俺が生まれてから一週間が過ぎ、この世界の事が何となくだが分かってきた。
まず一つめはこの世界にいる人々の種族についてだ。
第一に種族は7つあり、〈長耳族(シルフ)〉〈獣族(インシーア)〉〈竜族(ドラゴノイド)〉〈人間(ニンゲン)〉〈魔族(イヴェルズ)〉〈天使族(オーリス)〉〈神族(ゼディオス)〉、この7つに分かれている。
種族の特徴についてだが、はっきりと分かっているものは人間と竜族のみで、他の種族は残念ながら〈長耳族(シルフ)〉はその名前の通り耳が長いこと、〈獣族(インシーア)〉他種族とは違う、耳の生えかたをしていることだけだ。
〈魔族(イヴェルズ)〉と〈天使族(オーリス)〉と〈神族(ゼディオス)〉なんてのはもってのほか、もはやどんな姿形をしているのかすらわかるものではない
そんなものは、後々わかることで今は放っておいてもいいだろう。それよりも〈人間(ニンゲン)〉と〈竜族(ドラゴノイド)〉の特徴だ。
先に何故俺がこの二つの種族だけは特徴を知っているのかというなら、この世界での俺の親がこの二つの種族だからだ、ちなみに母親が竜族、父親が人間だ。
先に竜族の特徴から説明すると、竜族は他種族とは違い、固い鱗に覆われた尻尾と翼があり、著しく長い爪をもっている。
母親の爪は確か7cm位だったかな?んで、それ以外の所は、肌の色が若干人間より薄いという以外は同じだろう。
その母親と対比するようにとまでは言わないが、これといって特徴が無いのが父親の種族である人間だ。いやこれは特徴が無いのが特徴と言った方が良いのかもしれない。
人間は翼も無ければ尻尾もない、爪も長くてもせいぜい1~2cm程である。でも俺は、人間という種族は前世の世界と容姿は同じであり、分かりやすいといった安心感があるため嫌いではない
そして、その特徴が多い母親、特徴が少ない父親の間に生まれた子供がこの俺である。
一応名前は決まっているらしいが、まだこの世界の言語がよく分かっていないため、自分の名前は分かっていない。
二つめに分かった事は、この世界には種族以外にも、俺のいた世界とは違うものが常識的にあるのだ。それは………
「フレイムっと」
不意に家の台所からそんな母親の声が聞こえる。母親は今料理をしているようで、フライパンと思われる器具を、フライパンの下に描かれてある魔法陣のようなものから上がる炎に当てている………そう、魔法だ。
「あっ……危ない危ない…火力が強すぎて焦げちゃう所だった…」
母親は指をパチンとはじき、魔法陣から上がる炎を消す……俺は魔法というものは、漫画のように戦うことにしか使えないと思い込んでいたが、よくよく考えればこうやって使うこともできるのである、まるでハ◯ルの動く城のように……まあジ◯リは置いておこう
「ご飯出来たわよー!」
「おーう!今いきまーす!」
そして今、階段から子供ような声を発し、ドタドタと駆け下りてくるのは俺の父親だ、父親も母親と同じように魔法を使えるらしいが、余り使った事を見たことがない
「おっ!リウス!!」
父親は階段から降りて俺を見ると、嬉しそうに近づいてきて俺を抱き上げる…もうこんなのもやられ続けて一週間もたつとなれてくるもので、大分耐性はついてきた、始めのうちは困惑して叫んじまったからな……あの時の父親の「俺、嫌われたのか……?」と言った落ち込んだ顔は今でも印象深く残っている……それだけ俺を愛してくれているという証拠なのでうざいとは思わないが…
「んー……リウスは可愛いなぁ……」
父親はスリスリと頬を俺に擦り付け、甘えるような声をする、これじゃどっちが親か分かったもんじゃない……そんな冗談は置いておき、横目で頬を擦り付けている父親を見て思う………転生してからずっとずっと思っていたが………若すぎるだろ!?
母親も父親も両方とも俺のいた世界では、十分高校生で通るレベルだ。
いや、もしかすると高校生と言った方が自然に見えてくるかもしれない……そう言える程に外見は若いのだ。これでこの二人がもう結婚している。だなんて誰が信じられるだろうか? 少なくとも俺は信じない……そうは言っても本当に結婚してるんだから信じるも信じないも無いんだが…
「あー、もうフォウス、ご飯だってば」
飯ができたと聞いて降りてきたのに、いまだに息子に頬ずりを続けるフォウスを見て、ジーナは「はぁ」とため息つく
「あはは……すまんすまん…リウスが可愛すぎてな」
フォウスはそう言い訳しながらポリポリと頬をかく。
ジーナも言い訳するくらいならちゃんとしろと言いたいが、息子が可愛いすぎるというのは十分に理解できるし、自分もそう言う時がないわけではないので強くは言えない
「ま、可愛いのはしょうがないわよね」
結局、ジーナは仕方ないという風に肩をすくめ微笑む
「私にも後で抱っこさせてね」
「ああ」
それだけ言葉を交わすと、二人は木製の椅子に腰をかけ、ジーナの作った飯の前で手を合わせる
「「いただきます」」
そして、ご飯の挨拶をし、ナイフとフォークを持って、ご飯を口に運び始めた……
◆ ◆
「ごちそうさま……おいしかったー!」
ジーナの作った飯を一つ残らず綺麗にたいらげ、少し膨らんだお腹をポンと叩く
「あ、フォウス、ソースついてるよ」
ジーナはフォウスの頬にソースがついていることに気がつき、布を持ち、ついているソースを拭った
「ありがと、ジーナ」
「ふふ、どういたしまして」
フォウスはそれに礼を言い、ジーナはそれに対して優しく微笑む……どうみても新婚です本当にありがとうございます
「よいしょ……ほらリウス、お母さんですよー」
その後母親はテキパキと食器を片付け、椅子に座り、俺を抱き上げる
「ふんふんふふーん」
母親は上機嫌に鼻歌を歌いながら、俺を抱いている手を揺りかごのように揺らす、最初は母親も父親と同じで、あまりにも爪が長いのと、人間にはない翼と尻尾が生えているのに驚き、情けなくもなきだしてしまった。
母親はその時、残念そうな顔をしていたが、父親程の落ち込みようではなく、ただしょんぼりと顔を伏せただけだった………しかし、その後ベッドの上で「息子に泣かれたー!!」と言いながら枕を涙で濡らしていたのを俺は知っている……次の日に母親に抱かれた時に、胸に思いっきり顔を埋めてみると、嬉しそうに顔をにやけさせながら、抱く力を強くしたのも、いい記憶として残っている
「あー……うー……」
母親から匂う香りがとても心地よく、しだいに眠くなってきた
「もうおねむの時間かな?」
「おー……あー……」
そう言う母親に、「お休みなさい」と挨拶しようとしたが、まだ上手く言葉を喋る事はできず、よく分からない言葉を口にした
「うん、お休みね……」
だが、母親には俺の言ったことが通じたのか、そう、俺の頭をなで、何かを言った。
「うー…………」
赤ん坊の体ということで、睡魔には逆らうこともできず、そのまま視界がゆっくりと黒く染まった………もう………一人きりの生活は終わった……ようやくそのことを理解できた、そんな1日だった