そんな第6話です! どうぞ!
デスゲームが始まり、二週間が経った。
俺達3人のレベルは9まで上がり、そして昨日発見した【迷宮区】に向かっているところだ。
迷宮区とはアインクラッドの各層に必ず存在し、ここを突破しなければ次の層に行くことはできない。名前の通り複雑な構造をしたダンジョンになっている事が多く、また迷宮区の最後にはフロアボスという最後の関門がある。
フロアボスはその階層の守護者のようなもので、もちろん倒さなければ次の層に行くことはできない。
そしてフロアボスの強さは今まで戦ってきたモンスターとは次元の違う強さをもつ為、挑む際は6人パーティ×8の48人のレイドパーティーで挑むのが主流だ。
こんな偉そうに説明する俺だが・・すべてキリトさんの受け売りだけどね! てへっ
「今日から迷宮区ですね・・・。緊張します・・」
「ああ、でも新しいモンスターとも戦えるし、俺は楽しみだ!」
「そういうりっくんのポジティブなところ羨ましいです・・」
「二人とも、今日の迷宮区の事だが、ここではコボルト族というモンスターが出現する。こいつの攻撃パターンをしっかり学習してくれ、第一層のフロアボスはコボルト族だからだ」
流石キリトさん! 本当頼りになります!!
そんな事を話している内に、俺達は迷宮区に到着した。
が、すでに先客がいるのかモンスターが少ない。また道中の宝箱も開けられているものばかりだった。
「てっきり俺達が一番のりだと思っていたんだけどな」
「俺たちはキリトさんがいるから効率よく進んでいるけど、実際3人だけのパーティだし、もっと大人数のパーティで攻略してる人達には負けているのかもしれませんね」
「モンスターが倒されてから再ポップもしてないくらいなんで、近くにパーティ組んだプレイヤーがいるかもしれませんね〜」
そんな事を珪子が言っていると、本当にプレイヤーと遭遇することになった。
だが、そのプレイヤーは大人数どころか・・・一人しか見当たらない。
まさか・・ソロなのだろうか? このデスゲームをソロで攻略するリスクを分かっているのだろうか?
まぁ、それを可能にしているくらいだし、きっとβテスターなんだろう。
そんな風に気楽に考え、そのプレイヤーに俺達は近づいていくのだが・・。
えっ!? HPゲージが赤い? しかも戦闘中だ・・危険すぎる。しかも相手モンスターのHPはほぼ満タンじゃないか!
だがそのプレイヤーは逃げる事も回復する事もせず、そのままコボルト族【ルインコボルト・トルーパー】と戦い続けようとしている。
いくらなんでも無謀すぎるだろ・・・。防具だってフード付きのロープを装備しているだけだ、一撃でも喰らったらあの世生きだ・・。
当然キリトさんもそう思ったようで、すかさずそのプレイヤーのところに駆けつける。
ルインコボルト・トルーパーがプレイヤーに向かって振り降ろした斧を、駆けつけたキリトさんが割り込み、斧をパリィで跳ね上げコボルトの隙を作る。
そこに後ろから走ってきた俺がソードスキル【アバランシュ】を発動し、走った勢いのまま横に一閃。アニールクレイモアで薙ぎ払う。
止めに珪子の短剣ソードスキル【クロスエッジ】をコボルトの首に命中させる。
獣人型モンスターの弱点は首だ。これもキリトさんの教えだが、珪子は忠実に守っていた。
俺は守らないのかって? もちろん俺は弱点を切り付ける程の技術はもってないぜ! ははは…
ルインコボルト・トルーパーは弱点にソードスキルを打ち込まれた事により、HPゲージを残す事無くポリゴンと化し爆散した。
「大丈夫だったか?」
キリトさんはプレイヤーに声をかけるのだが・・・その返事は信じられないものだった。
「余計な事を・・・・」
なんなんだこいつは・・? 助けてもらってお礼もなしだと・・・。それにフードをかぶったままで目も合わせようとしない。
「ちょっとあんた! そんな言い方はないんじゃないか? 横入りしたのは悪かったかもしれないが、ピンチだったじゃないか!」
俺は頭に来ていたのか、気付いた時には思った事を口にしていた。
「関係ない。あなた達がいなくても別に倒せた。仮に倒せなかったとしても、私はそれまでだってこと」
こいつ・・・とことん頭に来る奴だな~おい!
俺の怒りが有頂天・・じゃなくて頂点に達するのを見越したのか、珪子は俺をなだめつつ、この糞プレイヤーに声をかけた。
「あ・・あの、なんでそんな危険な戦い方するんですか? 周辺のモンスターは今倒したコボルトしかいませんでした。距離をとって回復するなり、逃げるなりしないのはなぜですか?」
「私は遅れを取り戻さないといけない」
プレイヤーはそう言うが、意味が分からない。
「遅れ?」
おれが聞くとプレイヤーは話し出した。
「そう・・。私は茅場晶彦のデスゲーム宣言を聞いたあと、ショックと恐怖で始まりの街から何日も動けずにいた」
「でも私はそんなところでじっとしている為にこの世界に来たんじゃない。現実世界からも逃げて、さらにこの世界で逃げては行けない事に気づいた」
「私は始まりの街に留まっていた時間を取り戻す」
…話してくれたのはいいが・・断片的過ぎて俺には言ってる事が理解できない…
さらにこのプレイヤーは、赤ゲージのHPを回復もせずにダンジョンの奥に行こうとする。
「お、おい、ちょっと待てって! HPくらい回復していかないのか?」
「必要ない。もうここのモンスターの動きは見切ったから、ダメージを喰らう事は無い。回復する時間の無駄」
何を言っているんだ・・・? この言葉が本当ならすごい事だが・・だからといってHPを回復しない理由にならない。こんな恩知らず放っておきたいが、実際に死が掛かっているので無視することは出来ない。
どうすればこいつは納得して自分のHPを回復してくれるのだろう・・?
そんな事を考えていたのだが、不意にキリトさんがプレイヤーに声をかけた。
「へぇ~。その自信は大したもんだ。是非その腕を見せてくれよ」
「別にいいけど」
その返事を聞いたキリトさんはメニューを操作しだす。何をするんだろ?
・・・なんとこのプレイヤーにパーティー申請をしていた!
いや・・キリトさん・・・この人の暴走を止めるにはいい考えですけど・・。俺達、この人とパーティ組むの・・?
プレイヤーは迷っていたが、YESのボタンを押したようだ。
すぐに目の前のパーティーメンバー表示に新しい名前とHPゲージの表示がでる。
えっと・・名前は【Asuna】?
アスナ??
「え? 女性プレイヤー?」
俺は思った事をそのまま口に出していた。
「そうだけど何か?」
冷たい声で言われる・・・。フードをかぶっていて目が見えないのが逆に怖い・・・。
「い・・いえ、何でもないです・・・」
俺は萎縮してしまい、それまでのタメ語が嘘のように敬語になってしまった。なんとなく年上っぽい雰囲気だし敬語でもいいのだが・・。なんか悔しいぞ・・。
「はぁ・・女って分かると男はすぐ態度変えるよね・・。このゲームの攻略に男も女も関係ないはずなのに、女ってだけで、パーティに誘われたり食事に誘われたりする。本当に面倒よ。このフードも声をかけられない為の予防でかぶっているの」
アスナさんは珪子の方を見て話をつづける
「あなた可愛いんだから気をつけなさい。変な男に絡まれるわよ。もう絡まれた後かもしれないけど・・」
そう言うと今度は俺の顔を見た。
あら~・・・アスナさんの中で、俺はすでにそういう格付けですか・・・そうですか!!
そんな事を思っていると、珪子が俺の耳元に近づき、小声で話しかけてきた。
「りっくん。アスナさんってちょっと怖いけど、良い人そうだよ。私の事可愛いって言ってくれてるし」
珪子・・・お前は自分の事可愛いって言ってくれる人なら誰でも良い人って言いそうだな・・・。
さて・・パーティ組むからには、アスナさんとちゃんと話をしてみよう。気まずいままなのはイヤだしな。
珪子の事を心配してくれるくらいだ、きっと悪い人じゃない・・・・はず。
まずは俺の誤解を解く事からしよう。
「アスナさん、俺は確かに女だと知らなかったから最初はあんな言い方だったかもしれません。そして女と分かって口調を変えた。それも事実です。でも、俺はあなたが不快に思うような事は絶対にしません。それは保障します。シリカが!」
「えっ!? 私が保障するの? っていきなりここで私にふるの!?」
珪子はとっさにふられた事によりどぎまぎしているが・・俺の期待に応えてくれる・・・
「えっと・・こう見えて頼りになるんですよ!・・たぶん? しかも優しいんですよ!・・・時々? 他には・・・」
はずがなかった・・・・・・。
「うぉい! なにその逆に不安にさせるような保障! しかも褒めた後が全部疑問形になってるし!」
「ぷっ・・あははははは!」
なんとあの冷徹女が笑った・・?しかも意外と可愛い笑い声だ。
「君達面白いわね。ところで君、私の名前呼んだけど、どうして分かったの?」
俺の顔を見てアスナさんは尋ねる
「自分の目の前の左上側って言えばいいのかな…そこにHPゲージと名前がありませんか?」
アスナさんは目を凝らすような素振りを見せると、微笑んだ。と言ってもフードを被っているから口元が笑ってるくらいしか分からないが。
「な~んだ。こんなところに書いてあったんだね。あはは!」
やはりこの人は笑い声が可愛いな。最初の冷たい印象が嘘みたいだ。
俺は二回も笑ったアスナさんに驚いていたが、次の瞬間もっと驚く事になった。
「もう名前は知ってると思うけど、改めて自己紹介するわ。私はアスナ。パーティ組むのは初めてだけど、よろしくね」
そう言うとアスナさんはフードを外し、初めて顔を見せてくれたのだが・・・・
綺麗だ・・・・・
栗色のロングヘアー、小さい顔、なのに大きい瞳。作ったアバターじゃないのか・・?そう思える程綺麗だった・・
俺は見惚れてしまっていた。
「りっくん?」
アスナさんが俺に向かって自己紹介しているのに対し、返事をしない俺を珪子は不思議に思ったのだろう。珪子に声をかけられ、俺はぼーっとしていた事に気付いた。
「あ、ああ・・俺の名前はリッキーです。よろしくお願いします」
「私はシリカって言います。よろしくお願いします」
「俺はキリト。強引にパーティー誘って悪かった。しばらくの間よろしくな」
俺達3人は自己紹介をした。
「パーティ組むからには俺達がアスナの足を引っ張ってしまうかもしれない。念のため、回復ポーションは飲んでくれないか?」
流石キリトさん。回復させる為の口実がうまい。
それにこんな美人さんを目の前にしても動じていない・・しかも名前をもう呼び捨てとは・・・凄いな。
「ええ・・分かったわ」
アスナさんはポーションをオブジェクト化し、飲んでくれた。これで一安心だ。
その後は4人で迷宮区の奥に進んでいく。
アスナさんの「攻撃は見切った」という言葉は事実だった。
ルインコボルト・トルーパーの攻撃を全てかわしている。さらに交わしたあとはコボルトの首に細剣ソードスキル【リニアー】をお見舞いする。
リニアーは単発技だが、かなりの高威力だ。しかも弱点の首に当てた事により、ルインコボルト・トルーパーのHPゲージは残り1割といったところだ。
さらにコボルトはリニアーを弱点に受けた事によりひるんでいる。すかさずアスナさんは再度ソードスキルを発動しようとするのだが、それを見てキリトさんは指摘する。
「アスナ、相手のHPはもうほとんどない。ここでソードスキルを使ってオーバーキルする意味がない。万が一かわされた場合、ソードスキルの硬直がリスクになるぞ」
その言葉を聞き、アスナさんはソードスキルをキャンセルする。そして未だひるんでいるルインコボルト・トルーパーの首に向かって細剣で通常攻撃の突きをしたのだが・・
突きが早すぎる・・・。目で追えないなんて事、本当にあるんだな・・・。
首にさらに高速連打の突きを受けたルインコボルト・トルーパーは、動くことなく絶命した。
「これは想像以上の腕だな・・。βテスターじゃないというのが信じられないくらいだ」
キリトさんの言葉に俺もうなずく。
そう、アスナさんはβテスターじゃない。まぁ・・パーティ組んだ時の名前表示も知らないくらいだからな・・・。βテスターのわけがない。でもこの動きを見てしまうと・・経験者じゃないというのが逆に信じられない。
その後もテスターじゃないという事がはっきりしていく。
なにせ≪スイッチ≫の事も全く知らなかった。スイッチは戦闘の基本中の基本だ。(キリトさんの受け売り)
そしてアスナさんの一番驚くべき事は・・・その吸収力の早さだ。
スイッチについてキリトさんがアスナさんに一度だけ説明すると、すぐさま実戦で試すのだが・・。
すでに問題のないレベルでスイッチが出来ている。
キリトさんがモンスターにソードスキルを決めると、キリトさんのスキル後の硬直を守るかの様にアスナさんがスイッチする。基本的なスイッチのタイミングなのだが、キリトさんはスイッチのやり方しか説明していない。タイミングについてはアスナさんが自分で判断してやっている。
一度の説明でアスナさんはスイッチの概要を理解してしまった。
既に俺よりもスイッチのタイミングとやり方がうまいんじゃないだろうか・・。
恐ろしい才能だ・・。
俺はキリトさんに筋がいいと言われ、自分自身でも〈俺は才能あるかも?〉っと調子にのっていたと思う。
でも、その自信は今日打ち砕かれた。アスナさんの前では俺の才能なんてたかが知れている・・。
だからといって俺にショックはない。それよりも俺はこの人のこれからの成長を見て行きたい。
出来ればこのまま4人でパーティを組み、アインクラッドを攻略していきたい。そう思っていた。
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俺達は今日の探索を切り上げ、【トールバーナ】の町にいる。
迷宮区の攻略は、時間にして8時間程探索した。俺達3人のレベルもついに10の大台にのった。しかしアスナさんのレベルはまだ8・・。出会った時はレベル6だっと言う・・。この人は本当・・どれだけ無謀なんだ・・。
フロアボスに挑むには、本来レベル10もあれば十分らしいのだが、絶対死なない為にはレベル15は欲しいとの事だ。またレベル10を超えると次のレベルアップに必要な経験値も跳ね上がるとの事で、15にするには2週間近くかかるとキリトさんは言う。
今日は8時間も迷宮区のマッピングを行ったわけだが、キリトさんの話だとこのペースでも2週間近くかけないとボスフロアを見つけることは出来ないだろうとの事だ。それだけ攻略をしている人数が少ないんだろうな・・・。現実の死がかかっているわけだし・・。仕方がないか・・。
それにしても・・どれだけ広いんだよ迷宮区!!
でも考え方によっては、2週間かければレベルの安全マージンも確実なものになる。俺は良い方向に思うようにした。
町に戻って来たあとも、意外な事にアスナさんは俺達とパーティを組んだままだった。アスナさんの性格からして、探索を終えたらすぐにでもパーティから抜けるものだと思っていたからだ。
そしてこれから4人で夕飯にするわけだが・・この町はレストラン等の飲食店がない。SAOの世界では食事をしなくても餓死する事はないのだが・・・・空腹感は存在する。我慢さえすれば何日食事しなくても大丈夫なのだが、俺には我慢がとてもじゃないができない。
「仕方ない、あそこの露店でパンを買おう」
キリトさんが指さした方向に小さな露店がある。
「あ~あのお店ですか・・・。あのお店のパン見たんですが、黒パンしか売ってないんですよね・・」
珍しく珪子が不満を顔に出している。
む? このタイミングは≪珍子≫と呼ぶ絶好のタイミング!
だがその言葉を口にすれば、確実にアスナさんはパーティから抜けていくだろう・・。俺は残念に思いながらも珪子の言葉に答える。
「黒パンか~・・まずいんだよな・・・。パサパサしてるし、喉は乾くし・・」
「まぁまぁ、食事が出来るだけありがたいと思おう。俺がみんなの分を買ってくるよ」
そう言うとキリトさんは商店にパンを買いに行った。
「アスナさんは黒パンを食べた事ありますか?」
「ええ・・。一度食べた事あるけど・・。あれを食べるくらいなら私は食事しなくていいかなって思った。それ以来この世界で食事すら取らなくなったわ」
「えっ!? アスナさん、食事も取らないでモンスターと戦い続けて来たんですか?」
「うん・・。空腹感はあるけど我慢できるし、体調に変化が出る訳じゃないからね」
すごい精神力だな・・・。
そんな話をしているうちにキリトさんがパンを買って来た。
って大袋を抱えているが・・・あの中身全部黒パンだろうか・・?
「えっと、キリトさん、いくらなんでも買い過ぎじゃないですか?」
正直黒パンは1,2個食べれば十分だ。要は空腹を感じなくなる程度でいいのだ。
「まぁまぁ、とにかく食べようぜ」
キリトさんはそういうとメニューを操作し、何かのアイテムをオブジェクト化した。
アイテムは・・ビン? あれ? 見たことある気がするぞ。
「リッキー、シリカもこの前クエストの報酬でもらっただろ? 付けて食べるとおいしいぞ」
たしかこのアイテムは・・3日程前に受けたクエスト≪逆襲の雌牛≫でもらった報酬だ。
そうか! 中身はクリームだったな! これなら美味しく食べられそうだ!
「これならクリームパン気分で食べられますね! キリトさんはこの為に逆襲の雌牛のクエストをやったんですか?」
「ああ。β時代も1層はロクな食事がなかったからな。このクリームを食べた時は感動したもんだよ」
キリトさんはそう言いながら3人に黒パンを配る。
「アスナさんはクエストやってないですよね? 良かったら俺のクリーム使います?」
俺はクリーム入りのビンをオブジェクト化し、蓋を開けアスナさんに差し出す。
「ありがとう。それじゃあお言葉に甘えていただくわ」
アスナさんはビンを受け取り、黒パンにクリームをつけ一口かじるのだが・・頭の上に≪!≫が付いたと思えるくらい、急に表情が変わった。
すると、ビンから大量のクリームを取り出し、パンに塗り付けたと思うと、そのパンを一気に食べてしまったのだ・・。
今までのアスナさんの言動からは考えられない行為を目の当たりにした俺達は・・最初は呆気に取られたが、すぐに腹にこみ上げてくるものがあった・・。キリトさんも珪子も肩を震わせている。
「ぷっ」
最初に堪えられなくなった珪子を境に俺達3人は笑い出してしまった
「あははははははは!」
「ぷっはははははは!」
「あははっはははは!ひぃ、ひぃ」
一度笑いだしたら止まらない。俺達3人は息も絶え絶えだ。
そして俺達の笑い声を聞いたアスナさんは・・・みるみる顔が真っ赤になり、プルプルと震えている・・。
「・・・・・ご飯一回・・」
「「えっ?」」
アスナさんの言葉で3人の笑いが止まる。ご飯一回とはなんだろ?
「君達二人・・何でもいくらでもご飯一回・・今度奢りなさい・・。それで許してあげる!」
「ええ~! 最初に笑ったのはシリカですよ! それに何で俺とキリトさんだけなんですか!?」
俺とキリトさんはアスナさんに抗議したのだが・・・
「うるさい! こういうのは男が責任取るものなの!」
俺達の抗議は一蹴された・・・。
でも俺はその時嬉しかった。
今度ご飯を奢るという事は、これからも俺達と会ってくれるという事が分かったからだ。
俺達はこの後、キリトさんが買ってくれたパンをみんなで食べた。ただ・・・俺のクリームはアスナさんにほとんど取られてしまい、返してもらった時にはビンのフタに付いたクリームが残っているだけだった・・・。俺のクリームなのに・・・。
アスナさんって本当はこんなキャラだったのか・・・?
最初に出会った時と違いすぎる。まぁ、今のアスナさんの方が断然いいけどな!
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私達は夕食後、宿をとる事にした。部屋は二部屋しか空いてなかった為、私とアスナさん、りっくんとキリトさんとで部屋を分けた。
部屋に着いてからはアスナさんとたくさんお喋りをした。
最初の出会いが嘘のように、アスナさんは私に話しかけてきてくれた。
今なら聞けるかと思い、私はアスナさんに一番聞きたい事を尋ねた。
「最初に出会った時、なぜあんな態度だったんですか?」
アスナさんは少し困った顔をしたが答えてくれた。
アスナさんは現実世界で家族関係、主に母親とうまくいってない。その環境から逃げる為に兄のナーブギアを勝手に借りてSAOを始めた事により、デスゲームに巻き込まれた。
しばらくはデスゲームの事から逃げるように始まりの街に引きこもっていた。
こんな状況になっても声をかけてくる男は、男と女の関係を求めるような人ばかりで嫌気がさしていた。
そして現実世界から逃げて、この世界からも逃げたんじゃ何も変われない事に気付き、それに気付くまでに数日かかった遅れを取り戻す為に無茶をしていた。
迷宮区では自暴自棄になっていたみたいで、本当に死んでもいい。死んだらそれまでの人生と思い、回復もせずに戦っていた。そんな時に私達と出会ったのであんな態度で接してしまった。
その後はデスゲームでもこんなに楽しそうに生きている私達を見て羨ましくなり、アスナさん自身もだんだん素の自分に戻れてきているとの事だった。
私はアスナさんが正直に話してくれたお礼? みたいなつもりで、りっくんと二人でここに来た経緯や、同時に「リンクスタート」を言って始めた事、あとは・・・私が最初は男のアバターだった事・・・を話し、二人で笑いあった。
時刻は23:00になり、私達はそれぞれのベッドに入り寝る事とした。
私は中々寝付けなかった。
りっくんがアスナさんをずっと見ていた事がすごく気になっているからだ・・・。
アスナさんは女の私から見ても綺麗だ。話してみれば性格だったいい。私なんかと比べて大人の女性に見える。
私はりっくんがアスナさんに惹かれ始めてる事に気付いてしまったんだ。
「別にりっくんなんて好きじゃないし・・・」
小声でそうつぶやいても胸の中のもやもやが取れない。
きっとこの感情は仲のいい兄(弟?)が他の人に取られちゃうのが悔しい。そういう気持ちなんだ。
なのに・・・なのに・・・
今日は迷宮区に行かなきゃ良かった。
あの道を通らなければ良かった。
そうすればアスナさんと出会わなかったのに・・・。
そんな事を考えてしまっている・・。
私・・イヤな子だな・・。アスナさんは何にも悪くないのに・・。しかもこんな私を優しくしてくれたのに・・。
こんな気持ち抱きたくない。自分の事が嫌いになりそうだよ・・・。
この感情は今だけだよね? きっとデスゲームの中にいるからこんな感情を抱いちゃうんだ。明日になれば忘れてるよね。ううん、忘れよう。
また明日も一日、迷宮区の攻略頑張らなきゃ!!
ついにアスナさんの登場です! 原作ではこの場面ではツンツンしているみたいですが、この作品では早めにデレてもらいました。違和感を感じるようでしたらすみません。
次回は攻略会議を書く予定です。話もそんなに長くはならないと思うので割と早く投稿出来る(かも?)と思います。
原作と違う描写が多々あります。基本的には独自設定だと思ってもらえれば良いのですが、違和感を感じる場合は是非ご指摘下さい。