東方白化雪 ~ White wonder wizardry. 作:夢哉
Side 白
アリスさんの様態も大分良くなり、一安心した所、今度は別の課題に移っていた。
そう、上海のことだ。
「アリスさん、ちょっといいですか?」
「どうしたの?」
「上海の事なんですけど」
実は、上海に繋げているのはアリスさんの魔力だ。譲っていただいた時から変えていないのでそのままなのだ。だけど、もしかしたらそれを僕の霊力と妖力に変えることができるのではないか、と思い、質問してみる。
「うん?それがどうしたの?」
「実はまだアリスさんの魔力を使わせていただいてるんですけど、それを僕の霊力と妖力に換えられないか、と思いまして」
「そうね、私が上海をどうやって操作しているかはもう知ってるわね?」
それは前に上海を譲ってもらった時に聞かせていただいた話だ。しっかり覚えている。魔力を細く細かい糸状のものにし、自身の魔力を流しているのだ。
「それを霊力と妖力に換えればいいだけの話よ。やったことがないからどうなるかはわからないけどね」
「なるほど…」
「どうするの?やってみる?」
「はい。やってみたいと思います」
「そう、じゃあやってみましょう」
まずは一度魔力の繋がりを絶つ。その結果、ぷつっ、と動きが途切れ、完全に止まってしまう。
その後に、自身の霊力、妖力を織り交ぜ、糸状にする。それを上海に繋げる。徐々に力を加えていくと上海に変化が起きた。
「白く…なった…?」
まるで今の僕の分身かのようなすがたへと変化した。驚きで声も出ない…。
「白ちゃん何したの!?」
「ただ霊力と妖力を混ぜて入れただけですよ!」
「そうなの……あなたの弾幕といい、この上海の様子といい…まるで雪みたいな娘ね、あなたは」
明らかに娘という言葉が聞こえたけどもう慣れました。そんなことより!
「おはようございます、マスター」
「えっ!?」
声がした方へ目を向けると、そこには白くなった上海がいた。上海が喋ったのだろうか?だけど上海は話せないはずじゃ…?
「いったい、どうなってるのよ…?」
「わからないです…」
上海が僕たちの態度を見て首を傾げていたけど、僕たちはしばらく呆然としていた。
***
なんとか、今の事態を理解し、再起動する事ができた。とりあえず上海が話せることになったのでいくつか質問してみようと思う。
「えっと、君は上海で合ってるんだよね…?」
「まだ私に名前はありません。生まれたばかりですので」
…ん?生まれたばかり…?でも前からアリスさんの下でサポートしていたはずだから生まれてそれなりに時間は経っているものだと思ってるんだけど…?
「ですが、アリス様の下にいた記憶もあります。私にマスターの力を入れてくださったことで、上海とはまた違ったものに生まれ変わった、と思ってください」
「なるほどね。私の力じゃなくて白ちゃんの力を加えたから、人格が変わったのかもしれないわ。ただ、私が使っていた時の記憶もあるみたいだから、それなりの知識は持ち合わせているはずよ」
なるほど。だとしたら、上海はほとんど自立できるのではないだろうか?会話能力、思考能力を持ち合わせているのだから。
「いえ、それはできません。私はマスターの力によって動く事ができています。ですので完全に自立できている訳ではありません」
なるほど……心を読まれた?
「はい。今はマスターの力によってマスターと繋がっています。なので、マスターの考えていることは私も理解できています」
「そうね、私のときも動いてくれてたわ。それが今度は白ちゃんになったのね」
「なるほど…って、名前の話でしたね。どんな名前がいいでしょうか…」
「マスターが決めてくれるのであれば本望です」
「こう言ってるし、貴女が決めてあげなさい」
うーん……何にしようか。なんというか、上海だった頃?よりもかなりキリッとしていてとても凛々しく見える。
―――――
「六華、なんてどうかな…?」
「あら、いい名前じゃない。確か雪の別称だったわね」
「六華、ですか?六華……はい。私は今日から六華といいます。よろしくお願いします、マスター」
「うん。よろしくね、六華」
ひとまず、名前が気に入ってくれたようで良かった。さらに質問があるのでそれを訊いてみる。
「えっと、六華、なんで君は姿が変わって話せるようになったの?」
「それはマスターの能力だと思います。姿はマスターの【雪を模する能力】です。マスターのスペルには雪のものが多いですよね、それです。攻撃、防御に使える能力ではありませんが…」
「へぇ…そんな能力を持ってたのね」
言われてみればほとんどが雪を模してるような気がする。でも攻撃にも防御にも使えないのですか……なんであるんでしょう…?
「話せるようになったのは―――――私にもわかりません」
「「え?」」
思わず間の抜けた返事が出てしまった。だけど、六華自身にもわからないならそれは仕方ない。うーん…とても気になる…。
「もしかしたら、ですが……マスター自身による影響、なのかもしれません。その原因は私にもわかりませんが…」
一瞬、本当に一瞬だけど、あの子猫が頭に過ぎった。だけど考えすぎだ、とその考えを一蹴する。だけど―――――
「わかった。ありがとね、六華」
はい、と返事をし、私の肩へとちょこんと座る。なんと言うか、そういう仕草は上海の頃と変わってないなぁ、と思う。
「ひとまず、ありがとうございました、アリスさん」
「いいのよ。私にとっても初めての体験だったし、とても面白い経験ができたわ。……そういえば、六華、貴女には戦闘能力は備わってるのかしら?」
確かに、上海の時は巧みにアリスさんが魔力で上海を操作し、戦っていた。
「はい。できますよ」
話を聞くと、アリスさんの時のように僕が操作して戦わせるという方法と、僕が六華に力を送り続けることで六華自身が判断して戦う、という方法があるようだった。
前者は僕自身で力の消費をコントロールできる。後者は六華が判断し動く訳なのでそれに応じて僕の地力が消費されていくというわけだ。
どちらも一長一短で、僕は戦闘慣れしていないし、何より戦闘になることを避けたいのでそれが前者のデメリットになる。後者は元々僕自身の地力が決まっていて、消費されれば回復するのに時間がかかるというデメリットがあった。
つまり、どちらをとってもデメリットが大きいのだ。さらに、もしも僕が「スノースパーク」を放てば地力は全てとは言わないが、ほぼ全て持っていかれる。そうしたら六華にも危険が及ぶ。
他力本願な手段だけど、アリスさんの魔力を繋げたら元に戻ってしまうのだろうか…?
その考えを六華が読み取ったのか説明してくれる。
「そうですね、実は私にマスターの力を繋げていただいた事によって、最低限はマスターの力を残しておくようになっているのです。ですから、アリス様の魔力を通しても戻ることはありません」
となると、本当に最悪の事態になった場合はその手段を取るだろう。戦闘はなんとしても避けていきたいんだけど……。
「その気持ちも本当に嬉しい限りですが、私はマスターを護る事が本望です。あまり、そのようなことは考えすぎないようにしてください」
「そんなこと!」
「あら、私は上海たちにそんな事を教えた覚えはないわよ?」
「…?」
「もう、私は上海―――いや、六華の主人じゃないわ。だけど、私は貴女が上海だった頃にそんな事を教えた覚えはないわ。上海には確かにサポートするように命令した。だけど、身を滅ぼしてまで防衛しろ、なんて一度も言った覚えはなかったし、そんな事は私は絶対に許さない。白ちゃんは、それを貴女に伝えたいのよ」
僕が言いたい事を全て言ってくれた、いや、それ以上に話してくれた。それは、上海の時の生みの親として、それを六華に話してくれたのだろう。
「でも、そうね。あなたの言い分もわかるわ。人格が芽生えた今、確かに主人を護りたい、という気持ちもあるのかもしれないわ。だとしたら、余計な事だったわね」
「…いえ、ありがとうございます。アリス様。私は精一杯、マスターをサポートさせていただきます。ですが、本当にもしも、という時は身を挺してでも護らせていただきます」
「…うん、わかった。よろしくね、六華」
「こちらこそ、マスター」
六華がパートナーとなった。頼もしいパートナーだけど、少し堅いところがある。そんな六華がとても頼もしいと思えた。
前回の蛇足のお蔭でこの話を書くことになりました。後悔はしてませんが、こう、グダグダした感じになってしまいましたね。
途中に説明があったように、六華、また六花は雪の別の呼び方です。六角形の雪からこの言葉が生まれたようです。
六華は、なんというか、メイドみたいな感じになりました。確かに従者、というキャラクターを作りたかったのですが、こうメイドみたいになるとは思いませんでした。上海と変わりすぎや…
次回も未定です。いつも通りです。
それでは、今回はこの辺で。ノシ
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H27.9.19. 誤字の訂正