宮地さん―今は清と呼んでいる―と出会って約1年。
ようやく喋れるようになって、立てるようになって。
最近はほぼ毎日、清と会っている。
僕が彼の家に行くか、彼が僕の家に来るか、家族ぐるみで出かけるかのどれか。
ただ僕は赤ん坊だし、少し体が弱いために、毎日という訳にいかないのが現状だ。
「きよ、きよ」
現在2歳となった僕。
清は4歳を過ぎ幼稚園の年中さんになった。
「んー、どうした?征」
ゆっくりと振り向くその姿は、去年とは比べ物にならないほどの成長を遂げていた。
彼の両親曰く、年中さんの中で一番背が高いのだとか。
秀徳レギュラーのときは191cmになる片鱗が、もう見え隠れしている。
前世では赤司と同じ身長だった僕にすれば、羨ましくてしょうがない。
20cmも違うし、高校生になる頃には見上げるのが当たり前になるのだと思うと、目の奥に熱いものがこみあげてくるのを感じた。
やりたいことがあるだろうに、返事を返してくれた彼のやさしさをかみしめる。
自然と笑みが込み上げてくるのは必然と言えた。
父さんにせがんで買って貰った本を指さして、いつもの合図を唱える。
「あそぼ」
「おう」
僕らの『遊ぶ』というのは少々異常である。
むしろ遊びとは言えない。
僕らのする遊び____小学校高学年が読むような児童書を読みつつ、議論・・・いや批評をすることだ。
僕らは互いに思っていること___転生者ではという疑問__を口には出さないが、互いが『異常』だということは理解している。
僕自身がたくさん喋ることは出来ないのが難点だが、その分は清が喋っている。
そうやって、果てなく暇なこの幼少期をなんとか乗り切ろうとしている。
「なんで、このぶんぽう?」
「伝わらないこともないけど、なぁ」
小学校にも入学していないこどもふたりが交わす会話ではないと自覚はしている。
だけど、中身が大学生な僕には酷なものなのだ。
授業なんか真面目に受けたことは少なくともなかったけれど、今ではあの意味不明な教授の子守唄を恋しく思う。
僕が『赤司征十郎』なら、もうじき望まずとも英才教育が始まるのだろう。
まあテーブルマナーくらいならもう始まっているけれど。
以外に難しい。とうか父さんが厳しい。
耐えられる気がしない。
征ちゃんが原作で二重人格になってしまうのも、まあ納得できると言えた。
一通り議論を終え、ブレイクタイム・・・まあ子供らしくいうならおやつの時間。
こういう時はいつも、何気ない話をする。
そういえばあと1年で幼稚園児になることを思い出し、キャラクターと会う可能性も否定できないなぁと是非とも遠慮したい
「ようちえんって、たのしい?」
「あぁ、そこそこ楽しいぞ」
嘘つけ、絶対暇すぎて心の中で悪態ついてるだろうに。
そんな本音をおくびにもださず、「そっかぁ」と返した。
「ともだち、いる?」
僕以外の友達なんかいるのかよという嫌味をこめて、そう尋ねる。
「話す奴は結構いるけど」
「じゃあともだちはいないんだね」
オブラートに包むことなんか全くせずにズバリ言う。
「う゛」とうめく声が聞こえたけれど、僕の責任ではない。
これは自業自得である。
『信也、君性格悪いってよく言われなかった?』
征ちゃん、酷い。
よく言われたけど。
清の発言から、原作キャラクターはいないのだな、と推測。
面倒がなさそうで万々歳である。
僕が入園するときにいる可能性は否めない。
油断は大敵だ。