今回は原作のシーンまんまなので、面白くないと思います。
そして、上条くんの説明は省かせていただきます。
ご了承お願いします。
その日の放課後、わたしたちはさやかちゃんに付き合って学校の帰りにCDショップに寄っていました。
「んじゃさ、まどかは好きなとこ見てて」
お店に着くと早速さやかちゃんは、クラシックコーナーに向かいます。
今日は、さやかちゃんの幼馴染の上条恭介君へのプレゼントを、さやかちゃんが買いにきたのでした。
わたしは手を振って、それからしばらくうろうろとした後、新譜CDの試聴コーナーに向かいました。
そこには、好きなアーティストの新譜があって、わたしは思わずヘッドフォンを手に取ります。
髪を耳にかけ、ヘッドフォンを嵌(は)めて、スイッチを押します。
やがて前奏が流れてきて、音量の調節をした、その時───
《・・・・・・けて》
何か、声が聞こえました。
「・・・・・・・・・・・・あれ?」
台詞入りのCDなのかと思って、一度すこし音量を上げてまた最初から聞き直します。
けど、今度はその声は聞こえてきません。
「気のせい・・・・・・かな?」
もう一度、音楽に集中しようとしたその時でした。
《・・・・・・助けて》
今度は、はっきりと聞こえました。
思わずヘッドフォンを外して辺りを見回すと、
《・・・・・・助けて・・・・・・まどか・・・・・・》
確かに、誰かが救いを求めていて───そして、わたしの名前まで呼んでいました。
「・・・・・・え? えッ?」
けど、わたしの周りにいる誰にもその声は聞こえていないようで・・・・・・
そしてそれは、わたしの耳ではなく、頭の中に直接響いていることに気がついてびっくりします。
《助けて・・・・・・助けて・・・・・・まどか・・・・・・》
───まどか。まどか。まどか───
どこかで聞き覚えのあるその声は、はっきりわたしの名を呼んでいました。
「・・・・・・誰? 誰なの?」
わたしの呟きに、隣にいた大学生風の男の人が怪訝(けげん)そうな顔をしたけど、わたしはそのまま声の主を探すように、ふらふらと店を出ました。
どこかから響き続ける、その声に導かれるように───
鞄を抱えて、ショッピングモールの奥へと進みます。
進むほど人が少なくなり、やがて誰もいない寂しい倉庫のような場所に行き着きました。
そしてそこには、非常口と書かれた鉄の扉があり、それを開けると───
非常階段へと続いていて、風がわたしの髪を舞い上がらせました。
《助けて・・・・・・助けて・・・・・・!》
階段に出ると、いよいよその声も大きくなって───
「どこにいるの? あなた誰?」
そう問いかけたけど、わたしの声は届いていないようで、ただ一方的に「助けて」という言葉だけが、切なく頭に響きます。
この声の主が誰だかわからないけど───とにかく、この上なく、真剣に助けを求めていることだけは、わたしにもわかりました。
「待ってて、すぐ行くから」
とにかく声のする方向へと、向かうことにして───わたしはそのまま非常階段を上り、上の階へと進みました。
息を切らして一番上の階にたどり着き、そしてそこにあった防火扉を開くと・・・・・・中は、薄暗く、がらんとした空間でした。
多分、改装中の場所で、コンクリートが剥き出しで、工事用の機材があちこちに転がっています。
でも、そこには誰もいませんでした。
ただ、だだっ広い、薄闇が広がっていて───
すこし怖くなって、わたしの足は竦(すく)みました。
けれど、いよいよ頭の中に響く誰かの声が大きくなります。
《助けて・・・・・・まどか・・・・・・助けて・・・・・・》
「・・・・・・どこ? どこにいるの?」
少し震えた声で、そう尋ねた瞬間───どこかから、がこん、という音がして。
びくっとしたわたしの頭上で、ボイラー用のエアダクトの蓋が外れていました。
そして、そこから何かが転がり出てきて───
「きゃあああっ」
思わずへたれ込んでしまったわたしの胸に、何かが飛び込んできました。
見れば、それは───真っ白で、柔らかくって・・・・・・
耳からまた長い耳を伸ばしたような、不思議な生き物でした。
猫でもなく、うさぎでもなく、まるで見たことない・・・・・・ううn・・・・・・わたしは、この子を、いつかどこかで見たような。
でも、それがどこだか思い出せなくて、たぶんめちゃくちゃ頭が混乱してて、それはきっと───その不思議な生き物が、血まみれであったからだと思います。
「・・・・・・だ、だいじょうぶ? ねえ、だいじょうぶ?」
そう尋ねたけど、わたしの腕の中で弱々しく震えるその未知の生物は返事をしません。
いえ───返事ができないほど衰弱していました。
今にも死んでしまいそうなほど怪我だらけで、時折手足を痙攣させていました。
「・・・・・・あなた、なの? わたしを呼んでいたのは?」
そう呼びかけると、その不思議な生き物は薄く目を開けます。
そしてその瞳は、深紅に輝いていました。
どこか潤み、何かを訴えかけてくるようなその眼差しは、わたしの心の中の何かをひっかきます。
わたしはやっぱりどこかでこの生き物と出逢っている・・・・・・そんな気がして、それがどこか懸命に思い出そうとしていた、その時───
カツン。
誰もいないはずの空間に、わたし以外の靴音が響き。
思わず振り返ると、そこには───
今朝の転校生・・・・・・暁美ほむらちゃんが佇んでいました。