GOD EATER ~Disturbed View ~ 作:羅偽
よろしくお願いします。
ー 西暦 二〇七四年、ロシア ー
荒廃した大地には音が響いていた。
人の耳を癒すクラシックの音楽ではない、
命のやり取りの音だ。
突如発生した単細胞生物の集合体、『アラガミ』。
一つ一つが生き物で、考え、捕喰するという『オラクル細胞』から出来ており、一つ一つが自らを脅かす人間の兵器に対抗できる方法を思考し、学習を繰り返した結果、通常の兵器の効かない神々が誕生した。
彼らは今でも進化を続けている。
そしてこのアラガミ達を葬る唯一の武器 、それが
『神機』だ。
神機はオラクル細胞を埋め込まれた生体兵器で、アラガミを形成するオラクル細胞の結合を断つ事が出来る。
そしてその神機を扱える人類の希望を、『ゴッドイーター』と呼ぶ。
ロシアの荒野に響いていたのは、ゴッドイーターと、アラガミの戦いの音。
アラガミは数匹の群れ、雷と素早い動きで翻弄する虎型のアラガミ『ヴァジュラ』や、恐ろしくも美しい姿と惑わす動きから毒、光撃、不可侵域を作り出す『サリエル』と小型のアラガミが統率の取れた動きでゴッドイーター達の命を奪わんとする。
こちらの人数は三人。
『剣形態』と『銃形態』を切り替える事の出来る『新型神機』使いと、中、近距離での射撃が得意な『アサルト』の銃形態だけの『旧型神機』使いが二人。
数で負けるゴッドイーター側の劣勢ではあったが
少しずつ盛り返しては来ている。
「よし、このままなら勝てるぞ。皆気を抜かずに守りの姿勢を続けるんだ!」
新型神機で、攻防一体の『刀身』、『ロングブレード』を振るう少年はそう言った。
まだ幼さが残っているが、仲間の長所を活かした戦術は、周りからの定評がある。
「確かに小さいのはあらかた片付いて来てるわ、今日は夜通し飲もうかしら。」
アサルトから『バレット』を掃射し、小型アラガミを一掃していく女性は余裕を見せながら言う。
三人の中で一番のキャリアを持つからこそ、持久戦の気配りを知っていた。
「これじゃあ援護の神機使いが来る頃には終わっちまうんじゃねぇか?『新型』だっつってたが、面識の無い奴が一人増えただけじゃ、あんまり意味無いしなぁ!」
先程の女性とは違い、動き回りながら至近距離でアラガミにバレットを撃ち込む青年は言った。
まだまだ危なっかしい所があるが、確立された戦闘スタイルは、ベテランの動きその物だ。
三人は個々の能力も高く、ロシアの神機使いの部隊としては五指に入る程になってきていた。
いつものチームワークで、流すようにしっかりと敵アラガミを掃討していった。
三人が最後のヴァジュラを倒し、トラックのような巨駆が倒れ、三人の顔に達成感と安堵が映った時だ。
赤い異端が三人の絆を嘲笑うかのように引き剥がした。
アサルト使いの青年の体を謎のアラガミが吹き飛ばしたのである。
「どうして…!?この地域では暫く目撃例が無いのに…!」
女性は声を上げる。
アラガミの正体は、その翼で空を駆け、掌から超高温の火球を放つ鳥人型アラガミ、『シユウ』の中でも危険な《禁忌種》と呼ばれる、『セクメト』。
エジプトのアヌビス神を連想させる華やかな装飾と狼のような顔。
そして人の女性のような赤黒い胴体のシルエットに、真っ赤な両腕羽。マグマの使いのようである。
「とにかく火球を食らうのは危険だ、ゾーアンが復帰するまで二人で持ちこたえよう!」
新型の少年はアサルト使いの女性にそう言うと
セクメト の懐に踏み込み、連続で切りつける。
ロングブレード特有の高い切断攻撃を流れるようにセクメトに浴びせていく。
「ゥグォォオゥオオア!」
さすがの禁忌種も、歴戦の賜物であるこの攻撃には仰け反る。
「頭がお留守よ、食らいなさい!」
女性の撃ったバレットはシユウ系アラガミ共通の弱点、頭部へと美しい軌道で向かい、セクメトの頭に当たると爆発する。
しかし、セクメトは並のアラガミと違い直ぐに二人に反撃を仕掛ける。両腕羽を広げ、叩きつける姿勢を取る。
(衝撃波か…ならその後に剣を届かせられる間合いまで離れよう。安全な筈だ。)
少年がセクメトの正面で、セクメトを囲うように発生した衝撃波を避けたとたん、少年の足元が震える。
「なっ…!?」
セクメトの衝撃波攻撃は、普通のシユウ種よりも、四方向に延びる。彼はロシアでは接触の機会が無いセクメトの攻撃を把握してはいなかった。
ダメージを食らい、怯む少年に、セクメトの腕が襲い掛かる。
「っ…危ない!」
アサルト使いの女性が少年を押し退けるようにセクメトの眼前に飛び出す。
それでも、赤い衝撃は二人を容赦なく射止めた。
「がはぁっ!…」
二人まとめてセクメトに殴打される形となって、吹き飛ばされる。
「ぐっ…これはかなり痛いのを貰った、動けないや…それに、ゾーアンは…」
少年は傷を負ったまま立ち上がろうとしつつ、アサルト使いの青年を探す。
僅かな期待を持った彼を、現実は無慈悲に突き放した。
ゾーアンと呼ばれたアサルト使いの青年は、息苦しそうに地に横たわっていた。
背中から血が溢れ、目も虚ろ。
長くに渡り共に戦った友の負傷に、体は勝手に動いていた。
だが、ゾーアンに駆け寄ろうとしたのと、セクメトが火球を作ろうとしたのが重なり、少年は足は止まった。一刻も早くゾーアンを助けたい、しかし火球をゾーアンから放さなくてはいけない。
若さはここで彼の足を引く。
(俺は…俺は…仲間も救えないで…!)
死を確信した少年が後悔を始めた時、
一つの弾丸がセクメトの頭を射抜いた。
少年達の使う神機の弾丸、しかしこの弾の速さは、長距離で真価を発揮する『スナイパー』のバレット。
怯みふらつくセクメトの頭を、また一発、一発とバレットが追いかける。
ゾーアンに駆け寄り容態を確認しながら、バレットが来た方を見る。
青年がこちらに歩いてきていた。
黒いコート、それは汚れ一つなく。獲物を遠くから仕留める事になれている彼を全て語ってくれているようだった。
そして、長くも爽やかなイメージを与える銀の髪。
ターコイズの瞳は無邪気に光る。
青年は言った。
「あれ~?大群、みたいに聞いてたからもっと多いと思ったんだけど。一匹?やっぱり空にいるのを片付けてからくるのが時間かかっちゃったっぽい?」
三人が見る中、明るく青年の言葉は続く。
「俺はフェンリル本部直属緊急人員派遣特殊部隊、画像荒い団の、菊。部隊の名前は長いけど、俺の名前は短いから、覚えてよね。よろしく!」
ー これから始まる。
どうでしたか?
感想等あればどうぞご自由に仰ってください。