ゼロと勇者王   作:tonebon

10 / 10
第05話 「明日」 Aパート

 

 

 「異世界ハルケギニア」には5つの人間の大国がある。

 

 一つ、トリステイン王国。

 始祖ブルミルの3人の子供が開いた王国のひとつ。

 獅子王凱と平賀才人が召喚されたトリステイン魔法学院がある国である。

 ルイズの実家、「ラ・ヴァリエール家」はこの国有数の大貴族である。

 ハルケギニアの北西部に位置する小規模な国家ではあるが、ラグドリアン湖をはじめ、

数々の美しい自然を有する。

 先王亡き後、后マリアンヌが女王として即位しなかった為、現在王座は空位である。

 実務は枢機卿マザリーニがとり行い、アンリエッタ姫が国家の象徴となっている。

 

 一つ、アルビオン王国。

 始祖ブルミルの3人の子供が開いた王国のひとつ。

 約3000メートル上空に浮かぶアルビオン大陸にある王国。

 このアルビオン大陸は以前は陸にあった。

 原因は不明だが、現在は大量の風の魔力が凝縮された「風石」によって浮遊している。

 現在、「レコン・キスタ」という貴族の反乱同盟により、政情不安定にある。

 

 一つ、ガリア王国。

 始祖ブリミルの3人の子供が開いた王国のひとつ。

 トリステインの南東に位置するハルケギニア最大の国家。

 魔法による技術がもっとも発達しており、魔法による人形「ガーゴイル」の使用がもっとも盛んに行われている。

 現国王は、魔法が使えず、「無能王」と言われるジョゼフ一世。

 タバサはこの国の王族だった。

 また、タバサが初めて討伐の指令を受けたキメラドラゴンが住む「ファンガスの森」はガリア王国にある。

 

 一つ、帝政ゲルマニア。

 トリステインの北東に位置する、まだ歴史の浅い軍事国家。

 火の魔法を得意とする貴族が多数をしめ、冶金技術に優れている。

 金さえあれば平民でも貴族階級になる事ができるため、伝統的な貴族国家である他国からは、

格下に見られる傾向がある。

 現皇帝はアルブレヒト三世。

 キュルケの出身国である。

 

 一つ、宗教国家ロマリア。

 始祖ブリミルの弟子が築いた宗教国家。

 ガリア王国の南にある半島に位置する。

 ハルケギニアに広まる始祖ブリミルを崇めるブリミル教の法王庁が存在する。

 教皇・聖エイジス三十二世はブリミル教信者がほぼしめるハルケギニアにおいて絶対的な権力を誇り、

各国の王よりも地位が高い。

 

 主な5つの国家の内、4つの国が始祖ブリミルが関連している。

 始祖ブリミルがその強大な「虚無の魔法」をトリステイン王国・アルビオン王国・ガリア王国

・宗教国家ロマリアの王家の血を引く者に伝えたのだ。

 虚無の魔法を受け継ぐ者は「虚無の担い手」と呼ばれる。

 「虚無の担い手」は通常の土・火・風・水の系統魔法を使えない。

 膨大な魔力を消費する「虚無」の魔法を利用するため、魔力をその身体に蓄積するためなのかもしれない。

 そして、「虚無の担い手」が虚無の魔法に目覚めるのには条件がある。

 秘宝と指輪が必要なのだ。

 

 トリステイン王国に伝わる「始祖の祈祷書」と「水のルビー」。

 アルビオン王国に伝わる「始祖のオルゴール」と「風のルビー」。

 ガリア王国に伝わる「始祖の香炉」と「土のルビー」。

 宗教国家ロマリアに伝わる「始祖の円鏡」と「炎のルビー」。

 

 そして4人の虚無の使い手と虚無の使い魔達。

 

 この4つの4が揃う時、「真の虚無」が目覚めるという。

 また、別の伝承では「大災厄」がおこるという。

 「真の虚無」とはなにか?

 「大災厄」とはなにか?

 なにが起こるのか?

 どちらが真実なのか?

 どちらも正しいのだ。

 少なくとも、この「世界」においては。

 

 

第05話 「明日」 A

 

 2日。

 異世界「ハルケギニア」に凱と才人が召喚されて、まだ2日目である。

 しかし、世界は確実に動き始めていた。

 1日目の馬頭巨人による学園襲撃、そして撃退におよぶその顛末は秘匿しようとしていた学園関係者をよそに、

使い魔やガーゴイルなどによって、まさに空を飛びハルケギニア全国に広まっていた。

 

 怪物を魔法学院生徒とその使い魔達が撃退した事。

 魔法学院の一部が破壊されるような大規模な戦闘になった事。

 トリステインでも指折りの大貴族「ラ・ヴァリエール」の三女がその使い魔と共に活躍した事。

 

 そして、それらの情報が国をも動かす事になる。

 現時点において、その事実を見通しているものは一人しかいなかった。

 いや、ひとりと、ひとつ。

 世界はその「もの」が思い描くとおりに進もうとしていた。

 

 ――

 

 超高速で回転する長槍、ブロウクンマグナムが巨大な球体のほぼ中心を貫いた。

「おおおおお!」

 凱の雄叫びが、あきらめない心が、勇気が力となる!

 その威力のためか、球体の形をとっていた怪物が巨大なカエルの形状に戻り、腹を見せた。

「今だ! 才人君!」

「はい!」

 凱の声と同時に才人はデルフリンガーを両手で逆手に持ち、切っ先をカエルの腹に突き立てる。

 感情を震わせる! それがガンダールヴの力になる!

「ルイズウウウウウ!」

 才人はルイズを救うため、ルイズの名前を叫び、その力とした。

 デルフリンガーが才人の左手のルーンから発する緑の色をまとい、カエルの腹を割いていく。

 

 才人は小学校の理科の時間にやった、カエルの解剖を思い出した。

 あの時は勉強のためにカエルの命を犠牲にした。

 今回はルイズを助けるため。

 とりあえず、カエルさん、ごめんなさい!

 カエルの腹に縦一文字に走った赤い筋に無理やり両腕をつっこみ、力の限り横に開く。

 粘液まみれになったルイズが才人に抱きついたのはその直後だった。

 こうして、ルイズにとっての地獄「光届かぬ世界」は才人によって開放されたのである。

 

 粘性のある透明な液体が桃色の長い髪の先やプリーツスカートの端からしたたり落ちる。

 張り付いて肌の色とキャミソールが透けて見えるブラウスの肩を震わせ、恐怖と、

生還した喜びまぜこぜにして、ルイズは泣いた。

 才人は、自分も涙を流しながら、そんなルイズを強く、しっかりと抱きしめた。

 そんな二人に安堵の表情を浮かべつつ、凱の視線は巨大カエルに向けられた。

 カエルとルイズをつなぐ異物は見当たらない。

 ならば、このカエルの怪物をルイズの側に置いておくわけにはいかない!

 昨日の馬の巨人のように復活する事は充分に考えられるのだ。

「うおおおっ!」

 凱は巨大なカエルを気合と共に持ち上げ、中庭の充分な間合いをたもてる場所に投げつけた。

 

 軽い地響きを立て、カエルの怪物は裂かれた腹を上にして落下した。

 裂かれた腹が左右に広がり、まるで翼のように見える。

 凱は鋭い視線をカエルの怪物に向けたまま、戦闘体勢を維持していた。

 

 固定化の魔法を唱えたタバサも凱の側に駆け寄り、怪物に神経を集中した。

 

 ギーシュと、少し遅れてモンモランシーはルイズと才人の側に立った。

 ギーシュは緊張の視線で怪物を見つめている。

 モンモランシーはルイズに水魔法をかけた。

 才人の腕のなかで震えるルイズを膜のように水が包んだ。洗浄と検査を兼ねた治療魔法だった。

 

 キュルケもタバサの側にかけより、怪物と周りに倒れている蟻の怪物に注意をはらっている。

 

 緊張の空気が中庭に流れる。

 才人はルイズの身体を抱きながら、涙と鼻水をずずっとすすり、怪物を見つめた。

 

 カエルの怪物はぴくりとも動かない。

 蟻人間達も倒れたまま微動だにしない。

「たおした…のかな?」

 10分とも30分ともつかない緊張の時間が過ぎた後、才人はため息をついた。

 どうやら怪物は復活はしないようだ。

 

 凱の視線は熱センサーによるかすかな反応を捉えていたが、生体反応があるとは思えない状況だった。

「そう…だね」

 凱は警戒は継続しつつ、右腕の長槍の同化を解いた。

 音を立てて青銅の槍が地面に落ちる。

 右の下腕はその根元が無残にもねじれ、血が流れていた。

 

 その無残なその光景を見て、タバサは反射的に水の治癒魔法をかけた。

「…無茶をする」

 凱にはタバサの言葉は通じなかった。

 しかし、その無表情に見える少女の眼鏡の奥、瞳に心配の色が浮かぶのを見て、凱は笑った。

 

 青い髪の背の低い少女。

 年齢は11歳くらいか。その背は長身の凱の腰くらいまでしかない。

 凱は自分を魔法という不思議な力で治療してくれている少女を見て、護を思い出していた。

 Gストーンのパワーを身体に宿し、サイボーグの身体だった凱が不調になった時、

その不思議な能力でアジャストしてくれた少年。天海護。

 Gパワーと治癒魔法の違いはあったが、右腕だけでなく、凱の心をも癒してくれているのを感じていた。

「ありがとう。助かるよ」

 

 タバサも凱の言葉はわからない。

 しかし水の魔法の治療によって伝わってくる凱の身体の水の流れが心地よく感じられた。

 普通の人間とは違うと感じられても。そして、凱の言葉がわからなくても。

 凱の笑顔はタバサに暖かく伝わってきた。

 

 タバサのふたつ名は「雪風」。

 その名のとおり、タバサの心は氷結し、その幼い少女の顔に笑顔が浮かぶ事は無いはずだった。

 現ガリア国王ジョゼフに父を殺され、王家貴族の権利を剥奪され、母親に人格崩壊の毒をもられ、

北花壇騎士団という表にでない裏仕事専門の騎士団で生命の危険をともなう任務を実行させられているのだ。

 少女の心が凍りついたのはしかたないと言えた。

 しかし。

 トリステイン魔法学院の生徒としての日々。親友となった「微熱のキュルケ」。

 召喚した韻竜「シルフィード」とのふれあい。

 少しづつタバサの凍りついた心とが融けつつあった。

 そして、この凱という謎の青年。

 ルイズが召喚した二人の使い魔の一人。

 自分の身体を顧みず、学院を襲った怪物に立ち向かった青年。

 度重なる無茶をしつつも、暖かく、優しく、爽やかな笑顔を浮かべる青年。

 そんな凱を見た時、タバサの心には一つの物語が浮かぶのだった。

 「イーヴァルディの勇者」

 通りすがりの少年が、竜に捕まった少女を救出する物語である。

 少年は勇敢に竜と戦い、少女を救出し、勇者と呼ばれた。

 勇者。

 タバサを冷えた世界から救ってくれるかもしれない勇者。

 ……。

 タバサは首を振って否定した。

 そんな者はいない。

 自分は裏の仕事を行う北花壇騎士。

 自分は母を治療する方法を探す者。

 父の無念を晴らすため、いつかジョゼフ王を殺す復讐者だ。

 自分に暖かい「明日」は…「未来」は存在しないのだ。

 タバサは凱の姿がまぶしく見えて、かすかにうつむいた。

 青い前髪が少女のメガネにかかり瞳を隠した。

 

 長身の凱の傍らで、治療魔法をかけながらうつむくタバサを見て、キュルケは思った。

 この子のこんな姿は初めて見た。

 学院生の策略でタバサと決闘しそうになったが、誤解がとけ、親友となった寡黙な少女。

 キュルケにはタバサのかすかな感情の変化を読み取れるはず、だった。

 しかし、今のタバサの表情は見たことが無い。

 悲しみ、深い悲しみ、そして、微かに見えた、助けを求める少女の顔。

 タバサはなにか深い秘密をわたしに隠している。

 そして、それを救えるのは、このルイズの使い魔の一人。

 タバサの「明日」に必要なのはこの青年なのだ。

 キュルケはそう直感した。

「ねえ、タバサ。あなた達、まるで兄妹みたいよ」

 キュルケは軽い口調に深い想いを込めて言った。

 その言葉を受け、治療を継続するタバサはキュルケをみつめた後、上を向いた。

 凱の胸、そして顔の方へ。

 さらに上の方へ。

 凱の見つめる先も上だった。すなわち空。

「上?」

 キュルケは空を見つめる凱とタバサにつられ、空を見た。

 そこには青い竜が飛んでいた。クリクリとした目が見下ろしている。

 タバサの召喚した使い魔、シルフィードだった。

 

『そこのデカ人間! なにしてるのね! さっさとお姉さまを抱きしめるのね!!』

 凱の脳裏にそんな声が響いていた。

「言葉が…わかる? いや、これはテレパシーか!」

 凱はそれが念話である事を瞬時に理解した。

 念話。

 エルフや竜などの幻獣が使う先住魔法などで可能とされるテレパシーである。

 凱はその竜が昨晩、部屋で眼にした竜である事を思い出した。

 

『君は…しゃべれる、いや、会話できるのか!』

『…人前でしゃべっちゃダメ』

『かまいやしないのね! 念話なのね! 

 それに、そこのデカ人間も韻竜並に珍しいヤツなのね!

 さっきいけすかない剣の念話がデカ人間に通じてるのを見たのね!!

 大いなる意思も、念話を使うのを許してくれるのね!!

 そこのデカ人間! お姉さまとこいびとになるのね! こ・い…』

 

 念話だが凄まじい早口でまくしたてるシルフィードだったが、凱とタバサは別の事に気がついていた。

 凱が見下ろし、タバサが見上げ、その視線が重なった。

「「言葉が伝わる…!」」

 シルフィードの念話による会話が可能な状況ならば、どうやら会話が可能なようだった。

 念話は一対一で行う場合もあるだろう。

 しかし、この場合は術者がシルフィードだからなのか、複数人での会話が可能なようだ。

 

 凱は従兄弟である「赤松社長」の病弱な娘、サクラを思い出した。

 サクラは共通意識の海「リミピッド・チャンネル」を通じ、様々な事象を読み取り、

また、人間以外の存在と会話できたと言う。

 そして、もう一人の姿も脳裏に浮かぶ。

 凱の高校からの恋人、「卯都木命」。

 ソール11遊星主との決戦の時、再生マシーン「ピサ・ソール」の弱点がわかったのも、

「卯都木命」が「リミピッド・チャンネル」で情報を読み取ったおかげなのだった。

 命はどうなったのか。

 あの空間の消滅から無事に脱出できたのだろうか。

 生き残ったのは俺だけなのだろうか。

 俺は、みんなの為になにもできなかったのか。

 みんなの「明日」を守る事ができなかったのか。

 凱の顔に悔しさと悲しみの表情が浮かび、握られた拳がギリギリと音を立てた。

 

『…ガイ』

 悲しみのマイナス思念に囚われかけた凱をタバサの念話を通じた言葉が呼んだ。

 凱は首を軽く振った。

『あ、ご、ごめん。君にはいろいろお世話になってるね』

 治療中の右腕を上げ、凱は苦笑した。

『わたしはタバサ。かまわない。治療魔法の修行になる』

『タバサちゃん、か。ありがとう。助かるよ』

『…タバサでいい』

『無視すんなー、なのね!!』

 そんな念話の会話も長くは続けられなかった。

 

「みなさん、怪我はありませんか!」

 中庭にコルベールがやって来たのである。

 その後ろに、白髪白髯の仙人のような人影があった。

「こりゃ、すごい事になっとるな!」

 中庭に横たわる蟻人間と巨大なカエル、そして戦いの後。

 怯えた生徒たち、そして、才人の腕の中でモンモランシーによる治療と洗浄を受けるルイズ。

 そんな状況を目の前にしても、その口調は軽い。

 学院長「オールド・オスマン」である。

「こう立て続けに怪物に攻め入られるとは…学院もなめられたもんじゃのう」

 しかし、口調は軽くても、白髪の隙間からのぞく視線は厳しかった。

「ミスタ・コルベール。とりあえず、怪物の死体を集めて燃やそう。

 警備の増強はそれからじゃな。まして、今は…」

「はい。オールド・オスマン。了解しています」

 コルベールは深く頷いた。

 そして教師と警備兵を指揮し、蟻人間の死体をフライの魔法で巨大なカエルの場所に集めていく。

 20匹の蟻人間が一箇所に集められるのには、そう時間はかからなかった。

 巨大なカエルの上に蟻人間の死体が積み上げられた。

「ミスタ・コルベール」

「はい…」

 オールド・オスマンの呼びかけに応じ、コルベールが魔法を唱え始める。

 その身体を炎が蛇のように取り巻き、やがて炎の大蛇と化した。

 コルベールの呪文と共に巨大な炎の大蛇が蟻人間を積み重ねた山の周囲を取り巻き、

やがて炎の竜巻と化す。火の魔法でもかなり高度な呪文だった。

 

 炎の竜巻に飲まれ、蟻人間の死体と巨大なカエルの姿は黒い影にしか見えない。

 ゴウゴウとうなる炎はすべてを灰にするだろう。

 

 生徒達は燃え盛る炎を見つめた。

 被害者こそ出ていないが、この数日で学院は戦いの場と化してしまったのである。

 そして、目の前で燃えるのは怪物とはいえ、生命をもった物だったのだ。

 生死をかけた戦いだったのだ。

 この炎は生命が燃えているのだった。

 

 モンモランシーによる浄化と治療を終え、ルイズは泣きつかれた顔を才人の身体に擦りつけながら、

立ち上る炎を見つめていた。

「あたし、生きてる…」

 そんなルイズの頭に優しく手をのせ、才人がつぶやいた。

「ああ、生きてるよ。生きてるさ。…死ぬもんか」

 そんな二人をみつめ、モンモランシーは傍らに立つギーシュの腕を握った。

「わたし、もっとちゃんと勉強しようと思うの。

 もっと水の扱いがうまくなって、どんな怪我も治せるように」

 そう言って目をつむるモンモランシーを見てギーシュは胸の薔薇の杖を手に取った。

「なら、僕はそんなモンモランシーを守れるよう、もっともっと強くなる」

 

 凱は立ち上る炎を見つめた。

 あそこで燃えているのは自分が奪った生命なのだ。

 この場所、学院の生徒達を守るために戦った結果ではあるが、生命を奪った事に変わりはない。

 自分の能力は「人を救う為に神様にもらった」。

 サイボーグとして、生機融合体として蘇った能力。

 正しい事に役立てようと、「勇者」であろうとする精神。

 それらは目の前に燃える生命達には役立てなかったのだ。

 

 すまない。あの世で罰は受けよう。

 せめて今は、俺が道を誤らないように見守っていてくれ。

 

 凱は心の中で静かにつぶやいた。

 タバサはそんな凱を見上げた。

 そして、視線を炎に向ける。

 そして、想う。

 北花壇騎士としての初めての任務。ジルの無念。キメラドラゴン。

 あそこで燃える怪物は間違いなくキメラドラゴンに関連している。

 「ファンガスの森」に関連している。

 だとするなら、自分が標的だと思っていた。

 ガリア国王ジョゼフ一世が自分を始末する為に送った刺客だと。

 しかし、蟻人間達は自分を無視したのだ。

 蟻人間達はなにを狙ったのか。

 先ほどの戦闘を思い出す。

 まさか…

 

「そうだとも、わが姪よ! 俺は勇者王を狙ったのだよ!」

 突然。

 突然、タバサは肩を叩かれた。

 まったく気配が無かった。

 無意識に反応したタバサの視線の先には。

「な、なんであなたがここにいるの!!」

 

 炎の柱に変化があったのはその時だった。

 炎が突然2つにわかれ、巨大な翼のようにはためいたのである。

 それは不死鳥の誕生、いや、ある邪悪な生命の復活であった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。