生まれ変わったらめんどくさい種族になっていた   作:ラーカー

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なんか感想でちょくちょく降格で人間になったのが納得いかないと言われてますが、原作でも天罰(?)で黒ウサギが消え去るところを人間になってますんで別におかしくはないかと

それでも納得いかないならインドラのせいって事にしといてください

あとがきは面白半分に書きました


元ウサギと吸血鬼

sideレティシア

 

「知らない!」

 

 反射的にそう返事してしまいしまったと思う。

 この兄妹にはアジダカーハを倒したと、だから安心していいと教えていたのは他ならぬ自分なのだから。

 そして今の動揺がゲントには値千金の情報になると経験則で知っている。

 

「『知らない』ねえ。あの時は倒したって言ってたんだから『知らない』なんて答えは出ないと思うけどなあ?」

「……そうだ。倒したのだから存在しないものの居場所なんて知るわけがない」

「ならなんで答えて動揺した?」

 

 他者の手が必要な怪我が治ったのかお付きの女性を下がらせる。

 

「……今のお前を見て昔のお前を思い出してな」

 

 ここで気のせいなどというのは逆効果だ。

 ならば、奴の思い出したくないであろう過去を利用して奴自身から引かせるべきだろう。

 そう考えていた。

 だが

 

「昔?レティシアの前で怪我とかしたことなんて……あー、妹の誕生日の。確かにあの時は今とは別ベクトルで血だるまだったな」

「――ッ」

 

 脱いでいた服を着こみながらケラケラ笑うゲントを見て、息を呑む。

 ゲントにとって最も忌むべき記憶と地続きであって、その事はゲントは触れたくもない記憶のはずだ。

 それを――なんで笑える?

 

「あんたは少し勘違いしている。俺だって成長している――あの時の事は笑い話じゃねえが、俺の生きる指針にはなってるんだからな。いや成長してねえからそれ以外ねえのかもな」

「――!!」

 

 その目を見て理解した。

 その目はかつての私と同じ目だった。

 自分がどうなっても構わない――その代わり奴だけは許さないという復讐に駆られたかつての私と。

 だからこそ止めないといけない。

 かつての私と違い、今のゲントには様々なものが残っているのだから。

 

「あるだろうゲント。お前にはまだ家族も今のコミュニティも――繋がりがまだあるだろう!復讐は何も生まないとは言わない。だが、それを生きる目的するな!お前には持ってるものがあるだろ!」

「……」

 

 いつも表情豊かなゲントの顔が完全な無表情になった。

 そして何かに気がついたのか何か含むような笑顔になる。

 いつもの顔だ。

 これはゲントなりの処世術だったのかと今更気付く。

 内側に踏み込ませないための心理的な壁だ。

 その内側にはきっと誰も入れない。

 たとえ黒ウサギでも。

 いや、黒ウサギへの溺愛さえもポーズか?

 考えれば考えるほどドツボに嵌りそうだ。

 

「そーいえば、あんたも故郷全滅してたんだっけ。もっとも俺と違って滅ぼしたのはお前だけど」

「……そうだな。経験者として言わせてもらう。そんな復讐は何も残らないぞ」

「残らなくていいよ。そして勘違いしてるようだから一つだけ言っておく。俺の行動は妹のためだ――いや違うな。究極的に俺のためになるからやるんだ。どこにも行けない俺がどこかへ到達するためにな。復讐も手段に過ぎない」

 

 ……仮面を被り直したのか、いつものゲントだ。

 初めて会った時と何も変わらないいつものゲントだ。

 

「……復讐をしない選択肢は?」

「それは無い。それは俺にとって絶対必要な条件だ。知ってしまった以上、俺はもう止まれない。そのための”黄昏”だし、俺の今までの活動だ。もう引き返せねえところまで来てる。だから――再度聞く」

 

 壁際に追い詰められ被さるように近寄ったゲントが言う。

 

「アジダカーハはどこにいる?」

 

 どこか冷静な部分がこれを壁ドンというという使えない雑談を思い出させるが、それ以外は混乱の中にいた。

 

「私も知らない。私は途中でリタイアしたからな」

 

 なんだろうゲントの匂いだ――クラクラする。

 思考がまとまらない。

 

「なんで?赤くなってんだ?」

 

 壁ドンされると被食者になったような感じがしてひどく興奮すると聞いていたが、なるほど。これは結構クル。

 かつての友で弟子であり敵であり遊び相手である彼にやられると、昔とのギャップでうまく動けなくなる。

 昔なら上から見下ろしていたのに今は逆に見降ろされている。

 そこには倒錯した感情が――

 

「ん?あー、もしかして興奮してる?」

「それは……」

「ここは俺の血で酷いことになってるからなあ。それに中てられたか。目をギラギラさせて今にも噛みついてきそうだな。噛むか?」

 

 服をはだけさせ

 その首がよく見えるように見せ

 

「ああ」

 

 その言葉に――自分の言葉に冷や水を浴びせられたように血の気が引く。

 ――今、私は何を考えていた?

 

「――!そうだ!?これはお前の血の匂いに酔っただけだ!」

 

 誤魔化すように叫ぶ。

 顔をまともに見ることが出来ない。

 血に酔ったとはいえ、何をしようとしていた?

 

「まあ、そういう事にしといてやるか」

「すまないが少し頭を冷やさせてくれ」

「ま、知りたいこと知らないんならいいか」

 

 ふらふらとその場を去る。

 様々な感情が――思考が”ノーネーム”に戻る足取りを重くする。

 しばらくは黒ウサギと顔を合わせられそうにない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideゲント

 

 レティシアは本当に知らなかったのかな?

 それとも知らない振りをしてただけなのだろうか。

 やっぱり一筋縄ではいかないなあ。

 復讐を使って過去の自分と重ね合わせて冷静さを奪い、食人種御用達の血酒(ワイン)で酔わせて判断力を奪うように仕向けたのにうまく躱されちまったなあ。

 俺の血で作った血酒(ワイン)だから、俺の血とは匂いが変わらず自然にその揮発した血酒(ワイン)で理性を削って喋らせる――という即興の策で口を開かせるつもりだったのだが、流石に経験豊富なレティシアには効かなかったようだ。

 俺を噛めばそれを口実にうちに引きずり込むつもりだったが、うまくはいかないようだ。

 それでも”    ”とは疎遠になりやすい理由を作れたから良しとしようか。

 

「相変わらずえげつないですね」

 

 そう言いながら肩に乗っかるのはラプラスの小悪魔(端末)であるラプ子だ。

 見たところ司令塔のようだから、何か話したいことでもあるのだろうか?

 

「なんだ今回は不干渉じゃないのか?あとラプ子、別にえげつなくねえぞ。俺は善人じゃねえしな」

「悪人でもないですよね?観察が今回の任務なので」

 

 こいつらから見て俺はどう思われてるんだ?

 どんな事件起こしても妙に俺に甘い気がする。

 

「観察ねえ?」

 

 ”サラマンドラ”がどう転ぶかほかの階層支配者(フロアマスター)も気にしているって所か。

 北側は荒れてるだけあって階層支配者(フロアマスター)ごとの縄張りがあり、お互いがお互いを敵視とまではいわないが警戒する勢力均衡で平和を維持している面がある。戦国時代の大名とかヤ○ザみたいなものだと理解しておけばいい。

 ここで転ぶなら”サラマンドラ”の縄張りを削っておこうって考えなのだろう。

 俺でもそうするし、誰だってそうする。

 力がなきゃ何も守れないんだからおかしなことではない。

 

「久しぶりに見つけたと思ったらナンパしているとは、気まずい思いをしましたよ」

「あの光景はナンパの一言で済ましていいものじゃねえけどなあ」

 

 血まみれで血だるまでナンパとは言い難い。もっとも引き抜きしかけてたことを考えるとあながち間違ってはいないとは思うが。

 

「やっぱりロリがいいんですか?」

「ちょい待てお前はなにか勘違いしてないか」

「男の子ですし女に興味を持つのはわかりますが魔王がいるんです自重してください。最悪私が相手になりますから」

「おい待て2頭身。せめて人型になってから言え」

 

 相手になるってなんだ。というか生殖機能あるのか小悪魔に。

 

「私では不満だと!?」

「不満ですねえ!サイズ考えろアホ!」

「私が代わりにお相手します!」

「ややこしくなるからユーちゃんは黙ってろ!」

 

 ぜえぜえと肩で息をする。

 なんでシリアス空気が5分も持たねえんだよ!

 

「チェリーなのは知ってますし、ヘタレなのは当然ですか」

「え?俺結構経験あるぞ?」

「え?」

「え?」

「……まさか妹さんと!?」

「それはねえよ」

「………………………………………………………………………………………………………ごめんなさい」

「わかればいいんだよ」

 

 俺のマジ切れに気がついたのか、比較的素直に謝るラプ子。

 素直でよろしい。

 

「話を戻しますが」

「お前が脱線させたよね?」

「戻しますが――妹さんには先ほどの事は筒抜けなのでは?」

 

 筒抜け?

 何言ってんだこいつ?

 妹にばれないようにこのタイミングで――ああ、そういうことか。 

 

審判権限(ジャッジマスター)の事か?ならそうでもねえよ。あれはルール違反とかそういうのには引っかかりやすいがそうでないなら引っかかりにくい。権限上、ゲームフィールドすべてを把握できるが、だからと言ってそれすべての動きを把握するなんて熟練でも難しい――というか不可能だ。風の流れから足元のアリまですべて把握できるわけがない。どうしても注目したいことに意識が引っ張られる。それに俺は俺を意識させないことを心得てるからな。最初っから最後まで俺を監視するつもりでない限り俺の動向を見つけ続けるのは不可能だ」

 

 全知の悪魔ならすべてを把握できるかもしれないがな。熟練のウサギですら難しいことをあの未熟なマイシスターができるわけがない。

 出来るのであれば、交渉なんて今一番やっちゃいけないことをするはずがないしな。

 

「それに今は交渉中だ。権限は制限されて把握できるのは良くてお互いのホストの居場所くらいだな」

「元ウサギの経験というわけですか。そう聞くと結構不便ですね」

「実際に不便なんだよ。なんとなく使えるから便利に思えるけどウサギのスペックじゃ使いこなせないし、使いこなせても中立でないといけないから意味がない。ゲームに参加するならかなり制限されるし多少便利なレベルでしかない」

 

 便利といえば便利だが、秩序側に肩入れするならあまり便利とは言えない。私利私欲を貪れないから使い勝手が悪いし。

 元々、不利な情勢を中立に戻すまでの恩恵だから当然といえば当然だが。

 

「不便だと思ってるのあなただけでは?」

「否定はしない」

 

 さて、やっちゃあいけない中断したリトルシスターは何か策があるのかな?




黒ウサギ
「保護者が欲しい」

箱庭の貴族である『月のウサギ』として“疑似神格・金剛杵(ヴァジュラ・レプリカ)”、“月界神殿(チャンドラ・マハール)”、“疑似神格・梵釈槍(ブラフマーストラ・レプリカ)”、“疑似叙事詩・日天鎧(マハーバーラタ・カルナ)”という破格のギフトを授かって生まれたため”月の御子”として、過保護に育てられていた。
月のウサギの最年少であり、箱庭に伝えられる古い話は知識として持っていない。自慢のウサ耳は箱庭の中枢と繋がっており、ギフトゲーム審判時であれば全範囲、プレイヤー参加時であれば1kmの範囲まで情報を収集できる。力を使う時や感情が高ぶると髪の色が青色から緋色に変わる。
幼少期から誰かに保護されて生きてきたため、誰かを率いる力がほとんどない。”   ”が名無しに陥った時に最年長として頑張っていたが、生来のポンコツさを発揮して子供たちがしっかりする原因となった。
月の都時代は家族に愛され、”   ”時代は金糸雀やレティシアに育てられていたが、名無し時代は保護される立場から急に保護する立場に一転したため、自覚はないが無条件の愛情に飢えている。
彼女の兄への甘えたがりは兄からの愛が欲しいと同時に己の周りすべてを守って欲しいからかもしれない。
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