東方白化雪 ~ White wonder wizardry. 作:夢哉
Side 白
六華という存在を生み出してしまってから早1週間。しっかりと六華は生活に馴染めていた。たまに来る魔理沙さんとの弾幕ごっこでも彼女は参加していた。結果としては………勝てませんよ。ええ。六華は上海の頃の戦闘経験を活かし、良い動きを見せていたが力の供給源である僕がまだまだであるために足を引っ張ってしまっていた。
そのたびに六華に励まされるので面目ないのです…。
そしてさっきも負けたばかりで……
「ごめんね、六華…」
「大丈夫です。マスターもちゃんと強くなってきていますから」
「うん…」
でもやっぱり、落ち込んでしまうものだ。
「ははは。まだまだ経験が足りないな。だけど六華の言うとおり、ちゃんと強くなってきてる。この調子で頑張れ」
「はい!」
魔理沙さんからも励まされ、頑張らなくては、と気合を入れなおす。
なぜ弾幕ごっこをいつもやっているのか。それは紅霧異変の時の、フランに霊夢さんの結界を壊された時のように、この世界はいつ死んでもおかしくない世界なのだと思い知らされたからだ。
最初の妖怪の時もそうだったが、フランの時でそれがはっきりしたのだ。
さて、魔理沙さんとの弾幕ごっこも終え、帰ろうと思ったが矢先、
「ここに白様がいらっしゃいますか?」
「あ、はい。僕がどうかしましたか?」
「いましたね。今から紅魔館には来られませんか?」
「今からですか?」
おおよそ今の時間はまだお昼前。余裕はあるし断る理由はない、けど。
「えっと、どうしてですか?」
「お嬢様と妹様の御達しで。それでどうですか?」
「いいんじゃないか?アリスには私から伝えておくぜ?」
「どうします?マスター」
そう言えば異変解決の宴会からレミリアさんにもフランにも会ってないなぁ、と思い返す。
「それじゃあ、行かせて頂きます」
「わかりました。それでは、行きましょう」
***
「それで、白様…」
「あ、えっと、敬語はなくて大丈夫ですよ…?僕がそういう話し方をしてるのであれですが…」
「えっと…そう、わかったわ」
そんな感じで飛行していながらも前方へ目を向ける。霧の湖を越えた先にある紅い館。やはりいつ見ても目がチカチカする色だなぁ、と思う。
「目がチカチカしますね……」
「あはは…僕も始めてきた時はそうだったよ」
六華でもそう思うらしい。初見にはなかなか厳しいものだと思う。
そして門の方へ目を向けると―――――
「はぁ…また寝てるのね」
咲夜さんが溜め息を吐きながらナイフを構える。
「ちょ!それはいくらなんでも酷いのでは!?」
「いつものことよ?まあ、効き目はないけど…」
「私が起こしますから!咲夜さんはナイフをしまってください!」
「わ、わかったわ」
門の壁に背をもたれ、すやすやと眠っている美鈴さん。なんというか、咲夜さんにいつもこういった起こされ方をしているのに繰り返すって……うーん…。
「美鈴さん美鈴さん、起きてください」
「んー?うーん……えっと…白さん…と、咲夜さん!?」
「まったく、白様が止めなかったらまたナイフを投げてたわよ?」
「あ、はは……ごめんなさい。次からは気をつけます」
「そうしてくれると嬉しいわね」
美鈴さんと咲夜さんの会話を聞いて思わず苦笑いをしてしまう。次からは起きていてくださいね?
「じゃあ、入るわよ」
「わかりました」
館の中へ入り、咲夜さんの案内に着いて行く。実は紅魔館の中をきちんと見るのはコレで初めてなのだ。以前はまっすぐフランの部屋へと向かっていたからだ。
「ここね。お嬢様、妹様、白様を連れて来ました」
「白お姉ちゃん!?」
どうやら図書館であろうこの部屋の中に、レミリアさんとフラン、そしてもう一人本を読んでいる人がいた。恐らく、ここの住人だろう。
そして無邪気な笑顔でフランがこちらへと駆けてくる。
あ、待って、僕そんなに力ないから―――――!!!
「わー!!!」
「ぐふぅ……!!!」
そのまま廊下を、床と平行にすっ飛んでしまう。
「咲夜!」
レミリアさんの声が聞こえたと思ったら後ろに咲夜さんが現れ、僕らを受け止めてくれた。止めてくれなかったらどこまで飛んでいってしまったのだろうか、と思うとゾッとする。
「妹様、少しは加減をお願いしますね」
「はーい…」
シュン、と項垂れる彼女を見ると、あの異変の時のような彼女なぞ想像も出来ないほどにまで、純粋な少女に見えた。
「ごめんなさい、白お姉ちゃん」
「僕も怪我も無かったから、次は気をつけてね」
「うん!」
「それでは、戻りましょう」
穏やかな…鼻血を流していたが、笑顔を向けた咲夜さんの言葉に少し引きながらも頷き、少し距離が出来てしまった図書館へと戻るのだった。
***
再び図書館へ戻る。戻っている最中にレミリアさんがいたので心配して追いかけてきてくれていたのだろう。
「えっと、それで今日はどうしたんですか?」
「ああ、そうね。まずは私とここの住人の挨拶をするわ。と、言っても前に一度私したけどね。私はレミリア・スカーレット。そしてその本を読んでいるのがパチュリー・ノーレッジ。私の友人よ」
「私は水上白…って、知ってますよね」
「私の名前は六華と申します。マスターの使い魔、ですかね」
「それで、私に何か用があったんですよね?」
「ええ。実はあなたに興味を持ったのよ。フランがここまで懐いた事にも、戦って生き残った事にも」
「…でもそれは霊夢さんの御札があったからで…」
「その御札は破壊されたのに?」
「それは……」
確かに、運良く新しいスペルを創ることができ、それを行使してなんとか避けきった。だが、それはあくまでも運が良かっただけである。僕自身が強い訳ではないのだ。
「まあ、いいわ。そんなことよりも私はフランが懐いてる事に驚いてるのよ」
「え?そんなに珍しいんですか?」
ふとフランに目をやると、パチュリーさん、咲夜さんと共に六華を不思議そうに見ていた。パチュリーさんなんかもう、凄い興味を示してる。
こうして見てみても、やっぱり普通の少女と大差はない。
「ええ。彼女に備わってる存在はあなたも知ってるわね?」
「……あの狂気ですね」
以前、フランと弾幕ごっこ……いや、最早あれはルール無視であったが、僕が対峙したのはフランの中の狂気だったのだ。今はなりを潜めているようだが、いつ表に出てくるかわからないらしい。
「彼女を幽閉していた理由がそれなのよ……私もパチュリーも必死に解決方法を探した。だけど見つからなかった。あの子の狂気は、人格と同じようなものにまで成り上がっているわ」
「人格……」
つまりは、二重人格。それはあまりにも、彼女には荷が重いのではないだろうか…?あそこまで幼く、純粋無垢なのに…。
「なんで、そんなことに…?」
「恐らく、能力ね……」
「ねえねえ白お姉ちゃん」
声がした方へ目を向けるとそこにはフランがいた。いつの間にここまで来ていたのか。
そしてなぜだか、フランの目が陰に隠れていて、表情が読み取れない。
「弾幕ごっこ、しよ?」
それは、先の少女とは全く別の笑みだった。
フランの狂気は、残ってますよ?消してませんし、消せなかったので。
次回はフランとの弾幕ごっこかなぁ、と思います。
それではまた次回に。ノシ