ふたつに分けます。
ので、これは前編です。
「暁美さんって、前はどこの学校だったの?」
「前は部活とかやってた? 運動系? 文化系?」
「すごい奇麗な髪だよねー。シャンプーは何使ってるの?」
休み時間になって、転校生、暁美ほむらさんの周りにはみんなが集まっていました。
はしゃぐように次々に話しかけるクラスの子たちの質問にも、暁美さんは僅かに答えています。
ちなみに、佐倉さんはさやかちゃんに質問攻めされていました。
「不思議な雰囲気の人ですよね、暁美さん」
声がして顔を上げると、わたしの横には仁美ちゃんと友華ちゃんが立っていて、やっぱりわたしと同じように彼女を、暁美さんを見つめていました。
「なあまどか、あいつ、知り合いか?」
「え・・・・・・? 暁美さんのこと?」
「ああ。さっきガン飛ばされてたろ?」
友華ちゃんの質問に、わたしは言葉に詰まります。
ガン飛ばされるってよくわからないけど・・・・・・でも、睨まれていたのかな? 夢で助けなかったから?
ううん、そんなまさか───あれは夢で、だいたいさっき初めて出逢ったはずなのに、今朝の夢ですでに逢っていたなんて、そんなおかしなことが起こるわけが───
自分でもどうなっているのかよくわからなくて、わたしは結局友華ちゃんに言葉を返すことができませんでした。
───と、その時。
「ごめんなさい」
暁美さんが突然、周りの子たちの言葉を遮って立ち上がります。
「なんだか緊張しすぎたみたいでちょっと気分が・・・・・・保健室に行かせてもらえるかしら?」
「えッ? あ、じゃあアタシが案内してあげる!」
「私も行く、行くッ」
慌ててそう言う周りの子たちに、暁美さんは首を振ります。
「いえ、お構いなく。係りの人にお願いしますから」
そのまま、振り返ってわたしを見ました。
また、わたしの心臓が、とくんと激しく高鳴ります。
まっすぐにわたしを見つめたまま、近づいてくる暁美さんに───わたしの膝はいつしか震えていました。
「鹿目、まどかさん」
そう言葉をかけられて、思わず、はいっと答えてしまいます。
「あなたが、このクラスの保健係よね?」
「え・・・・・・えと、あの」
「連れて行ってもらえる? 保健室」
わたしを見下ろす彼女の瞳は───
夢と同じ、冴え冴えとした強さがあって・・・・・・わたしは否応も無く頷いてしまいました。
歩幅に合わせて、腰までかかる黒髪が揺れます。
わたしの前を歩く暁美ほむらさんは、歩調に迷いがなくて、これではまるでわたしが学校を案内されているみたいでした。
廊下ですれ違う生徒たちはみんな暁美さんに見とれていて───それが、見知らぬ女子であるせいか、とても整った容姿のせいかわたしにはわからなかったけど・・・・・・でも、多分、後者だと思います。
だって、男の子がみんなほけえっとしていたから。
そんな暁美さんと連れ立って歩くわたしは、まるでなんでもできる漫画の主人公とその引き立て役みたいです。
もともと自分に自信のないわたしにとって、とても辛い時間でした。
でも───そんなことばかり考えていじけてても仕方ありません。
とにかく暁美さんに話しかけてみよう、と勇気を出して声をかけてみました。
「あの、わたしが保健の係って、どうして・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・」
「えっと、あの」
「早乙女先生から聞いたの」
「・・・・・・あ、そうなんだ・・・・・・そうだよね、あは」
謎が解けてすこし微笑むことができたわたしだけど、そのまま会話を弾ませていくことができません。
「・・・・・・えっと、さ。保健室は・・・・・・」
「こっちよね」
「や、うん、そうなんだけど・・・・・・いやだから、その、もしかして・・・・・・場所、知ってるのかな、って」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ものすごく気まずい沈黙が、わたしたちの間に漂っています。