生まれ変わったらめんどくさい種族になっていた   作:ラーカー

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気がついたらいつもの数倍書いてたんですが・・・

(間違ってあとがきにサンドラではなく久遠飛鳥を貼っていましたので直しときました)


祝勝会

sideゲント

 想定内といえば想定内。予想外といえば予想外。そんな”サラマンドラ”が用意したサンドラが階層支配者(フロアマスター)になるための魔王襲来(茶番)は終結した。

 今回の結果で一番損したのは魔王だ。

 なぜなら魔王のギフトゲームでは比較的稀な完全クリアという形で敗北してしまったからだ。死んだら終わりどころか死んでも蘇らせて隷属させる。敗者に厳しく勝者に優しい箱庭のルールだ。そこは諦めてもらおう。確実に”    ”に恩恵(ギフト)として渡される前に白夜叉の玩具にされるだろうが着せ替え遊びで済むだけマシなんじゃないだろうか?俺は絶対に嫌だけど。

 逆に一番得したのが”    ”だろう。魔王退治を請負うコミュニティとして魔王のギフトゲームを完全クリアは拍付けにふさわしい華々しいスタートだろう。オマケに先述のギフトが貰えることが確定しているんだ。名も顔も売れてそこら辺の敗者(ノーネーム)との差が出来て、一端ののコミュニティとして扱われるのだから笑いが止まらないだろう。

 ”サラマンドラ”は及第点と言った所か。俺から見れば赤点だが、サンドラが階層支配者(フロアマスター)になるための最低限の拍付けはできたと言った所か。理想はサンドラが魔王ちゃん(ペストだっけ?)を討って実力を示すのが良かったのだろうが、”    ”に美味しい所をほぼ取られているのでサンドラを認めない派閥が大きくなったので今後が不安な所だ。

 というわけで

 

「ちわー。飲もうぜマンドラー」

「何しに来た貴様は!?」

「祝勝会に顔出さない可哀想な奴のために上等な酒かっぱらってきたんだよ。感謝しろゴラ」

 

 執務室にノック無しで入り込み何かを覚悟したような顔をしているマンドラへいつも通りにおちょくることにする。

 

「貴様と違って仕事がある」

「ん?うちのコミュニティ(・・・・・・・・・)に罪を擦り付ける算段か?さっき”    ”の小僧に見抜かれたのに?」

「……見ていたのか?」

「あの小僧洞察力高いからねー。この部屋から出てくるのを見れば大体予想できるわ」

 

 適当なことを言いながら勝手に持ってきた杯に酒を注ぎ、片方をマンドラに押し付ける。

 

「で?結局のところ魔王を用意したのはサンドラ以外の”サラマンドラ”でFA?」

 

 あえて”サラマンドラ”にとっての真実を聞いてみると諦めたように杯を一気に飲み干す。

 

「そこまでわかっているなら聞く必要はないだろう」

 

 ふーん。やっぱり売りつけた連中の真意(・・・・・・・・・・)には気付いてないみたいだな。あれだけ露骨にサンドラではなく白夜叉狙いだった魔王ちゃんの行動を考えたら少しは違和感を感じてもいいと思うんだけどねえ。

 

「実際、今回の件で俺が黒幕じゃないかって一部のアホが疑ってるし、お前の目論見は一応成功してるよ。残念ながら大多数は気がついてすらいないようだがな」

「ふん。日頃の行いが悪いから疑われるんだ」

「俺が悪い行いをした記憶はねえけどな」

 

 善い行いをした記憶もないけどな。俺がやりたいことをやり通しただけだし、俺だから善い悪いで判断されたくはない。

 

「神珍鉄の人形は”    ”に渡ったし、目的のギフト(魔王)も”    ”に授けられる予定だし、真面目に今回のお祭りは失敗ってのが俺の評価なんだけれども」

「……何が言いたい」

「なんでサンドラなんだ?最終的にサンドラを頭首にするにしても一時的にお前が中継ぎした方がマシだと思うんだが」

 

 真面目にこれがわからないのだ。

 今までサンドラに頭首としての教育をしていなかったのに急に頭首にするなど正気の沙汰ではない。

 操り人形にするにしても”サラマンドラ”のためだと考えて自分の意思で従うであろうマンドラよりサンドラを頭首にする理由がない。

 

「能力のない俺が組織を固めたらそれこそ”サラマンドラ”は細々とした零細コミュニティにまで没落するだろう。そうなればいくらサンドラの才能があろうが巻き返しは不可能だ」

「自己評価低いなお前」

 

 悪くても中堅程度に落ちるぐらいだろうと思うが、相変わらず妙に自己評価が低いなこいつ。

 

「そんなお前に商談だ」

「……なんだ?」

「サラを帰らせようか?」

「なんだと!?」

 

 急に立ち上がったせいで書類が崩れたが気にする様子はない。

 

「なぜ貴様が姉上を!?貴様まさか!?」

「……何言ってんだ手前?」

 

 俺のドン引きを見て勘違いしていたのが解けたのか、罰が悪そうに杯を飲み干す。

 

「単純さ。今、南側にいるサラを自主的に帰らせようかってさ」

「南側?そもそもなぜ姉上の居場所を貴様が知っている?」

「俺だから」

 

 そう言いながら一々注ぐのが面倒になったので普通に直接呑む。

 

「あー、うまい」

「出来るぜ?ちょーっと事実を針小棒大にして話せばあいつみたいなタイプは絶対引っかかる」

「そうか」

 

 何かに葛藤するマンドラをほっといて黙々と酒を呑み続ける。

 

「……」

 

 呑み続ける。

 

「………………」

 

 呑み続ける。

 

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

 

 呑み続ける。

 

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………断る」

「悩むの長いわ」

 

 樽で持ってきたのに全部呑み干しちまったよおい。

 

「つーか、ええのか?恐らく最善の手だし、最後の機会だぞ?」

「そうだろうな。だが、コミュニティを棄てた者に縋り頼ったら本当に”サラマンドラ”は終わるだろう」

 

 そうかねえ?

 そこは価値観の違いだから考えすぎだと思うが、そう考えるなら俺は何も言わないべきだろう。

 

「考えがあるならなんも言わねえよ。そんじゃな」

「どこへ行く?」

「宴会だよ。酒が切れた」

 

 恐らく、”サラマンドラ”は内乱かなんかで潰れると思うがそれまで適当に眺めるとするか。

 他人の不幸は最高の肴だしな。

 扉に近づいてくる気配を正確に把握した上で、あえて聞く事にする。

 

「あ、そうだ。サンドラちゃんにあの事をちゃんと言わねえのか?」

 

 扉の前で気配が固まる。

 予想を裏切らないなあ。

 

「これはサンドラ以外の”サラマンドラ”の罪だ。サンドラに背負わせるわけにはいかない」

「ひゅー。カッコイー。サンドラちゃんだけ仲間外れにしてんのにそんなに格好良く言うなんて才能だぜ」

「おちょくっとるのか?」

「別に?五人の死者は戦死ではなく自業自得で死んだってのは救いがねえとは思うけどな」

 

 自分で利用しようとした魔王に殺されるとか笑い話にもならないくらい哀れなことだと思う。

 俺も人の事はいえないか。

 

「自業自得ではない。”サラマンドラ”の名を守るための汚名覚悟の戦死だ」

 

 走り去る足音を聞きながら意味もなくなった問いを声に乗せる。

 

「汚名覚悟ならサンドラちゃんに話してきっちり裁かれろよ」

「・・・・・・折を見て話す」

「いつだよそれ?」

「サンドラに汚名を被せるわけにはいかん。それにサンドラは清濁併せ持つような器量は今のところはない。それがあると判断したらだ」

「手前にそんな見極め出来んの?」

「出来る出来ないではない。やらなければならぬのだ!弱体化した”サラマンドラ”を立て直すためにも他の”階層支配者《フロアマスター》”や魔王、それに父上にも好き勝手させるわけにはいかない!それがコミュニティひいてはサンドラを守ることに繋がるはずだ!」

 

 んなわけねえだろ。

 こいつが求めてる強いコミュニティの再来と妹を守ることは必ずしも一致しない。

 特に罪の共有はマイナス要素しかないが頭首以外が共有して尚且つ共有者の中に優れた指導者(この場合、サンドラよりも頭首を継承すると思われていたマンドラ)がいた場合、頭首を蔑ろにしかねない。

 内憂外患の手本みたいな今のサラマンドラがサンドラの一番の敵のようなものだ。

 

「ふーん。じゃあ頑張れ。そして後悔で嘆け」

「舐めるな。”サラマンドラ”はここから蘇るのだ」

「期待しないで見物しとくわ」

 

 後ろ手を振って部屋を出る。

 さて、宴会で暇つぶししてから帰るか。

 

 

 

side黒ウサギ

祝勝会で大騒ぎしている皆様の相手に疲れが回ってきた頃合い。

 

「はい注目ー!これより魔王討伐の功労者に信賞必罰のギフト授与式を始めまーす。ちなみに俺の偏見と独断で決めましたんで反対意見は却下します」

「いきなり何をはいめるんじゃお主!?」

 

 席をはずしていたお兄様がいつのまにか壇上で司会進行していた。

 いや本当に何してるんですか!?最初に論功行賞は行いましたよ!?

 

「ちなみにこれは俺の独断なので階層支配者(フロアマスター)のあれとは関係ないんで在庫処――遠慮なく受け取ってくれ」

「在庫処分って言いかけたじゃろ?」

 

 

 喧々囂々の怒声を受けのがしつつ、次々いくつかのコミュニティを呼び出しお兄様のコミュニティの方が壇上に無理矢理上げる。

 なんであんなに無駄に無駄のない動きなのが気になります。

 

「――というわけでステンドガラス探しに貢献した君達にはこの(繁殖させ過ぎた)金の卵を産むガチョウを各一匹ずつ進呈します。ちなみに割と高値で売れます」

「いやらしいからそのセリフは言うな!」

「さっきからうるせえ白いのがいますが気にせず進めるぞー」

「おい!」

 

 さっきから白夜叉様をガン無視してますが何かあったのでしょうか?

 それと無視されて若干泣いているような・・・・・・。

 

「次は敵幹部を討った”    ”十六夜くんと飛鳥ちゃんです。おら、さっさと壇上上がれや」

「ようやくか」

「待たせるわね」

 

 お二方が意気揚々と壇上に上がります。

 しかし、お二人を送り出す耀さんが小さくため息を吐いたのが耳に入りました。

 今回は呪いによって動けなかったのですし、差をつけられたと感じているのでしょうか?

 しかし、耀さんの恩恵ならすぐに追いつくことも可能です。

 

「お二人さんは同じコミュニティなので、この空樹の苗を進呈します」

「なんだこれ?」

「これ一本で100m四方の即死クラスの毒霧すら浄化できるレアものだ。あんまり流通してないんだよねこれ」

 

 あの木は木ごとに生産する空気が違うため、数は多いのに使えるのがほとんど流通しないという木ですね。

 お兄様の事ですし、使える恩恵のはずです。

 

「それ以外で何か使えるのかしら?」

「農地の近くにおいてたら収穫が良くなるくらいだ。なぜかは知らん」

「空気中に肥料になりうる何かを発生させてんのか?」

「いや、だから知らんて」

 

 そのままお二人を残したまま進めるようです。

 

「次に”サラマンドラ”のサンドラと”     ”の黒ウサギに先ほどのお二人を加えて魔王討伐の主力メンバーです。ついでに謎ときに尽力した”    ”のジン君で最後です。おら壇上に上がれ」

 

 ついに私の番ですか。

 

「”     ”にはまとめてこの卵を進呈します」

 

 そう言って取り出したのは・・・・・・特に珍しくもなさそうな卵です。

 

「ゲント!どこでそれを手に入れた!?」

「本人に貰った。つか、知り合いだったのお前?」

「昔に少しな」

 

 本人?それに白夜叉様の焦りようから見てとんでもないものでは?

 

「お兄様?この卵は?」

「見てわからんか?不死鳥の卵だ暖炉にでも放り込んで火を絶やさず燃やせば孵るぞ」

 

 ・・・・・・へ?

 

「不死鳥の卵ですか!?箱庭の超希少種ですよ!?」

「食ったらうまそうだな」

「ダメですよ!?」

「旨すぎて卵を乱獲されて絶滅危惧種なんだ。味は保証する」

「保障するな!小僧!食べてはいかんぞ!」

 

 あまりのお宝に会場が騒めいています。

 こんなもの本当にどうすればいいんでしょうか?責任持てませんよ!

 

「不死鳥って死なない鳥よね?それって食べられるの?」

「鳥は死んだら即灰になるから食えないが卵は茹でると食えるんだ。割ったら腐るけどな」

「食べていいものではない!特性から繁殖力が低い上に乱獲されたのだ!階層支配者(フロアマスター)として見逃せぬわ!」

「あんま怒ると禿げるぞ」

「禿げぬわ!」

 

 これどうしましょう?

 そうだ白夜叉様に――

 

「これは責任持って”ノーネーム”で孵す!」

「十六夜さん!?」

「落ち着け黒ウサギ。これは孵した方が得だ」

「ほう?その心は?」

 

 あ、ダメです。お兄様が何か企んでます。

 

「不死鳥の涙には癒しの力があると聞く。それはどんな怪我をも癒せるそうじゃないか」

「流石に詳しいね。じゃあ任せるよ1年は火を絶やしちゃダメだよ?」

「・・・一年で手に入るなら安いもんだな」

「そうかもね。それじゃあ次は”サラマンドラ”にはこれを」

 

 そう言って取り出したのは・・・槍?

 

「サンドラちゃんにはこのロンギヌスの槍をプレゼント」

「え?ありがとうございます?」

「待て待て待て待て!なぜお主が持ってる!?それは厳重に封印されてるはずじゃぞ!?サンドラを殺す気か!?」

「どっかの神の子を相手にポーカーで巻きあげた。別に死なねえよ呪いなんてねえし」

 

 そういう問題じゃないと思います。

 

「ホントに何しとるんじゃお主は!?それに呪いではなく神群に目をつけられるのじゃぞ!」

「大丈夫大丈夫。俺は数年持ってたけど本拠地を7回焼き払われただけで済んだぞ」

「大丈夫じゃないわ!?何度か中層で神群が動いた形跡があると思ったらお主のせいか!?」

「失敬な。きちんとゲームのルールに乗っ取って勝ち取ったものだ。焼き払われたのは別件が理由だ」

「別件って何したんですか?」

「ちょっとクイーンを怒らせて」

「なんで生きとるんじゃお主?」

「俺だから」

 

 物凄い説得力です。確かにお兄様ならどんな時でも逃げ延びてそうですが、あのクイーンを怒らせて生き延びてることに驚きです。

 

「ならレプリカの方で我慢しとけ。本物は白BBAがうるせえし」

「誰がじゃ!」

「あ、結構使いやすいですね」

「良かったな。本物はゴルゴダにでもここに眠るとか書いて指しとくか」

「お主、いつか死ぬぞ」

「知ってる」

 

 大丈夫でしょうかお兄様は逆恨みを買いやすいみたいですし心配です・・・。

 

「ではギフト授与を終わりまーす。なお今回の授与と祝勝会の費用のは今回マジで役立たずだった何のためにいたのかわからない白夜叉様に請求します。皆さんお疲れさまでした!」

 

「「「お疲れさまでした!」」」

 

「え?」





サンドラ
「愛情が欲しい」

11歳で”サラマンドラ”の頭首となった火竜の少女。
その才能は先代の子である兄弟姉妹の中で50年ほどの時間をかけて育て上げればその後の数百年は”サラマンドラ”は安泰とされるほどのダントツの潜在能力を持つがその才能を開花させるには経験が足りず、様々な思惑が重なったせいで実力もないのに就任する。
就任してからは外からは若さゆえに侮られ、内側からは面従腹背どころか大多数がサンドラを認めないことを隠そうとすらしていない。
本来は”サラマンドラ”を継ぐはずの姉はコミュニティに愛想を尽かして出て行き、兄は内心自分を信じていないことを知り、今までの愛されていた立場が一転して孤独に苛まれている。
だからこそ彼女は信じられる誰かが欲しいと願っている。
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