ゼロと勇者王   作:tonebon

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第01話 「勇者王召喚!!」 Aパート

第01話 「勇者王召喚!!」

 

 

「ああああ、あんたら誰?」

 抜けるような青空をバックにして少女が立っていた。

 黒いマントの下に白いブラウス、紺色のプリーツスカートを着て、

 大きな眼に涙をため、びくびくがくがく震えながら見落ろしている。

 桃色がかったブロンドの長い髪が風と小柄な身体の震えに揺られていた。

 

――魔法が使える貴族、それも公爵家三女に生まれながら、

魔法が使えない少女、彼女の名はルイズ。

 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。

 

 あーなんだ? かわいいな。

 かわいい女の子だな。ガイジンの美少女だな。

 こんなガイジンの女の子が…棒…杖か? 杖なんかもって魔法使いのコスプレ? 

 もしかしてこれ、夢? それともなんかの勧誘!?

 あいたた、なんか頭痛がするぞ。手足もなんかしびれてる。

 それに俺、なんでこんなところで寝てるんだろう。

 

――そんな混乱状態にいる彼は、地球の一般的な高校生、平賀才人。

 

「誰って…俺は平賀才人」

 

「ひひひヒラガサイトオ~!?…そそそそそっちのは?」

 そっち!?

 ガイジンの少女は下を指差した。寝てる俺の下?

 才人は地面に手をついて上半身を起こした。

 

むにゅ

 

「むにゅ?」

 手の平の感触が変だ。

 床じゃない。草原でもない。むにゅだ。むにゅ。

 胸だ。胸だった。人の胸だった。

 ただし、細マッチョな男性の胸。

 そこには赤いロン毛の男性が倒れていた。

 

――数々の苦難を乗り越え、機界原種を打ち破り、

ソール11遊星主の宇宙収縮現象を止め、地球を救った男。

 彼の名は獅子王凱。

 

 才人はその凱の胸の上に寝ていたのである。

「なんで俺、男の上に寝てるんだよ…え?」

 じっと手のひらを見る。

 赤い。

「ななな、なにしてんのよ…え?」

 ビクビクしながら様子を見ていたルイズは、

長身の男性に乗っかっている少年が見つめる手のひらを見た。

 

「「血!?」」

 

 凱は傷だらけで倒れていたのだ。特に左胸には大量の血液が付着していた。

 そして、才人を乗っけているのに、ピクリとも動かない。

 まったく動かない。

 才人とルイズは初対面にもかかわらず、互いの顔を見て、ぴったり同時に叫んだ。

 

「「死んでるーーーーーーー!!」」

 

――凱、君は本当に死んでしまったのか?

立て、立ち上がれ凱。

我々は君の勇者王伝説を信じている。

 

 

■第01話「勇者王召喚!」 A

 

 

「なななな、なんで、なんで死んでるの!?」

「しらね、知らねえよ! きゅ、きゅ、救急車よべ」

「キュキュキューキューシャってなによ!」

 才人とルイズは傷だらけで横たわる凱の上でパニックになった。

 気が動転してるので、才人はまだ凱の上に座っている。

「救急車だよ! って、なんだここ!!」

 

 ここで、ようやく才人は周りの異常さに気がついた。

 すり鉢状にえぐられたクレーターのような穴の底にいるのだ。

 深さは地上から1.5メートルほど。

 強烈な回転によってできたのか、3人がいる穴の底を中心にして、

線条痕が綺麗に土に刻まれている。

 

「なんだこれ…爆発? 爆発事故…?」

 

 この男と一緒に爆発にまきこまれ、俺は助かった…のか?

 秋葉原で爆発事故? こりゃあ…大事件だぞ…

 ようやく落ち着いてきた才人は凱の上に乗っているに気が付き、

「あっ、す、すいません」

 と言いつつ、凱の上からどき、頭痛がする頭を揺らしながら立ち上がった。

 傷だらけ・血まみれで横たわる凱からの返事は無い。

 

 そんな才人と凱を見ながらおろおろしているさっきの美少女と目があった。

 ちょっと釣り目だが大きな瞳が涙で濡れている。

 スカートと同じ紺のサイハイソックスの細い脚がびくびくがくがく震えている。

 こんな事故だもんな。俺だってどうしたらいいのかわからない。

「あ、あんたヒラガァサイト、だっけ?」

「え、はい」

「怪我は? あんたは大丈夫なの?」

「あ、はい、俺はなんとか大丈夫です…いったいどうしたんですか? 

 なにがあったんですか?」

「こ、ここここここ」

「ここコ?」

「こっちが聞きたいわよ!

 サモン・サーヴァントしたら、突然、バカでかい緑の竜巻が起きるし!

 使い魔があんたらだし!

 ししし、死んじゃってるし!!」

 

 そうだよな。もしかして爆破テロ? それともまた怪物…

 

「…は? サモン? 使い魔?」

 才人は思った。

 この女の子、かわいいけどアレなんだ。アレ。かわいそうに。

「わたしのサモン・サーヴァントで召喚されたのよ。あんたち二人が。…たぶん」

「…君、現実を見ようね。こんな事故なんだからしょうがないけど…」

 

 そう現実を見るべきだ。

 ほら、穴のふちに人が恐る恐る集まってきたぞ。

 集まってきたなあ…うん。

 この子と同じような杖もってマントした魔法使いのコスプレした人達が。

 

「ミス・ヴァリエール! 凄い竜巻でしたが…大丈夫ですか!?」

 

 さらに来たぞ、髪の毛が薄い、大きな杖をもった黒いローブを着た中年の人が。

 はははは、この人も魔法使いのコスプレかよ。

 穴の中に駆け寄ってきたぞ、このほとんどハゲ中年め。

 警察はどうした? 事故だぞ。

「ミスタ・コルベール! 大変です! ししし、死んでるんです!」

 そうだぞ、死者もでてるんだぞ。

 

 コスプレ中年魔法使い-コルベールは倒れている凱のそばにしゃがみこみ、

 口元や首筋を触診しだした。その真剣な表情がふっとゆるんだ。

「よかった。ミス・ヴァリエール、生きてますぞ。重症だが、生きてます」

 

 死者もでてるような事故なのに、こんなコスプレ大会なんてどうかして…え!?

 生きてる!?

 

「ほんとですか!」

 ルイズはコルベールを見て、安心したのか笑顔を見せた。

 

 なんだ、このハゲ中年魔法使いにそんな事わかるのか。

 才人は釈然としないが、ルイズの笑顔が可愛かったのでドキッとした。

 そして、様子がおかしいので、ちょっと様子を見てみる事にした。

 

 コルベールはすっくと立つと、頭を輝かせながら言った。

「水魔法で治療すれば、大丈夫です。さて、ミス・ヴァリエール」

「は、はい」

「儀式ですが…人間を召喚してしまったようですね。それも二人も」

「は、はい」

「では、儀式を続けなさい」

「は、はい?」

 

 ここで、さらに二人が穴に降りてきた。

 赤く燃えるような長い髪で豊満な胸を揺らす少女と、青いショートカットの髪のスレンダーな少女。

 二人共ルイズと同じ魔法使いのコスプレだった。制服のようにも見える。

 

 赤い髪の少女は褐色の肌色のがきれいで、むせかえるような女性の色気があった。

 才人には胸が大きくてスタイルのいい魔法使いのコスプレをした女子高生に見えた。

 

「ルイズ、大丈夫? 怪我はない?」

 ルイズの事が心配だったのか、表情には焦りの色が見えたが、

「キュルケ、ええ、だ、大丈夫。大丈夫よ」

 落ち着いたルイズの様子を見て、キュルケはひとまず安心した。

 

 青い髪の小柄な少女は、節くれだった自分の身長より長い大きな杖を持ち、白いタイツを

はいたその姿は幼い少女に見えた。

 しかし、メガネの奥には幼い少女に不似合いな冷静さと好奇心の眼がある。

 才人には魔法使いのコスプレをした、おとなしい中学1年生に見えた。

「ただの竜巻じゃなかった…あれはなに?」

 だが、その問いに答える者はなかった。

「ミス・タバサ。今はミス・ヴァリエールの召喚の儀式が先ですぞ。

 ミス・タバサは水魔法を使えましたね。そこの彼をお願いできますか」

 コルベールの指示にタバサはこくりと頷くと、傷だらけで倒れている凱の側に座り、治癒魔法を唱え始めた。

 

「さて、ミス・ヴァリエール。春の使い魔召喚は神聖な儀式なのですぞ--」

 

 黙って様子を見ていた才人は怖くなっていた。

 なに、なによこれ。儀式ってなに?

 俺、どこかの怪しい宗教団体にさらわれたの?

 もしかして、ここ外国?

 

 才人は傷だらけで倒れている凱の側にちょこんと座りこみ、怪しげな呪文を唱え始めたタバサを見た。

 なに、なによあれ。光ってます。光ってますよ?

 あのハゲ中年、たしか魔法、水魔法とか言っていませんでした?

 もしかして、ここファンタジー…いや、そんなまさか。

 

「ねえ」

 ブツブツと独り言を言う才人にルイズは声をかけた。

「…はい」

 ルイズの真剣な視線に気が付き、才人はごくりと唾を飲み込んだ。

「ちょっとかかんでよ。届かないじゃないの」

「はあ」

「あんた、もしかして平民?」

「はあ、俺は一般市民ですが」

 一瞬の間。ルイズはコルベールへ振り向いたが、ピカリと光の反射が答えた。

「あっちのは?」

「知らない。知らない人だけど」

「…そう…」

「ルイズ、平民と傷ついた傭兵を召喚してどうするの」

 ルイズはキュルケの声にきっと睨んだ後、深呼吸した。

「か、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通ないんだから」

 貴族。こんどは貴族かよ。どこのお嬢様なんだよ。

 ルイズは才人のひたいに杖をピタッと当てた。

「なにをする」

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。

 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

 才人は額の杖に熱を感じ、後ずさろうとした。

 しかし、そんな才人の頬をルイズの両手が止める。

 唇が重なった。柔らかい感触。キス。

 才人の思考が停止した。

「ん…」

 唇が触れただけのキスを終え、ルイズはひと息吐いた。

 顔が真っ赤だ。

「ひとりめ、終わりっ」

 

 ああ、女の子とキス。ファーストキスだ。

 女の子とこんなに近づいたのは初めてだ。それもあんなかわいい子と。

 魔法使いコスプレ少女だって貴族だって関係ない。俺は女の子とちゅーしたんだ。

 ああ、なんて熱いんだ。キスって熱いもんなんだな。身体が熱い。熱いぞ。

「うわちちちちちち!!」

 才人の身体を本当に熱い物が襲った。

 思わず寝転んで悶絶する。

「ああ、「使い魔のルーン」が刻まれているのよ」

 凱に治癒魔法をかけ続けるタバサの横にしゃがみこみ、ルイズは答えた。

「刻むなー! ぐわあっ今度は左腕が熱いぞ!!」

 ルイズは騒ぐ才人にため息をひとつした後、あらためて呪文を詠唱した。

 顔を赤らめつつ、身体をかがめ、髪をかきあげながら、凱にもキスをした。

 

 その瞬間、ルイズの表情が固まった。

「…ハカイ…シン…テキ…シキャク…コロセ…!?」

 そばで治療していたタバサが気がついた。

 ルイズの表情が真っ青になっていたのだ。

 脂汗を流し、苦悶の表情を浮かべるルイズに、才人も自分の痛みを忘れ、

「…って、おい、どうした? 大丈夫か?」

 つい、声をかけてしまったほどだった。

「…だ、大丈夫。なんともないわ…ふたりめ、終わり」

 ルイズは頭を軽くふり、よろけながら立ち上がった。

 そして、コルベールに儀式が終了した事を伝えようとした。

 

 だが、それは伝えられなかった。

 その瞬間、轟音が響いたのである。

 

 

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