東方白化雪 ~ White wonder wizardry. 作:夢哉
その21
Side 白
季節は冬となり、ぽつらぽつらと雪が降るようになってきた。今までには結構色々とあった。色々と言うのは、秋に新しい神社が“外の世界からやってきた”ことである。霊夢さんと魔理沙さんが向かうとのことだったので僕も同行させてもらった。
道中で様々な神様や妖怪と出会いながら、ようやく辿りついた先にあった神社が、<守矢神社>という神社であった。この神社は外の神社での信仰が得られなくなったために、引っ越してきたらしい。
守矢神社の巫女、そして現人神である東風谷早苗さんに、今の外の世界の事をたくさん聞かせてもらった。早苗さんは同じ外の世界の人がいたとは思わなかったらしく、驚いていたが。
外の世界では特に大きな事柄があったわけでもなく、穏やかに過ごせていたらしい。できるかはわからないが、いつか今の外の世界を自分の目で見たいと思う。僕が死んだ後どうなったのか、あの猫はどうしたのか。まだまだ疑問は尽きない。
さて、雪ともなってみれば、気分は高揚するものだと思うのです。身体が幼くなれば、比例して心も幼くなってしまったのか、雪で遊びはしゃいだ。それを見た霊夢さん、魔理沙さん、アリスさんはというと、霊夢さんは満面の笑み、魔理沙さんとアリスさんは微笑を僕に向けてきた。
すごい恥ずかしくなり、思わずアリスさんが編んでくれたマフラーと手袋で顔を隠してしまう。
そんなこんなの日々を暮らしていると、唐突にも異変は起こるらしい。
「ごきげんよう、かしら。霊夢」
「ええ。そうね。それで、どうしたのよ」
スキマから現れた紫さんに全員が表情を強張らせる。いつもなら違うのだけど、隙間から出てきた紫さんの表情はあまりにも真剣そのものだったのだ。故に、ただ事ではないのだと全員が理解した。
「あら、気付いてるんでしょ?あの間欠泉から出てきてるものとその原因が」
「ええ。地底の怨霊たちが上にやってきてるのね?」
「ほお。そりゃあ面白そうだ」
「地底ね……うーん」
「あの、地底ってなんですか?」
霊夢さんたちが言う“地底”が何の事なのかわからなかった。
「地底っていうのは昔の地獄だった場所かしら。今は旧地獄とか呼ばれてたりするわね」
「地獄ですか……」
地獄と言われると鬼たちがたくさんいる場所を連想してしまう。うーん……
「だけどそうね、今回は白ちゃんはお留守番ね」
「…そうね。旧地獄と言うだけあってあそこは危険だわ。嫌われ者の巣くつ、とも言われてたりするしね」
心底残念そうに、そう呟く霊夢さん。なぜそこまで残念そうなのだろうか。もしかしてかなり厳しい異変なのではないか。
「あー、いや。たぶんそんなんじゃないぜ。まあ、気にしなくて大丈夫だ」
「……?」
うーん?まあ、気にしないでいいと言うならばそうさせてもらいます。
「霊夢、あなたにはこれを渡しておくわ」
「ん、ありがとね」
紫さんが霊夢さんに陰陽玉を渡す。どうやらあれで通信できるらしい。どうやって作ったのか。
「魔理沙、あなたにはこれね」
「お、ありがとな」
アリスさんは魔理沙さんに上海人形を渡す。あれも通信機能がついてるみたい。どうやって作ったのか。
「それじゃ行ってくるわね」
「飯作っておいてくれよー」
「はいはい、いってらっしゃい」
「頑張ってきてちょうだい」
「頑張ってきてください!」
霊夢さんと魔理沙さんを見送れば、留守番の僕は暇になってしまう。
「暇なら山の神社に向かってみたら?」
どうしようかと思っていると、紫さんからそんな声が掛かる。
「守矢神社ですか?」
「ええ。前に訪れた時あの神社の巫女があなたに会いたがってたのよ。行ってあげたらどうかしら?」
確かに、僕も早苗さんから外の世界の事をもっと訊きたい。行ってみようかな。
「わかりました。行ってみようと思います」
「ええ。私も霊夢のサポートに回るから、気をつけて」
そう言い、紫さんはスキマを開きその中へと潜った。
一度、アリスさんの家へと戻り、用意を済ませる。家で待機していた六華を連れ、アリスさんに一言話してから外へと出発する。
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
「アリスさんも魔理沙さんのサポート頑張ってくださいね」
さて、出発だ。
***
守矢神社。妖怪の山の頂上に立つ外の世界からやってきた神社であり、妖怪たちから信仰を集める神社だ。うーん、霊夢さんの博麗神社は……
いやでも、レミリアさんたちがたまに訪れたりしてますからね。僕もいつもお邪魔させていただいてますし。
また、守矢神社は妖怪の山の頂上にある。従って妖怪の山に入る事になる。そこを統治している天狗たちは、他者が侵入することを嫌がるようで、入ろうとしても追い返される。
そこで、守矢神社が天狗たちと交渉したらしく、守矢神社の参拝者は通っても良い事になったのだとか。どのような交渉かはわからないけど、上手い事をやるなぁ、と思った。
「こうなる前でも、かなり天狗たちは寛容になってましたよ」
「そうなの?」
「はい。“スペルカードルール”ができたからこそ、むやみな殺傷はなくなってきていますが、これが出来る前は侵入者は問答無用で殺されてしまった方もいたようです」
幻想郷の黒い部分を垣間見たような気がして、思わず身震いしてしまった。最低限、慈雨分の身を護る程度までは成長できたかな、とは思うがそれでも上級妖怪には及ばない。
「……スペルカードルールができて本当に良かったよ…」
思わず、そう呟いてしまった。
しばらくすると、目的の場所が見えてくる。
「こんにちはー」
境内から声を掛けてみるが、反応がない。出掛けてるのかな。
「戻ろうか」
「そうですね。誰もいないようですし」
「おーい」
出掛けてるのなら仕方がない。出直そう。
「おーい、無視しないでよー」
うん?
「今、声聞こえなかった?」
「ええ。私も聞こえました」
「ここだってば!」
「わっ!?」
突然目の前に現れた少女に驚いてしまった。六華もびっくりしていた。
「もう、何度も声を掛けたのにー」
「え、え?」
「マスター、声が聞こえてたって、この方の声だったのでは?」
「無視するなんて酷いよー」
頬を膨らませ、怒ってますと伝えてくる。ごめんなさい、本当に気がつきませんでした。
「まあいいよ。それより、ここはどこかな?」
「え?守矢神社だけど……わからないで来たの?」
「ぼーっとしながら移動してたら来てたんだよねー」
「無意識って凄いですね」
無意識で移動するって、割と難しいと思うんだけど…。木とかにぶつかったら痛いし。
「えっと、君の名前は?」
「こいし!古明地こいしだよ!あなた達の名前は?」
「水上白だよ。この子が六華」
「六華です。よろしくお願いします」
ひとまず、名前は教えてもらえた。古明地こいし……今までに聞いた覚えのない名前だけど、どこから来たのだろうか。
「こいしちゃんはどこから来たの?」
「えっとねー、地底って言うとわかるかな?」
「地底……?地底って…」
「…霊夢さんたちが向かってる先ですね」
地底と言えば、今起きている異変の元凶となっていると聞いたけど……
なんで普通に来れてるの!!?
今回から地霊殿編です。白は異変にほとんど関わらないのでそこまで長くはならないかなぁ、と。
それでは、次回もお楽しみに。ノシ