東方白化雪 ~ White wonder wizardry. 作:夢哉
Side フランドール
私は、自身の能力も、もう一人の私の存在もわかっていた。それでいて、止める事ができずにいた。
囁いてくるんだ。壊したいって。
ダメだって解かっていてもその人格に飲み込まれてしまう。
私がもう一人の自分を認識し始めたのは、能力を自覚して間もない頃だった。黒くて、私と同じ姿をしたナニカがそこにいた。
そして、そいつの存在を知ったお姉さまは私を地下の部屋へと幽閉した。特に、お姉さまを恨みはしなかった。だけど、とても悲しかった。お姉さまともっと話したかったのに、なのにこんな事になってしまっていたことがたまらなく悲しかった。
そいつは戦うことがたまらなく好きらしい。いつもいつも、破壊衝動に駆られてしまう。そんな私を誰か止めて欲しいと、切に願っていた。
***
そして幾度となく、私の部屋へ訪れる人がいた。それこそ、両手の数以上ではあったが、ほとんど、“壊して”しまった。
比喩じゃない。言葉どおり、跡形もなく壊してしまった。そいつは笑っていた。それこそ、狂気的な笑みで。なんとか逃げていく人もいたけど、それを見て心が磨り減っていく感覚が鮮明に感じられた。
そんなある日、一人の女の子が私の部屋にやってきた。真っ白な女の子で、それでいて不思議な人。水上白っていうらしい。お姉ちゃんって呼んだらなんでだろう、縮こまっちゃってたし……
―――――戦いたいなぁ
なんて、囁いてくる。もうやめて欲しい、と叫んでも、やっぱりダメだった。故に発せられてしまう言葉。
「貴女は壊れない人間?」
そこからはあいつに乗っ取られて何も憶えてないけど、目を覚ました時には白お姉ちゃんは“壊れて”なかった。むしろ、私を抱きしめてくれていたのだ。
―――――温かい
初めてかもしれない。そんな感覚を感じたのは。
その後、霊夢と魔理沙、という人たちと一緒に帰っていったけど、また来てくれる、って言ってくれてとても嬉しかった。次こそはあいつに飲まれないようにしよう、って誓った。
それが、なんだこれは。
あの日以来、お姉さまに屋敷内であれば部屋から出てきても構わないと言われた。だから、お姉さまの友達であるパチュリーのもとに行き、あいつを押さえ込めるようにしたいと頼んだ。パチュリーはそれに了承してくれて、しかも真剣に手伝ってくれた。メイドである咲夜も、お姉さまも手伝ってくれた。
なんとか、あいつに意識を乗っ取られる事を避けることまではできるようになった。そんな時、お姉さまは連れてきた。白お姉ちゃんを。
それはもう、嬉しくて嬉しくてダッシュで駆け寄って抱きしめた。そのまま飛ばしてしまった所を咲夜に受け止められ、叱られてしまった。
それでも、嬉しかった。
だけど、またあいつが来る。
「ねえねえ白お姉ちゃん」
「弾幕ごっこ、しよ?」
誓いを破ってしまった。今の私にはあいつに意識を乗っ取られないようにすることしかできない。だからこそ、それが地獄のようだった。
あいつによる破壊衝動、それによって自分との考えとは別に弾幕ごっこと言いながらも殺しにかかってしまった。
だけど、白お姉ちゃんはあいつを上回った。
「負けてたまるもんか!!!『スノースパーク』!!!」
目の前に迫る白い魔砲には、あいつも思わず言葉を零してしまったらしい。
―――――綺麗、と。
***
Side 白
もはや、立っている事すらできなくなってしまった。身体が傾いていくのがよくわかり、視界には床が迫っている。
「ありがとう、白」
それを、レミリアさんが止めてくれた。伝えられたのは感謝の言葉だけど、きっとまだフランの問題は解決できてないと思う。だから、その感謝は素直に受け取る事が出来なかった。
「マスター!今から私の力を……!」
「ダメだよ。それ以上戻したら今度は六華が動けなくなるでしょ?」
「ですが……!」
「僕は大丈夫だよ」
笑顔でひらひらと手を振ってやる。六華は心配性だなぁ……僕だって魔理沙さんからいつも稽古をつけて貰ってるんだ、そんなにヤワじゃない………じゃないと思う……。
「レミリアさん、ありがとうございます。僕はもう大丈夫ですから」
「そう……」
フランのほうへと歩みを進める。そこには、暗い顔をした彼女がいた。
「……ごめんな、さい……」
泣いていた。どうすればいいのだろうか……?
「マスター」
「六華…?」
「正直に言ってあげてください」
正直に。僕自身の正直な気持ち……
「わかった。……フラン」
「ごめんなさい……誓った、のに…」
「誓った?何を?」
「もうあいつには乗っ取られないって……もう壊さないようにするって……」
「あいつ……?……狂気の事?」
「っ……!!」
どうやらそうらしい。驚いた顔で僕の顔を見ていた。だが、その表情もやがては悲観に変わってしまった。
「知ってたの……?」
「うん。レミリアさんからも聞いたよ」
「……嫌いになったでしょ」
何かを恐れているような声音だった。震えていて、消え入りそうな声の中で、それでも訊かずにいられなかったのだろう、その問いはとても重いものだった。
「僕はフランは変わらず好きだし、避けようとも思わないよ。今日、弾幕ごっこを受けたのはその狂気に対抗するため。僕が嫌いなのは、その狂気だ」
「本当……?」
「うん。本当だよ」
ニコリと微笑み、そう伝える。嫌いになっているのはフランを好きなように弄んでいる狂気だ。だけど、先ほどの弾幕ごっこではまだ、取り除けていないだろう。
僕が弱いばっかりに。
ないものねだりをしたってしょうがない。だけど、弱いというのは理不尽だった。あの狂気は、フランが抱え込めるものではない。
「……ありがと……白お姉ちゃん…」
「……うん」
「白お姉ちゃん!!!」
「おわっ!ちょ!待っ―――――!!!」
フランが猛ダッシュで抱きついてきた。それによってドゴォ!という謎の効果音と共に吹っ飛ばされる事になったけど……
「白お姉ちゃん……大好き」
「……僕もだよ」
受け止めてあげたいと思った。
忘れない内に書いておいて、投下しました。
今回は前半にフランの描写を挟みながら、その後に白パートを書きました。なんか書き方が違うなぁ…と思うかもしれませんがお許しを…。
そして、まさかのランキング34位に入り込んでました。本当にありがとうございます。励みになります。TSというジャンルの中で、ここまで伸びる事が出来たのは嬉しい限りです。ビックリし過ぎて狂喜乱舞してました。
次回は未定です。もう今年中には出せないかな、と思っています。
それではまた次回に。ノシ