東方白化雪 ~ White wonder wizardry.   作:夢哉

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はじまり
その1


いつもの道を、いつもの時間に、いつも通り歩いていく普通の少年、水上(みなかみ)(はく)。高校一年生で一人暮らし。女顔のせいかはわからないが、よく間違えられるのだが、立派な男だ。そのために母からはよく着せ替え人形にされたりといったこともあるものの、半分あきらめながら受け入れている。

 

 

現在は高校を終え、クラスの女子たちから母から受けるものと同じ扱いを受けたあとに帰路についたところだった。

 

「今日も学校が終わったなぁ…。さて、早く帰ろっと」

 

疲れもあり、早く家で休みたい。そう思い、歩く速度を速めた。しかし、ふと視界の端に移った光景。

白の子猫が、道路を渡ろうとしている。とても小さく、赤い目をしている。とても可愛らしい猫だ。子猫だけで歩き回っているのも少しばかり不思議なものだが、まあ猫が道を渡るのは良く見る光景だ。

 

けれど、問題はそこではない。道を渡ろうとする猫に向かって走ってくる大型トラック。運転手を見てみるとなんと居眠りをしている始末。

 

嫌な結果が見えてしまった。

 

 

「危ない!!!」

 

広い通りということもあり、決して人通りが少ない道路ではなく、僕が声をあげたことで一斉にこちらへと目線が集まる。

だが、そんな事に気を回している暇もない。思うがままに子猫のもとへ向かい、抱きかかえることに成功する。

 

そしてそのままUターン。いけたと思ったんだ。

 

「っ…!」

 

最後の最後に失敗した。慌てていたこともあったのか、足がもつれ、歩道までまだ距離のある場所で転げてしまった。

歩道までは距離がある。だが、一か八か子猫を投げればこの子は助かる。胸が痛むけれど、ごめんと心のなかで謝り、今抱えている子猫を無理矢理歩道へ投げた。うまい具合に子猫も着地ができたようだった。

 

良かった、という気持ちと、ああ、こんな所で死ぬのか、そんな気持ち。

だが、なぜ僕はこんなに冷静なんだろう。やっぱり実感が湧かないのだろうか。走馬灯なんて話も聞いたことがあるが、そんなものも見えやしない。

 

そしてそのままトラックは…僕の上を通過した。

 

「ぅっ…!!!」

 

すさまじい痛み。今まで経験した事がないような、身体が引きちぎれそうな程の痛みが僕を襲う。事実、引きちぎれたのだろうか。なら即死にしてほしいものだったが。

 

誰がどう見てもこう思うだろう。―――――彼は助からない、と。

僕自身がそう思ってるんだ。そう思うはずだ。

 

(でもまあ…目の前で子猫が死ぬのを見なくて…良かった…かな…?)

 

胸中でそう思う。自己満足でやったことだ。親不孝だな、と思いながらも、でもあのまま見捨てるのはな、と思い正当化する。

 

目の前が黒一色に染まっていく。遠くで救急車のサイレンの音がかすかに聴こえる。そして僕が最後に見たのは、いつの間に戻ってきていたあの白い子猫が僕の頬をチロチロと舐めていたことだ。

 

その光景を見て、僕はほんの一瞬痛みを忘れられ。笑顔を浮かべられたのかな。

 

そしていよいよ……意識が途絶えた。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

「んぅ………」

 

ここはどこだろう。地面が硬い。まるで土の上で寝ているよう。まさかあの道路でそのまま横たわっているのだろうか。

まさか。確かに僕はトラックに轢かれて…死んだはずだ。あの感覚は眠る、なんて感じじゃない。感覚全てが失われていくようだったのだから。

 

それじゃあなぜ、僕はこうして目を開けているのだろう。

 

見渡してみると辺り一面木、木、木、森の中だ。光すらほんの僅かしか通さないような。薄暗さが視界に広がる。まず、木々のせいで今が昼間かどうかもわからないが。

 

改めて、なぜ僕はこんな場所で寝ているのだろう。

 

とりあえず起き上がる。神経も通っているようで普通に動く事ができた。体が引き裂かれたようだったのだが。

 

…あれ?前より地面が近くなってない?

 

僕の身長はそんなに高くないとしても、サバ読んで160はあったはずなのだが。

 

左右を確認してみるとふと、目に入った白い糸。

いや、糸なんかではない。腰の辺りまで伸びているこれは。これは…僕の髪の毛…なのか?

 

「なんじゃこりゃああああああ!!!」

 

思わず叫んでしまう。

…あれ?今の声、高くない?

喉を触ってみる。思春期を迎えた男なら誰しもできる喉仏。それがない。

 

 

「う…うわぁぁぁぁぁあああああ!!!」

 

思わず怖くなってしまい、どこかもわからない森の中を疾走する。

意味がわからない。理解できない。

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

息が切れた。いつもならもっと動けるはずなのに。

そしてふと周りを見てみる。さっきまで無我夢中で走っていたためにさっきよりも薄暗い所へと来てしまった。

失敗した。

 

…周りに何かいる。それとなく気配を感じる。

 

「ホウ…オマエ、コンナトコロニマヨイコムナンテナ…」

 

声がした方へ目を向けるとそこには蜘蛛がいた。だが、異常な程大きいし、何より話すことのできる蜘蛛など見た事も聞いた事もない。

 

周りを見渡すと同じような蜘蛛たちに囲まれていた。

 

「コンナトコロニガキガクルトハナ…コリャアウンガイイ。クッチマウカ」

 

喰う…?僕、喰われるのか…?こいつらに…?

なぜ、僕が今生きているかわからない。が、せっかくまだ生きているのだ。また簡単に死ぬだなんてごめんだ。

 

「くそっ…!!!」

 

なんとか撒こうと走り回る。が、小さくなってしまった僕の体は思うように動かない。

 

「誰かっ…助け…!!!」

「ウンガワルカッタナ…オトナシクオレタチニクワレロ…!」

 

走り回った先には…あの蜘蛛がいた。

その蜘蛛が大きな口を開け、僕を捕食しようとする。

 

「魔符『アーティフルサクリファイス』!」

 

突如、蜘蛛がいたところに締め付けるようなレーザーが現れ、蜘蛛を屠る。

ともかく、助かった…

 

「こっちに来て!」

 

金髪の少女が僕の手を掴み、引っ張る。助けてくれたので信用はしていいと思い、ついていった。

 

「マテ!!!」

 

後ろから何体も蜘蛛が追いかけてくる。

 

「めんどうね。上海、頼むわ!」

「シャンハーイ!」

 

上海と呼ばれた小人?は小さな玉を作り出し、あの蜘蛛たちにぶつける。その玉に触れた蜘蛛たちは次々とその命を散らしていく。

…あの玉、どれだけ威力あるんですか…

 

だが、何体か生き残りもいる。そいつらはしつこく僕らを追いかけてくる。

 

(くそっ…あいつらを消す事はできないか…?消しゴムで消したように真っ白く…!)

 

幼稚な考えだが、消しゴムで消す、という方法が一番何かが消えることを想像し易い。

 

なぜだか、できるような気がした。

 

(やるしかない…!『あの蜘蛛たちが消える』!)

 

イメージ通り、あの蜘蛛たちは消しゴムで消されていくように徐々に消えていく。

 

(成功だ!)

 

金髪の少女は口をポカンを開けて呆けていたが、すぐさままた僕の手を引っ張りどこかへと連れて行こうとする。

 

とりあえず、彼女に任せよう。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

「ここに入って」

「はい…」

 

彼女は建物へ僕を招き入れる。恐らく彼女の家かなにかだろう。

彼女の指示通り僕は家の中へと入る。彼女も後から入り、僕の方へ向いた。

まずはお礼を言わなくては。

 

「あの、助けていただいてありがとうございます」

「いえいえ、気にしないで。私の名前はアリス・マーガトロイド。“あんなところに小さな少女がいたら誰だって助けるわよ”」

 

はい?彼女はなんて言った?小さな少女?

 

「あ、あの…小さな少女?」

「ええ。そうでしょ?」

「え、な、な…」

「はい、鏡」

 

アリスから手鏡を渡される。そこに映ったのは整った顔で、雪のような白い髪、赤い瞳が映った。

 

「なんじゃこりゃあああああああ!!!!!」

 

僕は今日で何度目かわからない叫び声をあげた。




はじめての方ははじめまして、別の作品から来た方はお久しぶりです。夢哉です。
久々にTSモノを書かせていただきまして、自分自身楽しく書かせていただきました。TSロリを書いたって構わないじゃないか!
それにしても無理矢理感が否めない…orz
創成録はどうした?勿論の事、更新していきます。が、こちらも更新していきますので少しあちらのペースが落ちるかもしれません。

次回はどんな話になるのか…それは勿論未定です。が、楽しく書いていこうと思います!
それでは、次回もお楽しみに!ノシ


 ~更新情報~
H27.2.11. 後書きの訂正
H27.2.13. 本文の一部を訂正
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