちゃんみたいにもっとお話しでもしないとあかんか…)

 

「はやてちゃん…大丈夫ですか?」

 

心配そうにリィンが声を掛けるが大丈夫やでと返す。

 

「私が行ってくるよ」

 

バルデイッシュを手に持ちフェイトは答える。

 

仕事のせいで全体に疲れが残っているが彼を連れて帰らなくてはならない。

 

(二人は睡眠不足でまだ仕事が残ってる……私が行かなきゃ)

 

彼女は二人を気遣い、行こうするがはやてに制される。

 

「ありがとうなフェイトちゃん。でも気遣いだけでええで」

「最近のカイリーは皆を振り回しているから対処しないとこのままじゃ……」

「男の子って無茶をするからカッコいいんだよフェイトちゃん」

「なのはまで!?」

 

フェイトは二人の反応に困ってしまう。

このままでは六課が変な方向へと倒れてゆくではないかと心配してしまう。

底のない沼に落ちる思考をしていると突然電子音が二回も鳴った。

 

「!カイリーさんから返事です」

「今度はなんや?」

 

 

 

 

 

 

 

「今残っているテスト項目はいくつだ?」

 

「5項目です」

 

腕に付いているリパルサーを巧みに動かし、体全体に掛かるGをスーツに備えている変換器で調節をしながら彼女に問う。

 

ディスプレイに項目が箇条書きに並び、一つ一つ詳細が出る。

 

この飛行テストの中で数十個のテストをこなしシメに入ろうとしていた。

 

「彼女達からの返信は?」

「まだ来ていません」

 

彼女達にメッセージの続きを届け、反応を待ちながら彼はデータの整理を行っていた。

 

時刻は既に深夜を回っている。

 

来るか来ないかその時を待ち続けていた。

 

(挑発で返すのはまずかったか…)

 

自分が送ったメッセージにためらいを考えていた時、警告音が鳴った。

 

 

 

「…!こちらに接近する物体を確認」

「数は?」

「一つ。形は人間でマッハでこちらへ向かっています」

「…やはり来たか」

 

両手を前にかざし逆反射を行いブレーキをかけ、そのまま振り返り接近する物体に目を向ける。

 

ディスプレイから望遠機能を作動させ正体を確かめた。

一言で表すなら金色の彗星が現れたと表現するだろう。

 

しかしそれだけでは人には理解できない。

 

望遠機能の上にスキャンを掛け、何重にもデータが表示される。

 

 

 

所属:機動六課 ライトニング分隊隊長兼執務官

危険度:A+

 

 

「…送る相手間違えたか」

 

こうしている間に彼女(・・)はこちらへ猛スピードで接近する。

 

どうやら戦いは避けられないようだ。

 

 

 

 

 

 

「さすがフェイト嬢。ブロンドはダテじゃないな」

「カイリー・E・スターク。あなたを管理局業務妨害で逮捕します!」

「しかもいきなり逮捕か」

 

 

白いマントを羽織り、藍色のバリアジャケットを着たフェイトが現れた。

 

先端が斧状になったバルデイッシュをこちらに向け、警告を発した。

 

ロングからツインテールになったフェイトを見て思わず

 

「やっぱりツインテールは子供限定だと思ったがそうではなかったな」

「仰ってる意味が分かりません」

「む…そうやってごまかしても見逃さないから!君に言いたい事がたくさんあるから!」

 

 

 

褒め言葉を言うオレに彼女は若干赤くしながら強く言った。

 

女性は容姿を称える言葉を言われると顔を赤くするか気にしないかに別れるがどうやら彼女は前者のようだ。

 

とそんなどうでもいい思考をしながら彼女の言葉を聞く。

 

人に迷惑を掛けちゃいけないとか少しははやてと新人達の事を見習ってほしいとか自分の出番が不憫など耳にタコが出来てしまう話ばかりだ。

 

*もちろん彼らに迷惑が掛からぬよう生活しているがそこまで模範的じゃない

 

子供を叱るような説教が延々と続き時間だけが過ぎていった。

 

 

5分後

 

 

 

「君はもう子供じゃないから大人になりなさい!」

 

締めの言葉が入りようやく長ったらしい説教が終わった。

後半はほとんど愚痴だったがアンタはオレのオカンかと言いたい。

こちらにターンが回りヘルメット越しからため息が出つつも言葉を吐いた。

 

 

 

「長々しい説教を受けたオレの言葉を言おう。断る」

 

その言葉に彼女はガクッと姿勢を崩しかねた。

 

「言っておくが今更そんな事聞かされても耳には入らん」

 

「うぐ」

 

「アンタの言いたい事は分からなくもない」

「それじゃあ!」

「だがそういう事はまともな人間に言え。オレはそんな人間じゃない」

 

この世界にまとも(・・・)な人間なんているわけがない。どこが一つ欠けて(・・・)いるから

 

自分の経験から見出した信条を思いながらある思い切った事が浮かんだ。

 

そんなにストレスが溜まっているなら出して(・・・)やろうじゃないか、この方法(コレ)なら一番早く解決する手段だ。

 

結論を出せずにうなだれている彼女にまた言葉を強めに吐いた。

 

 

「アンタに一言二言あるがここでゲームをしよう」

「ゲーム?」

「オレを捕まえる事が出来たらさっき言った事を話す。時間は10分」

「この時間が過ぎたらオレの勝ち。溜まっているストレスを発散する今限定のチャンスだが?」

 

その言葉を言われると思わず納得しそうになってしまった。

 

最近皆から自分の扱いがひどいせいか現在進行形で溜まってきている。

 

これを逃せば二度と来ない。しかしだからといって他人をフラストレーション発散に使うのは少し抵抗感がある。

 

(いけませんフェイト!ストレス発散に彼の誘惑を聞いてはいけません!)

(イイじゃないかよォ…今ならフルボッコに出来るチャンスだぜぇ)

 

 

自分の中に潜む天使のフェイトと忠告を、悪魔のフェイトが誘惑を言ってくる中

 

「…ッてそんな事言って逃げるつもり?」

 

慌てて邪心を振り払い彼を逃がさんと睨みつけたが、彼は全く動じていない。

 

「男には二言はない」

 

ヘルメットで表情は見えないが真面目に返したと彼女は判断するがそれでも判断材料としては少なく未だに悩んでしまう。

 

それを眺めている彼はさらに発破をかける。

 

 

 

「来いよ。ならず者(アウトロー)を捕まえるのは管理局(カウボーイ)の仕事だろ?」

 

人差し指と中指を合わせ挑発し、その場から離脱する。

 

その場に取り残されたフェイトはカイリーの後ろ姿を見て小さく微笑む。

こんな所でうずうずと悩んでる場合ではない。

実力を見せつけてちゃんと捕まえて叱ってやらなきゃと心に決めた。力比べしようと言うのなら受けてやろう。

 

彼に舐められる前にキチンとしなくてちゃ執務官の名が泣いてしまう。

 

「…分かった!」

 

バルディッシュの杖部分を握りしめ彼の向かった方向の後を追跡を開始した。

 

ならばそこまで言うなら乗ってやろうではないか

奥深く潜む刺激を突かれた彼女はそれだけを考える事しかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(執務官って名前を聞くと机の上で仕事をするタイプかと思ったが)

 

彼女が追跡の決意をした事を知らず、今までの先入観から出てくる考えを並べ、ありもしない事を毒づけていた。

 

そもそも彼女の訓練を見た事はなく、実力を測る事は出来ない。

管理局のサーバーをハックし情報を入手する手もあったがそれでは面白くもなく、ぶっつけ本番という状況を好んだのだ。

 

(仮にハックしたとしてもここ(ミッドチルダ)の技術はこちらよりも高く、すぐに捕まってしまう可能性がある)

 

悪いクセだが今ここで談義しても意味がない。

 

そうこうしている内にレーダーに接近警報が鳴り目を動かす。

 

速度は……コイツはヤバい。

 

まだヒーローの一人にも出会ってないのに自分の強さを傲慢する身の程知らずのヴィランが逃げ出す程の速さだ。

 

どうやら喧嘩を売る相手を間違えたと確信した。

 

だが彼の顔色はむしろ悪くなるどころか良くなってきている。

 

彼女は挑発(誘い)に乗ってくれたのか。

 

このただ飛行をするだけのテストに花火(刺激)を追加してくれるとは。

 

(これだから面白いんだ。人生ってのは!)

 

すぐに左に倒し、その動きにスーツも連動する。

 

ここから誰も知らない一つのゲームが開始した。

 

 

 

 

 

ぶ厚く覆われた雲海を何度も侵入し、身を隠し(スニーキング)ながら進む。

 

それを目視とデバイスからの情報を頼りに追跡する彼女にとって難しい事ではない。

 

今自分が追跡している相手はデバイスではなく鉄とジェットを積んだ人型のスーツだ。

 

デバイスより劣るかもしれないが油断してはいけないと慢心せず追う。

 

彼の実力も兼ねてお手並み拝見といきたいがここは執務官として彼を捕まえなければならない事を優先する。

 

「見つけた!」

 

ジェットの副作用による飛行機雲を頼りに雲海を何度も抜けようやく目に付けた。

 

距離は遠いが追いつける事に難しくない。

 

彼は一瞬こちらを一目見てすぐに左へ錐揉み回転を起こしながら飛行する。

 

それを見てバルデイッシュにロックオンさせ急速に接近し、風の流れに逆らい前方に衝撃波を形成しスピードを出し始めた。

 

この距離なら攻撃もバインドを掛ける必要もない。

 

 

(すぐにとっちめてやるから!)

 

シグナムが見た時代劇のドラマから出た印象に残った台詞を思い出し口をこぼす。

 

だが彼女はある事に気づいた。

 

これだけ接近してもなぜ何も対応してこないのか。

 

彼女の姿に目もくれず無反応で態勢を崩さずに飛行しているままだ。

 

その事を気に掛けるが後回しにする。

 

「捕まえた…!」

 

彼の真上に移動しこの競争(ゲーム)を終わらせようと左手を彼の鋼の肩に触れようとした時

 

 

「加速!」

 

彼女の手が触れる直前

リパルサーの光が通常より二倍輝き、彼女の距離を徐々に引き離しマッハの領域に突入した。

 

人の形を維持したままマッハに入るのは人間をやめると同時に自殺行為と同意義だ。

 

だがこのスーツは全身に掛かるGを大幅に軽減し何の痛みもなく飛ぶ事が出来る。

 

(――やっぱりいきなりマッハ5はキツイな!)

 

スーツ内の振動で揺れながらも次の手の準備を思考する。

 

訓練も何もしていない人間がいきなり月に行けというぐらいの無茶を自分はやった。

 

いや一般人がゴジラに立ち向かえという程だ。

 

そのまま彼女を引き離し、加速を続ける。

 

「HERE WE GOOOOOOOO!!!」

 

―――二回目のバカでかい掛け声を発しながら

 

 

 

 

「キャ!!」

 

リパルサーから放出される熱波に顔を覆い、その場でうずくまる。

今まではこのような事を経験した事はあるが彼の実力を見くびってしまった。

 

これがアイアンマンの力なのか。

 

彼にとってこれはまだ序の口であるがその脅威を十分に感じ取ったフェイトは更に気を引き締める。

 

(――――ッ!)

 

距離を離し遠くにいるカイリーを睨みつけ、再び加速を再開した。

 

 

 

 

 

 

「どうだ?」

「お見事です。うまく引っ掛かってくれました」

 

彼女の状況をモニターしながら次の手を準備する。

一度使ってしまった手は相手が忘れるまで二度は使えない。

 

「オーケィ…試作兵器(プロトタイプ)展開。発射タイミングをマニュアルに切り替えろ」

「了解」

 

彼女が追いつく前に試作兵器(プロトタイプ)の展開を命じ

腰の両サイドに設置されたサークルが可動を始めターゲットを定める。

 

 

 

(……来る!)

 

再び追いついた彼女は彼の腰の双方から展開する兵器を注意深く観察し警戒する。

 

もしかしたら彼の作った新型の質量兵器か

それともシャリオがマリエルが作った新手の新兵器か用心深く見定め、再度接近を試みる。

 

彼の術中に嵌まってしまったが次は引っ掛からないと心掛けリンカ―コアに宿る魔力の40%を引き出しスピードを出し始めた。

 

二度目はないと思った矢先、バルディッシュから警告が伝えられる。

 

 

 

前方から複数の熱源が接近する、数は10。

 

連続する音が続き、煙を焚きながら三次元に離散する。

 

ミサイルのように誘導はなく、一つや二つ当たってしまうがダメージに変化はない。

 

それを確認し、当たらないように避けてゆく。

 

どうやら彼の兵器は失敗作だったようだ。

 

そう決めつけ、進もうとした時に事態が発生した。

 

(…体が妙に重い!?)

 

突然スピードが妙に減速し、体が重く感じた。

 

この感覚は味わった事がある。

 

訓練の対ガジェット戦で何度も経験し対策をしてきたアレ(・・)を思い返す。

 

対高位防御魔法A.M.F(アンチマギリンクフィールド)だ。

 

しかし彼の体にリンカ―コアは存在しない。

 

 

 

通常、A.M.Fを発生させるには高クラスの魔道士かガジェットが場にいなければ不可能である。

 

だがこの場にいるのは彼女と彼だけだ。

どこかに黒子がいて妨害しているのか?自分の不調なのか?

 

(―――まさか!?)

 

フェイトは自分の周りに流れた煙を見た。

 

その煙は消えず、まだ継続している。

 

もしこれがA.M.Fだとしたら―――そう考えると合点がいく。

 

A.M.Fは通常フィールド状に展開するのが脅威だと教えられている。

 

魔道士の力を格段に戦力を半減させ、さらに数を増やせば通信を不能し連携を弱体化させる。

 

カイリーはそれに目をつけ、敵の赤外線ミサイルの命中率を下げる欺瞞(ぎまん)装置『フレア』という形の発想をシャリオやマリエルに依頼し作らせた。

 

フレアなら短時間だが敵の足止めと命中率の低下を可能にし、戦力を分断できる。

 

(その頭をマジメに使って働いてくれたらいいのに!)

 

訳の分からないまま心の中で愚痴を言い、体の周りに纏わりついているフレアを速度を落とさず払い続けた。

 

こうしている間にもどんどんと引き離されてしまう。

 

それを分かっていながら彼女は手を動かし続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さすがやな…」

「あのフェイトちゃんが押されてる…」

「すごいです~」

 

二人が盛大な追っかけっこをしている中、なのは達はその映像を凝視し一歩も動けかなかった。

 

シャリオは頭に出来たタンコブを摩りながらディスプレイに向かってデータ収集を続けていた。

 

彼女はなのは達の会話に耳を入れず、淡々とキーボードを叩き付ける姿はそれだけ集中している証拠だ。

 

「はやてちゃん、なのはさんはどっちが勝つと思いますか?」

「いきなりなんやリィン?まさか賭け事かいな」

「違います~!リィンはギャンブルとかしません!」

 

頬を膨らましプンプンと怒るリィンを見て笑うはやてとなのは。

 

この状況でオッズ(倍率)が有利な方はフェイトの方に傾くと二人は考える。

 

「カイリー君の技術もすごいと思うけどやっぱフェイトちゃんかな~?」

「私もフェイトちゃんに一票」

「それは友人が絶対に勝つという確信?それとも教官の目?」

「正確に言うなら4:3かな」

「正直者やな~なのはちゃんは」

 

頬をつんつんと触りながらはやてはなのはを茶化す。

 

「リィンはどうなんや?」

「う~ん…私はカイリーさんの方にです!」

「フフン…一体どういう風の吹き回しや~?」

 

はやてはニヤニヤしながらリィンの腋をくすぐり、真意を確かめようとする。

 

人差し指の先端を上下に小さく動かし、プルプルと震え上がらせた。

 

笑いを噛み殺しながら抵抗し小さい手が彼女の手を止めようとするが抑えきれない。

 

「くく、くすぐったいです~!」

「どうしてや~?お代官様に言ってみぃ~」

 

はやての顔は時代劇に出る悪代官の悪顔になっていた。

 

それを横目で見守るなのはは幸せそうである。

 

「た、確かに実力はフェイトさんの方が上なんですけどカイリーさんの実力にもっと見たいかなーという訳で…」

「なるほどなるほど」

「それにヒーローの力を見たいという願望もあって…もうやめてくださ―い!」

 

指を止めたのを確認し、リズムが取れない息をしながら落ち着きを取り戻そうとした。

 

リィンの弱点を知っているはやては歯を立て笑う。

 

彼女なりの考えにそっと尊敬し、なのはと目を合わせる。

 

魔道士とヒーロー

 

どちらが勝つか、どちらが負けるかこの勝負で決まる。

 

「シャーリーはどっちが勝つと思うんや?」

「…!……!………!」

 

データ収集に指を走らせているシャリオに無駄だと思いながらもはやては疑問をぶつけた。

 

シャリオは口を出さず指の叩く音だけを大きくした。

 

(タッチパネルである)

 

その様子に戸惑い、どう返せばいいか分からないはやてはなのはに助言を貢うが彼女も分からなかった。

 

ただリィンは

 

「『もちろんカイリーさんに決まってます』って言ってますです」

 

「」

 

彼女だけが理解している事にはやては口を開け、あ然としていた。

 

 

 

 

 

競争は終盤へと入り、両者は距離を開けず飛行を続ける。

 

フェイトは二度も罠に引っかかったのを教訓に気を引き締めるに対し

 

カイリーは二つも手を使い果たし、マッハ5で速度を落とさず飛行を続けていた。

 

フレアの残弾は0、最初に使った手は一度敵に覚えられてしまったら二度は使えない。

 

最後に残った手は時間内に達するまで逃げ切る事しかなかった。

 

(やっぱコレしかねぇよな……やりたくないけど!)

 

この手段に不快感を出すが、この現状から抜け出すにはそれしかない。

 

そうしている内に彼女が追いついてきた。

 

しかも彼女の顔は少し本気になっているようだ。

 

「リアクターの供給をスラスターにちょいと回せ。逃げ切るぞ!」

 

「了解」

 

即決にメリルに命令し、実行には一秒も掛からない。

 

腕部と脚部のリパルサーのパワーが増すと同時にマッハ5で飛行している体にさらに圧力が掛かる。

 

揺れが前より大きくなり視界が定まらくなってゆくが、それを耐えながらディスプレイの表示を見ると最大限界速度マッハ6に更新された。

 

ここからは自分が経験してない未知の領域だ。体がと人生と明日の食事がどうなろうと構わない。

 

時間(リミット)は既に8分を切った。

 

歯を限界深く噛み締め、次の行動に移す。

 

 

 

雲海を抜け、辺り一面に海が広がった場所へ出る。

 

変換器が作動し前面に両手をリパルサーをかざし背中のフラップを可動させ、エアブレーキを展開しゆっくりと停止する。

 

同時に彼女も長い雲海を抜けこちらを見つめる。

 

バーニアの吹かす音と風が吹く音が支配する中、両者は一方も動かない。

 

どちらが先に動くか、その瞬間(とき)を待っていた。

 

多数の雲が月の輝きから逃げるよう解放する。

 

月の輝きが彼女の目蓋を少し閉じさせるその瞬間、海に向かい飛んだ。

 

 

 

 

 

フェイトは一秒コンマという時間を犠牲にするがそれを逃さず追跡する。

 

バルディッシュを両手に深く握り、彼の後ろ姿を睨む。

 

彼のスーツの性能は知らないが恐らく水中に向けてさっきのビームを放ち、水飛沫を作って海中に入り深くまで潜りやり過ごす作戦だろう。

 

自分が海に入れない事だと彼は思っているが

 

デバイスは陸海空どんな場所でも使用できる道具で、彼女のデバイス『バルデイッシュ』はその中でトップに入る性能を持つ。

 

彼はここ(ミッドチルダ)に来てデバイスの事をよく知らない。

 

ならばこのゲーム、勝たせてもらう。

 

 

 

侵入角度を45度に固定しリパルサーの出力を100%に固定、目の前のターゲットを睨む。

 

前には海が、後ろには彼女(フェイト)が追う中、彼は考える。

 

彼女はこのスーツは万能だと思っているが、『マークⅡ』はあくまでテスト用のスーツで水中戦は想定していない。

 

ならば彼女の思い込みを利用させてもらおうか。

 

二つの策を使い果たした彼の頭にアイデアが浮かぶ。

 

 

 

 

海上から5メートル上空に達した所で行動(アクション)を起こす。

 

飛行翼としての腕をさらに後ろへ回し、噴射を掛ける。

 

その反動によって姿勢が前のめりになりゆっくりと回転を起こし宙を舞う。

 

歯を食いしばり、逆転のタイミングが来るまで姿勢を保持し続けた。

彼女の目から見ると挑発していると感じるが、こちらは大真面目にやっている。

 

素人がプロ随伴で初めてスカイダイビングを経験するごとく両腕を広げ

数値がどんどん減少してゆき、目標の高度へ近づくと海上のギリギリの所で

背部フラップと腕部リパルサーを稼動させ、強制停止を掛ける。

 

体に掛かるGを堪えながらブレーキ代わりにかざした両腕を思いっきり力一杯リパルサーを叩き放つ。

 

そこから湧き上がる水飛沫は想定を超え、彼女の身長の倍の壁を一瞬で構築した。

 

大量の水飛沫に彼女は襲われるが、それに臆せず彼を逃さなかった。

デバイスの水中戦の調整を瞬時に終え、軽く短い深呼吸をする。

 

任務や訓練で慣れた彼女にとって造作のない事だが侮ってはいけない。

呼吸を終え、彼の姿を目を凝らさず追う。

 

海に入り、深くまで潜水する彼の姿を次の場面に出ると彼女は予測する。

 

だが彼女は次の光景を見た瞬間、前言撤回を出した。

 

 

 

彼は海に潜らず、叩き放った場所の10センチ先にまだいたのだ。

 

その不可解な行動に彼女は一瞬で理解した。

 

水中戦は(ダミー)で空中戦を再度仕掛けるのだと彼女は意表を突かれてしまった。

 

彼の手と脚の光がより一層増し続け、背中のフラップが再度閉まり一体化をする。

 

頭を上に向ける姿はこれから起きる出来事を待ち構えているように錯覚した。

 

すぐに左手を彼の肩に掛けようと数センチの所で衝撃(ソニックムーブ)が発生した。

 

音と空気が交った圧が彼女に襲い掛かるに対し

 

瞬時にシールドを張り、衝撃を相殺させるが音の波と細かい水飛沫がシールドの表面を襲い、防ぎ切れなかった所から水滴が張り付いていく。

 

(……最後の最後までやってくれるね!)

 

ビリビリと体が振動を受ける中、すぐにシールドを解除し上空へ飛んだ。

 

 

 

 

 

彼は焦りを出した。

 

自分が考えたこの策に彼女はすぐに見破り、有無を言わせない状況で高速で追跡をしているのだ。

 

「メリル!あと何秒だ!?」

「あと120秒」

 

期限(リミット)が表示され、目を寄こす。

 

先程自分がやった行動は相当の無茶をしていた。

 

鉄に包まれた細身のスーツでマッハ6で飛行、体に掛かる無茶な機動

 

仕舞いには海上ギリギリでブレーキを掛け急上昇という自殺行為に近い行動をしたのだ。

 

(スーツに搭載されている変換器の恩恵である)

 

テスト機ながらも耐えてくれた事に評価したいが、問題がまた発生した。

 

 

 

「…コイツに氷結対策は施されたっけ?」

「カイリー様。世の中そんなに都合良くなるわけありません」

「だよねェ!」

 

メリルが冷静に返す言葉にまたまた焦る。

 

今、自分が装着しているスーツに偶然氷結対策を施してある素材を使用してあるわけがない。

 

現在高度は20000フィートだがマッハ6で飛行している彼には時間の問題である。

 

このまま上昇すれば氷結を起こし、次第にシステムが機能不全に陥り地上へと落ちてしまう。

 

幸い飛んでいる場所がコンクリートジャングルによって造られた大地ではなく底が深い海の上だが、仮に落ちてしまったら溺れて死ぬオチである。

 

どうにか出来ないか代替案を考えるが、そうしている内に彼女が姿を現し、徐々に距離を摘んでゆく。

 

(これじゃ後戻りは出来ねぇ………?)

 

豆電球のフィラメントに熱が灯りそこから発電するようにアイデアが出現した。

 

この発想の出現によってどちらに軍配が上がるか

 

ここで決まった。

 

 

 

「Sir The problem occurred.」

(サー、問題が発生しました)

「どうしたの!?」

 

急上昇している彼と同じように追跡しているフェイトにバルディッシュから報告が入る。

 

「The place which analyzed the suit which he has carried, and that suit are using iron for a material」

(彼が装着しているスーツを解析した所、あのスーツは素材に鉄を使用しています )

 

「鉄?」

 

バルデイッシュは私にジョークでも言いたいのだろうか。叱咤しようとすると

 

「He may fall in case of as it is!」

(このままだと彼は墜落する可能性があります!)

 

「ど、どういう事?」

 

「Sir Do you know critical elevation of the airplane ? 」

(あなたは飛行機の限界高度を知っていますか?)

 

バルディッシュから出された質問に戸惑ってしまい、分からないまま頷く。

 

「By 12000 m and fighter, as for the common passenger plane, the reconnaissance plane "blackbird" in the world of the twice and his is recording 85000 feet」

(一般の旅客機は39369フィート、戦闘機ではその倍、彼の世界の偵察機『ブラックバード』は85000フィートを記録してます)

 

いきなりの言葉に頭上に次々と(クエスチョン)が出現し混乱する。

 

そこから長い長い知識の語りが始まり

 

空気の関係や自然の法則、その他うんぬんかんぬんなど大学のつまらない講義を聞かされる学生の気分だ。

 

飛行中にこんなモノ聞かされたら青筋が出来てしまう。

 

「要点だけ言って!」

「If he continues a rise as it is, a freezing phenomenon falls into the whole suit at generating and malfunction, and there is possibility of the worst and death from a fall. 」

(このまま彼が上昇を続ければスーツ全体に氷結現象が発生、機能不全に陥り最悪、墜落死の可能性があります)

 

いつまで経っても終わらない説明にキレ、要点だけ言うよう命令すると簡潔にまとめてくれた。

 

通信を開き、彼が聞いていない事を分かっていながら説得を試みるが出てこない。

 

このままでは彼が死んでしまう。

焦りながら何度も警告を呼びかけるが返事が来ない。

 

フェイトは困っている人を放っておけない世話好きで優しい女性だ。

 

彼女の執務官としての働きぶりに周囲からデキる女兼将来期待できる人材と評価されている。

 

今まで自分が見た中で彼は特異な存在でヒーローで型破りな行動をする彼を六課の貴重な戦力と認識していた。

 

なのはやはやてが注目している彼を死なせるわけにはいかない。

 

「バルデイッシュ!あの形態(モード)でいくよ!」

「Yes sir!」

 

 

 

 

 

 

 

「カイリー様。目標高度まであとわずか」

「…スーツの状態は?」

「まだいけます」

 

高速で上空へ急上昇するカイリーはチャンスを待つ。

 

通信から彼女の声が何回も必死に警告を発する。

 

このまま飛べば機能不全になると気づいたのかと彼は考えた。

 

通信を切り、前に目を向けるとそこには黒い海に月と無数に輝く星が点々とする空がいた。

 

子供になっても今になっても見上げているあの空だ。

 

あの星に触りたいと手を伸ばそうとするが上昇機動をずらしてしまう。

 

今はゲームの真っ最中で彼女が光に包まれながら急上昇中している事を思い出した。

 

「あと40秒」

 

この言葉に彼は現実に引き戻されると同時に気を引き締めた。

 

 

 

 

 

「カイリー!止まって!」

 

マントとバリアジャケットを解除(パージ)し、インパルスフォームから防御を捨てた真・ソニックフォームへ換装した。

 

彼女の特徴を生かしたこのモード(形態)ならすぐに追いつける。

 

現在高度は35000フィート、彼は依然と速度を変えず急上昇を続けている。

 

ここで捕らえる事が出来たらこのゲームは終わる。

 

38000フィートでたどり着き、視認した。

 

この空間でデバイスがどこまで持つか

 

管理局が住民からの通報を受け出動態勢に入ったのか、彼は無事なのか

 

多くの不安定要素を残したまま接近を開始した。

 

 

 

 

 

 

「5」

 

ガントレットに包まれた彼女の右手がこちらに近づく

 

「4」

 

それを角度をずらす事で回避、距離を離す

 

「3」

 

それでもあきらめない彼女は再び接近するが両手のリパルサーをそのまま掌を返すように向ける

 

「2」

 

反射でシールドを張り、彼の攻撃を防ぐようにするが肝心の攻撃が来ない

 

「1」

 

よく見るとすぐに発射せず溜めていると彼女は気付きバインドを仕掛けるが時すでに遅し

 

点火(NOW)!」

 

そのリパルサーは彼女を攻撃するためのリパルサーではなく姿勢制御のリパルサーなのだ。

 

掌から溜まったリパルサーを彼女に当たらぬよう発射、その反動によって体が180度回転し、体位を逆転させた。

 

星が浮かぶ夜空から多数の雲海の中からネオンがはみ出る街へ視界が変わる。

 

重力によって感覚が引っ張られるのを理解するとすぐに腕と脚を整えリパルサーを一気に放出させる。

 

その時、彼女はかすかに彼の言葉を聞き取った。

 

―――ROCK(サイコ―)

 

 

 

 

 

 

 

「お見事です。あなたの勝ちです」

「お前のおかげだよメリル。自分を誇れ」

「ありがとうございます。ですがその前に―――」

 

主人の褒め言葉を受け、丁寧に応対する彼女だが途中で言葉が変わる。

 

この競争に勝ったのはいいがまた新たに別の問題が浮上した。

 

それは―――

 

「この状況をどうにか切り抜けなければ」

 

「…綺麗事言ってる場合じゃないよな!」

 

幸運にも氷結は少量で済んだが今までの行動によってスーツが耐えられなくなり、システムダウンと同時に重力に従い急速に落下していった。

 

右往左往に手をバタバタさせリパルサーを起動するがショートしてしまい少量しか点火しない。

 

ぐるんぐるんと体が回りどこが上でどこが下なのか平衡感覚が判断出来ない。

 

ディスプレイに警告表示が鳴り響き、何も出来ないまま落下してゆく。

 

(……何となく分かる気がした。パラシュートが絡まったままからの脱出装置の起動って)

 

最後になるかもしれないジョークを心に呟きながら何回も点火を続けようやくリパルサーが起動、システムが復帰し体勢を整えるべくフルパワーで蒸かす。

 

高度メーターがゆっくりと下降し制御が落ち着いていくがまだ不安定だ。

 

(深呼吸…深呼吸…)

 

命の灯が消えかかるようにリパルサーがバチバチと消えかかる。

 

消えないようそれを切に願うが音が消え始めついに消えてしまう。

 

 

 

 

 

海に叩き付けられるのを覚悟し目を瞑るがそうはさせんと衝撃が左手に走った。

 

目を開け左手に向けるとマントを羽織った姿に戻り必死に右手を伸ばし掴んだフェイトがいた。

 

鋼鉄に包まれたスーツを落下させまいと必死に繋ぎ止めようとしているのだ。

 

それを目にした彼はすぐに残りのリパルサーの再起動を実行し、ゆっくりと上昇しながら浮上する。

 

掴まれた左手のリパルサーも回復し始め、問題なくたどり着いた。

 

 

 

 

 

 

「…持つべき物は友ってヤツ「何考えてるの!心配したんだよ!」

 

掴んだ左手を離し、いきなり怒鳴り始めた。

 

それもそのはずこんなにハラハラさせたのは彼のせいだ。

 

「もう少しで死ぬ所だったんだよ!?少しは自分の命を大切にして!」

「人生山あり谷ありだ。そいつは無理」

「おまけにこんな時間に起こさせてまだ眠たいんだよ!?」

「管理局はサービス残業が日常か?労働組合に入って訴訟を検討してみろ。ガッポリ取れるぞ」

「少しは私やなのはとはやて達の事を考えて行動して!」

「いつからアンタらの恋人になった?」

 

そこからギャーギャーと口論を時間を忘れるまで二人は火蓋を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言っておくがこのゲームはオレの勝ちだ!――――このクソアマ!」

「だから君には少し――――ってクソアマ!?」

 

いつの間にかお互いの悪口を言い合っているようになりお互いの内心も疲れていた。

 

喧嘩をするほど仲がいいと言うがこれはその一つに入るのか誰にも判断できない。

 

息をゼーゼーと切らしながら両者は思う

 

(喉が枯れてきた…)

(何かいろんな意味で発散したような…)

 

これ以上何を言っても無駄だと悟った二人はその場で口を閉ざした。

何かいい方法はないかとカイリーは周りを見渡すがすぐに目に付いた。

フェイトも彼が空を見上げている事に気づき彼女も見上げると理解した。

 

 

真っ黒に夜空に浮かぶ月を背景にあちこちと星が点々と輝き

ミッドチルダのネオンを覆う雲海を下に二人はさっきの喧嘩を忘れるほどの迫力に見入っていた。

 

 

 

 

「きれいだ…」

 

二人しかいないこの場でぽつりと漏らす。

 

「えっ…!?」

 

彼の言葉の意味を理解したフェイトは赤らめていた。

 

テレビや映画でこういうの展開を何回も目撃したことがあるが

まさか本当に起こってしまったのかと自分で作り出した妄想の域に入った。

 

「ち、違う!そのつもりで言ったんじゃない!」

 

慌てて弁明するが彼女の顔は依然変わらずどんどんと赤くなっていく。

 

それに便乗するように彼女達が騒ぎ始めた。

 

「リンゴみたいに真っ赤っか」

「いっちゃえいっちゃえ♪」

「青春です~」

 

「わ、ワル乗りすな外野!ブロンドより黒髪ロングの方がマシだ!」

 

後から来るヤジの言葉が飛び交い、すぐに通信を切った。

 

(まったく…どうも好きにはなれん)

 

悪態をつきながら彼女へ顔を向けた。まださっきの言葉を忘れず赤くなっている。

 

「…スマン」

「…///」

 

「…口を閉じたままでいいが聞いてくれるか?」

 

「あ……ご、ごめん!」

 

彼女は赤くなった顔を直し、頬をパンパンと叩き気持ちを整えた。

 

「OK?」

 

こくんと彼の返事を頷き、場が整った。

 

真面目に戻った彼女の顔を見て口を動かした。

 

「…エリオの事だが」

「エリオ?あの子に何があったの?」

 

 

 

「何でアンタを慕っているのかようやく分かったよ」

 

 

 

 

 

『ミュート』と書かれたパネルを押し映像から音声が消される。

 

横を見ると少し暗い苦笑いで微笑んだはやてがいた。

 

シャリオは彼女の様子を察し、問わない事にした。

 

それを合図したようになのはとリィンもお互いに頷き、沈黙を見守る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…まぁざっとこんなモンかな」

 

エリオが自分に親をヒーローに持つ事、自分の出生、そしてフェイトを慕う理由を包み隠さず洗いざらいに話した。

 

その事に彼女は表情を少し変えるが、話を聞き終えるといつもの表情に戻る。

 

エリオの話題を出すと顔が曇るほど表情を変えるという事はそれほど大事にしていると彼は理解した。

 

ようやく彼女の重い口が開いた。

 

「…エリオの事、どう思ってるの?」

「…変わらんよ。アイツがクローンだろうが何だろうが一人の人間である事に違いはない」

「…ありがとう」

 

彼女の問いに気持ちをそのまま出すと彼女は微笑んだ。

 

心の重荷が消え、気分もスッキリしたように見えた。

 

「…質問」

 

左手をバランスよく整えながら右手を上げる姿は実にシュールで面白味のある姿だ。

 

「アンタが来たって事は…アイツ相当キテいるか?」

「キテいる…?はやてはそんなに」

 

フェイトは言葉をそこで止め、考えた。

ここで少し捏造すれば少し反省してくれるのではないかと

 

すかさず言葉を考えるが、中々出てこない。

 

 

 

「そ、そうだよ!はやてはもうご立腹だよ!カンカンだよ!」

 

(バレバレだ…)

 

はやての気を知る事は出来ないがさっきの発言ですぐに分かった。

腕をブンブンと回しながら怒っている姿に呆れてしまうが

 

(…かわいいから乗ってやろう)

 

 

 

 

「…んじゃ帰るか」

 

「ま、待って」

 

突然左手を掴み始めその場で動かなくなった。

 

「何だ?」

 

「スーツ、不安定でしょ?け、牽引するから掴まって」

 

「大丈夫だ。当分は持つ」

 

「いいから」

 

「だから大丈夫だ。貸さなくてもいい」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「…ではお手を拝借」

 

彼女の目に負け右手を深く握りしめ、来た道を戻るように二人は飛んだ。

 

 

 

 

フェイトは頬を少し赤く染め、ぷいっと首を動かしひたすらにまっすぐだけを見た。

 

彼はエリオの事を理解してくれた。

忌まわしき過去を持った彼を理解できる人が増えた事で彼女は嬉しかったのだ。

自分もクローンという運命を持ち、道も分からずにただ親の命令だけに従いジュエルシードをひたすら集めていた。

 

その渦中で自分と同じ年の少女と出会い、お互いのジュエルシードを掛けて戦い、大切な宝物(友達)を手に入れた。

 

そこから家族や学校、自分の知らない知識など多くの経験を学び共に歩んだ。

 

今回このゲームで負けたが学ぶ物を多く得る事が出来た。

彼が勝ったのになぜ話してくれたのはそれほど自分に話したかったのだろう。

不器用だが彼の思いが届いた事を彼女は理解した。

 

いずれ自分の事を話す時が来るだろう。

 

そこから出るのは鬼かそれとも蛇か

 

少なくとも希望に傾く事にフェイトはそう確信していた。

 

 

 




Ms.マーベル:飛行能力・超人的体力・怪力を持つヒーロー。
黒と黄で構成されたコスチュームが特徴。本名キャロル・ダンパーズ 

マーベルガール:ジーン・グレイのコードネーム。その娘レイチェル・サマーズも

マーベルボーイ:ダークアベンジャーズに参加したノヴァに与えられたヒーローネーム
キャプテン・マーベル:キャロルに力を与えた張本人兼恋人。赤と黒に星を追加したコスチュームが特徴

こんなにあったら覚えられねェンじゃねェの?
ところがどっこい!もう一人存在します!

キャプテン・マーベル(DC):シャザムと呪文を唱えると稲妻模様が書かれた赤いスーツに白いマントを纏うヒーローに変身し、6柱(ギリシャ神話の神々)に与えられたパワーを使う。


ちなみにMARVELとは脅威、不思議の意味。ワケ分からん

前回より二ヶ月も間が空いちまったケド感想批評ヨロシク頼むぜェ!

(あ、オレちゃんの事も書いてもイイよん)
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